この世界、おばさんにはちょっとキツイです。   作:angle

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過去最高に短いです。でもこのくらいが普通なのかもです。


FILE.14 勉強は忘れた頃に ~骨董品コレクター殺人事件~

5月9日(月)

 

 

昨日の夜はなんとなく予感がしたので、準備万端で眠りに入ったところ。

朝起きたら例のお客さんが寝ている間に来ていたみたいでした。

 

 

こうして朝を迎えてみると、前回がやっぱり異常だったということがよく判りましたよ。

まあ、パターンが違うというのもあるんだと思うけど。

(今回は量が多い方でした。痛みと量どっちも、というパターンもあるのだけれど、たいていはどちらか一方という方が多いです)

痛みに加えてだるさとかもあまりないので、普通にお風呂を沸かして入って、身体を温めたら痛みの方はほとんど感じなくなっていて。

これなら高校時代に薬を飲まずにいられたのも納得だ。

 

 

私が若い頃は、今ほど生理用品が発達してなかったから、量が多いときは2枚重ねたりとかけっこう大変だった記憶があるけれど。

最近は特大サイズでほぼカバーできちゃったりするので、ほんと女性に優しい社会になってありがたいなと思う。

 

 

 

思ったほど体調が悪くなかったので、朝食でカレーライスを食べたあと、暇だし原付免許でも取りに行こうかと思ったのだけれど。

ふと思い立ってネットの過去問サイトで原付の試験問題に取り組んだところ、見事に不合格を喰らってしまいました。

 

……やっぱり、免許取得の勉強をしてた時から計算すると約28年も経ってるからね、忘れててあたりまえだわ。

(日常的に運転はしてたんだけど、通勤で使う道は決まってるから、ふだん見ない標識の意味とかぜんぜん判らないし)

とりあえずぶっつけ本番で試験を受けて不合格を喰らわなくてよかったよ。

 

 

そんなこんなで過去問サイトをいくつか巡りながら勉強を進めていって。

お昼になったので、残ってたしゃぶしゃぶ肉とキャベツで昼食にしたあと、頭の休憩もかねて今月2回目の工藤邸に赴くことにしました。

 

 

以前なにかで聞いたことがあるんだけど、人が住んでいない空き家の傷みが早いのは、窓を閉め切って換気をしないのが主な原因らしい。

湿気がこもることで木でできた部分が腐ってしまうんだとか。

つまり、家を長持ちさせるためには、できるだけ換気をした方がいいということだ。

(このあたりも長く生きてるが故の無駄知識だったんだよね。まさか団地住まいの自分が空き家を抱えることになるとは思いませんでしたよ)

有希子さんは1週間に1回と言ってくれたけれど、暇があるなら頻繁に窓を開けるのが、家を湿気から守るいちばんの方法なんだと思う。

 

 

まあ、これから梅雨の季節も来るし、できないときも増えてくると思うんだけどね。

だとしたらなおさら、晴れた日にはできるだけ通って、換気と掃除をした方がいいだろう。

 

 

工藤邸に入って玄関の施錠をしたあと。

まずは順番に家の中を回りながら、すべての部屋の窓を開放していく。

ちょっと風があるからあまり大きく開けないようにしないと、あとで掃除が大変になりそうだ。

(湿気を追い出すために砂埃を呼び込んだんじゃ本末転倒だし)

 

 

換気の間は水回りの拭き掃除。

台所は一昨日やったので、今日はお風呂を約2時間かけてじっくりお掃除。

いやぁ、だって、工藤家のお風呂ってめちゃくちゃ広いんですよ。

ヒノキでできた家庭風呂(ほぼ温泉旅館並み)に加えて、猫足のバスタブなんかもあって、そのミスマッチがご夫婦を象徴してる気がしてちょっと笑ってしまいました。

 

 

お風呂掃除のあとに1時間ほどお風呂場の湿気を追い出したりしたので、今回は3時間のお仕事でした。

厳重に戸締りしたあと家に帰って、工藤邸お掃除日記的なものをパソコンに打ち込んでおく。

とりあえずテキストにベタ打ちしてるだけだけど、いいフリーソフトがあったら拾ってきて打ち込んだ方が楽しいかもしれないな。

ある程度たまってきた頃になにかあるか探してみることにしよう。

 

 

 

お掃除日記のあとは、夕食(カレーのストック3皿目)をはさんで、毛利探偵が導入した会計ソフトの説明書でお勉強。

まあ、そんなに複雑な会計処理をする訳じゃないので、依頼料なんかの収入と、あと必要経費の領収書の打ち込み方法だけ判れば大丈夫だろう。

細かいところはたぶん、担当の税理士さんが教えてくれるだろうし。

(しっかし、会計ソフト導入で税理士さんが泣いて喜ぶって、今までいったいどんな処理をしてたんだ毛利探偵!?)

 

 

 

その毛利探偵事務所から、夕食後電話がかかってきました。

 

 

『おう、愛夏か?』

「はい、そうです」

『明日なんだが、オメー、午前中時間あるか?』

「はい、大丈夫です」

 

『実は明日、警察へ出かける用事が出来ちまってな。オメーに電話番を頼みてえんだが』

 

 

あ、あれですね、骨董品コレクター殺人事件の調書を作るんですね判ります。

……まあ、今まで事務員がいなかったから、そういう時は電話番なんかもいなかったんだろうけど。

せっかく私を雇うことにしたんだから、できれば活用したいよね。

 

 

「はい、判りました。何時ごろ出勤すればいいですか?」

『できるだけ早めに終わらせちまいてえからな。8時半に来てくれるか?』

「了解しました。ちょうど私も、会計ソフトを実際に使ってみたいと思ってたところですので、勉強しながら電話番することにします」

『そうか、じゃあ頼んだ。 ―― すまん、コナンのヤツが代わってくれってうるせーんだ。少しだけ相手してやってくれ』

 

 

え? コナン君ですか!?

そういえば今までコナン君と電話で話したことはなかったですね。

とりあえず今のところ、彼はケータイを持ってないってことになってるんだろう。

(工藤新一用のは持ってるだろうけど、さすがにそれで電話はできないし)

 

 

『もしもし、愛夏姉ちゃん?』

「はい、そうです」

『あのさ、明後日お祭りに行くの。愛夏姉ちゃんも一緒に行かない?』

 

 

あー、これ、もしかして天下一夜祭殺人事件ですか?

って、さっそく事件巻き込まれフラグが来たよ!!

明後日は確か水曜日のはずだけど……埼玉だから日帰りする予定なんだろうか??

 

 

「お祭りですか。近くでやるんですか?」

『ううん、埼玉県の桶山ってところ。学校終わってから行って、お祭り見たあとに旅館に泊まるんだよ』

 

 

オイオイ……。

おめーらちゃんと学校行けよ!!

 

 

「さすがに旅館に泊まるようなお金は……」

『……そっか。せっかく愛夏姉ちゃんと一緒にお祭り見れると思ったのに』

「すみません」

 

『 ―― あ、愛夏ちゃん? 私だけど。お金のことなら心配しないで。お父さんが出してくれるから』

 

 

電話がコナン君から蘭さんに代わって、そう言ったあと、うしろで毛利探偵の怒鳴る声が聞こえます。

そのあと蘭さんと毛利探偵が電話そっちのけで争う声も。

調査の必要経費って……それ、世間では脱税と呼ばれてたりするんですが?

従業員の福利厚生費って……まあ、それならありなのかもしれないけど。

 

 

もしかしたらこちらに聞こえてないと思ってるのか、蘭さんの口から米花シティビルの話まで出てきて。

……あ、なんか判ったわ。

パソコンの件からこっち、毛利探偵が妙に私を信用してると思ったら、あの時蘭さんと一緒にいたことが響いてるのか。

(たぶん蘭さんが私のことをあることないこと吹き込んだんだろう。例えば爆風からかばってくれたとかなんとか)

それで話はついたのか、再び蘭さんの声が聞こえてきた。

 

 

『話の途中でごめんね、お父さん、愛夏ちゃんのためなら旅費くらい快く出してくれるって。だから遠慮しないで?』

 

 

ここまで話が進んでしまったら、もう私に断るなんてことができるはずもなく。

 

 

「……判りました。ご一緒させてもらいます」

 

 

ああ、次は射殺死体だよ。

この世界にいたら、あらゆる人の死に方を一通り見る羽目になりそうな気がする。

 

 

 

さて、明後日が天下一夜祭殺人事件なら、明日はたぶん消えた死体殺人事件が起きるはずで。

コナン君はそちらにかかりきりになるから、少なくとも私が巻き込まれることはないだろう。

 

 

……ま、明後日からの旅行が過酷なものになるのは間違いないから、なんの慰めにもならないけどね。

 

 

 


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