リーシャ様に服装の軽いチェックを受けた後、ライラはアイリに怒られていた。もちろん自分から怒られに行くほどマゾ属性はない。更衣室から出て逃げようと扉を開けたときにアイリが目の前にいた。その瞬間。アイリの寮部屋に連行をされ、散々なお小言を言われた。今まで自分が《閃光の妖精》であることを隠していたのか。どうしてルクスが知っているのかそんなことを延々と言われたのだ。
約三時間後、
「私とお姉ちゃんの間では隠し事は無しにしましょうね?」
「は…はい…」
初めてアイリとの口喧嘩で負けた。ライラはアイリの圧力で強制的に返事をさせられた。もう一度、家柄のことで怒られるなんてその時には考えれなかった。
「それなら私は寝ますので」
「ルクスの様子は見なくていいの?」
「兄さんが汎用機竜を数十分動かすだけでバテるような体力ではないし」
「そうだね、どこかの元姫様と違ってね」
「もう、やめてください」
そうアイリは拗ねながら布団の中へと行く。ライラはこれ以上いたらノクトにも迷惑がかかるだろうと気遣い、部屋の外へ出る。
(さすがに、ルクスのことが心配だなぁ)
ライラはルクスのことが気になるので、医務室へ足を運ぶ。
医務室へ行くと、ドア越しに静かであり、誰もいないと感じたため、ルクスで遊んでやろうとノックをせずに中へ入る。すると
「はっ!?」
「えっ!?」
リーシャ様とルクスが向かい合っていた。何故かリーシャ様が制服のブラウスをめくり上げ、スカートを下ろし、下着をずりさげ、めくらせていた。その光景にライラは
「ルクス、お腹フェチだったの?」
「僕はお腹フェチなんかじゃないよ!これはリーズシャルテ様が…」
ルクスの意外な性癖を冷静に分析をし発言する。これにルクスは反論をする。
「リーシャ様が?一国の姫様がこんなことをする訳ないでしょ?」
「だから、これには訳ありで!」
口論が続く中、リーシャ様はライラに見られてショックなのか、放心状態にありずっと同じ体勢で動いていない。
「だいたい、エロい要求をしたんでしょ?リーシャ様、お腹を隠してください。この変態にお腹をペロペロされるま…えに」
そこでようやくリーシャのお腹の異変に気づく。風呂場で見たときには手首で隠されていた烙印の部分を見れた。その烙印は旧帝国の国旗の形をしており、普通の人が知れば王家に裏切り者がいるなどと言われ非難されるだろう。
「リーシャ様!見せたいものは分かりましたのでお腹を見せないでください」
放心状態だったリーシャ様を軽く揺すり意識を戻す。
「ライラ…見たのか?」
リーシャ様は不安そうにライラを見つめる。小動物が強敵と対峙したかのように震えている。
「大丈夫です。このことは絶対に口外しません。私の機攻殻剣に誓って」
「そうか、ありがとう」
安堵の息をつき、安心をするリーシャ様。元々、決闘を申し込んだのは風呂場でリーシャ様がルクスにこの烙印を見られてしまったのではないかという勘違いで、口止めをしようとしたからである。
「誰にだって人に秘密にしたいことがあるでしょう」
「ライラにもあるの?」
「ルクス、デリカシーのない発言やめてくれる?」
「ごめんなさい…」
「ちゃんと反省をしなさい」
そう言ってライラは少し怒り部屋を出る。ルクスの様子を見に来ただけなので、元気な姿が見れただけで良かったのだ。それなのに、配慮のない発言にムカついた
「まったく、想ったことをすぐに言うのがルクスの悪い癖なんだから」
呟きながら女子寮の廊下を歩いていく。生徒とすれ違う度に尊敬の眼差しでライラを見てくる。セリスと瓜二つの顔のため、よく目立つ。
(はぁ…何かお姉ちゃんと区別できるものがあればな)
予想よりも遥かに有名人である姉と間違えられないようになにかアクセサリーを買おうか。そう迷っていると
「あっ、女王様から貰った紫水晶の髪留めを持ってきてたんだ」
ポケットの中から髪留めを取り出し前髪につける。ただ、急につけたため、綺麗に見せていない。あくまで姉と区別するためだ。
長い廊下を歩き、目的地である部屋の扉の前へ到着。この部屋がライラの寮部屋となるところ。既に就寝前という遅い時間のためノックをし、ルームメイトがいるか確認をする。
「どうぞ、入りたまえ」
部屋から声が聞こえ、失礼しますといい中へと入る。
「やぁ、ライラ。朝方ぶりかな?」
「そうですね。牢屋にいたルクスを呼びに行く前以来ですね」
「あはは…そうだったな。ここは元々ルームメイトがいたのだが、王都の騎士団と合同練習に行ってしまったから空いたのだ。おそらくその子達が来るまでは同室だと思うよ」
「それまでお世話になります」
「おいおい、他学年とよく交流するからルームメイトだけお世話になるのはちょっとおかしいのではないか?
シャリスさんが椅子に座ってライラへ笑いながら話す。ええ、そうですね。と一回会話を切る。ここは談笑したいところだが、夜も遅く明日の授業の為に寝ておきたい。
「ところでライラくん。セリスティア・ラルグリスという人は知らないかね?」
突然言われたことで、鳩が豆鉄砲をくらったような顔をする。
「えっと、ここの騎士団団長さんでしたよね?」
誤魔化すように苦笑いをする
「そういうことは言っていない。もっと深い関係にあるのだろう?例えば肉親だったり」
図星だった。ポーカーフェイスで何か返答をしないといけないと返す言葉を考えると。
「実はさっき言ったルームメイトはそのセリスティアのことなんだ。彼女とは入学当初からの付き合いでな。可愛い妹がいるっていうことを何回も聞いたんだ。でも、家出をしてしまって、今は生きているかもわからない。などと泣きながら言っていたよ。その時に名前も聞いたんだ。ライラって」
お姉ちゃんから聞いたなら仕方がない。やっぱりウェイド先生を亡くし、妹と疎遠になったのは自分の原因だと思っているのだろう。
「そうだったんですか。確かに私はセリスティア・ラルグリスの妹でライラ・ラルグリスといいます。が、このことはあまり広げないでほしいです。私が学園にいると知ったらすぐにでも神装機竜で飛んできそうですから」
「なんか冗談で言っている感じがするが、本当にしそうだ…」
早く寝ようとライラは思っていたのだが、学園での姉のことについて知りたいとシャリスに言ったため、夜が深くなっても彼女達はセリスの話題で話し合っていた。