演習場にて、3つの人間の影がある。1つは長い髪で残りの2つは短い髪をしており、後者の2人は前者と向かい合っていた。
「アイリ、久しぶりなんだから無理したらダメだよ?」
「わかっています。ノクトと一緒ならお姉ちゃんを倒せそうです」
「Yes、ですがアイリ。本当に大丈夫なんですか?」
「心配ありませんノクト。」
「アイリ、なんで心配されてるの?もしかして例の…」
「Yes、運動ができてないので機竜を扱えないのではと」
「ノクト!運動はできなくても、機竜を扱うには体力さえあればいいんですから!」
「NO、体力さえあればいいっていう考えではいけません」
「そうだよアイリ、技術や体力よりも精神が一番大事なんだから」
「ぐっ!」
アイリがライラに図星をつかれた。自分が機竜の扱いに慣れたのは体力のおかげだとは知っている。だが、もっと上手く操縦するには何よりも精神面を強くなければならない。
「でも、どれだけアイリが成長したか気になるな〜。もちろんノクトの実力も知りたいし」
「それは嬉しい限りなのですが、ライラは本当に2対1でいいのでしょうか?」
「ノクト大丈夫ですよ。なんだってお姉ちゃんは兄さんと同等またはそれ以上ですから」
「まぁ、間違えて急所に当たらせないように努力するよ」
「なんか、不穏な言葉が聞こえた気がしますが」
「さて、そろそろは始めますか!」
ライラの掛け声の後、3人は一斉に汎用機竜を呼び出し接続を開始する。初めて対戦するノクトに、試合開始の合図をライラから説明を受ける。
「私とアイリが模擬戦をするときは私がいつも石ころを投げ、それが地面に着くと試合開始ね」
「Yes、わかりました」
そしてライラは石ころを拾い上げ、そのまま上空へ投げる。コンッ!となった瞬間、機竜たちは相手の間を詰めていた。
五分後
演習場から離れた芝生に1人が寝そべっていた
「はぁ…はぁ…」
「アイリ、すごいね。3分も私と戦闘できるようになったんだ」
「それは…ノクトがいましたから」
アイリは息を切らしながら答える。
「No、私はライラの情報を知ろうとしましたが、本気を出される前に倒されました」
「そういえば、さっきの戦闘で何割の力を出したの?」
「うーん、大体2割かな〜」
「えっ、2割で3分ですか!」
「ちょっと、2人とも3分を舐めすぎてない?カップ麺はもちろんできる時間だけど、世界を救うシュワッチ!な人なら世界を救うこともできるんだよ」
「何を言ってるのお姉ちゃん」
「Yes、言っている意味が全然わかりません」
ライラがたった3分で何ができるのかをわかりやすく説明したのだが、逆にわかりにくかったらしい
「さて、そろそろ夕飯時だから帰るよ。アイリ、おぶってあげようか?」
「大丈夫です。立てます」
無愛想に言いながらアイリは立ち上がり寮へ向いて行き、ライラとノクトはついていった。
翌朝、いつもよりも早く起きてしまったライラは水を飲もうと食堂へ行こうとするも、応接室に何者かがいると察知し、その扉の前に足音を立てずに移動をした。
(おそらく寮生のはずなんだけど…こんな時間だし警戒しないと)
腰に滞納していた機功殻剣を手に持ち、もう片方の手でドアを一気に開ける。
「うわっ!」
驚いた声の主は少年。この学園で少年はただ1人、ルクスが応接室のソファーの上にいた。
「どうしたの?ルクス、こんなところで。不審者だと思ったじゃない」
「ごめん。ライラ、ちょっと事情があってね」
「もしかして、学園を立ち去ろうか迷っているの?」
「それもあるんだけどね。やっぱりライラは鋭いなぁ…」
ルクスがため息をつきながら話を続ける。
「うん。僕は本当にこのまま学園にいるのは迷惑がかかるんじゃないかって」
「やっぱり、元皇子っていう立場が嫌なの?それならアイリだってそうじゃないの」
「そうなんだけど。ここは女学園だし、男がいても大丈夫なのかなって」
「ルクス、相変わらず難しいことを考えているのね」
ライラがルクスの対面にあるソファーに座る
「あのね、ルクス、お出迎え会のときはあんなに迎えてくれたじゃない。ここまで祝ってもらえるのは元皇子でも雑用王子でもないルクスをここへ迎えてくれてるの。大体、ルクスが編入してくることを反対する人がいたのならばそんなことしないし」
(個人的には女王からの任務を楽に進めたいから説得してるんだけどね)
「うん…だけどね」
そうルクスが言いかけた時に突然に鐘の音が鳴り始めた
「これは…ルクス行こう」
ルクスは言われずともライラと一緒に学園の格納庫へと走っていった。