異世界転生-君との再会まで長いこと長いこと   作:アニッキーブラッザー
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第279話 スケジュール決め

 さて、班分けされた俺たちを、豪華なリムジンスカイカーがホテルの前に待機でお出迎えなわけだ。
 俺は最後の最後まで「ぷい~」と頬を膨らませた、拗ねた「拗ねコスモス」にハラハラしながらも、今は目の前の光景にニヤニヤしていた。

「ほ、ほら、ニート、案内してあげるんだから感謝しなさい! べ、別に、あんたのために案内してあげるんじゃないんだからね!」
「う~わ~。なんかもう、技術は最先端なのに、そのキャラは既に絶滅危惧種なぐらい古くて、何もそそられないんで」

 ソロシア帝国とやらのお姫様ブラック。黒髪ビッグテールの小柄な女。
 どうやら、ニートとの接点は晩餐会からあったようで、関係はまあまあに見える。

「くははははは、も~てもてじゃねえかよ、ニート。嫁さんには黙っててやるから、お前も楽しんだら?」
「なに、お前、俺に笑われたの根に持ってるの? っていうか、フラグも何もないんだからそういうのないからね」

 俺は、これまでの仕返しとばかりに、ニヤニヤと笑ってやった。
 すると、俺の発言に少し「ムッ」としたブラックが声を荒げた。

「ちょっ、あんた! じゃなくて、ヴェルトさん? ねえ、その、こいつの嫁さんとか、ひょっとしてこいつ、け、結婚してるとか?」
「ん? まあ、まだ籍は入れてないけど……いや、あの女のことだ。ひょっとしたら、ニートの意思なんて無視してとっくにそういう手続きしている可能性もあるな」
「いや、ヴェルト、マジで冗談だよな? 冗談だよね? お前と違って、俺にそんな肉食系ヒロインが出てくるギャルゲーみたいな展開ありえないんで」

 果たしてそうだろうか? だって、俺は自分の意思なんて関係なく、色々な手続きされてたんだから。
 アルーシャと前世から仲良かったフィアリが、果たして「一緒にジュース屋経営して一緒に暮らす」だけで満足しているかどうか……


「へ、へ~~~、ニートって、彼女居たんだ。ふ~ん。ま、まあ、私には別に関係ないけど、すごく、すごく、すご~~~~~く、どうでもいいことなんだけど、別に気になるとかじゃないんだけど、……ど、どういう彼女なのかしら? ま、まあ、ニート程度の男と付き合うんだから、スーパーアイドルプリンセスのブラックちゃんなんかとは比べ物にならないぐらいだと思うけど?」

「ニートの彼女? あの女は、妖精姫だったな。確か。まあ、俺もそこらへんの素性はよく知らないけどな」

「ッ……そ、そう、……へ~、妖精みたいに可愛いんだ…………」


 いや、妖精みたいに可愛いじゃなくて、リアル妖精なんだけど……まあ、いっか。
 つか、この女、やけに絡むけど、昨日の晩餐会でニートとどういう会話したんだ?
 そもそも、ニートの野郎は散々、人に「フラグ立てるな」的な文句言ってたくせに、テメエはどうなんだよ、ああん?

「なあ、お前、ひょっとしてニートに惚れたのか?」
「いや、お前、何言ってるんで、ほんと勘弁して欲しいんで! 俺、こういう計算ツンデレほんとダメなんで」

 だから、そういうのはストレートに聞いた。
 ニートは「メンドクセーからやめろ」的な顔をするが、ブラックの方は?
 ああ、案の定、顔真っ赤にして慌てて「ふざけんな」と叫んできた。

「は、はあああっ? わ、私が、こ、こんな冴えない男を? ふざけんのも大概にしなさいよね! クラーセントレフンの王だからって言っていいことと悪いことはあるんだからね! 私は、高身長、高学歴、高収入、高身分、高外見、な男しか相手しない、超超超超スーパースターなんだから、こんな冴えない男は相手にしないってーの! そ、そうよ、それにニートだって失礼なやつなんだからね! 昨日の晩餐会でだっていきなり、『そういう外面そとづら疲れない?』とかいきなり言ってくんだから。そ、そりゃー、今まで私の周りに居たやつらは、私の気持ちなんて知らないで、ちょっとニコニコしてやれば勘違いして寄ってくる奴ばっかだったから、いきなり私に向かってそんなこと言う奴は初めてだったから、ちょっと気になったとか、ほんと、それだけなんだからね!」

 うん。とりあえず、恋愛に関して色々と規制されている世界だから、あのバーミリオンとかいう女同様に、ちょっとしたことでクラっとするチョロい女が多いわけか。

「殿、あまり人の恋愛をからかうのはいかがかと思うでございまする」
「からかってねーよ。俺は、ニートの大親友として、応援してるんだよ! 友達がモテモテだとさ、応援してやりてーじゃん!」
「も、ものすごい、悪い顔でキラキラした目をされても、拙者、どうすればいいでござる?」
「ん? 例えば……くははははは、俺とムサシが仲良いところを見せつけるとか?」
「ひゃうううっ、と、殿、きゅ、急に拙者を抱き寄せられると、びび、ビックリするでござる~、んもう、と、殿は拙者が拒まぬからといって、イジワルでござるよ~」

 ムサシを「よしよし」と頭を撫でて「ふにゃ~ん」と柔らかくなるのを見るのが癖の俺は、最近無意識にやることがある。
 でも、可愛いから仕方ない。それに、これは浮気じゃねーしな。

「ほら、ムサシ、今日は観光だから気楽に行こうぜ。ほれ、俺の膝。膝貸してやるよ」
「はへ?」
「膝枕してやるから」
「にゃにゃああああああっ! ととと、殿の、ひ、ひじゃまくりゃ!」

 そして、からかえばからかうほど面白い。
 蒸気機関車と化したムサシの頭から煙がプシューと吹き出してる。

「ししし、しかし、そ、その膝はお嬢様の聖域でありまして、せ、拙者ごとき、身分の低いものが、し、失礼では」
「ムサシに甘えられて失礼だと思うやつはいないに決まってんだろう」
「はふう、し、しかし、…………あ、あう~~、そのような身に余る光栄を、拙者なんかが……拙者なんかが……」
「それとも何だ? 家臣を労おうという殿の厚意を無下にするのが侍なのか?」
「な、なんと申されますか! ……そ、そうでござる……拙者は、殿の一番が家臣にして右腕……そして末は……殿とのやや子を……え、えへへへへへ…………そう、そうでござる! 何も不自然なことはござらん! で、では、と、殿、し、失礼して……」

 リムジンのシートの上で正座しながら、ゆっくりと頭を俺の膝に近づけて、恐る恐る俺の腿に身を預けて来たムサシは、やがて頭の体重を俺に全て預けた瞬間、「はにゃ~」と目をトロンとさせた。
 そのまま、膝枕からの頭ナデナデは継続。もはや夢の世界へと旅立ったかのように、ニヘラ~としたムサシには、今なら何を要求しても聞き入れてくれるぐらい陥落している。

「あのさ、お前さ、嫁には絶対にやらないくせに、ペットには本当に甘やかすんだな」
「くはははははは、さあ、ニート、テメェもお姫様にやってやったらどうだ? なあ? ブラック。テメェも、こんな草食系の世界じゃ、膝枕なんてされたことな………………」
「うそ……ひ、膝枕……し、信じられない……乙女の夢ベスト5を、こ、こんな、こんな人前でアッサリやるなんて……」

 ニートとブラックを煽るように俺とムサシのイチャイチャぶりを披露してやったら、ブラックは、想像以上の衝撃を受けているようだ。

「ね、ねえ、あんた、ムサシだっけ? その、ど、どんな気持ちなの?」
「はふ~~~、気持ちでござるか~? なんと申し上げれば、そうでござるな~、拙者は、翼が生えていないのに、天空へ駆け上っているかのような心地でござる~」
「そ、そんなに、き、気持ちいいんだ……ふ、ふ~ん、べ、別に、私は憧れてなんかないけどね! ちょっと気になっただけなんだからね!」

 もう、何を言ってもドツボなぐらい、顔を真っ赤にしたブラックの反応は、ニートから見れば「ウザイ」と思うかもしれないが、第三者として見る分には面白い。
 やばい、この二人をいい関係にしてみて、フィアリとの修羅場を作ってみたい。

「にゃ、はははは、なんか、にゃっは賑やかだね~。にゃっは楽しくなりそうだね~」

 とまあ、その一連のやりとりをこれまで見せられていた、にゃっは娘のアッシュが苦笑しながらようやく口を挟んできた。
 そういや、居たの忘れてたよ。
 つうか、護衛やら他の官僚やらの連中も、物凄い気まずそうな顔をしてるし。

「とりあえずさ~、今日はみんなで観光しようってことで、にゃっは楽しもうね♪」
「おお、そうだそうだ。観光だったな。すっかり忘れてたな」
「にゃははは、にゃっは大丈夫かな~、この班」

 班が大丈夫か? いや、多分、この班が一番当たりだと思うが……

「そういや、他の班はどうするんだ?」
「にゃは? えっと、第二班はお買い物とイベント参加。第三班は遊園地だって」
「ほ~…………」

 第二班は買い物……何を買うんだ?
 そして、第三班は遊園地だと? コスモス、ジャレンガ、バスティスタの三人で遊園地……う~~む、想像もできん。

「それでさ、みんなはどうするかな? 買い物? 遊園地? 世界遺産めぐり? 要望あればにゃっは言ってね♪」

 さて、俺たちは? と言われても、あんまピンとこねーしな。

「ん~、ムサシ、お前はなんかしたいことあるか?」
「むふ~、せっしゃはこの時間が一番幸せでござる~」

 まあ、この調子だ。
 ぶっちゃけ、今夜には帰れるなら、そこまで面倒なことをする気にもなんねーし、定番に俺らも買い物とかの方が……

「あっ、それなら、俺、希望があるんで。言っていい?」

 と、その時、ニートが手を挙げた。

「なんだよ、アキバみたいなところに行きたいのか?」
「いや、全然違うんで。お前、オタク=秋葉原のイメージは差別なんで、その固定観念は捨てるべきだと思うんで」

 なんだ、違うのか。っていうか、漫画とかアニメは規制されてるみたいだから、無いのか。
 じゃあ、どこに?
 すると、ニートは普通に真剣な顔つきで……


「この世界の歴史が分かる、博物館とかに行きたいんで」
「えっ…………」
「いや、ヴェルト、お前まさか、普通に遊ぶ気だったとか? こういう状況なんだから、色々調べるの普通だと思うんで」


 なんかマジメな選択肢で、しかし却下する理由が思いつかず、微妙な気分になってしまった。