王立士官学校。
ここでは人類の敵である幻神獣を討伐するために若き機竜使いを育成するために築いた学校である。若き機竜使いと言っても男子禁制である女の園となっている。
「今日から一緒に勉強をするライラだ。みな、仲良くするように」
そう生徒を見回しながら教官は言う。その隣にいたライラは自己紹介に困っていた。なぜなら
「ねぇ、あの人セリス先輩に似ていない?」
「ほんとうだ、顔立ちだけじゃなくて、身体全体まで瓜二つ!」
ライラの本当の姉、セリスティア・ラルグリスに瓜二つというレッテルを貼られたからだ。ただ、瓜二つだけだとそこまで有名にはならないが、セリスは学園最強の騎士団団長であるため、転入した一年生の間でもかなりの人気を誇っている。このレッテルを剥がしたいと思い、考えついた答えが
「みなさん初めまして、ライラといいます。学業はあまり自信がありませんが精一杯頑張ろうと思います。ちなみに、そこにいるアイリちゃんとは5年ぐらい同じベットで寝た仲です。これからよろしくお願いします」
「なっ!!??」
アイリを巻き添えにすることにした。
その日の昼休み
「姉さん!なんであんな事を言ったんです!」
食堂で昼食を摂る前に怒った声で言ってきた。ルクスはまぁまぁ落ち着いてと言うがアイリは無視して問いかけてくる。
「その事は事実でしょ?それに私は転入生なんだから変に警戒されると浮足立つもの」
「だけど、わたしを巻き込まないでください!」
「見ず知らずの人が転入してクラスの一員になるなんて何日もかかるものだよ。それが初日で解決する程アイリはクラスメイトに信頼されてる証拠だよ」
そう言ってなだめる。そ、そうですかとアイリは照れながら座る。
「で、ルクスはどうだったの?」
「あ、うん。僕の方は幼馴染がいたからなんとかなったよ。でもそのおかげで休憩時間に質問攻めが…」
「あはは、それはしょうがないよ。転入生の定めだよ」
「それだけだったらいいんだけど、『仕事』の依頼も受けちゃって…」
「ルクスは頑張るね、ここでも働くなんて」
「まぁ、こうやって自由にできるのは女王様のおかげだよ。お礼も込めて雑用をしないと」
「兄さん、働きすぎには注意してください。もし何かあったら私が困るんですから」
「わかったよ、アイリ」
「もう、アイリは心配性なんだから」
「べ、別に心配なんかしていませんよ!」
談笑しながら食事をしていく。こんな食事風景も久々であったため積もる話がたくさんあり、一つ一つ消化していく。
食事を終えたとき、
「すいません、ちょっと…」
と言って食堂の外へ出ていく
「どうしたんだろう。アイリ」
「ルクス、ちょっとはデリカシーないよ。察しなさい」
そう言って忠告していると
「ちょっといいかしら。あなたたち」
蒼い髪で顔立ちが整った少女が話しかけてきた
「はい、なんでしょうか?」
「私はクルルシファー、ユミルからの留学生よ」
「で、その留学生が私たち転入生組に何か用でしょうか?」
「えぇ、ちょっと…」
ここでは話しにくいのかクルルシファーが口籠る。
「ルクスさん、場所を変えましょう。それでいいですよね」
「話が早くて助かるわ」
そう言って食堂を出て行った。アイリにまた怒られそうだとガックリしながらもついていくルクスであった。
「ここならいいわ」
クルルシファーがそう言って足を止める。そこは学園の屋上。演習場や女子寮などを一望できる場所の一つである。
「それで私達に話っていうのは?」
警戒を怠ってはいないような口調でライラが直球に問う。
「ひとつ、あなたたちに雑用の依頼を受けて欲しいの」
「僕はいいけど、ライラは…」
「ライラさんがこの依頼を受けたら報酬を支払うわ。それでいい?」
「…依頼内容次第です。内容を言ってください」
「『黒き英雄』、もしくは『閃光の妖精』を探して」
依頼された二人は息を呑んだ。ルクスとライラは両方知っている。だがここで明かすわけにはいかない。帝国時代のクーデターで先陣を切って行ったのが元皇子と言ったらどうなることか。『閃光の妖精』に関しても言ってはまずく、自分自身についてより詳しく調べられるのではないかと考えた。だからライラの答えは
「その両方の名は噂でよく聞きます。『黒き英雄』は正体不明の神装機竜で帝国騎士の機竜を全て破壊し、クーデター後はその姿を見せてない。対する『閃光の妖精』はクーデター後に出現、腐敗した政治を行った国、地域のお偉いさんを再起不能になるほど追い詰めた。『黒き英雄』よりは現実味のある噂もあるし、同一人物だとも言われている」
「そう。その2人をさがしてほしいの。ライラさんの報酬ははずませるから」
「あの、クルルシファーさん、『黒き英雄』と『閃光の妖精』は同一人物だと思わないの?」
「あら、それは2人を知っているかのような発言ねルクス君。」
「ルクスその線はないと思うよ。だって英雄は大半、男を指して、妖精は女を指すとクルルシファーさんが予想しているもの」
「そう、ライラさんの言うとおりよ。彼らは同一人物ではないと私は思ってる」
「それで、彼らに会ってどうするの?」
「そこは依頼内容には含まれていないわ」
そうクルルシファーが断言した時、昼休み終了のチャイムが鳴った。
「そういうことだから2人ともよろしくね」
クルルシファーは扉を閉めて屋上から出ていく。
「大変な仕事を受け持ってしまったね…」
「そうだね…」
二人でため息をつき、教室へ帰って行った。