ガンファイター簪   作:un

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 戦闘とかが入ってしまい今回話が長いです。


二話 青髪の女性

 入学式を終え、この日新しくIS学園に入った生徒達は割り当て割れたクラス表を見てそれぞれのクラスに入りHRをしていた。どのクラスも最初は自己紹介から始めそれから授業が終わると大半の生徒達が教室から出て一組の教室に向かっていた。

 

「ふぁ~~」

 

 簪は周りの生徒の動きには興味はないのか、あくびをしそのまま寝ようとしたが

 

「かんちゃ~~ん」

 

 と自分を呼ぶ声がし、四組の教室の廊下では簪の幼馴染である本音がいた。

 

「本音?」

「なぇ、知ってる? 今、一組にすごい人が集まってるんだよ?」

「一組…もしかして、男の人で…?」

 

 このIS学園は女子高で本来なら男子がいるはずがないのだが、今年は違っていた。本来なら女性にしか扱うことができないはずのISをある一人の少年が動かしてしまい、世界中が注目していた。

 もちろん簪もテレビを見た時は驚いたが、あまり興味がわかなかったのか本音に言われるまですっかり忘れていたようだった。

 

「でね、オリム~~って優しいんだよ、お菓子くれたし、他のみんなも優しいって言ってたし、ねぇ一緒に行かない?」

「あんまり興味ない…」

「え~~」

 

 目を閉じ寝ようとする簪に甘えるように抱き着く本音。簪は特に抵抗せずされるがままになりやがて次の授業が始まってしまう。

 やがてその日の授業がすべて終わり放課後。他の生徒達が部活や実習などで移動する中簪は寮に向かい部屋に入る。 

 

「ふぅ~~半日以上しゃべらないってかなりキツイ」

「おつかれ、エルメス」

 

 ポケットから出したペンダントを撫でながら簪は椅子に腰かけた。同室者である本音は生徒会の用事があるとの箏でペンダントのエルメスと話せる箏ができた。

 

「ところで、どう? 今のところ魔物は出てきそう?」

「まだわからない。魔物が出てきたらすぐに教えてあげるから、簪はゆっくり休んでてよ。もうすぐ食堂も開くし、食べれる時に食べておかないと倒れちゃうから」

「わかった、ありがとう」

 

 エルメスの言葉をうけ、簪は部屋を出て行き食堂に向かう。

 そして、場所が変わり学園内の道場ではーー

 

「はぁ!!」

 

 激しく竹刀がぶつかり、二人の男女が防具を着け剣道をしていた。女生徒は何度も、何度も激しい攻撃を繰り返すが、相手である少年はそれらすべてを防御またはかわして動きに無駄がなく息が上がっていなかった。

 

「くっ!! てぁぁぁぁ!!」

 

 なかなか攻撃が決まらないことにいら立ち、少女が大きく前に出た。だが、少年の方も素早く動き少女の胴に一本入れて試合が終わる。

 道場では二人の試合に夢中になっていた剣道部員やたまたま見ていた生徒達が驚きの声を上げた。

 

「すごいよ織斑君!!」

「條ノ之さんって、大会で優勝してて強いのに!!」

「か、かっこいい…」

 

 頭の防具を外した一夏は周りの声に気にしていないまま、礼儀正しく一礼をして床に膝をついている條ノ之箒を見た。

 

「これで気が済んだか、箒?」

「くっ、ま、まだだ…」

 

 よろよろとしながら立ち上がる箒を見て一夏はため息をつく。すでに何本も勝負をして、すべて一夏が勝っているのだが彼女はそれでもあきらめずに挑もうとした。

 

「箒…あんまりむちゃするなよ、ほら休んで水分も補給しろ」

「だ、だが…」

 

 一夏は竹刀を片付け、部屋の隅に置いてあったペットボトルとタオルを取り箒に渡す。

 

「ここで倒れられたらみんなに迷惑かかるだろ、それに俺らが占領したら部員の人たちだって迷惑がかかるし」

「う、うむ…」

 

一夏の説得を聞き、箒はしぶしぶといった感じで防具を脱ぎタオルで額を拭いて水分補給をした。そんな二人を見て周りの女性達は二人がうらやましいと思う気持ちと、一夏の気遣いなどを見て、彼がそこらの男とは格段に違うと分かり何人かがスマホで写真まで撮り始めた。

 

「まぁ、とにかく俺は先に行って着替えるから」

「あぁ、その…ありが、とう」

 

 小さくだが礼を言う箒の顔は赤く染まり、一夏は更衣室の方へ向かう。

 

「ふぅ…本当に女ばかりだな、ここ…」

 

 道着を脱ぎ制服に着替えロッカーを閉め更衣室から出ようとした時、洗面台の鏡に映る自分を見て立ち止まる。一夏は鏡に近づき、前髪を上げて傷のない額を見る。

 

「さて、俺の出番はいつになるんだか….」

 

 そんな箏をつぶやき、一夏は更衣室を後にするのであったーー

 

 

 

 

「…あぁ、ちくしょう!!」

 

 IS学園から離れた町の中。パチンコ店からだらしない恰好をした女性が悪態をつきながら出てきた。

 

「昨日も今日も負けた!! なんで私だけ負けるのよ!!」

 

 女性は、つい先日までは普通に会社に働いていたOLだったのだが。会社で男性の上司に対して失礼な態度をとってさらに取引先でも問題を起こしクビになってから自堕落な生活を送っていた。

女性優遇の社会はたとえ権力がない者でも「女である自分達はえらい」と勝手な妄想まで生んでしまい、女性が起こすわがままな行いが社会問題にまでなっていた。

 

 「どいつもこいつも、私の言う箏が聞けない役立たずのくせに!!」

 

 女性は悪態がどんどんエスカレートしたまま、人気のない裏道に入る。会社の悪口から親や家族などの悪口まで言い出し、道を歩いていると壁に貼られているポスターを見て足を止めた。

 

「…何がISよ」

 

 ポスターはIS学園についてかかれ、イラストにISスーツを着た生徒が量産型IS「打鉄(うちがね)」を装着している姿が印刷されていた。女性はポスターを八つ当たりに破いて丸め地面に捨て力一杯に踏みつけた。

 

「ISがあっても私には何も得がないじゃない!! それに、なんでこんなガキどもしか乗っちゃいけないのよ!! あぁ、うっとうしい!!」

「おいおい、何騒いでんだ? おばさん?」

 

 女性が騒いでいると、いつの間にか後ろには三人組の男がおり男たちはまるで見世物を見ているような目で女性を見て、手には録画中のスマホが握られていた。女性は今の行動が録画されていた箏に気づき男たちからスマホを取ろうとしたが、力の差で女性は強く床に叩きつけられてしまった。

 

「おばさん、今の最高だったぜ」

「これ動画にあげたらすごいよな…ヒスったおばさんってタイトルで」

「ははっ!! いや~~最高だわ」

 

 男たちは笑いながら倒れた女性を助けようとせずどこかに行き始める。そして、女性は恐ろしい目つきで男たちをにらんだ。

 

(そうだ…あいつらだ…クズな男がいつまでもいるから、こんな目に…)

「「だったら滅ぼすか? 憎い男どもを全て消し去って見るか? 」」

 

 どこからか聞こえる男のような声。女性はその声におびえるそぶりも、疑問を感じないまま首を縦に振り、次の瞬間。男たちの後ろで異形の姿をした何かが立っていたーー

 

 

「ごちそうさま」

 

 一人食堂で食事を終えた簪は再び部屋に戻りテレビをつけた。相変わらずニュースでは一夏の箏が取り上げられ、その他には数日前に起きた森にある公園にて遊具が破壊されていた事件の箏も報道されていた。

 

「…暇」

 

 短くつぶやきテレビを見るのに飽きてシャワーを浴びようかと立ち上がった時

 

「簪!! 来たよ!!」

 

 エルメスの声を聞き、簪は急いで部屋を後にした。

 そして同時刻。

 

 「しかし、驚いたぞ….まさか、おまえの剣があそこまで…」

 

 食堂にて、一夏と箒が食事をしていた。

 

「まぁ、俺も戦ったから…む?」

 

箒と話していた一夏が箸を止め、難しい顔をしてどこか遠くを見つめた。箒が一夏の様子を見てどうしたのか聞くが「すまない、重要書類を出すのを忘れていた」と一夏は言い食堂を後にした。

 

 

「やっと仕事終わったよ~~ごはん食べに行こう~~あれ? かんちゃん?」

 

 疲れた様子の本音が部屋に入るが、簪の姿がどこにもなく首をかしげる。そして、簪は学園と外部との通行手段であるモノレール駅にいた。

 

「さすがにこの時間だとモノレールは止まっているか…どうする? 泳いでいく?」

「いや、別の方法がある」

 

 簪はペンダントに手を置くと、一丁のリボルバー銃が出現し指で撃鉄を起こし銃口を空に向けつぶやく。

 

 「変身」

 

 一発の軽い銃声が起きた後、簪の体が一瞬で光に包まれる。そして次の瞬間、簪の立っていたところに長身で青い長髪をした女性が立っていた。

 

 「はっ!!」

 

 長身の女性はその場でジャンプして駅の屋根まで飛び、そのままモノレールのレールの上を速く駆けて行った。

 

「エルメス、魔物はどこ?」

「そのままレールを走ったら、二つほど先にある町だよ!! 距離は大体5km程!!  大丈夫かい簪!?」

 

 首にかけてあるエルメスが叫びに似た大声を出し変身した簪の人離れした速い走りによる風で揺られながら気遣い、細いレールの上を夕日に照らされながら走る簪も声を大きくして「大丈夫」と答える。

 

 そのまま簪は息が上がっている様子もなく、速度を落とさないまま反対側の駅までたった数分でたどりつき、簪は建物の上などを移動しながら人気のない裏道の近くを通ると

 

「た、助けてくれ!!」

「ひぃぃぃ!!」

 

 地面に尻もちをつき必死に後ろに下がる三人の男。そして彼らの前には茶色の毛を生やして尾あるしっぽを動かしながら大人の人間サイズまである猿のような生き物が二本足で歩き一本の剣のような鋭く長い爪を見つめていた。

 

「「ふふふっ…ほら、もっと無様な声を聞かせなさいよ…」」

 

さっきまで男たちと絡んでいた女性は自分が異形の姿になっても驚く箏もなく、むしろ今目の前にいる自分を見下していた男達を消すことができる力を得て愉快だった。

 

「…いた」

 

 簪がつぶやき、建物の屋上から飛び降り落ちていく中ペンダントから一丁の銃を取り出す。銃口の下にグリップがついたその銃の狙いを猿の魔物の足元に向け一発撃ち魔物は足を止め地面に着地した簪をにらむ。

 

「「な、なんなのよ!? あんた!!」」

「あなたが知る必要はない」

 

 簪は魔物に向け発砲する。数発が魔物の胴体に当たり血が地面に落ちて魔物が膝をついた。いきなりの出来事に男たちは声を出す箏ができなかったが、はっと我に返り悲鳴を上げながら録画状態になったままのスマホを置いて三人とも逃げていった。

 

 魔物は突然の襲撃者の攻撃にうろたえたが、すぐに怒りに燃え簪に向け爪を立てながら飛び上がる。向かってくる魔物に銃口を向け発砲したが魔物のしっぽが素早く動き銃弾を全てはじいてしまった。

 

「くっ!!」

 

 魔物の爪をグリップがついた銃で受け止め簪の顔の前で火花が散る。魔物はもう片方の爪で簪を刺そうとし、簪は今手にしているグリップ付きの同じ銃をもう一丁取り出し爪の攻撃を防ぐ。

 

「「なんで私の邪魔をすんのよ!! 男なんてこの世に必要ないじゃないのよ!! 」」

 

 魔物は両手の爪で攻撃を繰り出し、簪は爪を銃のグリップで受け止めながら反撃して撃つ。裏道にいくつもの銃声とグリップと爪がぶつかる音が響く。簪と魔物の間で火花が何度も起きる中遠くからサイレンの音が聞こえてきた。

 

「男が必要ないとか、そんなの私には関係ない」

「「何!? ぐぅ!?」」

 

 銃のグリップで魔物の顔面を叩きひるんだところで、両手の爪の付け根に何発も弾丸を放って二つの爪を折り倒れている魔物に向け二つの銃口を向ける。

 

「けど、あなたみたいな存在は必要ない。ただ人を傷つけて笑うだけの「魔物」なんていらない」

 

 魔物のところを強調し引き金を引く。が、簪に向け高速で何かが襲いかかり吹き飛ばされ段ボールの山にぶつかる。

 

「「ははははっ!! 馬鹿ね!! あんたみたいな女に私が死ぬわけないでしょ!!」」

 

 猿の魔物は、自分のしっぽを揺らしながら笑い大きく口を開く。とがった牙を出し倒れているであろう簪に向け飛ぶ。だが、簪はすぐに立ち上がりリボルバーを魔物に向けた。

 

「けど、私は殺しはしない」

 

 そう短く告げ、リボルバーから一発の弾丸が放たれる。魔物はしっぽで弾丸を防ぐが弾丸に触れた瞬間、魔物の体が光始める。

 

「「な、なに? ち、力が!? あ…」」

 

 猿の魔物が悲鳴を上げすぐに気絶しその場に倒れ光を放ちながら人間の姿に戻っていく。簪は倒れているだらしない女性の姿を見て安堵の息をもらし、いつの間にか簪もIS学園の制服を着た元の姿に戻っていた。

 

「終わった…」

「簪、早く変身し直してここから逃げたほうがいいよ。警察とかがこっちに来てる」

 

 簪は手にしているリボルバーを撃ち、再び長身の姿に戻るとその場から立ち去る。警察が駆け付けた時に後に残ったのは気絶している女性と逃げた男性が残したスマホだけだったーー

 

 

「ふぅむ、あれが私と同じ正義の味方か…」

 

 簪の戦った場所から離れたビルの屋上から双眼鏡を持った仮面の男がつぶやく。オレンジ色のマントや腰の刀など通報されてもおかしくない男は双眼鏡から目を離す。

 

「さて、私の出番はいつになるやら…」

 

 意味ありげな台詞を口にしながら、仮面の男はビルから去るのであったーー

 

 




 余裕があれば、ラブライブとコラボした話を書きたいと思っています。

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