天敵の襲撃を難なく撃退し、その功労者の1人であるライラはシャワー室にいた。
「ふぅ、ルクスは既に知られてしたけど、アイリや三和音、さらには姫様にも私が《閃光の妖精》だとバレてしまったなぁ〜」
ライラが《閃光の妖精》と知られたくないのは、ただ単に有名になりたくないからであり、いつか正体を知られたら親が無理やりでも連れ戻しに来るからだ。
「仕方ないかな。それで学園を守れたんだし」
そう割り切ろうとした時、入り口から自分と同じ金髪の少女が現れた。
「まさか、《閃光の妖精》が伯爵令嬢だったとはな」
この人も私をお姉ちゃんと間違えているのだろうか、セリスと同じ家系ではあるのだが、今は伯爵令嬢ではない。
「えっと、すみません。どこかでお会いしましたでしょうか?」
「お前、セリスティア・ラルグリスではないのか?」
「えぇ、私はセリスティアという人ではありません。明日からこの学園に通うライラと言います」
「そうか、すまない。似ている人がいたのでな」
このやりとりはもう何度目なんだろうか。そう既視感を覚えていたライラの隣にリーズシャルテがやってくる。
「その…姫様、大丈夫ですか?」
「姫様は止めてくれ、リーシャでいい。大丈夫ですかというのはどういうことだ?」
「ならリーシャ様、特殊武装や神装を多く使ってしまって大丈夫だったのですか?特に精神的に」
「なっ!?」
最後の方が図星だったか、女王から聞いた話と同じでリーシャ様は素直である。素直だからこそ、言動に動揺を隠せないのだ。
「何故それを!?」
「ルクスは戦闘中に全て回避行動か防御行動しかしていないのに、直撃を入れてないことで手数を増やした。しかしそれら全ても防御に徹したルクスにリーシャ様はプレッシャーで焦ったのでしょう。学園内で無敗であるリーシャ様は」
「…その通りだ」
リーシャは小さく呟いた。仕切りの向こう側にいるライラは聞こえたが聞こえなかったフリをした。
「そうだ、お礼を言わなければな。学園を守ってくれてありがとう」
「いえいえ、そんな大したことはしていませんよ」
「そう謙遜するな、普通は大勢の機竜使いで戦う幻獣神を1人で倒したのだから誇ってもいいぐらいだぞ」
「それを言うなら、リーシャ様も倒したのでは?」
「あれは、ルクス・アーカディアのおかげで倒せたのだ。後でお礼を言わなければな」
「すいませんリーシャ様、先に失礼します」
シャワー室から出て着替えの服を着る。普段なら私服であるのだが、レリィに報告をしに行った時、制服が出来上がったと言い渡してきた。いくら何でも早くはないかと言ったが、レリィには
『乙女の秘密よ』
と言われた。まったく女王といいレリィさんといい、いい年をした女性は乙女と言いたがるのか、分からない。
制服の着方に戸惑いながらも、服を着終え、鏡で整える。
「なっ!?ライラ、まだ更衣をしていたのか!?」
リーシャ様がシャワーを終えたのだ。ライラがリーシャの方へ振り向くと、タオル無しの状態で、両手で変な風に隠していた。右手は胸を、左手は下半身を隠すが手首当たりでヘソを隠している。しかし、リーシャの手首は小さく何か烙印みたいなものが見え、何の烙印か聞こうとしたのだが、リーシャが隠す程の訳ありだろうと推測をし、何も聞かなかった。
「リーシャ様、後で制服を正しく着れているか教えてくれませんか?」
「お…おう、わかったぞ」
リーシャは手早く体についた水を拭き取り、制服へ着替える。そして、鏡の前にいるライラに近づく。
「またせたな。さてチェックをしてみようじゃないか」
「ありがとうございます。ではお願いします」
リーシャはライラを四方八方から見てみる。セリスと本当に似ていると思いながら細かなところをチェックをする。その時あることに気づく
「ライラ、お前は一年生なのか!?」
「えぇ、そうですよ。同じ歳の人と勉強するようにとレリィさんに言われたので…ってリーシャ様?」
ネクタイの色が緑色は一年生の学年のカラーみたいなものだ。二年生は赤色、三年生は青色である。リーシャはライラの大きな胸を見ながら
「この世は不公平だ」
落胆した声で言っていた