水面に映る月   作:金づち水兵

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設定集の詳細版です。

簡易版でも述べさせていただきましたが、詳細版は「第3章 67話」までの内容に準拠しています! 1章や2章時点からご覧になるとネタバレ等がありますので、まだ第3章まで(もしくは最新話まで)読まれていない方はご注意下さい。

※2/15 78話までの内容にのっとり、加筆しました。78話をまだ読んでおられない方はそちらを読まれてから、ご覧ください。




設定集 詳細版

日本世界

 

 

 

用語

 

日本国

かつて世界第3位の経済大国として名を馳せた先進国。2033年現在では、第二次日中戦争と丙午戦争、そして深海棲艦との戦争により大・中・小都市のほとんどが焦土と化し、インフラも破壊され疲弊している。それらによる軍民の犠牲者はおびただしいとしか表現できない約2350万人に達する。但し、これには戦死者や空爆での直接的死者以外に餓死者や凍死者など深海棲艦との戦争がなければ()()()()()()()()の間接的死者も含まれ、それがなくても()()()()()()()()()と区別されている。シーレーンの断絶により、エネルギー不足と食糧不足が深刻化。計画停電と過酷な食糧配給制が実施されている。また、深海棲艦との本土決戦に備えるため、徴兵制の導入のみならず、中学校・高等学校において軍事教練が行われている。経済も徹底的に破壊されたため、民間経済は壊滅、多くの企業が倒産。各種インフラの復旧、軍再建・拡張などの官需がなけなしの日本経済を支えている。失われた20年とは比較にならない閉塞感に覆われていたが、艦娘の登場以降は深海棲艦爆撃隊の襲来回数が激減したため、復興の兆しも見えている。このような状況にもかかわらず、軍事力は東アジア一であり、本格的な攻撃を受けていない他国からは「島国根性の発現」として畏怖されている。一時期、「歴史上稀に見る親密な同盟関係」とまで称された日米安全保障条約を核とするアメリカ合衆国との関係は、アメリカ側の一方的な安全保障条約の破棄を受け完全に途絶している。

 

華南共和国

 2025年10月、第二次日中戦争のさなかに起きた中国華南地方の中国人民解放陸軍を中心とする勢力のクーデターによって南京で成立した新国家。クーデターには華南地方の各省・市・自治区の共産党委員会も一斉に加わったため、統治機構は強固。これにより中国大陸には、華南と中華人民共和国が併存することとなった。かの国とは今でも戦闘を続けており、最近は中華人民共和国の北東アジアにおける孤立、日本の経済・軍事的な支援によって戦線を押している。日本とは同盟国。

 

台湾民主共和国

 第二次世界大戦後の国共内戦以来、国家もどきという微妙な位置づけであったが、2017年以降中国がさらに対外強硬姿勢を強めたため、独立し日本・アメリカとの安全保障条約の締結を求める世論が強まる。華南共和国が成立したあと、協議のすえ独立が認められる。台湾の新たなスタートとして、それまで掲げていた中華民国という国号を廃し「台湾民主共和国」とした。先島諸島奪還作戦が成功したあかつきには、台湾政府の強い意向を受け台湾にも艦娘を主体とする日防軍の基地がおかれる予定である。

 

中華人民共和国

 かつて世界最大の人口を抱え、世界唯一の超大国であるアメリカ合衆国を経済・軍事の両面で追い越すとさえ言われ共産党一党独裁国家。2017年、日本の西日本大震災発災に端を発した経済危機「チャイナ・ショック」の震源地。第二次日中戦争中に起きたクーデターにより版図の一部だった華南地方が独立。多くの領土と人民を失ったものの中国は華南を国家承認しておらず、いまだに徹底抗戦の構えを崩していない。だが、それまでになしてきた行動のつけか日本はもちろんロシアを含めた周辺諸国に見捨てられており、まさしく四面楚歌の状態。華中内戦は、華南に日本や韓国・北朝鮮・台湾・東露などがついているため戦線は押されっぱなしである。

 

ロシア連邦

 ソ連崩壊以降、事実上のソ連後継国家として民主主義・市場経済を導入しつつも、独自の価値観からアメリカ合衆国、EU加盟国と対立が絶えなかった世界最大の領土面積を有していた国家。核兵器に代表される大量破壊兵器をアメリカに次いで保持しており、通常兵器においても周辺諸国を圧倒する強大な軍事力を誇っていたが、2033年現在、事実上4つに分裂している。事実上としているのはロシア連邦、モスクワの中央政府が他の3ヶ国の独立を容認しておらず、いまだにロシア連邦の一員であり、中央政府の統治下と主張しているためである。一つはロシア連邦南部、北カフカス連邦管区に相当する地域を統治する北カフカス共和国。ロシア中央政府の管轄地域と境界を決しているが、この国は1990年中ごろから2009年まで続いた第一次・第二次チェチェン紛争、そして第三次世界大戦中の2026年に勃発した第三次チェチェン紛争にて、ロシアと激戦を繰り広げた旧チェチェン共和国が主導して成立した。そのため、深海棲艦が暴れまわっている現在でもモスクワの中央政府とは戦争中であるが、散発的な戦闘が主でそこまで激しく戦火を交えているわけではない。もう一つはロシア中央部・シベリア地域、ウラル・シベリア連邦管区に相当する地域を統治するシベリア共和国。ヨーロッパとアジアを穿つウラル山脈がロシア中央政府との境界だが、北カフカス共和国と異なり近隣の国々、政府とは良好な関係を築いている。そして最後の1つは東露連邦である。

 

東露連邦(東ロシア連邦)

 2029年、ロシア連邦を構成する共和国の1つ、サハ共和国が主体となって成立した新国家。ロシア連邦中央政府は独立を承認していないため、彼らに言わせれば東露連邦もまたロシア連邦の一部である。但し、日本をはじめ華南・台湾・韓国・北朝鮮・ベトナム・パラオなど多数の国が国家承認している。首都はハバフロスク。領土はロシア極東部、極東連邦管区の全域とシベリア連邦管区の一部。第三次世界大戦と生戦の勃発以前、独立思考は皆無であったものの、それによる世界情勢の大混乱から少なくとも連絡が取れる地域を守るため、そして日本などの周辺諸国と機動的な外交関係を構築するため、なかばやむなく独立した。独立の過程には日本が直接的・間接的に深く関わっているため、日本をはじめ東アジア諸国とは同盟関係である。シーレーン断絶途絶により深刻なエネルギー不足に陥っていた東アジア諸国へ原油や天然ガスなどを供給する見返りに、経済的・軍事的支援を受けており、東アジア各国とは同盟関係である。

 

アメリカ合衆国

 誰もが知る世界唯一の超大国、だった国家。現在は日本同様、栄華を誇った都市部は深海棲艦の爆撃により壊滅し、建国以降初めて敵対勢力による本土侵攻を許している。侵攻されている東海岸各所では、本土にある戦力を総動員し激しい戦闘が継続中である。日本に続いて艦娘の実戦配備を成し遂げ、彼女たちの活躍によりメキシコ湾とカリブ海の制海・制空権の確保及びそれらの海洋に浮かぶ島々の死守に成功している。かつて日本とは同盟国であったが、深海棲艦の侵攻による本土防衛の強化を名目に締結していた日米安全保障条約を破棄。現在、日本との同盟関係は完全に途絶している。第二次日中戦争勃発当初、国力の衰退から日本の度重なる条約履行要請を黙殺。戦局が東シナ海における局地戦から日本本土への無差別攻撃を含む全面戦争に発展したことを受け、「中国勝利」への危機感と「中国撃つべし」という国際・自国世論の高まりに背中を押され日中開戦から1ヶ月あまりのちにようやく介入した。結果的には人民解放軍の戦闘能力を喪失させることに成功するが、「約束を反故にし、見捨てた」と受け取った日本との関係は極度に悪化。日米安全保障条約の破棄は深海棲艦出現以前に日米関係が悪化していたことも遠因の1つである。

 

東亜防衛機構(とうあぼうえいきこう、通称:東防機)

 2030年、深海棲艦及びいまだに抵抗を続ける中華人民共和国の脅威に共同して対処することを目的に設立された、東アジア地域の多国間軍事同盟。北大西洋条約機構(NATO)をモデルとする。加盟国は日本、華南、台湾、韓国、北朝鮮、東露の6か国。オブザーバーとしての参加国はモンゴル、ベトナム、パラオ。地理的要因から事務局は韓国のソウルに、東亜防衛機構軍総司令部はかつて米韓連合司令部や在韓米軍司令部が設置されていた韓国の龍山基地に置かれている。日本航空国防軍嘉手納基地が東亜防衛機構軍の対深海棲艦用拠点として運用されており、先島諸島奪還作戦への参加に際し華南空軍のJ-31をはじめとする各加盟国空軍部隊が進出している。

 

J-31(殲-31)

 中国(2025年10月以降は華南)が自国の航空機技術と情報窃盗(パクリ)の総力を結集して作り上げ、2031年に実戦配備した第5世代ステルス戦闘機。一時期定着した輸出用ステルス戦闘機FC31の別命「J-31」と同様の名前を有するものの、FC-35とは全く別の機体。FC-35の外見がアメリカ軍ステルス戦闘機F-35と酷似していたのに対し、J-31はF-22や航空国防軍のF-3よりとなっている。ターボファンエンジンを1基搭載し、機体の大型化と先尾翼によりステルス性能が著しく低下したJ-20の反省を踏まえ、機体の小型化とカナード翼の廃止及び水平尾翼の採用などの改善が図られている。性能はF-22と同等とさえ囁かれるF-3を開発した日本が全面協力したこともあり、「単機ならF-35、1対2ならF-3やF-22にも対抗可能」と評されている。価格がF-3の3分の2程度ということもあり、東亜防衛機構加盟国への輸出用機体はJ-31をモデルとすることが有望視されている。なお、F-3と同様に空母艦載機型の開発も進んでいる。

 

日本国防軍

 2030年に前身の自衛隊を国軍化した軍事組織。略称は日防軍。国軍化に伴う日本国憲法第9条をはじめとした条文の改正は行われていない。内閣による憲法解釈の変更、侵略戦争放棄論の採用により現行憲法下でも侵略的戦力以外の自衛的戦力の保持が可能となったため、創設に至った。日本国憲法を受けた日本独特の階級や装備品の言い回しは、自衛隊から引き継がれている。国軍化と当時に戦闘で損耗した人員の補充ならびに本土決戦に備えるため、世論の圧倒的な支持を受け徴兵制が導入された。

 

陸上国防軍(陸防軍)

 陸上自衛隊の後継組織。海防軍や空防軍と比較して戦力の消耗はまだ少ない。それでも、先島諸島防衛線や沖縄本島攻防戦、小笠原・伊豆諸島での戦いでは多くの犠牲者を出している。先島諸島奪還作戦では、普通科連隊など大規模な戦力を投入している。

 

・第15師団

 深海棲艦による再度の侵攻から沖縄諸島を防衛するため、第二次沖縄戦にて壊滅した陸上自衛隊第15旅団を基礎に新編・拡充した陸上国防軍西部方面隊隷下の師団。司令部及び主力部隊は航空国防軍那覇基地、海上国防軍那覇基地双方に隣接する那覇駐屯地に駐屯。先島諸島奪還作戦(東雲作戦)では奪還作戦の先陣として、各島の攻略作戦に投入されている。

 

・第51普通科連隊

 第15師団隷下の普通科連隊。第二次沖縄戦では全滅の憂き目になったものの、防衛成功後再建。第15師団の基幹普通科連隊として先島諸島奪還作戦(東雲作戦)に投入される。第3段後段作戦「石垣島攻略戦」の際、第3中隊は第51普通科連隊本部の命令を受け、県道211号線伝いに石垣島深部へ進撃中、地雷と集中砲火によって優先的に10式戦車及び16式機動戦闘車を無力化した上で包囲網の形成を図る深海棲艦の周到な罠にハマり、孤立。情報の錯綜により救助が一旦中止され、独力での戦闘を強いられた結果186人中177人が戦死。生存者は9名のみであり、第3中隊はほぼ全滅した。この事態には、偵察小隊の全滅によって敵情が把握できなかったにもかかわらず、10式戦車及び16式機動戦闘車による護衛を過剰に評価し、突撃を命令した第51普通科連隊本部の慢心と人命軽視の姿勢が指摘されており、幹部には適正な処分が下される見通しである。

 

海上国防軍(海防軍)

 海上自衛隊の後継組織。通常戦力はほぼ壊滅しており、現在は艦娘と特殊輸送艦、小型護衛艦、対潜哨戒機が主戦力となっている。艦娘の優位性が確認されて以降は通常戦力の再建より、艦娘部隊の増強が優先されている。艦娘が深海棲艦の侵攻を防いだ事実から、日防軍なかでも海防軍に対する国民の信頼・期待はずば抜けている。

 

・第5護衛隊群

 艦娘が実戦配備されるまでの絶望的な戦局を運よく生き延びた護衛艦で編成された護衛隊群。残存護衛艦を既存護衛隊群に集約することも議論されたが、第1~4護衛隊群の奮戦と犠牲を後世に伝え、亡国の危機感を保持するため、あえて新編護衛隊群「第5護衛隊群」が編成された。残存護衛艦は日本にとって貴重な通常水上戦力であるため、動向は艦娘でも知らされないほどの極秘事項となっている。

 

・那覇基地

 沖縄防衛成功後、宜野湾市牧野港以南の国道58号線東側という広大な那覇・宜野湾旧市街に新設された基地。2033年5月現在、発動中の先島諸島奪還作戦や沖縄諸島・奄美諸島近海の哨戒・警備、東シナ海の制海権維持、沖縄-本土間シーレーンの防衛における、最重要拠点である。泊埠頭線(旧国道58号線)が走る泊埠頭では既存の港湾施設を一新し、通常艦隊再建後の一大拠点化を目指し鋭意長大なバースや桟橋群の整備が進められていた。完成すれば横須賀・佐世保・舞鶴・呉・大湊の5大基地に肩を並べる規模となる。

 

・摂津基地

 兵庫県神戸市に所在する海上自衛隊(現海防軍)の基地。呉地方隊隷下の摂津基地隊が基地業務を担い、掃海部隊が所属している。都会の喧騒に紛れた存在感の薄い基地だったが、阪神同時テロ事件ではテロリストの標的に。昨今の情勢から警備のため陸上自衛隊普通科連隊の分隊が配置されていたものの、重火器で武装したテロリストに蹂躙され多数の戦死者を出し壊滅した。2033年現在は再建と度重なる深海棲艦の空爆によって神戸市街が壊滅したことから、丙午戦争時の面影は完全に消失している。

 

・須崎基地

高知県須崎市の野見湾にある海防軍の基地。生戦勃発後、高知湾からの敵侵攻阻止及び高知湾沿岸地域の安全を確保する目的で新設された。しかし、その辺境な立地もあって今では、問題児たちの左遷先と化している。当基地には艦娘部隊である第53・54防衛隊と彼女たちの輸送任務を背負う特殊輸送隊が配備されている。基地の規模は小さく、所属する隊員の名前は知らなくとも顔は知っている、という状態が一般化している。

 

・艦娘教育隊

艦娘の教育・養成・訓練を一手に担う部隊。所在地は広島県呉市呉基地及び江田島。

 

・防衛艦隊

特殊護衛艦(艦娘)で構成された海上戦力作戦単位。通常艦艇である護衛艦で編成された護衛艦隊の艦娘版。司令部は呉基地。22個防衛隊群(44個防衛隊)と16防衛隊で構成される。

 

・防衛隊群

ヘリコプター搭載護衛艦(DDH)を旗艦に編成されていた機動部隊たる護衛隊群の艦娘版。司令部は呉基地。全22個防衛隊群編成であり、F-35BやF-3などの航空機を搭載している特殊航空護衛艦を旗艦に構成されている。日本の悲願だった太平洋戦争敗戦以来初の、空母打撃群であり、海防軍呉基地には3個艦隊が配備されている。戦術・戦略双方において極めて重要な存在であるため、重要な作戦には必ずどこかの防衛隊群が参加し、艦娘の中でもエリート中のエリートが配属されている。そのため、防衛隊群を動かす事態というのはかなり深刻な事態に限られる。

 

航空国防軍(空防軍)

 航空自衛隊の後継組織。深海棲艦侵攻初期に海防軍と同様、日本全国の基地が爆撃を受けたため、数少ない戦力で奮戦したものの一時壊滅した。現在は急ピッチで再建が進められている。従来戦力の大半が失われたため、F-35Jと戦後初の国産戦闘機F-3が主戦力となっている。

 

防衛省

 日本の国防政策を担う中央官庁。昨今の情勢により、日本政府内での発言力の強さは高止まりしている。自衛隊の国軍化の後も、名称は防衛省のままである。

 

食糧配給法

 深海棲艦の侵攻によるシーレーン断絶受け、政府が定める適正量の食糧を国民にいきわたらせ、飢餓を少しでも抑止することを目的とした法律。戦時関連法の1つであり、戦時特措法とは別である。

 

戦時特措法

 従来の法体系では対処できない現状を受け制定された政府(内閣)の超法規的措置に法的権限を与える法律。これによって定められた政令は、国会の事後承認が必要。発布された政令の1つには最高刑死刑の秩序妨害行為が定められ、配給待ちの列への割り込み、配給品の強奪などが該当する。

 

西日本大震災

 2017年7月22日、午前11時46分に発生した平成29年度中部地方太平洋沖地震による津波・火災などを含めた大規模地震災害の総称。発生した日付から「7.22」と呼称されることもある。当地震の震源地は三重県志摩半島沖、震源の深さは10km、地震の規模を示すマグニチュードは9.3を観測し、2011年3月11日に発災した東日本大震災(M9.0)を上回る明治以降で最大規模の地震。死者・行方不明数は41万7921人。震災関連死は11万3986人。これを合わせた死者・行方不明者数は53万1907人に達し、1923年に発生し約10万5000人の死者・行方不明者を出した関東大震災を上回る日本史上最悪の地震災害となった。以前より発生が指摘されていた「南海トラフ巨大地震」と震源地、震源域、規模が酷似していることから、当地震は「南海トラフ巨大地震」であると結論付けられている。西日本を中心に激しい揺れに見舞われ、九州から関東に至る広大な地域で建物の倒壊、道路・鉄道網をはじめとする社会インフラの損壊、それに伴う大規模な火災が発生。また、発生直後から西日本及び東海地方、伊豆・小笠原諸島の太平洋沿岸部に大津波が来襲。津波は内湾で勢いが弱まると想定されていた京阪神沿岸、中京沿岸にも強大な破壊力をもって到達し、大阪市・名古屋市などの市街地中心部が浸水。軒並み壊滅状態に陥った。明らかに「想定外」を想定した想定を上回る“想定外”の事態。政府・各自治体・自衛隊・警察・消防は懸命の救助活動・被災者救援を実施するものの日本全土は富士山の噴火も相まって大混乱に陥り、想定外の現実を前に対応が錯綜。更に夏休み最初の休日とあって、普段あまり居住地域から出ない人々が不慣れな土地に遠出をしていたことも人的被害の拡大を招いた1つの要因となった。

 

平成の大噴火

 西日本大震災発生翌日の2017年7月23日、午前6時58分に発生した富士山の大噴火。西日本大震災発生に伴う混乱により避難が遅れ、人的被害が拡大。噴火単体の死者・行方不明者は2万428人。火山灰の降灰予測から当時の日本政府内部では真剣に東京放棄と首都機能の移転が議論されたが、幸運なことに太平洋上に存在していた台風が南風を関東・中部地方一帯に吹き付け、火山灰の降灰地域が富士山の北から北東に分布。そのため関東地方各地でも1~3cmの降灰を観測するも都市機能が崩壊するほどではなく、東京放棄は回避された。その代り、富士山の北側から北東地域は多大な降灰に見舞われ、火山弾や火砕流の影響を受けた地域と同様に甚大な被害が生じた。

 

第二次日中戦争(東シナ海紛争)

 2025年9月に発生した日本国・中華人民共和国との戦争。開戦のきっかけは東シナ海日中中間線公海上で発生した中国海軍東海艦隊の駆逐艦2隻が何者かに撃沈された事件である。犯人は深海棲艦であり、これは2033年現在もはや常識となっている。直接の戦闘が尖閣諸島周辺の東シナ海で収まった局地戦の9月戦争と日本本土に対するミサイル攻撃・サイバー攻撃が発生し全面戦争の様相となった10月戦争に大別される。華南共和国が成立するきっかけとなったクーデターと重い腰を上げた米国の消極的な介入により、中華人民共和国は継戦能力を喪失。一応は終結したものの停戦条約などは一切ないため、現在も戦争は継続中である。この戦争は平和ボケと揶揄されていた日本国民に計り知れない衝撃を与え、国民世論が変質するきっかけとなった。

 

市ヶ谷事件

 2025年10月4日、中国政府との即時講和を求め、東京都新宿区市ヶ谷の防衛省敷地内へ侵入しようとした在日中国人及び左派系市民団体とそれの阻止を試みた警視庁機動隊、陸上自衛隊第1師団普通科連隊との間で発生した大規模衝突事件。中国海軍東海艦隊所属駆逐艦が何者かに撃沈された東海艦隊事件発生の翌日(2025年9月5日)より、日本全国では在日中国人・左派系市民団体による日本政府(武内内閣)への抗議活動が散発的に発生していたが治安出動による陸上自衛隊治安維持部隊の展開もあり、沈静化の方向へ向かっていた。しかし、10月3日に行われた中国による大規模サイバー攻撃、沖縄本島防空戦及び沖縄本島沖航空戦に呼応するかのように同4日より抗議活動が激化。防衛省近辺において機動隊は放水と催涙弾、陸自部隊は空砲による威嚇射撃で牽制及び鎮静化を図ろうとしたものの、当初投石や火炎瓶で応戦していた暴徒側の何者かが自動小銃を発射。暴徒が自動小銃で応戦してくる事態を想定していなかった機動隊・陸自部隊は一時的に混乱に陥り、結果機動隊12人、自衛隊員2人を殺害された上で、防衛省敷地内への暴徒の侵入を許した。陸自部隊が武器使用による制圧を早期に開始したため、防衛省敷地からの暴徒排除は早期に完了した。この“防衛省掃討戦”の際、偶然庁舎外にいた当時の防衛事務次官が陸自側の流れ弾を頭部・腹部に受け、失血性ショックで死亡した。この事件による死者は機動隊員15名、自衛隊員3名、防衛省職員7名、暴徒42名。この事件を契機に民間警備会社に委託されていた警備体制の見直しが行われ、それ以降は陸上自衛隊、2030年以降は陸上国防軍の市ヶ谷駐屯部隊が警衛隊を編成し防衛省の警備にあたっている。

 

丙午戦争(へいごせんそう)

 2026年から深海棲艦が出現した2027年までの約1年間勃発した、史上初の日本国内における対テロ戦争。日本との軍事衝突の際自国に有利な情勢を少しでも創り出すために潜入し破壊工作を担った中国人と民族的・思想的に現体制へ不満を抱く日本人によって構成された複数のテロ組織による無差別テロが頻発し、全国各地が戦場と化した。第二次日中戦争と合わせてこれも日本国民に大きな影響を与え、長い歴史のなかで培われてきた日本人の価値観を根底から変えてしまった。

 

阪神同時多発テロ事件

 2026年3月、神戸市など兵庫県阪神地域を中心に発生した同時多発テロ。無差別に一般市民を殺傷し、攻撃対象の共同体に士気の低下や統治機構への不満惹起、恐怖による秩序の崩壊といった心理的負荷をかける典型的な都市型テロ。都市型テロとしては一か月前に起きた京浜同時多発テロ事件に続き、日本国内で2例目。しかし、攻撃対象は一般市民が集まる駅や行政の象徴たる役所にとどまらず、無差別テロ攻撃が常態化して初めて自衛隊施設までもが襲撃された。中でも海上自衛隊摂津基地の被害は甚大で警備のため陸上自衛隊普通科連隊の分隊が配置されていたにもかかわらず、多数の戦死者を出し壊滅した。この事件では今までのテロ事件においてテロリストの個人的な感情の発露で行われていた数々の非人道的殺戮行為が、日本人の恐怖を目的とした組織的・戦略的行為として横行。暴力的手段もいとわない報復攻撃が暗黙の内に了承されるほど日本人を激高させる端緒となった。身体損壊による多数の身元不明遺体も含めた死者数は5603人。

 

第三次世界大戦

 これまでの第一次・第二次世界大戦のように、世界の先進国や新興国が二つの陣営に分かれて全面戦争を行う従来の世界大戦とは全く違う様相を呈した世界大戦。「新世界大戦」とも呼ばれる。その最たるものとして、アメリカ合衆国はこの戦いを傍観していた。第二次日中戦争とその後に続いた華中内戦による世界経済の大混乱が最終的な発端となった。

 

第五次中東戦争

イスラム教の宗派対立に根差した大規模国家間紛争。2026年1月10日、イランがイエメン領空のアデン湾上でサウジアラビア空軍のF-16戦闘機を撃墜したことが、直接的な発端となった。1月3日、イスラム教シーア派系勢力「フーシ」とスンニ派系部族主体の現政権間で内戦が続いていたイエメンで、スンニ派系支援を名目に軍事介入していたサウジアラビア軍の戦闘機が「フーシ」実効支配下の病院を誤爆。「フーシ」戦闘員及び治療を受けていたシーア派市民、双方合わせて104人が死亡した。この悲劇を受けシーア派世界は激高。各地で発生したシーア派とスンニ派の衝突が国家間にまで波及した形となった。イランとサウジアラビアが戦闘を開始した直後、国際社会は国連や地域機構を通し講和を目指した仲介を行うものの破綻。血相を変えた各国の努力も虚しく、スンニ派・シーア派の盟主同士の戦争はたちまちアラブ連盟を介した周辺諸国に拡大。スンニ派系過激派組織「イスラム国」・「アルカイダ」、シーア派系武装組織「ヒズボラ」などテロ組織までを巻き込む形で泥沼化した。犠牲者数は不明。深海棲艦が出現し、情報網が寸断される最後の最後まで中東は果てしない「人間同士の殺し合い」を継続していた模様。

 

ポリネシア攻防戦

 2027年1月15日のキリバス政府緊急電を始まりとした初の対深海棲艦戦闘。2027年1月15日アメリカ合衆国ハワイ州ハワイ諸島の南に位置するキリバス、1月17日にはキリバスの西方に位置するツバル、マーシャル諸島、サモアからも同様の突発的不明事象が発生。太平洋上の島嶼国から「未知の勢力から攻撃を受けた」との報告を重く受け取ったアメリカとフランスは即座に軍事行動を決定。アメリカ海軍は真珠湾に寄港していた第3艦隊所属駆逐艦4隻、フランス海軍はポリネシアに駐留するフロレアル級フリゲート1隻を当該海域に派遣した。結果は全滅。交戦中に「深海棲艦」の存在を明示する情報をそれぞれの本国へ送ったことが唯一の功績となった。第三次世界大戦によって大混乱に陥っていた世界が更なる混沌に引きずり込まれている間に、フランス領ニューカレドニアに駐留するフランス軍やニュージーランド・オーストラリア両軍の奮戦むなしくわずか12日間でハワイ諸島・ニュージーランド島以外のポリネシア主要島は陥落。約72万人が犠牲となった。

 

 深海棲艦

世界が第三次世界大戦で混乱の極みにあった2027年に、突如として出現した謎の生命体。出現当初から軍民問わずの無差別攻撃、無差別殺戮を遂行し、個体によっては人間を捕食する。どの個体も何らかの火器で武装しているが、一応に兵器水準は第二次世界大戦並みである。しかし、すべての個体が現代兵器の想定していない大きさ(人間大やドローン程度)で物量も規格外であったため、通常兵器での対処は困難を極め各国海軍を壊滅させた。陸上型の個体が世界各地に侵攻し、人類の生存圏を圧迫している。存在など詳細は一切不明。但し人類との激戦を通じ、武器や戦術が少しずつ進化しているため、低能な生命体でないことは確かである。

 

 

深海棲艦との戦争(対深海棲艦大戦、生戦)

 2027年、深海棲艦の無差別攻撃により勃発。当初の楽観論に反し、世界各国は連戦連敗。高度に築かれた情報網は各所で寸断され、東アジア・極東ロシア・東南アジアなど日本周辺を除いた各国の詳しい情勢は不明。全世界の犠牲者数は16億4000万人と推定されている。アメリカは日本侵攻戦力を遥かに上回る敵部隊の侵攻を受け、本土侵攻を許している。ヨーロッパは、地中海の制海権を死守し西欧諸国が奮戦しているものの中・東欧諸国は激戦が続く中東や南アジアからの難民に紛れて侵入したテロリストやロシア連邦を後ろ盾とする新露派といまだに交戦しており、それどころではない。ただ、なんとかEU(ヨーロッパ連合)の枠組みで結束は維持している。中東は、相変わらず泥沼。一説には、あまりの泥沼ぶりに深海棲艦が侵攻を控えているとさえ言われている。アフリカ・南米の情勢は不明。2033年現在では2025年から深刻化し第二次日中戦争や世界大戦などの遠因となった海難事故の犯人と特定されている。

 

宮古海峡の悲劇

 2028年9月、マリアナ諸島、八丈島以南の伊豆・小笠原諸島、大東諸島の陥落・放棄を受け日本政府は、南西諸島をはじめとする太平洋側島嶼部の民間人退避を決定。その第一陣として、最も被侵攻危険性が高い先島諸島から疎開が行われることとなった。徴用された民間企業のフェリーなどには未成年者や高齢者の搭乗が優先され、念のため海上自衛隊の護衛艦2隻が護衛に付けられた。この後も随時疎開が実行される予定であったが、船団全滅を受け計画は中止された。船団がロストしたのち、自衛隊・警察・海上保安庁による決死の捜索が行われたものの、生存者は一人も発見されなかった。死者は全乗客・乗組員2万3491人。

 

先島諸島防衛戦

 2028年9月、アジア・太平洋戦争末期の1945年に生起した沖縄戦以来、83年ぶりに発生した地上戦。与那国島・石垣島・宮古島などの主要島を含め全島に深海棲艦地上部隊が上陸。生戦勃発以後、自衛隊が深海棲艦の地上部隊と交戦した初めての戦闘である。詳しい様相は生存者がいないため不明。しかし、断片的に送られてきた映像や写真には、生きながら捕食される人々や自衛隊員と島民が肩を並べて戦っている姿など、21世紀の常識では到底信じられないような光景が映し出されていた。死者は約10万2000人。市役所など公的機関も壊滅したため、詳細な人数は不明。

 

那覇第一防衛線

 第二次沖縄戦に際し、那覇市に残る一般市民の退避時間を稼ぐため国道82号線から国道240号線、県道331号線沿いに設定された陸上自衛隊の防衛線。苛烈を極めた戦闘の様相や戦闘後に残された凄惨な光景から陸自の墓場やニハの地獄とも呼ばれる。ここでの戦いと国道29号線、国道82号線、県道241号線沿いに設定された那覇第二防衛線での戦いで沖縄防衛の陸上自衛隊主要部隊は壊滅。ただ、詳しい推計は戦闘の混乱により残っていないものの、防衛線での戦闘で深海棲艦侵攻前に多くの市民が那覇から脱出できたことは紛れもない事実である。

 

伊豆諸島攻防戦

 先島諸島防衛線に先駆けて発生した深海棲艦と日本国の本格的武力衝突。在グアム米軍を壊滅させた深海棲艦は日本本土を目指し第二列島線の島々を北上。日本政府はグアム米軍の惨状を受け、そうそうに小笠原諸島・八丈島以南の伊豆諸島の放棄を決定。深海棲艦が八丈島へ達するまで、住民の避難と部隊展開の時間を稼ぐため数回、自衛隊が襲撃。この甲斐あって、小笠原・伊豆諸島の住民には空爆に巻き込まれた者を除いて、死者は出なかった。八丈島を敵が侵攻する際、自衛隊は対艦ミサイルや高高度からの爆撃など、効率そっちのけの徹底した遠距離戦を展開。深海棲艦が疲弊し体制の立て直しを図っていた隙をついて、決戦を挑んだ。敵の守備部隊は健在だったが侵攻部隊の殲滅に成功した。この過程において八丈小島沖で、空自爆撃隊の爆撃や陸自の遠距離砲撃の阻止をもくろむ敵機動・水上打撃部隊と周辺に展開し作戦行動を取っていた護衛隊群との間で戦闘(八丈小島沖海戦)が生起した。結果は、刺し違え。護衛隊群の全滅と引き換えに敵艦隊は大損害を受け撤退。これによって、完全なる制海・制空権確立に成功し、侵攻阻止の地盤が整った。

 

日本国の核兵器保有

 2033年現在、日本は数百発の戦術核弾頭を保有し、戦闘機搭載型対地爆弾と国産巡航ミサイルを運搬手段とした核戦力を構築している。2027年に誕生し現在に至るまで政権を維持している長井内閣は生戦勃発後、「日本を取り巻く安全保障環境の根本的かつ未曾有の激変」に対処するため非核三原則の破棄を閣議決定し、国会もこれに賛同。同時に原子力を研究・開発及び平和利用に限定していた原子力基本法を改正し、安全保障に資する「あらゆる」利用を可能とした。「持てる力」を有していた日本はいざ開発にとりかかってみると核保有国であった華南や北朝鮮、東露の協力を引き出せたこともありかなりの短期間で開発を完了。中華人民共和国由来の核戦力を持つ華南、ロシア連邦由来の核戦力を持つ東露と肩を並べられるほどの核保有国となった。あまりに順風満帆すぎたため国内や諸外国から以前より秘密裏に核開発をしていたのではないかという疑念が持ち上がったことがあったが、日本政府はかなり強い姿勢でこれを否定している。

当初、日本は戦術兵器にとどまらず華南や東露同様、大陸間弾道ミサイル(ICBM)やICBM搭載型原子力潜水艦などの戦略兵器の保有を計画していたが、同盟国である東亜防衛機構全加盟国が猛烈な反対運動を展開し、断念。東亜防衛機構では傘下の東亜原子力機構が加盟国の核兵器を保有国と共同で直接的に管理・運用する体制が構築されているため、日本に不足している戦略核戦力は華南と東露が補填している。

 

特殊護衛艦(艦娘)

 専用過程で特別な訓練を修了し、特殊護衛艦システムを装備し戦う女性軍人の公称。公称というだけあって、公的文書や国会答弁、政府首脳の記者会見ぐらいでしか使用されていない。日防軍ですら一般的には艦娘と呼んでいる。彼女たちも一般国民であるため、当然のことながら個人の名前があるものの、特殊護衛艦システムという国家機密の塊を背負っているため身元が特定されないよう任務名で呼ばれる。艦娘を養成する艦娘教育隊への入隊に際し、幹部候補生学校試験と同程度の筆記試験及び適性検査(心理テストやDNA検査を主軸とする)が課せられる。合否に関し、艦娘の特殊性から適性検査に比重が置かれている。但し、あまりにも筆記試験の成績が悪い場合、例え教育課程を修了しても艦種や所属部隊などに希望は通らない。外見では一般軍人と判別不能。しかし、特殊護衛艦システムの同期影響により老化が停止するため、容姿は特殊護衛艦艤装を受領したときのままである。特段の副作用もないため、艦娘の中にはこれを喜んでいる者もいる。

 

特殊護衛艦システム

 日本が世界に先駆けて開発し、2028年10月に実戦配備した対深海棲艦用の切り札。その実用性には、感服するばかりである。戦闘艦の戦闘能力を個人単身でも発揮できるため、少ない物的・人的資源でも通常戦力並みの作戦行動が可能。艤装装着による深刻な身体的悪影響は存在しないものの、同期により老化の停止が存在する。老化停止の副作用は現在のところ確認されていない。日本以外に、アメリカ・イギリス・フランス・ドイツ・イタリア・ロシアが既に実戦配備済み。各国とも実在する戦闘艦をベースにしているが、それだけでは数が足りず日本のように実在せず独自のシステムを開発している国もある。

 

なみかぜ型護衛艦

平成26年度中期防衛力整備計画(26中期防)で計画された全く新しいタイプのコンパクト護衛艦。何故かまいかぜ型護衛艦と同じく艦名に“かぜ”がついている。命名当時、何故同じなのか論争が巻き起こったが、一説にはネタぎれで仕方なく、とさえ言われている。一時期は軽武装過ぎて作戦能力の低さが露呈したアメリカ海軍の沿海域戦闘艦(LCS)の二の舞だとの指摘も出たが、深海棲艦との戦闘ではその高速性と機動性を主軸とした一撃離脱戦法で高い評価を受けた。この戦法は、レーダーなど捜索機器が満載されている現代艦には自殺行為だが、目視による哨戒が主な敵に対してはかなりの戦火をあげた。それでも多くの同型艦が撃沈されている。

 

いず型輸送艦

派遣先の海上でも休息や食事、また艤装の点検・補修を可能とするいわば臨時海上基地をコンセプトとし、平成26年度中期防衛力整備計画(26中期防)で計画された「コンパクト護衛艦」である、なみかぜ型護衛艦をベースに開発された、艦娘運用に特化した特殊輸送艦である。これにより、艦娘の弱点である継戦能力の低さと作戦行動範囲の狭さが解消され、護衛艦や航空機と並び第一線級の戦力として確立された。船体の後部に艦娘発着艦用ウェルドック、艦橋下部の第二甲板に戦闘時の司令部となるFIC(司令部作戦室)と艦の戦闘を担うCIC(戦闘指揮所)が設置されている。武装は僚艦や艦娘との共同行動を大前提としているため、62口径76mm単装速射砲(ステルス・シールド版)や21連装SeaRAM、20mm CIWS ファランクスなどの自衛火器のみ。対空ミサイルや対艦ミサイル、アスロック、魚雷などの攻撃兵器は搭載していない。基準排水量は3300トン。2033年現在、2個防衛隊(艦娘8人)に対して一隻の割合ですべての艦娘部隊に配備され、後継艦の開発も始まっている。艦名の由来は深海棲艦の本土侵攻を多大な犠牲の果てに防ぎきった、伊豆諸島防衛戦である。

 

・たかなわ

須崎基地に配備されているいず型輸送艦。第53・54防衛隊の臨時海上基地として数々の作戦に参加してきた。日向灘では、潜水艦型深海棲艦の魚雷攻撃により後部ウェルドック付近と、FIC・CIC下層を被弾。突然の奇襲だったため隔壁の閉鎖が間に合わず、浸水域と傾斜角が拡大。岩崎艦長が退艦命令を発した後、62口径76mm単装速射砲の弾薬庫が誘爆し、沈没した。

 

まいかぜ型護衛艦

 あきづき型護衛艦の次に建造された対潜重視の汎用護衛艦。他の護衛艦と同様、同型をベースとするまいかぜ型特殊護衛艦の方が艦の数が多い。

 

いぬわし型ミサイル艇

壊滅した既存戦力の穴埋め、本土侵攻を目論む敵の足止め・戦力漸減を目的に 沿海域防衛の柱として開発されたはやぶさ型ミサイル艇の後継艦。基準排水量は1500トン。武装は76mm速射砲、21連装SeaRAM、17式艦対艦誘導弾Ⅱ型8連装発射筒で前型よりかなりの強化が図られている。艦娘が前線に投入される以前の国防方針で配備が決定されたため、艦娘登場後は「用済み」との意見があがり開発が中止になりかけたこともあった。しかし、防衛手段多重化の必要性が重視され2031年から順次、各地の海防軍基地に配備されている。艦娘が海防軍の作戦において比重を高める中、まともに前線にたっている通常艦艇部隊は彼らいぬわし型ミサイル艇を配備する部隊のみである。

 

 F-3 ステルス戦闘機

国防軍創設と同じ2030年に実戦配備された日本初のステルス戦闘機、そしてアジア・太平洋戦争以来初の純国産戦闘機である。上記のようなあまりに大きすぎる肩書きと期待を背負っているものの、世界最先端の技術力を誇る日本の申し子にふさわしい、性能を誇っている。生戦により壊滅した従来航空戦力たるF-15戦闘機やF-2支援戦闘機の代替として、F-35ステルス戦闘機と共に急速に配備が進められている。長大な滑走路を有する航空基地での運用を想定したA型と空母での運用を想定したB型の2タイプが存在する。但し、開発費と開発時間を削減するためF-3BにはF-35AとF-35Bほどの相違はなく、外見ではF-3Aかどうかほぼ判断できない。

 

 17式艦対艦誘導弾(SSM-2B blackⅠ)

90式艦対艦誘導弾(SSM-1B)の後継として、2012年に制式化され陸上自衛隊に配備された12式地対艦誘導弾を艦載化した新型艦対艦誘導弾。SSM1-Bと比較し命中精度や目標識別機能の向上、射程距離の伸長が図られた。射程は150km以上。弾体の塗装はこれまで通り視認性の低い白。しかし、これも人間大の深海棲艦などを想定していなかった。それほどの小型目標を通常の軍艦を念頭に開発されたSSM内蔵のアクティブ・レーダー装置や赤外線識別、画像識別装置で判別するのは非常に困難であった。また、弾種はHE(高性能爆薬)。駆逐級や軽巡級など低装甲目標にはそれなりの効果があったが、重巡級や戦艦級などの重装甲目標には効果が乏しく、結果、17式艦対艦誘導弾の撃沈率は悲惨なほど低い水準にとどまってしまった。

 

 17式艦対艦誘導弾Ⅱ型(SSM 2B blockⅡ)

従来の対艦兵装では対処困難な深海棲艦の出現により、開発された17式艦対艦誘導弾の発展型。弾種はHE(高性能爆薬)から対戦車弾などで使用される成形炸薬弾へ変更。また、誘導装置のプログラムに改良が施され、人間大の小型目標対処が可能になった。もっとも、開発が完了し実戦配備されたのは、海上自衛隊が壊滅しシーレーンが寸断され、艦娘が活躍しだした2028年の暮れ。

 

30式空対地誘導弾(AGM-1)

2030年に制式化、実戦配備が開始された初の国産空対地誘導弾。誘導方式はアクティブ・レーダー誘導(ARH)で、いわゆる撃ちっぱなし式。発射後、誘導に機動を縛られることもなく即座に回避機動が行えるため、母機の安全が格段に向上した。弾頭は戦車など装甲目標の撃破を念頭に置いた成形炸薬弾頭。搭載可能数は2発。第3次世界大戦と生戦によって、使用してきたアメリカ製の空対地ミサイルヘルファイアが入手困難となったため、ヘルファイヤミサイルの代替・後継、そして対深海棲艦戦闘でも重要な攻撃手段となることを目的に開発された。一部の専門家からは「ヘルファイアを丸パクリした模造品」と酷評されたりもしたが、そこまで言われるほどの欠陥品ではない。日本がかつて実戦配備していたヘルファイアはAGM-114Mと形式番号が付されたタイプで、誘導方式はアクティブ・レーダー誘導(ARH)ではなく、弾頭が命中するまで母機が目標にレーザーを照射し続けなければならないセミアクティブ・レーザー誘導(SALH)。またその弾頭は爆風破片弾頭であり装甲の薄い地上の装甲車や小型艇への攻撃を念頭に置いていた。そして、射程が9kmと短いこともあって、AGM-114M ヘルファイアⅡは対深海棲艦戦闘において全くと言っていいほど役に立たなかったのだ。

それを教訓とし最後の手段でも切り札となれるよう開発されたのが、この30式空対地誘導弾である。これによってこのミサイルでも、戦艦は困難であるものの重巡洋艦クラスまでなら戦闘不能にさせることが可能になった。ただ、開発が急ピッチで行われ射程の伸長は見送られたため、9kmのままなのが玉に瑕である。

 

32式短距離空対空誘導弾改(32短SAM-b)

アメリカ製携帯地対空誘導弾の後継として1991年(平成3年)に制式化された携帯式防空ミサイルシステム91式携帯地対空誘導弾をほぼそのまま流用する形で開発された、ヘリコプター用の空対空ミサイル。誘導方式は91式携帯地対空誘導弾改と同様に赤外線画像(IIR)誘導である。生戦勃発後、艦娘部隊では物量攻撃でこちらの重厚な防空網を突破してくる深海棲艦を前に、母艦の防空圏内にいながら捕捉・撃墜される哨戒ヘリコプターが続出。当初、防衛省内では母艦防空圏下での行動が基本である哨戒ヘリコプターに対空ミサイルは必要ない、対空ミサイルを乗せる余剰があるのなら魚雷なり対潜爆弾を積載という従来の戦術思想に基づき、防衛装備品の研究、開発を進めていた。だが、実戦部隊の現状を受け、即座に対応策を検討。開発を行うにあたり、誘導装置も含めたシステム全般が小型であり、携行SAMとしては世界初の赤外線画像(IIR)誘導方式を採用し、2連装発射ランチャーを用いたOH-1の自衛用空対空ミサイルで導入実績を有する91式携帯地対空誘導弾改が自衛用空対空ミサイルの最有力候補に登場。91式携帯地対空誘導弾を製造していた大手電機メーカーは不正会計問題や原発事業のつまずきによる痛手から回復できず、生戦の混乱により実質倒産。防衛省は新たなメーカーの下で91式携帯地対空誘導弾の製造を決意。そのメーカーの流れを組む旧財閥系重工業メーカーを新たな製造元とし、各種部品の刷新、そして射程距離の伸長を図った次期哨戒ヘリコプター用空対空ミサイルが開発された。

 

32式空対艦誘導弾改(AGM-2b)

32式短距離空対空誘導弾改(32短SAM-b)と同じくSH-60Kの後継機種に搭載するべく開発された、ヘリコプター搭載対艦ミサイルである。SH-60Kが搭載する30式空対艦誘導弾(AGM-1)の後継といって差し支えない。誘導方式は赤外線画像誘導(IIR)とアクティブ・レーダー誘導(ARH)の併用。弾頭はHETA(対戦車榴弾)。炸薬量は約140kg(30式空対地誘導弾12kg)。着発信管採用。これらにより30式空対艦誘導弾(AGM-1)では仕留めることが出来なかった重巡洋艦クラスも一撃で仕留めることが可能となり、戦艦クラスに対しても無視できない損傷を与えられるようになった。射程は約20km。30式空対艦誘導弾は緊迫した情勢下での開発であったため開発期間の短縮がなにより優先され、成形炸薬弾頭への変更は成し遂げられたがモデルとなったAGM-114M ヘルファイアミサイルの射程と同じ9kmに留まってしまった。現場部隊には歓迎されたものの海上幕僚監部は30式空対艦誘導弾に満足せず、アクティブ・レーダー誘導と成形炸薬弾頭、そして長射程の空対地ミサイルの開発を防衛省に要求。予算と開発期間の問題から防衛省は既存装備の流用とし、新空対艦誘導弾にはP-1哨戒機にて運用実績のあるAGM-65F マーベリックミサイルを模倣することが決定された。

 

 

 

 登場人物

 

知山 豊(ちやま ゆたか)

 須崎基地の第53防衛隊司令官。階級は三等海佐。基本的に真面目だが、親交の深い同僚や部下には子供のような悪戯を働くこともある。防衛大学校などエリートコース出身者以外の艦娘部隊司令官というのは珍しいため、他部隊の司令官から時々遠回しの嫌味を言われることがある。但し、信念にどうしてもそぐわない言動があれば、上官が爆発しない程度に物を言う。部下を想う気持ちが非常に強く稀に昇進を餌に懐柔を図る上層部と衝突している。その立場上、東京などへ出張する機会が多かった。2033年5月26日戦死。

 

みずづき(本名:水上 澄)

 あきづき型特殊護衛艦であり、第53防衛隊の隊長。あまり社交的ではないが、親しい人間とは積極的に交流する。基本的に温和で仲間想いの優しい性格だが、故郷や信念など自身の拠り所が貶されれば、後で後悔することが分かっていても大胆な行動を取ることがある。御手洗に対して発砲し、彼の取り巻きを蹴散らした乱入事件が一例。知山は第53防衛隊創設時よりの上官。そのため同隊の中で最も多くの時間を知山と過ごしている。少々天然な所があり、よく始末書を書かされていた。その性格が影響しているのか、はたまた横須賀鎮守府へ来てから巻き起こった一連の騒動からか艦娘たちからはよく「嘘が下手」と評されており、みずづきも自覚している。出身は兵庫県神戸市。都心ではなく、六甲山系の北側で「神戸」のイメージとはかけ離れた田舎。そのため、ごくまれに関西弁で話すことがある。2010年生まれ。父・母・弟がいる。2033年5月26日に敵潜水艦の魚雷を受け戦死、かと思われたが、あり得ない事象に巻き込まれた。

 

かげろう

 まいかぜ型特殊護衛艦。同隊で一番の新人。物静かで温和だが、みずづきをからかったりなど、外見では想像しがたい意外な一面もある。出身は徳島県徳島市。父・母・兄がいるため、徳島が空襲を受けた際は心労を重ねていた。2033年5月26日、みずづきをかばい戦死。

 

おきなみ

 たかなみ型特殊護衛艦。活発で男盛り、The運動部といった感じのムードメーカー。気兼ねなく初対面の人物、上官にも話しかけるため初印象は上々。ただ、知山に無茶な要求をしすぎるなどフレンドリーすぎるところもある。はやなみとは結構仲がいい。2033年5月26日戦死。

 

はやなみ

 たかなみ型特殊護衛艦。人見知りが激しく、基本的に無口。第53防衛隊の仲間など親しい人間とは話すものの、声量が小さく言葉も断片的でよく聞かないと何を言っているのか分からない。何故か性格が真逆のおきなみとは仲良し。2033年5月26日戦死。

 

みちづき

 由良基地でみずづきと共に特殊護衛艦候補生後期課程を履修していたあきづき型特殊護衛艦候補生。基本的に活発な性格でみずづきと同郷ということもなり、いきなりみずづきに飛びつくほどの間柄。ただ、みずづきたちと同様に地獄を経験しているため、常に明るく振舞えるわけではない。

 

あけぼの

 特殊護衛艦候補生後期課程のみずづき担当教官。そして、特殊護衛艦の先輩。栄えある艦娘教育隊一期生であり、むらさめ型特殊護衛艦として数々の激戦に参加。豊富な実戦経験を買われ、前線から教官へ転属となった。身体年齢は同一にもかかわらず、みずづきより少し大人びて見える。徳島県沿岸にて深海棲艦戦艦級と遭遇した際は自らの命と引き換えにみずづきを退避させた。

 

とね

 特殊護衛艦候補生後期課程のみちづき担当教官。あけぼのと同様に艦娘教育隊一期生。あぶくま型特殊護衛艦として戦闘に参加するも、もともと実艦の「あぶくま型護衛艦」の評価が芳しくなく、あきづき型特殊護衛艦などの実戦投入によって早々に性能が陳腐化したため冷遇。あぶくま型特殊護衛艦が教育などの後方支援任務を割り当てられる煽りをうけ、前線から離れることとなった。しかし、本人は教官としての現在に不満は持っていない。

 

岩崎 友助(いわさき ともすけ)

いず型特殊輸送艦たかなわの艦長。階級は一等海佐。一等海佐という階級、そして艦長という肩書きを具現化したかのような威厳をたたえている。例に漏れず彼も深海棲艦との戦闘経験があり、地獄を味わった。そのため、自身がのうのうと生き残っていることに責任を感じている。一人の青年の最期を案じ、みずづきに奇跡の発現を託した。たかなわの損害状況を鑑み、総員退艦命令を発令。艦橋を目に焼き付けた後、最後に艦橋を後にした。

 

坂下 芳樹(さかした よしき)

いず型特殊輸送艦たかなわの航海長。階級は三等海佐。岩崎の性格や葛藤を理解している良き部下。岩崎の退艦命令に従い、艦橋を後にした。

 

濃野(のうの)

須崎基地の司令官で、当基地における知山の上官。階級は一等海佐。上層部からの命令には従う真面目な軍人だが、知山の懇願を受け取ったり、部下の失態を上手く誤魔化したりするなど情も持ち合わせている。

 

門山

 第51普通科連隊第3中隊の数少ない生存者の1人。仲間としての信頼関係、そして第3中隊隊長と交わした約束への義務感から発狂した西谷を最後まで救おうとした。

 

西谷

 第51普通科連隊第3中隊の数少ない生存者の1人。第3中隊がほぼ全滅することになった戦いにおけるあまりに凄惨な光景により精神が不安定化。那覇基地を移動中に暴走する。

 

加島 結衣 (かしま ゆい)

神戸市出身。幼なじみの澄と電車の乗り換えで兵庫県神戸市の三宮駅に立ち寄った際、阪神同時多発テロに遭遇。自衛隊に保護されるも、避難途中に背中へ銃撃を受け負傷。医薬品が不足する中で陸上自衛隊の医官からできる限りの治療を受けるも銃創のため、澄の目の前で息を引き取った。享年15歳。

 

 

 

 

瑞穂世界

 

 

 

用語

 

瑞穂世界(日本世界とは異なる歴史を歩んだ並行世界)

日本世界とは異なる歴史を歩んだ並行世界の呼称。地形や気候、自然環境は日本世界と差異はない。但し、国名は全くの別物であり、地名も異なるところが多々存在する。近代以前は同一ではないものの、大方日本世界と似たような歴史をたどっていた。だが、近代以降は明確に分岐している。「力よりも言葉」が万国共通の概念として定着しているため、戦争や紛争は日本世界と比較して圧倒的に少なく、あっても小規模な紛争でとどまっている。そのため、日本世界では数えきれないほど行われてきた国家間の大規模戦争や、果てしなく続く宗教・民族戦争、ましてや第一次世界大戦や第二次世界大戦もない。そのため、深海棲艦との戦争が史上初の「大戦」である。大戦による犠牲者は全世界で約9700万人と推定されている。技術水準は日本世界と比較にならず、日本世界の1940年代~1960年代に相当する。

 

 

瑞穂国

 日本に相当する国家。立憲君主制かつ議院内閣制。太古の昔から瑞穂を治めてきた天皇家は国民統合の象徴と位置付けられ、統治能力の一切は瑞穂政府が握っている。領土は本州・四国・九州・北海道と周辺に存在する諸島。他国と同様に深海棲艦との戦争で海軍は壊滅。一時は第二次列島線を占領、シーレーンも完全破壊され本土決戦の可能性も浮上したが艦娘の登場により、本土決戦は回避された。そればかりか、艦娘との共同作戦で部分的なシーレーンの回復にも成功している。それを経た戦況の改善により、多温諸島奪還に動くなど攻勢をかけている。人口は約8200万人。国内総生産(GDP)は世界第7位で、経済規模・成熟した政治・社会制度から先進国の一角を占めている。陸軍・海軍は存在しているものの、両軍から航空兵力を完全独立させた空軍は創設されていない。そのため、陸軍は航空輸送力を、海軍は制空権確保を担当する航空兵力の分割が行われている。

 

栄中帝国

 華南共和国成立以前の中華人民共和国に相当する国家。但し、日本世界における中国のような西欧諸国による苛烈かつ非道な侵略を受けておらず、不平等条約である1858年のアイグン条約、1860年の北京条約は存在していない。そのため、日本世界においてロシア、または東露の沿海州とされる地域は「外満州」と呼ばれる立派な栄中領である。立憲君主制。憲法が制定されているものの、君主(皇帝または天子、清朝)の権限が非常に強い。皇帝によって貴族や軍人・有識者から任命される貴院(上院)と省・自治区レベルで選出される民院(下院)で構成される二院制の議会が存在するものの、瑞穂のような民主主義国における議会に準ずる権限はなく、あくまで皇帝の協賛機関との位置づけ。そのため、政治形態は民主主義とはほど遠い、「帝政」に分類されている。人口は約6億2000万人と世界最大。その人口から生み出される活発な経済活動により、国内総生産(GDP)も世界第1位。深海棲艦の脅威に対抗するため、空母機動艦隊の編成に動くなど軍事力も世界最強。自他ともに認める、認めざるを得ない瑞穂世界の頂点に立つ超大国かつ先進国である。

 

和寧帝国

 朝鮮半島に相当する和寧半島に存在する国家。立憲君主制かつ議院内閣制で、民主主義が瑞穂やヨーロッパ諸国並みに定着・成熟している。人口は約3100万人。国力が大きい栄中帝国や瑞穂国に挟まれているため、相対的に小国と見えてしまうが、世界基準で見れば立派な大国である。ちなみに瑞穂や栄中同様、先進国。

 

バラード共和国

 インド・パキスタン・バングラデシュ・スリランカに相当する国家。立憲君主制かつ議院内閣制。但し、同じアジア諸国である瑞穂や和寧に比べると若干、政府に対する皇帝(ムガル朝)の権限が強い。人口は約4億7000万人で栄中に次ぐ世界第2位。また、国内総生産(GDP)も世界第2位である。そして、軍事力も栄中に次ぎ強大・・・・・だったが、現在はバラード洋から侵攻してくる深海棲艦の猛攻に晒されており、かなり内陸部まで占領されている。そのため、国力の疲弊は凄まじく、かつて栄中に肉薄していた頃の面影は遠い過去のものとなっている。自国領内の全ての港が使用不能となったため、いまだに使用可能な軍港を保持している中東の友好国で空母機動部隊の構築を進めている。

 

ポピ連邦

 北アメリカ大陸に相当するポピ大陸の中央部から太平洋側の広大な一帯を版図とする国家。政治形態は大統領制。国王やそれに準ずる地位は存在しない。ヨーロッパ諸国や国境を接するコロニカ合衆国から長らく「インディアン」と呼ばれていた原住民によって建国された。ブリテン入植者との遭遇や建国に至る経緯などから、ヨーロッパ諸国、特にブリテン入植者によって建国されたコロニカ合衆国とは事あるごとにすこぶる対立しており、犬猿の仲。大戦勃発前には、両国の政府首脳が互いに互いを「敵国」といって憚らなかった。その関係は現在も健在で、深海棲艦による本土侵攻を許している状態にもかかわらず、ポピ陸軍は少なくない地上戦力をコロニカとの国境に張り付けている。「深海棲艦に対抗する」との名目で空母機動部隊構想を掲げているが、主要港の全てが深海棲艦に占領されているため、実現の見通しは立っていない。大戦勃発前、人口は約1億3000万人で、国内総生産は(GDP)は世界第6位。先進国の一角であった。

 

コロニカ合衆国

 北アメリカ大陸に相当するポピ大陸の中央部から大西洋側を版図とする国家。政治形態は大統領制で、合衆国というだけあり中央政府である連邦政府に限らず、地方政府である州政府に強い権限が付与されている。大航海時代にブリテンからやってきた入植者たちによって建国された。そのため、国民の大多数が白人である。隣国であるポピ連邦とは犬猿の仲で、かの国に対する国民感情もかなり悪い。大戦勃発後、深海棲艦による本土侵攻を許し、戦況は絶望的であったものの、艦娘の出現によって深海棲艦の押しとどめに成功。いまだに占領されている地域も存在するが、多くの領土の解放に成功している。ただ、もともと先進諸国のように豊かでもなく、国力の裏打ちとなる経済力も貧弱であったため、国内の閉塞感は激しい本土決戦を行っているポピと同等か、それ以上である。「我が国を溶かす気か!」と一部で言われるほどかなり無理をして正規空母を旗艦とする空母機動部隊、3個艦隊の整備を進めており、実戦配備は近いと見られている。大戦勃発前の人口は約9000万人。発展途上国または後進国の1つ。

 

ブリテン

 イギリスに相当する国家。立憲君主制かつ議院内閣制。近代化と資本主義の幕開けとなった産業革命を世界で初めて成功させた。それによって得られた強大な経済力と軍事力を用いて世界中の海を縦横無尽に疾走。瑞穂をはじめとする非ヨーロッパ諸国が封建制を主体とする旧制度から脱却する端緒となった。かつては強大な国力を手にしていたものの、アジア諸国の成長によって衰退。大戦が勃発するかなり以前より、「世界の超大国」から「ただの大国」になり果てていた。深海棲艦によって海軍が葬られ、本土決戦寸前まで追い込まれたが、瑞穂と同じようにぎりぎりのタイミングで艦娘が出現。間一髪のところで国難の回避に成功している。主要港の復旧が順調に進んだため、空母機動部隊の構築にも早期に着手。実戦配備も近いと見られている。人口は約8000万人。国内総生産(GDP)は世界第3位。

 

イスパニア王国

 スペインに相当する国家。立憲君主制かつ議院内閣制。大航海時代初期、ブリテンが本格進出する前に世界を駆けまわっていた。その過程で主に強固な統治能力を有する国家または勢力が存在しない世界中の土地に多くの植民地を建設した。しかし、産業革命を果たしたブリテンとの勢力争いに敗北し、国力が衰退。その過程で貴重な国力を消費してまで統治する価値なしと判断した多くの植民地を手放した。瑞穂に割譲された多温諸島もそのうちの1つである。人口は約6500万人。先進国の一角。

 

ルーシ連邦帝国

 ロシア連邦(分裂前)に相当する国家。立憲君主制かつ大統領制。皇帝(ロマノフ朝)は存在するものの、実権はなく象徴的存在。世界最大の領土面積を誇っている。深海棲艦との戦闘は行っているものの、もともと版図が北極に近い過酷な地域で深海棲艦があまり近寄らず、攻撃にさらされる沿岸部も相対的に少ないため、他国のような死に物狂いの激戦は行われていない。艦娘出現以降はさらにその傾向が強まった。消耗せずに済んだ国力を使い、ブリテンに次いで空母機動部隊の構築に着手。瑞穂と同様に、近々の実戦配備が見込まれている。

 

アステカ帝国

 メキシコなど中央アメリカ一体に相当する地域を版図とする国家。立憲君主制かつ議院内閣制。ユーラシア大陸で勃興した4大文明とは全く異なる文明の申し子で、有史以前より居住していた先住民の国家である。近代化以前から土木・建築・工芸に優れ、特に天文学は他諸国を圧倒していた。その優位性は21世紀の現代においても健在。先進国であるものの、工業水準は低い部類に入り、巷ではそのことによって深海棲艦の侵攻目標から外れたのではないかと囁かれている。

 

インカ帝国

 コロンビア・エクアドル・ペルー・チリの一部に相当する地域を版図とする国家。南北に極めて長い領土が特徴である。憲法によって縛られているものの、皇帝が強大な権力を有する帝政。数多の民族が居住する多民族国家のため、連邦制をとっている。こちらもユーラシア大陸で勃興した4大文明とは全く異なる文明の申し子で、イスパニアと接触した際は文字を持っていなかった。しかし、「文字を持っていない」にもかかわらず高度な技術体系を有していたため、技術水準はもともと高かった。そのため、21世紀にあっては先進国の一角を占め、他の先進国と肩を並べている。版図の東側は6000m級の山々が連なり、南北7500kmにわたり大陸を縦断するアンデス山脈があるため、南ポピ大陸攻略の橋頭保には向かいないと判断したのか、深海棲艦の侵攻は受けていない。

 

硫黄島

小笠原諸島の一部の火山島で、ろくに水も出ず火山性ガスと硫黄満ちている過酷な島。一時は深海棲艦に奪われたが度重なる戦闘の果てに奪還。しかし、第2列島線の要衝であり、西太平洋の制空・制海権を握る上での重要性は深海棲艦も認識しているようで、奪還後も度々小競り合いが発生している。現在、横須賀航空隊硫黄島分遣隊をはじめとする陸海軍の航空・地上部隊が展開し、艦娘の停泊地としての機能も整備されるに至っている。

 

三宅島

伊豆諸島を構成している一島。一時は陸軍守備隊の奮戦虚しく深海棲艦に占領されたが艦娘との共同作戦により奪還に成功。海軍三宅島観測所以外に陸軍基地が設置され歩兵を中心とする守備隊が駐屯している。また、島民の帰還も行われ漁港には多くの漁船が停泊している。

 

多温諸島

 マリアナ諸島に相当する。語源は原住民であるタオ人が自分達や自分たちの住む土地をタオと呼んでいたため、イスパニアから瑞穂へ割譲された際に当て字で「多温(たお)」とした。一応「すごく暑い」という意味も込められている。深海棲艦侵攻初期に占領されたが、奪還作戦の成功によって再び瑞穂の領土となった。

 

大宮島

 グアム島に相当する。多温諸島命名時と同様、イスパニアから割譲された際に瑞穂語名がつけられた。意味は「大いなる神が住まう」である。深海棲艦登場以前から海軍基地がおかれており、奪還作戦後急ピッチで再建され、多くの艦娘がここに移動している。

 

大本営

 統合幕僚監部に相当。大日本帝国の「大本営」と異なり、法的根拠を有する常設機関である。

 

・大本営統合参謀会議

 瑞穂軍全体の戦略・作戦・部隊配置・兵器開発・装備配備など人事以外のほぼ全ての軍業務を統括・最終決定する瑞穂軍の最高意思決定機関。委員は大本営長官、陸軍参謀本部長、軍令部総長以下、作戦・運用・兵站などの陸・海軍責任者。

 

瑞穂海軍

 瑞穂国の海上国防組織。最高司令部は軍令部。艦娘を運用すると同時に、軍再建整備計画に基づき大戦で消耗した通常戦力の再建に力を入れている。軍再建整備計画では基地の抗堪生確保、防空レーダーの開発・整備は先送りされたものの、30式戦闘機をはじめとした航空戦力の再建及び拡充、統合艦隊の整備が認められ、急速な軍備拡張が実現している。机上の計算で現場を分かった気になっている中央省庁の官僚に若干不満を抱いている模様。瑞穂本土及び作戦行動領域の制空権確保は航空兵力分割方針に伴い、海軍の担当である。

 

海軍軍令部(軍令部)

 海上幕僚監部に相当。作戦立案・実行、兵站などの後方支援を指揮・監督する瑞穂海軍の最高司令部。軍令部の元に全実働部隊を指揮する連合艦隊司令部があり、隷下に艦隊司令部、航空戦隊司令部、陸戦隊司令部、後方支援集団司令部が存在する。直率する特別の機関として、横須賀鎮守府をはじめとする各鎮守府、海軍兵学校などが存在する。

 

・統括会議

海軍内のあらゆる方針を「海軍として」議論・決議している海軍最上位の幹部会議。出席者は軍令部総長をはじめとし、鎮守府司令官が緊張で硬直してしまうほど海軍指導層である。

 

・情報局情報保全室

対外的・対内的諜報活動及び情報収集活動を担っている情報局傘下組織。軍令部総長の指揮下にある海軍の諜報機関。諜報機関としての特性上、トップである室長など一部の幹部を除いた構成員は不明。海軍内の機密情報の管理、将兵の思想統制、情報漏洩の際の調査、警察や公安・憲兵隊などでは対処できない事件の捜査などを主に職掌としている。それを全うするために手段は選ばす、合理的と判断すれば時には潜入・破壊工作・暗殺・脅迫なども行う。「身内を漁さる」性質の組織であるため、同じ情報局内組織ながら対外活動を主な任務とする情報部とは対照的に、一般海軍将兵にとって警戒対象。情報保全室員は多くの者が普段別の肩書きを背負って、それぞれの組織に完全に溶け込み、活動している。故に、その感情を公言する者はそうそういない。

 

艦隊司令部

 水上戦闘艦艇の指揮・監督を司る機関。大戦勃発前は主力である第1、2、3、4、5艦隊など先進国海軍の名に恥じない多数の艦艇を指揮していたが深海棲艦との戦闘後、隷下部隊が第5艦隊と少数の第二線級部隊にまで激減。房総半島沖海戦にて第5艦隊が壊滅したため、現有戦力は就役したての第1、2、3、4統合艦隊と第二線級部隊及び第5艦隊唯一の残存艦艇である「霧月」と第2艦隊残存艦艇で編成された海上護衛艦隊である。

 

・第5艦隊

瑞穂海軍で唯一、深海棲艦との壮絶な戦闘を経験したにもかかわらず、海底に引きずり込まれることなく大戦初期を生き残った艦隊。そして、2033年時点で実働状態にある唯一の主力部隊である。第5戦隊と第10戦隊の2個戦隊で編制されている。旗艦は巡洋艦因幡。構成艦は因幡のほかに巡洋艦が若狭と伊予、駆逐艦白波・氷雨・霧月・河波・秋雨。配備先は横須賀鎮守府。深海棲艦出現以前は大湊鎮守府に錨を下ろしていたが、大戦による戦力消耗を受けた軍の再編によって、太平洋や伊豆・小笠原諸島、そして関東防衛の重要拠点である横須賀鎮守府の所属となった。本土の基地や司令部勤務の将兵に比べ、艦隊勤務者やあの悲劇を生き残った者は艦娘排斥派の比率が高い傾向にあるものの第5艦隊は指導部、一般将兵共に擁護派が圧倒的多数を占有。横須賀鎮守府配備に際して、これも重要な決定打の1つとなった。

 

・第5戦隊

第5艦隊を編成する戦隊の1つ。当艦隊の旗艦である因幡をはじめ、戦隊旗艦である若狭のほか、白波、氷雨が所属している。司令官は結解由造大佐。

 

・第10戦隊

第5艦隊を編成する戦隊の1つ。戦隊旗艦は霧月。ほかに伊予、河波、秋雨が所属している。司令官は花表秀長大佐。

 

航空戦隊司令部

 航空隊や教育航空隊、偵察飛行隊など海軍の航空兵力を一手に指揮・監督する機関。

 

陸戦隊司令部

 海軍特別陸戦隊など、陸軍とは別個に海軍が保有する陸上戦力を一手に指揮・監督する機関。

 

・横須賀特別陸戦隊

 横須賀鎮守府田浦基地に駐留する特別陸戦隊。特別陸戦隊司令部と3個特別陸戦隊で構成。1個特別陸戦隊は4個中隊で編成され、第1・2中隊は歩兵、第3中隊は砲兵、第4中隊は戦車中隊。第4中隊の戦車は急速に更新が図られており、11式戦車も配備されているが主力は既に29式戦車となっている。

 

・横須賀要塞根拠地隊

 横須賀鎮守府及び東京湾の防衛を目的に建設された横須賀要塞を運用・守備する特別陸戦隊。横須賀要塞を構成する沿岸砲・高射砲は三浦半島各地に点在しているため、当部隊は三浦半島全域に展開・駐屯している。横須賀鎮守府と横須賀湾を望む丘陵地帯には、横須賀鎮守府並びに横須賀港港湾機能防衛を目的に多数の高射砲が配備されている田浦陣地がある。

 

後方支援集団司令部

 輸送部隊や掃海部隊、補給部隊など通常艦艇の補助任務を担う艦艇・部隊を一手に指揮・監督する機関。正面戦力ではないため存在感は薄いが、当司令部に所属する部隊の働きがなければ、艦艇や航空機・戦車は動くことすらできない。まさしく、縁の下の力持ちである。

 

横須賀鎮守府

 神奈川県横須賀市にある瑞穂5大鎮守府の内の一つ。

 

・横須賀鎮守府工廠

通常艦艇の修理・点検、及び艦娘用艤装の修理・点検・新装備開発を行う鎮守府直轄の施設。田浦町・長浦湾にある工廠隷下の横須賀造船部が通常艦艇を、横須賀鎮守府中枢に隣接する工場群が艦娘用艤装を担当している。後者は主に艤装の点検・修理を行う艤装工場と新装備の開発を行っている開発工場で構成される。トップは工廠長の漆原明人。

 

・資料室

海軍、ひいては瑞穂軍の歴史から部隊・保有装備の詳細、そして戦闘の詳細、それの戦術的・戦略的分析などに至る様々な情報を収集・収蔵を目的に、1号舎の真向かいにある2号舎の地下に設置されている施設。地下1階に第1資料室を、地下2階に第2資料室が設けられている。第1資料室は市井の図書館よりも軍事関連の書籍が多い程度の設備であり、新聞や街の書店に並んでいる雑誌や小説なども完備。第2資料室は存在する場所からもわかるとおり機密指定されている資料類が収蔵されている。深海棲艦出現以前は両方とも地上の専用施設、1号舎と同じく赤レンガ造りの図書館にあったのだが空爆での消失が危惧されたため地下に移設された。

 

・横須賀海防隊群

 横須賀鎮守府隷下の海防艦からなる水上部隊。艦娘母艦を除けば鎮守府司令長官の指揮下にある唯一の戦闘艦艇部隊。第1海防隊と第2海防隊で構成される。第1海防隊は伊豆、式根、青賀、新、第2海防隊は神津、三宅、八丈、御蔵。第1・2海防隊合わせて8隻で構成されている。当群所属海防艦は全て伊豆諸島の島々から名付けられている。

 

・横須賀警備隊

 横須賀鎮守府内の警備を担う部隊であり、一般的に陸戦隊と呼ばれる海兵団のように外地へ展開することはない。そのため、武装も小銃や機関銃など軽い。

 

・三宅島観測所

 横須賀鎮守府隷下の横須賀防空隊伊豆・小笠原警戒隊の施設。電波収集や付近海域を航行する船舶の監視・観測が主任務。深海棲艦から三宅島が奪還された後に新設された。瑞穂海軍施設の中で最も早く、みずづきの救難信号を受信した。

 

由良基地

和歌山県日高郡由良町に所在する呉鎮守府隷下の海軍基地。基地の維持・管理・業務遂行などを担う由良基地隊と複数の海防艦を配備している紀伊防備隊が置かれている。深海棲艦出現以前は海防艦も紀伊防備隊もなく呉鎮守府隷下の由良基地隊のみが在籍し、大阪湾や紀伊水道の警備と寄港するする艦船の補給が主任務となっていた。しかし、現在の主任務は「警備」ではなく「防衛」。仮に本土決戦となった場合、ここに配備されている海防艦が全滅覚悟の最終防衛線を担うこととなる。

 

爽風会

現軍令部総長を会長とする海軍内の一大派閥。艦娘擁護派の中心勢力であり、房総半島沖海戦以前は海軍内の最大勢力を誇っていた。

 

憂穂会

 軍令部作戦局副局長である御手洗を助言役に据えた海軍内の一派閥。爽風会と対立関係にある排斥派を束ねる中心的存在。会長と副会長を差し置き、実質的なリーダーは助言役の御手洗。艦娘の排斥を至上命題として活動してきたものの、房総半島沖海戦を機に一部の反発を抑え込み、艦娘を黙認する現実路線へ舵を切る。

 

瑞穂陸軍

 瑞穂国の陸上国防組織。伊豆・小笠原諸島以外に本格的な戦闘を行っていないため、壊滅した海軍とは対照的に大戦勃発以前の戦力を保持している。だが、あくまで自分たちを「陸の防人」と自負しており、戦力を盾として海軍の方針に口出しすることはあまりない。海軍が制空権確保を担当するため、輸送機を中心とした航空輸送力の整備が図られている。軍再建整備計画によって、大幅な定員増加が実現。2029年4月以前は12個師団・2個旅団態勢であったが、2029年4月1日をもって山梨・静岡両県を管轄区域とする第16師団、富山県・石川県・福井県を管轄区域とする第17旅団が新設。また、2029年10月1日に千島列島を管轄区域とする第5旅団、南西諸島を管轄区域とする第6旅団がそれぞれ第5師団・第6師団に拡充。2029年10月1日をもって15師団1旅団体制に移行した。(第11師団は欠番)。

 

・洲崎要塞

海軍館山航空基地がある館山湾及び浦賀水道を一望できる千葉県館山市洲崎に建設された防衛用要塞。本土攻撃を目論む航空機・艦船の撃破を目的に、海軍横須賀要塞と同様に多数の沿岸砲・高射砲を設置している。陸軍関東方面隊隷下の洲崎要塞根拠地隊が要塞の運用・守備を担当している。

 

国防省

 防衛省に相当する。国防政策を担う中央官庁。

 

兵器研究開発本部(兵本)

防衛装備庁または旧技術研究本部に相当する。瑞穂軍が使用するあらゆる装備の研究・開発・更新を一手に担う国防省の直轄組織。略称は兵本。現在では瑞穂軍における唯一の開発組織として1800人もの人員を擁している。かつては開発方針の策定や各企業・大学との意見調整を行うなど施策の大枠を決める事務仕事が大半を占め、研究開発は全くといっていいほど担っていなかった。だが深海棲艦の出現を受け、研究開発の迅速化・効率化を図るため各組織に分散していた機能を集約化。当本部の権限も大幅に強化され、今では名実ともに軍の研究開発拠点として活動している。これに伴い、陸海軍それぞれの研究開発組織であった、海軍航空本部、陸軍航空本部は廃止。また艦政本部・陸政本部は縮小。前者は海政研究所、後者は陸政研究所と名前を変え、軍令部・参謀本部の意見を兵器開発本部に伝えるなどといった窓口機関的な組織に改編された。本部長は生粋の技術屋で、一部では「変態の総大将」ともささやかれる安谷隆一(やすたに たかかず)少将である。

 

保安省

 旧内務省に相当する。警察庁と海上保安庁を所管し、瑞穂国内の治安維持行政を一手に担う中央官庁。

 

神奈川県警警備部第一機動隊特定危険思想対処班

神奈川県内の海軍基地、特に全国的に見ても屈指の規模を誇る横須賀鎮守府を捜査対象とし、反乱やクーデターを引き起こしそうな危険思想を持った軍人の内偵・情報収集・監視する機動隊内の特殊部隊。時には警察力の行使(実力行使)も行う。

 

大蔵省

 財務省に相当する。多温諸島奪還作戦にかかる費用を過小評価したため、瑞穂国の財政運営を危機におとしいれた。

 

通商産業省(通産省)

 経済産業省に相当。瑞穂の通商に関する行政を一手に担う。

 

軍再建整備計画

正式名称、「陸海軍戦力回復及び特定害意生命体対処実現に係わる国防力整備計画」。深海棲艦の攻撃により現有(2025年当時)の有望な陸海軍、特に海軍戦力の喪失と国防力の根本的な陳腐化を受け、深海棲艦に対抗可能な通常戦力の整備を5か年計画として2027年に策定した瑞穂軍の再建計画。実施期間は2028年~2033年。陸軍兵力の増員、30式戦闘機をはじめとした航空戦力及び統合艦隊の整備が明記された一方、予算の不足を理由に格納庫の掩体壕化といった基地の抗堪性確保、敵機の接近をいち早く捕捉する防空レーダーの開発・整備は先送りされた。房総半島沖海戦によって、軍再建計画の欠陥が露呈することとなった。

 

特定管理機密

国家機密の中でも漏洩すれば著しく瑞穂の国益が損なわれかねないと判断され、総理府の国家安全保障局によって指定される最高レベルの機密情報。国家情報保全法に明記。開示が許される対象は適性検査を受けた人間と、軍令部などの許可が出された人物に限定。仮に上官や所属組織の許可なく漏洩させた場合、最高刑は平時には終身刑。大戦の真っ只中である現在が該当する有事の際は死刑である。そのため、扱いは爆弾を触るかのように慎重に慎重が期される。

 

漢城条約

 2031年、瑞穂・栄中・和寧の東アジア3か国で締結された対深海棲艦条約。当条約では未知の敵「深海棲艦」に対し3か国が緊密な連携の下、共同して対処することが謳われており、条文に各国の具体的な行動が明記されている(瑞穂に東シナ海の第一義的防衛義務を定めた第5条や栄中と和寧に深海棲艦侵攻時の瑞穂救援を定めた第12条など)。条文自体に法的拘束力はなく国家主権及び軍事主権は犯していないとの建前だが、行動対行動の原則の下、信頼関係で成り立っている以上、経済的な関係もあり両国への配慮は欠くことができず、当条約に抵触しかねない行動は取れない。そのため実質的に国家主権及び軍事主権に制約がかかっているのが現状である。実際に房総半島沖海戦時佐世保鎮守府は有望な戦力がありながら、東シナ海の防衛に拘束され、横須賀鎮守府単独で敵残存連合艦隊を殲滅する事となった。

 

並行世界証言録

 艦娘たちの証言を集め、日本世界の歴史・文化・社会情勢・技術レベルなどを体系的に記した一大史料。雪風や響も加わっているため、戦後1970年代ごろまでの出来事も掲載されている。製作は国防省主導。当初は国防省の官僚たちも並行世界の情報を欲していたが、艦娘たちに様々なトラウマがあったことから関係悪化を避けるため、聴取の計画は棚上げにされていた。しかし、艦娘たちの出身を知った政治・歴史・文化・民俗などから生物や物理・化学いたるまでの学界、それら管轄学界の要望を受けた各省庁の突き上げを受け、製作が決まった。決まったはいいが製作主体や各省庁の関与を巡って、激しい闘争が繰り広げられ、軍の全面的なバックアップを受けた国防省が最終的に勝利した。製作開始直後は艦娘たちが消極的で難航したが、少数の艦娘たちが協力したことをきっかけに参加人数が増加。現在ではほとんどの艦娘が協力し、各学界も大満足し研究に励んでいる。

 

東西紛争

ポピ連邦とコロニカ合衆国の間で20世紀に生起した国家間戦争。日本世界と異なり、約7年に及んだ当紛争が瑞穂世界における近代以降最大の戦争にして、唯一の国家間衝突である。両国の国境沿いに大規模な石炭炭鉱の存在が確認されたことをきっかけに緊張が激化。諸外国も巻き込んだ平和交渉が行われるも、建国以来犬猿の仲であった両国はついに激突。ポピ大陸の資源に権益を持ち、それぞれに人種的親近感を抱く大国も消極的ながら介入したことにより戦火が拡大。双方あわせて67万人が犠牲となった。

 

光陽丸事件(こうようまるじけん)

 瑞穂時間2025年2月17日。布哇諸島近海を航行中であった瑞穂船籍のコンテナ船「光陽丸」が突如、消息を絶った事件。瑞穂では当時「クジラと接触して沈んだのではないか」と言われていたが、瑞穂世界で初めて深海棲艦が人類に攻撃を加えた事例であると一般的に解釈されている。

 

十条空襲

 2027年2月1日、東京都北区に対し、深海棲艦空母機動艦隊によって行われた航空攻撃。2027年初頭は瑞穂海軍を含めた環太平洋諸国海軍水上部隊の壊滅、栄中海軍・和寧海軍の第1列島線内への戦略的退避により、本土決戦の危機が最も迫っている時期であった。瑞穂海軍に制海権維持能力はなく、深海棲艦空母機動部隊は瑞穂列島の近海に進出。陸海軍基地や軍需工場に対し、空母艦載機による航空攻撃を実施する中で、陸軍十条基地や民間企業の軍需工場が集積していた東京都北区が標的となった。攻撃そのものは兵器搭載量が限定される艦載機が主体となった空爆であったため、小規模にとどまったが、攻撃機の護衛として飛来していた艦上戦闘機が走行中だった東北本線快速電車を執拗に銃撃。銃撃を受けた電車は脱線の後、横転しながら住宅に激突。この電車内だけで108名が死亡し、本空襲による犠牲者159名の3分の2を占めた。

 

八丈島沖海戦

2027年に八丈島沖北東海域で行われた瑞穂海軍通常艦隊・艦娘の連合部隊と深海棲艦連合艦隊が激突した戦い。当時、艦娘の協力を得て徐々に戦線を押し返していた時期であった。そのため瑞穂も敵の反攻を予測し関東東方・南方海域の哨戒を密にしていたところ、敵の早期発見に成功。艦娘部隊と艦隊司令部隷下の主力艦隊残存艦で臨時編成された特別水上打撃群の共同作戦により、八丈島沖北東海域で敵艦隊の撃退に成功。特別水上打撃群の壊滅という代償を払ったものの、敵の本土攻撃そして反攻の出鼻を挫かれる事態は回避した。ちなみに、この時第5艦隊は大湊におり、幸いにも戦闘には参加せずに済んでいる。

 

房総半島沖海戦

 2033年7月12日早朝、空母機動部隊を中核とする深海棲艦連合艦隊による関東地方陸・海軍基地への奇襲空爆に始まり、翌13日夜明け頃まで関東地方及びその周辺海空域で断続的に発生した戦闘の総称。発生した攻撃及び戦闘は関東空爆、伊豆・小笠原空爆、浦安航空戦、横須賀湾沖航空戦、石廊崎沖海戦、野島岬沖海戦、第二次野島岬沖海戦に大別される。

 7月12日早朝、九十九里浜沖に進出した空母ヲ級flagship4隻を主力とする深海棲艦連合艦隊は百数十機を擁した第一次攻撃隊で瑞穂海軍横須賀基地、館山基地、百里基地、厚木基地、瑞穂陸軍木更津基地を攻撃。瑞穂軍は台風8号の影響で哨戒を緩めていたため深海棲艦連合艦隊の接近に全く気付かず、完全な奇襲により瑞穂海軍館山基地、百里基地、厚木基地、瑞穂陸軍木更津基地は壊滅。関東地方の制空能力の過半を初撃で失った(関東空爆)。また、深海棲艦は関東空爆後、九十九里浜沖に展開する連合艦隊とは別の連合艦隊によって硫黄島基地をはじめとする伊豆・小笠原諸島の陸海軍基地を攻撃、各基地は壊滅状態に陥った(伊豆・小笠原空爆)。瑞穂が大混乱に陥る中、九十九里浜沖に展開した深海棲艦連合艦隊は第二次攻撃隊を発艦させ、横須賀及び東京への攻撃を意図。これの阻止を目指した横須賀航空隊横須賀基地所属の第101飛行隊、舞鶴航空隊小松基地所属の第404飛行隊が千葉県浦安市上空で、横須賀鎮守府第一機動艦隊、第六水雷戦隊、横須賀航空隊横須賀基地所属第102飛行隊が横須賀湾沖で激突(浦安航空戦及び横須賀湾沖航空戦)。激戦の末、深海棲艦第二次攻撃隊は横須賀・東京への攻撃を断念し撤退するも、第404飛行隊は全滅。第101飛行隊は40機中34機、第102飛行隊は40機中29機が撃墜され、壊滅。艦娘部隊は第一機動艦隊の翔鶴・潮が大破、榛名が中破。「防衛成功」という戦術的勝利を得られたものの、この時点で海軍は関東において投入可能な航空戦力の過半を損耗し、制空権を失った。

 一方、関東地方周辺海域においても、戦闘が発生。伊豆半島石廊崎沖では第三水雷戦隊と連合艦隊を解消した別動隊(空母ヲ級改flagship2、戦艦棲姫1、戦艦タ級flagship1、軽巡ツ級flagship1、駆逐イ級後期型flagship1)が、房総半島野島岬沖では第5艦隊と連合艦隊を解消した水上打撃部隊(戦艦ル級flagship2、軽巡ツ級flagship2、駆逐ロ級後期型flagship2)が激突。第三水雷戦隊はみずづきの目を見張る活躍により無傷で敵艦隊の撃滅に成功する(石廊崎沖海戦)も、新兵器零式弾をも使用した第5艦隊は第五遊撃部隊の救援が間に合わず、奮戦むなしく敗北。霧月以外の全艦が撃沈され、第5艦隊司令官正躬信雲少将、参謀長掃部尚正少将、因幡艦長大戸雅史大佐、第5戦隊司令官結解由造大佐をはじめ、3237名中2544名が戦死した(野島岬沖海戦)。

 12日夜、由良基地に満身創痍で辿りついた呉鎮守府潜水集団所属伊168の報告により、多数の輸送船を伴った深海棲艦揚陸部隊の関東地方への進軍が判明。これを受け瑞穂政府は史上初めて国家緊急事態法に基づく、特別非常事態宣言を瑞穂全土に発令。また関東地方を警戒区域に指定し、特別非常事態宣言発令時第1号計画(通称本土決戦に対処するための避難行動計画)の実施及び大本営作戦第1208号(通称:背水作戦)の承認を宣言し、本土決戦の準備を開始。形容しがたい絶望感が漂う中、陸軍部隊の展開と住民の避難が行われた。

 横須賀鎮守府は背水作戦の発令を受け、第一夜襲艦隊(長門・摩耶・川内・みずづき・陽炎・黒潮)、第二夜襲艦隊(金剛・大井・吹雪・雷・電・曙)、後方支援艦隊(赤城・加賀・瑞鶴・北上・白雪・初雪)、護衛艦隊(夕張・球磨・深雪・暁・響)を編成し、房総半島沖に遊弋している敵連合艦隊(空母4隻、軽巡4隻、駆逐2隻の空母機動部隊、重巡2隻、軽巡2隻、駆逐2隻の軽水上打撃艦隊)の撃破、これによる深海棲艦の侵攻意思排除を企画。13日明け方、第一・二夜襲艦隊と深海棲艦連合艦隊は野島岬沖で激突。みずづきの対艦ミサイル攻撃もあり、優位に戦いを進めた第一・二夜襲艦隊は長門が軽微な損傷を受けるも、小破艦さえ出すことなく深海棲艦連合艦隊の殲滅に成功。瑞穂側が関東地方の制海権を盤石にしたことを受け、深海棲艦揚陸部隊は関東侵攻を断念し、撤退。瑞穂初の本土決戦という最悪の事態は土壇場で回避された。

 この戦闘による犠牲者は民間人187名、軍人・軍属4137名、合わせて4324名。房総半島沖海戦は大戦を忘れかけていた瑞穂国民と優位な戦局を前に安堵していた政府・軍に計り知れない衝撃を与え、後に実施される軍事行動に多大な影響を及ぼすこととなった。

 

11式戦車

 2011年に制式化された主力戦車。ずんむりむっくりの外見と対照的な細い砲身が突き出している独特の外観が特徴。57mm砲と7.62mm機関銃を2挺装備。全長は5.5m、全幅は2.3m、重量15トン、乗員は4名。装甲は側面に限ると20~25mmである。価格は約3億円。深海棲艦が出現するまでは瑞穂陸軍の主力戦車であったが陸上型深海棲艦の戦車型と戦闘を行った際、火力・防御力不足が露呈したため、後継の29式戦車に活躍の場を譲り、配備数は減少の一途を辿っている。大日本帝国陸軍の97式中戦車に外見が酷似している。

 

29式戦車

 2029年に制式化された最新鋭の主力戦車。角ばった車体の割には大きな砲身を持っている外観が特徴。11式戦車と根本的に外観が異なるため、見分けることは専門的知識がなくとも比較的容易。陸上型深海棲艦の戦車型への対抗を目的に開発された。主武装として75mm砲、副武装として7.62mm機関銃を2挺装備。全長は5.7m、全幅は2.3m、重量18トン、乗員は5名。装甲はもっとも被弾可能性が高い正面を筆頭に強化され、正面前方は50mmと11式戦車より倍増している。高火力化・重装甲化が威力を発揮し、多温諸島奪還作戦(還3号作戦)では歩兵によって最大の脅威となっていた敵戦車型の早期撃滅に成功し、迅速な作戦の完了に大きく貢献している。11式戦車にかわり、現在では瑞穂陸軍の主力戦車である。価格は4.5億円。大日本帝国陸軍の3式中戦車に外観が酷似している。

 

艦娘母艦

艦娘を疲労させることなく前線に運び、かつ作戦・戦闘終結後、損傷の程度に関係なく艦娘全員を所属基地まで運ぶ輸送性。本土から離れ迅速な情報交換ができない前線においても臨機応変な作戦行動が取れるよう臨時司令部機能。その2つを両立させ艦娘運用に特化した特殊輸送艦。技術発展の度合いよる多少の差異は存在するものの、コンセプト自体は日本の「いず型輸送」に代表される特殊輸送艦とほぼ同一である。全長はあきづき型護衛艦やまいかぜ型護衛艦と変わらない、145m。基準排水量は5000トン。武装は艦首前部に設置されている2門の中口径連装砲をはじめとして連装高角砲に3連装機銃。あくまで戦闘艦艇ではなく、普通の輸送艦と同様に補助艦艇扱いのため武装は自衛レベル。情報収集能力確保のため、水上偵察機を2機搭載。後部甲板には水上機発艦用のカタパルトが設置されている水上機。艦娘部隊が配備されている各鎮守府・警備府・基地に必ず1隻は配置されている。

 

霧月

海月型防空駆逐艦の5番艦。所属は第5艦隊第10戦隊で、停泊港は横須賀。乗組員は219名。防空駆逐艦の名が示す通り、艦隊を脅かす対空目標の迎撃を主眼に設計された、一風変わった駆逐艦。

 

伊豆型海防艦。

 横須賀海防隊群に配備されている海防艦。船体は駆逐艦より一回り小さい、基準排水量940トン。速力は34ノットまで発揮可能で、主武装は前部甲板と後部甲板に設置されている12.7cm連装砲と2基の12.7mm対空連装機銃、爆雷投射機である。伊豆、式根、青賀、新、神津、三宅、八丈、御蔵の8隻が就役済み。

 

21式戦闘機

 深海棲艦出現前の2021年に制式化された瑞穂海軍の戦闘機。当時は他の先進国戦闘機と肩を並べる高速性能、軽快な運動性能を誇った固定脚式の全金属製低翼単葉機であった。しかし、「瑞穂世界において高性能」という自負は深海棲艦を前に叩きつぶされ、固定脚式による高速性能の拘束、防弾性能の欠如による継戦能力の貧弱さ、そして7.7mm固定機関銃2門のみという軽武装が仇となり、深海棲艦航空機に対し全く歯が立たなかった。空母艦娘によれば、固定脚が目を引く外観は大日本帝国海軍の96式艦上戦闘機に酷似しているとのこと。

 

29式偵察機

数々の新機軸を盛り込み、2029年に制式化された瑞穂海軍の複座陸上偵察機。29式偵察機以前の瑞穂陸海軍航空機は複葉機また単葉・固定脚など、艦娘たちが所属していた大日本帝国と比較して旧態依然とした航空機が主流であり、深海棲艦を前に能力不足は顕著であった。瑞穂海軍は八丈島沖海戦などを通じ、迅速かつ場合によっては強行偵察も可能とする俊足、長大な航続力を有する偵察機の必要性を痛感。当機は瑞穂軍単発航空機で初めて引き込み脚を採用し、引き込み脚機構によって燃料搭載スペースが制限されているにもかかわらず、翌年に制式化された30式戦闘機には及ばずとも1000km超の後続距離を実現した。搭載火器は自衛用の7.7mm旋回機銃1門のみ。開発には空母艦娘も関与しており、外観は大日本帝国海軍の97式艦上攻撃機に酷似している。

 

30式戦闘機

 2030年に制式化され、旧来戦闘機の常識を覆した革新的な戦闘機。21式戦闘機の惨状を背景に瑞穂海軍は深海棲艦に対抗可能な新戦闘機開発を模索。艦娘たちにとって最も親しみがあり、かつ運用経験が豊富な大日本帝国海軍の艦上戦闘機“零式艦上戦闘機”をベースに開発が行われた。零戦の弱点であったエンジン出力と防弾性能の貧弱さは、瑞穂が誇る成熟した基礎工業力の結実である高出力レシプロエンジンの搭載によって解決。機動力と耐弾性、そして20mmを主力とする重武装化の並列に成功した。当機は零戦の模倣機でありながら、本家を凌駕した希有な戦闘機である。機首と翼内にそれぞれ2門ずつ、計4門が取り付けられている20mm機関砲には通常、敵機を撃墜するのではなく損傷させ追い払うことに主眼が置かれ、TV信管が内蔵された新型対空榴弾、29式対空榴弾が装填されている。また、当機には限定的な爆撃能力が付与されており、30kgまたは60kg爆弾を翼下に2個装備可能となっている。以上の類い稀な性能から戦果が期待されたが、房総半島沖海戦時に生起した航空戦では多数の機体が撃墜された。21式戦闘機より遥かに善戦したものの、深海棲艦航空機に対し、依然として通常航空戦力では太刀打ちできないことを図らずも、当機自ら証明する形となった。

 

30式水上偵察機

 2030年に制式化された艦載型複座水上偵察機。艦娘を通した日本世界における航空技術の流入と深海棲艦の脅威に対抗するため配分された多額の国家予算で航空業界が活況に沸く中、開発された機体だけあり大戦初期に現役であった水上偵察機とは性能面で隔絶している。翼下にフロートを付け、「下駄ばき」と言われる水上機でありながら、21式戦闘機に迫る高速性、機動性、航続力を有している。搭載火器は自衛用の7.7mm旋回機銃1門のみ。低翼単葉かつフロートを有する外観は大日本帝国海軍の零式水上偵察機に酷似している。但し、当機は純粋な艦載型偵察機であり開発に際し爆撃性能は要求されていないため、大日本帝国海軍の零式水上偵察機と異なり爆撃は不可能。

 

零式弾

 的が小さく従来の徹甲弾では対処不可能な深海棲艦用に開発された新型砲弾。弾頭内に複数の子爆弾を搭載した対水上榴弾。大日本帝国海軍の対空榴弾、三式弾を参考にとして開発された、いわゆるクラスター爆弾の砲弾版である。当砲弾は目標の上空に到達すると子爆弾を周囲にまき散らし、爆発の嵐を巻き起こす。多数の子爆弾がばら撒かれるため、高命中率を誇る。ただ、子爆弾単体の威力が小さく、複数発を当てなければ駆逐艦の撃沈も叶わない、命中率を優先したが故の致命的欠点が存在する。野島沖海戦では威力不足を命中率で補い、駆逐ロ級flagship2隻を撃沈、軽巡ツ級flagshipを大破まで追い込む戦果を挙げた。

 

竹祭り(タギウチマー)

 沖縄県那覇市で毎年7月中旬に行われるお祭り。かつて首里城の城下町として栄えた大中町や当蔵町、市場として栄えた大道町や安理町など琉球王国時代の建物が数多く現存している地区を中心に、蝋燭を入れた竹細工で街を照らす。もともと五穀豊穣を祈るための祭事であったが、竹になじみ深い本土や栄中・和寧からの観光客増加を目的に、本土の某所で行われているお祭りの要素を追加した結果、現在の形となった。沖縄には竹細工に使用可能な太い竹が自生していないため、本土から仕入れている。しかし、大戦勃発以降は鎮魂の意味合いも込められている。非常に幻想的な光景が生み出されるため、写真家はおろか本土の一般人の間でも有名。人気もかなりのもので観光本の出版社が珍しく高価なカラー印刷で特集を組むほど。露店や地元商店の屋台なども軒を連ね、神社仏閣では音楽家のコンサートが開催、民家では地元住民などによる演奏も行われるため、景色以外の見どころも満載。

 

 

 

登場人物

 

 

海軍

・横須賀鎮守府

百石 健作(ももいし けんさく)

 横須賀鎮守府の司令長官。階級は提督。年は30代前半と非常に若いが、通常ならあり得ない官職につけるだけの実力は兼ね備えている。横須賀鎮守府司令長官に推挙される以前は、軍令部で作戦局を中心に様々な部署に勤務。作戦局作戦課勤務時代、山下の上官であった縁から、今でも彼と懇意にしている。的場と親交が厚く、艦娘擁護派に属しているため、対艦娘感情はすこぶる良好。また軍人にありがちな高圧的態度を取ることもなく部下想いであるため艦娘たち・一般将兵との関係は良好で、信頼も厚い。ただ、それを妬んだり、快く思っていない軍人が上層部、特に御手洗が率いていた旧排斥派に少なからず存在している。特に御手洗とは犬猿の仲で、彼を前にすると普段の温厚さが神隠しにあう。みずづき出現以降、艦娘部隊の指揮官という立場に加えて、「瑞穂の切り札」としての地位を確立しつつあるみずづきの監督も担うことになったため、たびたび激務にケツを叩かれている。付け加えると時折、秘書艦の長門にお灸を据えられている。

 

川合 清士郎(かわい せいしろう)

 横須賀鎮守府の警備を担う横須賀警備隊の隊長。階級は大佐。百石より年上だが、それに不満を抱くこともなく命令には忠実で、警備隊内の人望もあつい。要領が良く仕事は早く済まれられるタイプ。ただ、血の気の濃い海軍陸戦兵のため、堪忍袋の緒が切れたあかつきには阿修羅と化す。御手洗が横須賀鎮守府へ無断侵入した際は、取り巻きの態度に激高し、発砲しかける一幕もあった。お酒を飲めば、百石以下その他大勢の例に漏れずバカ騒ぎをする。

 

筆端 祐助(ふではし ゆうすけ)

横須賀鎮守府の副司令長官。百石とは海軍兵学校時代から続く先輩・後輩の仲で、軍令部勤務時代は百石と同じ部署に配属されていた。瑞穂の未来、艦娘の捉え方、深海棲艦の脅威認識など考え方も非常に近く、とても親しい間柄。誰に対しても分け隔てなく接し、いつも豪快な笑顔で周りに元気を与えてくれる性格のため、百石と同様に部下からの信頼が厚い。そんな性格のためキレる姿はめったに拝めず、西岡はある意味貴重な経験をしたと言える。

 

緒方 是近 (おがた これちか)

横須賀鎮守府参謀部の部長。階級は少佐。年は百石と大差なく肩書の割には若いが、仕事ぶりを見る限り年齢のハンデは全く感じない。比較的柔和な表情をしていることが多いのだが、激高したときも平時そのままに笑っていることがある。そのため、彼にこっぴどく絞られた人間の中には彼の笑顔に恐怖する輩も存在する。横須賀鎮守府侵入の際、彼の素養教育をうけたあの御手洗実もその1人であるとかないとか。

 

五十殿 貴久(おむか たかひさ)

横須賀鎮守府参謀部作戦課長。階級は大尉。普段はごく普通の軍人だが、作戦立案に全身全霊を注ぐ作戦課のトップというだけあり、作戦立案に駆ける熱意は尋常ではない。まだ五十路を超えていないにもかかわらず、頭髪の生え際防衛線が撤下されつつある。

 

江利山 成永(えりやま なりなが)

横須賀鎮守府参謀部通信課長。階級は大尉。一般的な海軍軍人と比較して体の線が細く小柄なため、よく若年兵と間違えられる。

 

椛田 典城(かばた のりき)

横須賀鎮守府参謀部情報課長。階級は大尉。室内での情報畑を歩んできたせいか、他の一般的な軍人と比較して色白。

 

宇島 忠 (うじま ただし)

横須賀鎮守府参謀部の青年将校。階級は中尉。冷静沈着な性格で、みずづきの第一報が入ったときも多少の動揺はあったが、比較的落ち着きを保っていた。

 

西岡 修司(にしおか しゅうじ)

横須賀鎮守府警備隊の青年将校。階級は少尉。まだまだ、士官学校(海軍兵学校)卒業したての新人だが、なにどこにも懸命に取り組むため川合も含めた上官から信頼されている。だが、未だに警備隊の雰囲気には完全に馴染めていないようで、川合たちの暴走に振り回されることもしばしば。気が少し弱いところがまたにきず。加えて奥手な性格が災いしてか、未だに彼女はおらず、高校時代の同級生からも恋文すらもらえていない模様。

 

坂北 純一(さかきた じゅんいち)

 横須賀鎮守府警備隊の青年将校。階級は中尉。西岡の2期先輩。同じ海軍兵学校卒業者のため、西岡とはかなり親密な関係を築いている。西岡と異なり、女性にも比較的耐性を持っているため、艦娘との関係も良好。

 

漆原 明人 (うるしばら あきひと)

 艦娘が身に付けている艤装の整備、補給及び新装備開発を一手に担っている横須賀鎮守府工廠の工廠長。それだけでなく通常艦艇の整備等を管轄する造船部も工廠の隷下であるため配下に収めている。肌は浅黒く焼け、軍人の中でも屈強な体を持ち、あまつさえ強面なので第一印象はお世辞にも良いとは言えず、とある職業に従事する者と区別がつかない。だが、性格は他の軍人たちと同じく温厚で、頼れる上官である。またかつて兵器研究開発本部に務めていた経験から、最先端の科学技術動向に見識を持つ。そのため、みずづきとの演習を控え、百石と第五遊撃部隊で行われた対策会議に招聘されている。但し、いわずもがな怒ると非常に怖い。

 

椿 澄子(つばき すみこ)

 あの安谷本部長をトップとする特定害意生命体研究グループに所属している国防省兵器研究開発本部所属の海軍中尉。将来的な大宮警備府工廠への配属を睨んだ事前研修のため2033年10月1日付で横須賀鎮守府工廠へ配属された。普段から明るく、とっつきにくさなど微塵も脳裏をよぎらない親しみやすい性格だが、やはり彼女も技術者。自身の興味関心を刺激する対象が現れると、時折感情の枷が外れ、暴走気味になることも。探究心は強靭で、横須賀鎮守府への配属もみずづきに会いたかったため、上司や漆原に懇願した結果。漆原とは顔なじみ。兵器研究開発本部に入って初めて所属したチームのリーダーが漆原工廠長だった縁。その際、漆原の名前が分からずリーダーと呼んでいた癖が抜けず、いまだに彼のことをリーダーと呼ぶ。

 国防省兵器研究開発本部所属の技術士官ではあるが、その実、情報保全室の諜報員。単身で横須賀基地に潜入し、和深たち強硬派の動向を監視。みずづきの誘拐をはじめとする東京の指令をつつがなく実行した。その実績が、彼女の情報保全室員としての能力を証明している。

 

都木(つぎ)

 去年、横須賀鎮守府海兵団をしたばかりでまだ幼さを残す工廠員。純粋無垢な性格を利用され、黒髪の妖精の使いぱっしりにされそうになったことがある。

 

道満 忠重(みちみつ ただしげ)

医務部のトップである医務部長。階級は大佐。医務部長という管理職に就いてからも、時々医務室へ顔を出し診察をしている現場主義の軍医。赤城の喰いっぷりを心配し、食事はいいとしてもおやつなどの間食を控えるようにとドクターストップをかけたが、結果は言わずもがな。

 

 

・横須賀航空隊第102飛行隊

植木 譲治(うえき じょうじ)

 横須賀航空隊第102飛行隊隊長。階級は大尉。防空戦闘を前に動揺する赤城をさりげなく励ましたり、第一機動艦隊の艦娘たちを守るため決死の覚悟で深海棲艦戦闘機に空戦を挑んだりするなど、勇猛果敢かつ他人想いの観察眼を有した戦闘機乗り。

 

筒路(つつじ)

 横須賀航空隊第102飛行隊第7小隊の小隊長。階級は中尉。第5艦隊の救援命令を受け、横須賀湾沖より退避中だった第五遊撃部隊を掩護するため、吹雪たちを追撃する深海棲艦戦闘機へ空戦を挑んだ。

 

 

・軍令部

的場 康弘 (まとば やすひろ)

 瑞穂海軍の最高司令部たる軍令部の総長。階級は大将で名実ともに瑞穂海軍のトップ。艦娘擁護派の筆頭に挙げられる「爽風会」の会長で、擁護派の中心的存在。温和で情に厚く、部下想いの性格ゆえに士官・兵士問わず、部下からの信頼度は文句のつけようがない。百石や筆端も同会に所属しているため、彼らとの関係は深い。一見すると対立派閥である艦娘排斥派のリーダー格、例の問題児さんとは関係が険悪だと思ってしまうものの、実は・・・・。かなり古い付き合いである。

 

御手洗 実 (みたらい みのる) 

 瑞穂軍の最高意思決定機関、大本営統合参謀会議の委員(横須賀鎮守府への乱入事件で解任)。階級は中将。瑞穂の政・経・軍界に、多数の人材を輩出してきた旧士族の名家である御手洗家出身。性格は、独善的で自己中。自分が格下と思った相手は、例え上官であろうと噛みつく。軍規を無視した自己中心的な法外行為は当たり前で、軍の意思決定に自分の見解が反映されていなければ不満らしく、何かと介入している。その悪評は、海軍内において辺境の一兵卒にまで轟いている。艦娘の排斥を主張する排斥派の1人。排斥派の中心派閥である「憂穂会」の助言役でありながら、会長を抑え、実質的なリーダー。そして、裏の権力を使い作戦局の裏のトップとなっている。そのため、擁護派の百石や筆端とはすこぶる仲が悪い。並行世界から突然現れたみずづき欲しさに横須賀鎮守府へ強引に侵入し、みずづきの奪取を試みるが失敗した挙句、みずづきから物理的・精神的にきつい一撃を、ついでに横須賀鎮守府将兵からお説教を食らっている。現軍令部総長の的場とは同期で腐れ縁。また第5艦隊旗艦「因幡」艦長の大戸、第5艦隊第5戦隊司令官の結解、同第10戦隊司令官の花表とは深海棲艦出現以前から親交が深く、よそでは絶対に口にしない感情を吐露できる貴重な存在であった。しかし、房総半島沖海戦にて大戸、結解は戦死。また、通常兵器が深海棲艦の前に無力であることがはっきりと証明されたため、排斥派の実質的なリーダーとして重大な決断を下した。

 

 

 

 

御手洗 雪子(みたらい ゆきこ)

 御手洗実の妻。親類との付き合いやあいさつ回り、接待の補助、御手洗家の体面保持など前近代的な風習が色濃く残る世界に嫁いでも体調1つ崩さなかった強靭な女性。しかし、楓・直の他界後に体調を崩し、現在も床に伏せっている。

 

御手洗 楓(みたらい かえで)

 御手洗実・雪子の長女。母親に似たのか気が強く、海軍内で厄介がられていた父親の怒号などもへっちゃら。周囲からは「弟よりも男らしい」、「性別を間違えた」と評判だった。「望むなら、ツテで名門校へ通わせてやる」との父親の提案をはねつけ、自力で教員免許を取得し、自力で採用試験を受け、晴れて教師になるという夢を叶えた。ただ、親(父親)の七光りとコネから逃れるため、国公立教育機関は当初から選択肢に入っていなかった。2027年2月1日、勤務先の高校から東北本線の快速電車で帰宅中に「十条空襲」に遭遇。深海棲艦航空機から機銃掃射を受けたため、遺体が激しく損傷。歯型照合によって、横転した電車内で発見された身元不明遺体が本人と確認された。享年27。

 

御手洗 直(みたらい なおる)

 御手洗実・雪子の長男。楓の弟。誰に似たのかクソがつくほど真面目かつ嘘が下手。悪く言えば堅物、良く言えば実直な性格。故に、優しくも不器用で、外見上は性根が腐っている父とは最期まで折り合いがつかなかった。御手洗家の長男であり、跡取りであったため、父親はしつこく海軍兵学校への入校を要求したが、父の威光と意思で人生が左右されることを嫌い、陸軍士官学校に入校。卒業時、九州または東北方面隊への任官を希望したが、なぜか千葉県銚子市を拠点とする関東方面隊隷下第1師団第2歩兵連隊へ配属された。2027年、深海棲艦の侵攻が予見されていた八丈島に応援部隊「銚子支隊」として派遣され、2月11日から生起した「八丈島の戦い」に参加。当部隊を含めた八丈島守備隊約9500名は2月26日に玉砕。書類上、「死亡」とされた。御手洗家の墓に直の遺骨は入っていない。享年24。

 

 

 

 

 

富原 俊三(とみはら としぞう)

 軍令部作戦課課長。階級は中佐。排斥派中堅士官のとりまとめ役で、排斥派重鎮の1人。軍備課を任されるだけの現実的な思考を持っているが、ときたま保身や思想に基づいた非現実的行動が垣間見える。

 

宮内 芳樹(みやうち よしき)

 軍令部軍備課課長。階級は中佐。“第二の御手洗”と言われるほど傲慢さで有名な排斥派の中堅士官。

 

山内 昭三(やまうち しょうぞう)

軍令部作戦局軍備課課員。階級は中尉。作戦局作戦課に勤務していた際、上官の1人が百石だった縁で今でも彼との親交は厚い。一時期は排斥派が軍備課の実権を握っていたが、本人は擁護派。的場からの信任も厚く、みずづきたちが東京を訪れた際は的場よりみずづきたちの送迎・案内を命じられた。

 

武田 正人(たけだ まさと)

総務局副長。階級は大佐。統括会議において当初のMI/YB作戦を批判した大黒に、小林の名前を出して噛みついた。

 

安谷 隆一(やすたに たかかず)

技術研究開発本部の本部長。階級は少将。生粋かつ常人からは奇異の目で見られるほどの技術屋。あまりの変わり者ぶりに一部では「変態の総大将」とも囁かれている。

 

・第5艦隊

正躬 信雲 (まさみ しんうん)

瑞穂海軍で唯一の海上主力戦力たる第5艦隊の司令官。階級は少将。勇猛果敢な軍人のイメージとはほど遠く、あがり症でどこかおどおどした雰囲気を纏っている。頭髪はほとんど白に染まっていることも相まって、落ち着いた雰囲気の時は街を歩いている一老人と区別がつかない。但し、深海棲艦出現以前から現在の肩書であったため、深海棲艦の猛攻から第5艦隊を守ったのは正躬であるといっても過言ではない。軍令部作戦局局長の小原とは同期であり、軽口を叩きあうほど親交も深い。2033年7月12日、第一次野島岬沖海戦にて戦死。

 

掃部 尚正(かもん なおまさ)

第5艦隊の参謀長。階級は少将(但し、正躬の方が先任である)。その立場上、正躬の近くにいることが多いため、よくあがり症を発病した正躬のフォローを行っている。しかし、掃部も深海棲艦出現以前から第5艦隊の参謀長を務める古参組であるため、既に正躬のフォローには手慣れている。2033年7月12日、第一次野島岬沖海戦にて戦死。

 

大戸 雅史(おおど まさふみ)

第5艦隊旗艦因幡の艦長。階級は大佐(但し、結解や花表より2期先輩。そして先任)。正躬や掃部に比べ少し若く、大半の艦橋要員にとって父親ほどの年齢である。みずづきが参加した特別演習への参加を希望したものの、危機管理上の観点から艦隊旗艦の士気をとる艦長が離れるのはまずいと判断され、因幡に残ることとなった。そのため、直にその目で演習を見た正躬や掃部たちを羨ましがっている。排斥派のリーダー格たる御手洗と親交が深く、「御手洗派」の一員。2033年7月12日、第一次野島岬沖海戦にて戦死。因幡から脱出するも、運悪く遭遇した戦艦ル級flagshipの攻撃を受けた。

 

結解 由造(けっけ ゆうぞう)

第5艦隊第5戦隊の司令官。階級は大佐。妻と中学生の長女、幼稚園児の次女の4人家族。正躬に百石へ演習参加要請を行うよう、目を輝かせながら半ば強引に働きかけた張本人の1人である。御手洗とは大戸や花表と同じく、それなりに胸襟を開いて接することができる間柄であり、「御手洗派」の一員。2033年7月12日、第一次野島岬沖海戦にて戦死。

 

花表 秀長(とりい ひでなが)

第5艦隊第5戦隊の司令官。階級は大佐。結解と共に演習参加要請を行うよう正躬に迫った張本人の1人である。御手洗のペースに引きずられることもしばしばだが「御手洗派」の一員であり、大戸や結解と同じく親交が深い。

 

武田

 第5艦隊旗艦巡洋艦「因幡」所属の水上偵察機搭乗員。搭乗機は30式水上偵察機。その内の一機、武田機の機長。階級は少佐。海軍厚木基地に中学生の長女を持つ古い友人がいる。

 

高橋

 第5艦隊旗艦巡洋艦「因幡」所属の水上偵察機搭乗員。搭乗機は30式水上偵察機。その内の一機、武田機の偵察員。階級は中尉。海軍館山基地館山偵察飛行隊に29式偵察機搭乗員の友人がいる。気が弱く、狡猾で高圧的な先輩の横暴を受けていたためよく匿っていた。兵士としては適性を疑ったことはあるものの、友人としては申し分ない人間と認識している。

 

 

・陸戦隊司令部

富樫 裕也(とがし ゆうや)

陸戦隊司令部参謀長。階級は大佐。佐世保海兵団出身。地べたを這いずり回ってここまで昇進してきた生粋の陸戦畑。故に、血の気が多く、血気盛ん。MI/YB作戦を議論する統括会議では上官でありながら侮辱してきた宮内に対して、激高した。その火勢は凄まじく、止めに入った同僚や部下にも拳を打ち込んだ。これだけ見ると短気を絵にかいたような性格だが、少々熱血気味なだけで基本的には部下想い。当初のMI/YB作戦には一歩間違えれば多大な犠牲が生じかねないことを危惧し、積極攻勢派でありながら強固に反対した。

 

・横須賀特別陸戦隊

和深 千太郎(わぶか せんたろう)

10月1日付で佐世保特別陸戦隊司令部より異動してきた、横須賀特別陸戦隊司令官。階級は中佐。出身は山形県。鼻の下に日本における明治政府高官のように髭を蓄えている。艦娘の処遇を脇に置き、反攻作戦実施に注力するとした憂穂会上層部の方針に従わず、房総半島海戦後の情勢においても艦娘排斥を唱え続けた強硬派の1人。同じ強硬派で懇意にしている武原より物腰が柔らかく、一応礼儀作法は重んじるが、腹の底に渦巻く感情は武原と大差ない。憂穂会の会合で示した御手洗の意志を「たぶらかされてるのではないか」と曲解し、旗下の横須賀特別陸戦隊を用いた反乱を画策。実行に移すが、全て御手洗を筆頭する東京の手のひらの上で踊らされていたにすぎず、最後は「横須賀騒動」の主犯として憲兵隊に拘束された。

 

武原 勝(たけはら まさる)

10月1日付で沖縄防備隊より異動してきた、横須賀特別陸戦隊第1特別陸戦隊隊長。階級は少佐。煮卵のように頭皮は黒ずみ、毛髪が全滅しているため、一部からは「煮卵頭」と蔑まれている。艦娘を「化外」と言い放ち、海上護衛艦隊指揮官に任命され、階級も地位も上の花表秀長に対して軍刀を抜こうとするほどの過激軍人。和深と懇意にしており、強硬派の1人。和深と共に旗下の横須賀特別陸戦隊第1特別陸戦隊を用いて反乱の片棒を担当。御手洗に腹へ非殺傷性のゴム弾をぶち込まれた際は、実際に銃撃を受けたと勘違いしたのか大声を上げて呻いていた。最終的には和深と同様、憲兵隊に拘束された。

 

梨谷 克治(なしたに よしはる)

横須賀特別陸戦隊第2特別陸戦隊隊長。階級は中佐。排斥派の一員であり、当初は和深と共に反乱に参加したが、御手洗が発案した計画の参加者であり、警備隊と協力して和深たちを拘束した。排斥派は排斥派でも、憂穂会の決定に賛同する積極攻勢派に近い立ち位置にいる。

 

 

・航空戦隊司令部

小林 久兵衛(こばやし きゅうべい)

航空戦隊司令部司令官。階級は少将。大黒の上官。大黒は「戦闘に犠牲はつきもの」と噛みついた武田に対し「むしろ、小林少将はお前を怒鳴りつけられるだろう」と述べている。

 

大黒 周平(おおぐろ しゅうへい)

航空戦隊司令部首席参謀。階級は大佐。冷静に理性を保ちながら富樫に同調し、積極攻勢派でありながら当初のMI/YB作戦案に強固に反対した。ただ、部下からの突き上げを受け、自分の意に反した作戦案を答申することになった小原たち作戦局の苦悩を理解しており、口火は武田たちに向けた。

 

・由良基地

堀北 市兵衛(ほりきた いちべい)

 由良基地隊の司令官。階級は大佐。白髪に掘りの深い皺を幾重もたたえ、いかにもおじいさんという風貌。まだ1歳にならない孫がいる。第三水雷戦隊のメンバーとは顔なじみで、気を張らずに話し合える人物である。

 

中島 克樹(なかじま かつき)

 紀伊防備隊の参謀長。階級は中佐。いざとなれば部下を死地に送らねばならない立場に相応しく、合理主義で規則に厳しい。

 

間谷 敦(またに あつし)

 由良基地広報課の士官。階級は少尉。艦娘に対して嫌悪感はなく、上官の前では緊張してしまう一般な軍人。

 

百千

 紀伊防備隊司令。

 

十部

 紀伊防備隊副司令。後に横須賀鎮守府警備隊副隊長に異動。擁護派、排斥派双方に属さない中立派の立ち位置を絶妙に活用し、警備隊隊長川合と御手洗、御手洗派の1人花表との橋渡し役を担った。

 

 

瑞穂陸軍

石橋 英機(いしばし ひでき)

 陸軍参謀本部総長。

 

 

大本営

鳥喰 政憲(とりばみ まさのり)

 大本営長官。陸軍参謀本部総長の石橋、海軍軍令部総長の的場を指揮下に置く、瑞穂軍のトップ。

 

 

神奈川県警察

杉生 仁男(すぎばえ ひとお)

神奈川県警察警備部第一機動隊特定危険思想対処班第1班(通称:横須賀監視隊)隊長。階級は警部。

 

 

瑞穂政府

佐影 禎明(さかげ さだあき)

瑞穂国内閣総理大臣。政治家ならば誰もが目指すゴールに到達できた実力と運を兼ね備えた政治家だが、それを鼻にかけることもなく、自慢する事もなく、いくら自分より地位が低かろうと必ず年長者には敬語を使用する人徳者。趣味は自転車で駆けながら景色を楽しむサイクリング。自転車愛好家としても有名で、自転車の展覧会にはたびたび私的に保有している希少価値の高い自転車を出品しているほど。サイクリング中に接触事故を起こし、入院したこともある。房総半島沖海戦時、額に包帯を巻きながら危機管理に奔走した。

 

大前 研一(おおまえ けんいち)

 佐影の首席補佐官。

 

米重 薫(よねしげ かおる)

 副総理兼大蔵大臣。

 

神津 四朗(こうづ しろう)

 官房長官。政府内・自憲党内で佐影の右腕と語られる実力政治家。現在に至る苦労を無言のうちに伝えてくる鋭い眼光はひとたび怒気を宿すと、新人議員が失禁するほどの迫力を帯びる。

 

森本 五典(もりもと いつのり)

 外務大臣。メガネをかけ、加齢のためか白髪の増加により頭髪は灰色となっている。

 

小野寺 七兵衛(おのでら しちべい)

 国防大臣。

 

林 豪将(はやし ごうすけ)

 保安大臣。元警察庁の官僚。デスクワークだけでなく現場で社会にはびこる闇と肩を並べてきた猛者であるため、非常事態大臣会合時に向けられた神津の睨みなど全く意に介さなかった。高学歴警察官僚の風潮に漏れず、大戦勃発以降着実に力を増しつつある軍に対して警戒感を隠さず、軍人嫌いを公言して憚らない。そのため房総半島沖海戦時はしきりに海軍の責任を強調していた。軍人嫌いのため、元陸軍軍人である通産大臣細川五郎との関係は険悪。

 

細川 五郎(ほそかわ ごろう)

 通産大臣。元陸軍軍人。退役してからかなりの時間が経過しているにもかかわらずたくましい肉体を維持している強者。細川自身は警察嫌いでもなんでもないが、保安大臣の林が大の軍人嫌いであるため、彼との仲は険悪。

 

山本 良子(やまもと よしこ)

 憲政史上初の女性自治大臣。一般的におばあちゃんと言われる年頃でありながら健康不安説は皆無。男性が大半の政界でも持ち前の元気さで着々と頭角を現している逸材。

 

 

 

自由立憲党(自憲党)

水破

 自憲党幹事長。佐影が自転車事故で入院した際は自憲党総裁の職務を代行していた。

 

 

 

横須賀市

斎藤 忠兵衛(さいとう ちゅうべい)

 横須賀市の市長。横須賀出身。故郷である横須賀に思い入れがあり、房総半島沖海戦時深海棲艦侵攻部隊の接近を受け、横須賀市が警戒区域に指定された際は市長の責務を最後まで果たそうとしていた。

 

国立理化学研究所

所沢源五郎(ところざわ げんごろう)

瑞穂国内における生命科学の第一人者、。生命科学系学部を有する難関国立大学を練り歩き、優れた研究業績がある科学者しか任命されない国立アカデミーたる瑞穂学術会議の委員。当分野で世界最先端をいく北京理工大学から招待状を受けたこともある。

 

 

妖精

黒髪の妖精

工廠に所属している妖精たちを統率するリーダー。リーダーらしく堂々たる立ち振る舞いで、初対面の人間にも物怖じせず対応できる。純粋無垢な少年をこき使おうとした黒い一面もあるが、漆原には若干腰が引けている。定位置は漆原の肩。

 

茶髪の妖精

 茶髪を黄色いリボンでポニーテールにしている妖精。天井から落下した際、みずづきの手で受け止められた。それ故か、みずづきへかなり心を許している。

 

 


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