「正直、異世界とか未だに信じられません」
そう言いだしたのはアインズ・ウール・ゴウンの孔明、ぷにっと萌えだった。先日の異世界へ転移した件の話である。
「そう信じられる話ではないというのは分かっています。勿論、なにか騙そうといったことでもないです」
「モモンガさんがそういう人じゃないってのは分かってますよ。……モモンガさんはユグドラシルの最終日までいたと言うことは、これから先のイベントやレアアイテムの場所など知っているんですよね?」
モモンガはワールド・エネミーの居場所や弱点、極一部のワールド・アイテム等のレアアイテムの入手法だけでなく、これから大まかに何が起きるのかは既に知っていた。
「えぇ……知っています。ただ、それを言ってしまうと、折角のユグドラシルのイベントがつまらない物になってしまうと思うんですよ」
ゲームの遊び方で攻略法を見て楽しむ者もいるだろう。だが、そうでない者もいる。知らないからこそ楽しいことはたくさんある。例えば、二式炎雷がナザリック地下大墳墓を単独で見つけたとき、メンバーが大いに喜んだ。もし、知っていて攻略したのなら、あそこまでの感動はなかったはずだ。
「それは、分かります。だけど、どうしてもモモンガさんが例の件のような体験をしたのか確かめたいんです。例えば、今後のユグドラシルにおいて致命的なミスをして悔しい思いをしたこととかないですか? もし、あれば教えてくれませんか?」
「……それを言うとネタバレになっちゃいますけど、いいんですか?」
「えぇ、1つだけ教えてもらえばそれでいいです」
悔しい思いをしたこと……それは幾らでもある。ただ、飛び抜けて悔しい物が1つあった。それは、今独占している隠し七鉱山が奪われ、更には無謀な取り返しに失敗し、多数のレアアイテムをドロップしたことだ。
「ぷにっと萌えさん、実は……」
モモンガはワールド・アイテムの<
「そんなことが……っていうか運営は狂ってるんじゃないですか? 1ヶ月間、使用したギルドのメンバー以外はそのワールドに立ち入り禁止って……どういうことだよ……」
「運営の頭がとち狂っているのは、いつものことです。むしろ正常と言えるでしょう。……どうにかなりませんかね?」
「対処法はあると言えば、ありますが……」
「本当ですか!?」
「えぇ、ですが、それなりの物資と他の方の協力が必要になりますね。これの対策するのであれば、メンバー全員にきちんと説明しないとダメですね」
「やっぱりそうですよね……」
話してしまっていいのだろうか? 自分は今、異世界転移後のことを考えてユグドラシルをプレイしようと考えているが、ギルドメンバー全員がそうではないだろう。単純にゲームとして遊んでいる者もいる。これはアインズ・ウール・ゴウンにとってバッドイベントではあるが、他のメンバーにとってみれば、これすらもいい思い出となるのかもしれない。
だが、このまま何もせず鉱山が奪われていくというのは面白くない。だって俺は、我が儘なのだから……
そういう訳で、ギルドメンバーを大広間に集めた。
「今回、皆さんに集まって頂いたのは、今後、ナザリックにおいて懸念すべき事項があるからです」
「懸念すべき事項というのは?」
「ただ、それを話す前にある事を決めねばなりません。私がネタバレしてもいいのかどうか……ということです」
モモンガはネタバレすることでの弊害やゲーム性についてメンバーに簡単に確認した。
「まぁ、……もっともな話ではあるが、モモンガさんはどうしたいんだ?」
「俺は……今後のためにも、なんとか打破したいです」
「……なるほど」
「という訳で、今回のみのネタバレを賛成の方は旧金貨を、反対の方は新金貨を提示して下さい。今回は特別に反対が1/3を上回ったらネタバレはしない。少数であれば審議という形を取りたいと思います。よろしいですね?」
全員が賛同した。
「それでは、提示をお願いします」
全員が旧金貨を提示していた。
「えっ、いやいや、ちょっと、満場一致って……それでいいんですか?」
「ん? 少しくらいなら、いいんじゃないか?」
「俺がこの話を持ちかけるのにどれだけ不安だったのか……」
「正直、モモンガさんが自ら何かを呼びかけるなんて珍しいなって思ったよ」
「えっ?」
「そうそう、いっつも雑務と調整ばっかりでさ、いいと思うよ」
そういえば、そうだった。俺はいつも雑務と調整をして皆のバックアップをしていた。何かをやろうって言い始めたのはもしかしたら初かもしれない。
「皆さん、私の我儘に付き合ってもらってすみません」
「私は以前から、モモンガさんはもっと我儘であったほうがいいと思っていたがね」
「そうでしたか……それでは本題に入りたいと思います」
モモンガは隠し七鉱山の件について話をした。それも、当時自分たちがどのように行動したのかをより詳細に。
「まずいな……あの隠し鉱山が盗られたってなると、大幅な戦力ダウンだぞ」
「糞運営が、せっかく独占してもワールド・アイテムで台無しかよ」
「まぁ、そんなわけで、ぷにっと萌さんが対案を出してくれた」
ぷにっと萌えはいくつかの対案を出して説明した。
「私としては、適当な他ギルドと争わせて<
「確かに、それでいいかもしれないな。でもどうやるんだ? そんな口で言うほど簡単なことのようにも思えないんだが……」
「そこは、私に任せてください。私の『楽々、誰でも起こしちゃう内部抗争』が火を吹くだけですよ。要は、私たち相手に<
「お、おぅ……よろしくお願いしますわ」
結果として、<
これで、まだ当面の間は鉱山の独占を続けることができた。おかげでワールドアイテムの<
そして、モモンガの警戒していたギルドが実際に<
次からはギルメンとの会話等がメインになります。