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「シロウ! 下がっていてください!!」
セイバーの声が合図だったのか、バーサーカーの手に持っていた巨大な石斧がセイバーに降ってかかる。
「ぐぅぅっ——」
「アーチャー! 援護よ!」
凛の言葉で何処からともなく弓がバーサーカーの巨体に襲いかかる。そして凛の魔術がバーサーカーの動きを一時的に封じる。
しかしバーサーカーは攻撃を物ともしないのか、それとも本当に効いていないのか、攻撃を受けながらもその巨腕で石斧を振りかざす。
「うそ、効いていないの!?」
「効かないよ、私のバーサーカーは最強なんだから」
バーサーカーの猛攻は止まらない。
セイバーの剣戟もバーサーカーの硬い皮膚には傷一つつかない。それどころかバーサーカーの剣圧に吹き飛ばされそうになる。
セイバーはバーサーカーの撃退の機会を伺い場所を転々と変える。しかしバーサーカーはセイバーを安易に傷つけ吹き飛ばす。
「ギリシャ神話最強の英雄、ヘラクレス。それがバーサーカー。負けるわけないじゃん」
その名、知らぬ者はいないだろう。様々な偉業を成し遂げた英雄。神に祝福されし英雄。ヘラクレス。
「衛宮君、貴方は今すぐにでも逃げなさい」
「おい、何でだよ!」
「素人がここにいても死ぬだけよ! 自分の命が惜しくないの!?」
遠坂、と名を叫ぶよりも先に凛は士郎に背を向け、走っていった。
確かに素人である士郎が介入しても場がどうなる訳でもなく、むしろ悪くなる一方であるだろう。逃げるが懸命だろう。
「逃げれる訳、ないじゃんか……!」
しかしバーサーカーに向かう凛がいる。バーサーカーの攻撃を受けるセイバーがいる。二人を置いておめおめと逃げれなかった。
凛の後を、セイバーの後を追い、走り出す。
「ぐ——、ぅあ——っ!」
セイバーは石斧を受け流せず、横腹に直撃し、吹き飛ぶ。
バーサーカーは吹き飛ばされたセイバーにさらに追い討ちをかける。
ただし、此処は墓場でバーサーカーの相手をするのに丁度いいといえよう、遮蔽物が僅かに彼の巨体を鈍らせる。
「はあ————っ!」
その隙に剣戟を加える。
剣が光った。
いや剣、というよりもセイバーの右腕が、義手が光ったというほうが正しい。
傷だらけのセイバーは凛然と立ち、襲い来るバーサーカーを迎え撃つ。
セイバーは脇目に見ても傷ついていて、立つのもやっとの状態だ。しかしバーサーカーの攻撃の手は止まない。セイバーに傷を増やしていく。
「へえ、あのセイバー結構やるんだ」
遠くでイリヤの声がした。
士郎は悔しかった。
何もできない自分が恨めしい、ただ見ることしかできない自分が悔しい。
何もできずにセイバーが傷つく様を見ることが悔しかった。
「セイバーっ!」
気がつくとセイバーの名を叫び、前に走りでていた。
「シロウ! 何故ここに……」
「逃げるぞ!」
セイバーの腕を掴み、今すぐにでもこの場を離れようとするがバーサーカーが阻む。
士郎を庇い自らが攻撃を受けるセイバー。
「はあああああっ!!!」
恐らく渾身の一撃だったのだろう。セイバーの剣は見事にバーサーカーの瞳にへと突き刺さる。そのおかげかバーサーカーの動きは止まる。
「蘇生、している?」
「まるで不死身かこいつは?」
バーサーカーの体は煙をあげ、ビデオの巻き戻しを見るかのように修復される。
その時、赤い色を見た。
遠くにあのサーヴァントがいる。凛のサーヴァント、アーチャー。
アーチャーは弓を手に構える。狙いはバーサーカー。あの鷹のような目が敵を射る。
「————」
アーチャーから静かに放たれた弓。いや剣といったほうがいいだろう。それが魔力を帯びバーサーカーに、セイバー達に向かってくる。
「離れるぞ、セイバー!!」
今度こそセイバーの腕を掴みその場から離れる。できるだけ遠くにと、全速力で。
刹那、辺りは赤に染まる。
爆風と灰燼が舞い散る。
「バーサーカー、帰りましょう」
風が止んだ時、イリヤはそんなことを言った。
「リン、貴女のアーチャーが気に入ったわ」
そして背を向け暗闇と共に消え去っていく。
嵐のような出来事だった。
アーチャーはバーサーカーだけでなく士郎も狙っていた。漠然とした気持ちがある。
だが今はセイバーと佇むしかなかった。
【CLASS】セイバー
【マスター】衛宮士郎
【真名】ベディヴィエール
【性別】男
【身長・体重】187cm・88kg
【属性】秩序・善
【ステータス】筋力D 耐久C 敏捷B 魔力E 幸運A 宝具D
【クラス別スキル】
対魔力(C)
騎乗(B)
【固有スキル】
軍略(C)
冷静沈着(B)
守護の誓約(B)
ベディヴィエールのステータスは士郎がマスターなので極端に下がっています。一つ言えば幸運が上がっています。
バーサーカーっょぃ。