「すごかった!!」
「一夏君ってあんなに強かったんだね!!」
試合が終わり一夏が控え室から出ると、同じクラスの少女達が騒いでいた。
「ねぇ、どこで操縦習ったの?」
「もしかして、織斑先生からかな?」
「え~~!! 羨ましい…」
勝手に話しを進める少女達に囲まれるが一夏は落ちつた様子で質問に答える。
ISの操縦は誰にも教わっていないこと。昔剣道をしていたから、なんとなく戦えたこと。そして、今日はたくさんつまらない物を切ってしまったなど、最後のは意味不明だが質問に答えていたら
「黙れ小娘ども、ここをどこだと思っている」
鶴の一言ならぬ、鬼の一言で騒いでいた女子生徒達が逃げていき。後に残ったのは、千冬と箒のみ。
「一夏、おまえの剣術だが….」
「あぁ、そうだ。白式を整備に出さないと!! それでは!!」
千冬が言い切る前に一夏は逃げ、千冬が捕まえようと手を伸ばすが一夏は回避しそのまま廊下を走り去っていく。
(なぁ!? 千冬さんから逃げただと!?)
自分よりも剣術も能力も高い、世界最強の乙女と言われた千冬から逃げた一夏に驚き後を追うか迷っていると
「…あいつは、何を隠しているんだ?」
そんな声が聞こえ、千冬の顔を見れば深刻な表情でどこかを見ていたーー
「そんな…私が、こんなところで、負けるなんて…」
別室の控え室で一人、部屋の端で呆然と立ち尽くすセシリア。彼女の頭の中では一夏の姿が浮かんでいた。
(どうして、どうしてあんな人に私が…どうして、そんなに強いのですか?)
セシリアが今まで見てきた男達は全て軟弱で、実の父でさえそうだった。母の言うことに忠実でそんな不甲斐ない父の姿を見てセシリアはいつしか男嫌いにもなっていた。
だが、ある日。そんな父と母が何故か一緒の列車に乗っていてそして、その列車が事故に合いセシリアの運命は大きく変わってしまう。
残された財産を目当てに寄ってくる大人達。そんな彼らから家や財産を守るためにセシリアは偶然ISの適正が高かったため母国の候補生に選ばれ国により家が守られるようになった。
訓練をこなし、専用機まで与えられ自分は選ばれた人間だと思っていたが。ある一人の男と戦い敗北したのに不思議と屈辱などの負の感情がない。
これまでに会ったことのない強い男性、どうしてそんなに強いのか? セシリアは気になり
「織斑、一夏」
彼の名を口にした時、
「「ほぉ、おまえはあの男の事を知りたいのか?」」
セシリアの耳に聞いた事のない、男の声が聞こえた。
「っ!? 誰ですの!!」
慌てて警戒するが、部屋の中には彼女しかいない。だが、謎の声は何故かはっきり聞こえる。
「「おまえはあの男のことが気になり、そして近づきたいと考えている。違うか?」」
「そ、それは…」
「「だが、おまえにそんな資格はあるのか? 鏡を見ろ」」
セシリアは言われたとうりに、壁につけられた大きな鏡を見る。最初はISスーツを着た自分の姿が見えたが、鏡の表面が歪み気づいたら一組の同じクラスの生徒達の姿が映る。
「セシリアってさ、あんだけ大口言っておきながら結局負けてるし」
「散々私達を馬鹿にして、ふざけんなよって」
「あ~~あ、明日からなんて呼ぼうかな…負け犬のセシリアとか?」
生徒達は口々にセシリアの悪口を言い合い笑っていた。一言、一言がセシリアの耳に入り心にどんどん傷をつけていく。そして、再び鏡が歪み今度は母国で教官をしていた人や以前あった高官達の姿が映る。
「セシリア・オルコットめ、余計なことをしてくれたな…」
「世界発の男性操縦者に負けただけでなく日本に対しての失言や態度などのせいで我が国にどれだけ損害がでたことか」
「彼女の家と財産は全て没収だ。そして、候補生を降りてもらう」
「!? そんな!! 待ってください!!」
次次と聞こえる絶望にセシリアは鏡を叩き悲鳴をあげ次第に大切な物を失ってしまう恐怖で涙まで流していた。
「「どうだ? これだけの人間に憎まれ、嫌われて。そんな貴様に人といる資格などあるか?」」
「私は…私は…」
鏡の前に座りこみ泣きじゃくるセシリア。鏡に映るものは全て幻影だが、今の彼女にはそれを判断する余裕もなくそして、謎の声は
「「この苦しみから開放できる方法を教えてやろうか? 簡単だ、ただ心のままに破壊すればいい。自分を見下す小娘や国の者も全てな 」」
「は、かい…」
「「さぁ、鏡に触れるがいい」」
鏡から光が放たれ、セシリアは声の言うとうりに手を伸ばすと、セシリアの体に異変が起こり数時間後――
「っ!! 簪、来たよ!! 場所はこの学園のどこかだ!!」
「!!っ 分かった!!」
学園内に警報が流れ、一般生徒が避難する中、人気のない屋上からコートを着た女性が飛び出し。
「ん!! 来たか!!」
寮の自室にてパイナップルの皮をむいていた少年は何かを感じ、パイナップルを冷蔵庫に入れた後部屋を飛び出すのであった。