水面に映る月   作:金づち水兵

6 / 102
冒頭用に作成した簡易版の設定集です。

4話以降のお話を読む前に目を通していただいても構いませんが、それなりに4話時点から見るとネタバレ的な内容が含まれています。その点はご注意下さい。


なお、詳細版は最新話に準拠しているため、がっつりネタバレが書かれています。詳細版を読まれる際は、できる限り最新話まで読まれてからご覧ください。


設定集 簡易版

日本世界

 用語

日本国

かつて世界第3位の経済大国として名を馳せた先進国。2033年現在では、第二次日中戦争と丙午戦争、そして深海棲艦との戦争により大・中・小都市のほとんどが焦土と化し、インフラも破壊され疲弊している。シーレーンの断絶により、エネルギー不足と食糧不足が深刻化。計画停電と過酷な食糧配給制が実施されている。また、深海棲艦との本土決戦に備えるため、徴兵制の導入のみならず、中学校・高等学校において軍事教練が行われている。経済も徹底的に破壊されたため、民間経済は壊滅、多くの企業が倒産。各種インフラの復旧、軍再建・拡張などの官需がなけなしの日本経済を支えている。失われた20年とは比較にならない閉塞感に覆われていたが、艦娘の登場以降は深海棲艦爆撃隊の襲来回数が激減したため、復興の兆しも見えている。このような状況にも関わらず、軍事力は東アジア一であり、本格的な攻撃を受けていない他国からは「島国根性の発現」として畏怖されている。

 

華南共和国

 2025年10月、第二次日中戦争のさなかに起きた中国華南地方の中国人民解放陸軍を中心とする勢力のクーデターによって南京で成立した新国家。クーデターには華南地方の各省・市・自治区の共産党委員会も一斉に加わったため、統治機構は強固。これにより中国大陸には、華南と中華人民共和国が併存することとなった。かの国とは現在でも戦闘を続けており、最近は中華人民共和国の北東アジアにおける孤立、日本の経済・軍事的な支援によって戦線を押している。日本とは同盟国。

 

台湾民主共和国

 第二次世界大戦後の国共内戦以来、国家もどきという微妙な位置づけであったが、2017年以降中国がさらに対外強硬姿勢を強めたため、独立し日本・アメリカとの安全保障条約の締結を求める世論が強まる。華南共和国が成立したあと、協議のすえ独立が認められる。台湾の新たなスタートとして、それまで掲げていた中華民国という国号を廃し「台湾民主共和国」とした。先島諸島奪還作戦が成功したあかつきには、台湾政府の強い意向を受け台湾にも艦娘を主体とする日防軍の基地が置かれる予定である。

 

中華人民共和国

 かつて世界最大の人口を抱え、世界唯一の超大国であるアメリカ合衆国を経済・軍事の両面で追い越すとさえ言われた共産党一党独裁国家。2017年、日本の西日本大震災発災に端を発した経済危機「チャイナ・ショック」の震源地。第二次日中戦争中に起きたクーデターにより版図の一部だった華南地方が独立。多くの領土と人民を失ったものの中国は華南を国家承認しておらず、いまだに徹底抗戦の構えを崩していない。だが、それまでになしてきた行動のつけか日本はもちろんロシアを含めた周辺諸国に見捨てられており、まさしく四面楚歌の状態。華中内戦は、華南に日本や韓国・北朝鮮・台湾・東露などがついているため戦線は押されっぱなしである。

 

ロシア連邦

 ソ連崩壊以降、事実上のソ連後継国家として民主主義・市場経済を導入しつつも、独自の価値観からアメリカ合衆国、EU加盟国と対立が絶えなかった世界最大の領土面積を有していた国家。核兵器に代表される大量破壊兵器をアメリカに次いで保持しており、通常兵器においても周辺諸国を圧倒する強大な軍事力を誇っていたが、2033年現在、事実上4つに分裂している。

 

アメリカ合衆国

 誰もが知る世界唯一の超大国、だった国家。現在は日本同様、栄華を誇った都市部は深海棲艦の爆撃により壊滅し、建国以来初めて敵対勢力による本土侵攻を許している。侵攻されている東海岸各所では、本土にある戦力を総動員し激しい戦闘が継続中である。日本に続いて艦娘の実戦配備を成し遂げ、彼女たちの活躍によりメキシコ湾とカリブ海の制海・制空権の確保及びそれらの海洋に浮かぶ島々の死守に成功している。

 

日本国防軍

 2030年に前身の自衛隊を国軍化した軍事組織。略称は日防軍。国軍化に伴う日本国憲法第9条をはじめとした条文の改正は行われていない。国軍化と当時に戦闘で損耗した人員の補充ならびに本土決戦に備えるため、世論の圧倒的な支持を受け徴兵制が導入された。

 

陸上国防軍(陸防軍)

 陸上自衛隊の後継組織。海防軍や空防軍と比較して戦力の消耗はまだ少ない。それでも、先島諸島防衛線や沖縄本島攻防戦、小笠原・伊豆諸島での戦いでは多くの犠牲者を出している。先島諸島奪還作戦では、普通科連隊など大規模な戦力を投入している。

 

海上国防軍(海防軍)

 海上自衛隊の後継組織。通常戦力はほぼ壊滅しており、現在は艦娘と特殊輸送艦、小型護衛艦、対潜哨戒機が主戦力となっている。艦娘の優位性が確認されて以降は通常戦力の再建より、艦娘部隊の増強が優先されている。艦娘が深海棲艦の侵攻を防いだ事実から、日防軍なかでも海防軍に対する国民の信頼・期待はずば抜けている。

 

・須崎基地

高知県須崎市の野見湾にある海防軍の基地。生戦勃発後、高知湾からの敵侵攻阻止及び高知湾沿岸地域の安全を確保する目的で新設された。しかし、その辺境な立地もあって今では、問題児たちの左遷先と化している。当基地には艦娘部隊である第53・54防衛隊と彼女たちの輸送任務を背負う特殊輸送隊が配備されている。基地の規模は小さく、所属する隊員の名前は知らなくとも顔は知っている、という状態が一般化している。

 

・防衛隊群

ヘリコプター搭載護衛艦(DDH)を旗艦に編成されていた機動部隊たる護衛隊群の艦娘版。F-35BやF-3などの航空機を搭載している特殊航空護衛艦を旗艦に構成されている。日本の悲願だった太平洋戦争敗戦以来初の、空母打撃群であり、海防軍呉基地に3個艦隊が配備されている。戦術・戦略双方において極めて重要な存在であるため、重要な作戦には必ずどこかの防衛隊群が参加し、艦娘の中でもエリート中のエリートが配属されている。そのため、防衛隊群を動かす事態というのはかなり深刻なものに限られる。

 

航空国防軍(空防軍)

 航空自衛隊の後継組織。深海棲艦侵攻初期に海防軍と同様、日本全国の基地が爆撃を受けたため、数少ない戦力で奮戦したものの一時壊滅した。現在は急ピッチで再建が進められ、従来戦力の大半が失われたため、F-35jと戦後初の国産戦闘機F-3が主戦力となっている。

 

防衛省

 日本の国防政策を担う中央官庁。昨今の情勢により、日本政府内での発言力の強さは高止まりしている。自衛隊の国軍化の後も、名称は防衛省のままである。

 

第二次日中戦争(東シナ海紛争)

 2025年9月に発生した日本国・中華人民共和国との戦争。開戦のきっかけは東シナ海日中中間線公海上で発生した中国海軍東海艦隊の駆逐艦2隻が何者かに撃沈された事件である。直接の戦闘が尖閣諸島周辺の東シナ海で収まった局地戦の9月戦争と日本本土に対するミサイル攻撃・サイバー攻撃が発生し全面戦争の様相となった10月戦争に大別される。華南共和国が成立するきっかけとなったクーデターと重い腰を上げた米国の消極的な介入により、中華人民共和国は継戦能力を喪失。一応は終結したものの停戦条約などは一切ないため、現在も戦争は継続中である。

 

第三次世界大戦

 これまでの第一次・第二次世界大戦のように、世界の先進国や新興国が二つの陣営に分かれて全面戦争を行う従来の世界大戦とは全く違う様相を呈した世界大戦。「新世界大戦」とも呼ばれる。その最たるものとして、アメリカ合衆国はこの戦いを傍観していた。第二次日中戦争とその後に続いた華中内戦による世界経済の大混乱が最終的な発端となった。

 

 深海棲艦

世界が第三次世界大戦で混乱の極みにあった2027年に、突如として出現した謎の生命体。出現当初から軍民問わずの無差別攻撃、無差別殺戮を遂行し、個体によっては人間を捕食する。どの個体も何らかの火器で武装しているが、一応に兵器水準は第二次世界大戦並みである。しかし、すべての個体が現代兵器の想定していない大きさ(人間大やドローン程度)で物量も規格外であったため、通常兵器での対処は困難を極め各国海軍を壊滅させた。陸上型の個体が世界各地に侵攻し、人類の生存圏を圧迫している。存在など詳細は一切不明。但し人類との激戦を通じ、武器や戦術が少しずつ進化しているため、低能な生命体でないことは確かである。

 

 深海棲艦

世界が第三次世界大戦で混乱の極みにあった2027年に、突如として出現した謎の生命体。出現当初から軍民問わずの無差別攻撃、無差別殺戮を遂行し、個体によっては人間を捕食する。どの個体も何らかの火器で武装しているが、一応に兵器水準は第二次世界大戦並みである。しかし、すべての個体が現代兵器の想定していない大きさ(人間大やドローン程度)で物量も規格外であったため、通常兵器での対処は困難を極め各国海軍を壊滅させた。陸上型の個体が世界各地に侵攻し、人類の生存圏を圧迫している。存在など詳細は一切不明。但し人類との激戦を通じ、武器や戦術が少しずつ進化しているため、低能な生命体でないことは確かである。

 

 

深海棲艦との戦争(対深海棲艦大戦、生戦)

 2027年、深海棲艦の無差別攻撃により勃発。当初の楽観論に反し、世界各国は連戦連敗。高度に築かれた情報網は各所で寸断され、東アジア・極東ロシア・東南アジアなど日本周辺を除いた各国の詳しい情勢は不明。アメリカは日本侵攻戦力を遥かに上回る敵部隊の侵攻を受け、本土侵攻を許している。ヨーロッパは、地中海の制海権を死守し西欧諸国が奮戦しているものの中・東欧諸国は激戦が続く中東や南アジアからの難民に紛れて侵入したテロリストやロシア連邦を後ろ盾とする新露派といまだに交戦しており、それどころではない。ただ、なんとかEU(ヨーロッパ連合)の枠組みで結束は維持している。中東は、相変わらず泥沼。一説には、あまりの泥沼ぶりに深海棲艦が侵攻を控えているとさえ言われている。アフリカ・南米の情勢は不明。

 

宮古海峡の悲劇

 2028年9月、マリアナ諸島、八丈島以南の伊豆・小笠原諸島、大東諸島の陥落・放棄を受け日本政府は、南西諸島をはじめとする太平洋側島嶼部の民間人退避を決定。その第一陣として、最も被侵攻危険性が高い先島諸島から疎開が行われることとなった。徴用された民間企業のフェリーなどには未成年者や高齢者の搭乗が優先され、念のため海上自衛隊の護衛艦2隻が護衛に付けられた。この後も随時疎開が実行される予定であったが、船団全滅を受け計画は中止された。船団がロストしたのち、自衛隊・警察・海上保安庁による決死の捜索が行われたものの、生存者は一人も発見されなかった。死者は全乗客・乗組員2万3491人。

 

先島諸島防衛戦

 2028年9月、アジア・太平洋戦争末期の1945年に生起した沖縄戦以来、83年ぶりに発生した地上戦。与那国島・石垣島・宮古島などの主要島を含め全島に深海棲艦地上部隊が上陸。生戦勃発以後、自衛隊が深海棲艦の地上部隊と交戦した初めての戦闘である。詳しい様相は生存者がいないため不明。しかし、断片的に送られてきた映像や写真には、生きながら捕食される人々や自衛隊員と島民が肩を並べて戦っている姿など、21世紀の常識では到底信じられないような光景が映し出されていた。死者は約10万2000人。市役所など公的機関も壊滅したため、詳細な人数は不明。

 

伊豆諸島攻防戦

 先島諸島防衛線に先駆けて発生した深海棲艦と日本国の本格的武力衝突。在グアム米軍を壊滅させた深海棲艦は日本本土を目指し第二列島線の島々を北上。日本政府はグアム米軍の惨状を受け、そうそうに小笠原諸島・八丈島以南の伊豆諸島の放棄を決定。深海棲艦が八丈島へ達するまで、住民の避難と部隊展開の時間を稼ぐため数回、自衛隊が襲撃。この甲斐あって、小笠原・伊豆諸島の住民には空爆に巻き込まれた者を除いて、死者は出なかった。八丈島を敵が侵攻する際、自衛隊は対艦ミサイルや高高度からの爆撃など、効率そっちのけの徹底した遠距離戦を展開。深海棲艦が疲弊し体制の立て直しを図っていた隙をついて、決戦を挑んだ。敵の守備部隊は健在だったが侵攻部隊の殲滅に成功した。この過程において八丈小島沖で、空自爆撃隊の爆撃や陸自の遠距離砲撃の阻止をもくろむ敵機動・水上打撃部隊と周辺に展開し作戦行動を取っていた護衛隊群との間で戦闘(八丈小島沖海戦)が生起した。結果は、刺し違え。護衛隊群の全滅と引き換えに敵艦隊は大損害を受け撤退。これによって、完全なる制海・制空権確立に成功し、侵攻阻止の地盤が整った。

 

特殊護衛艦(艦娘)

 専用過程で特別な訓練を修了し、特殊護衛艦システムを装備し戦う女性軍人の公称。公称というだけあって、公的文書や国会答弁、政府首脳の記者会見ぐらいでしか使用されていない。日防軍ですら一般的には艦娘と呼んでいる。彼女たちも一般国民であるため、当然のことながら個人の名前があるものの、特殊護衛艦システムという国家機密の塊を背負っているため身元が特定されないよう任務名で呼ばれる。外見では一般軍人と判別不能。しかし、特殊護衛艦システムの同期影響により老化が停止するため、容姿は特殊護衛艦艤装を受領したときのままである。特段の副作用もないため、艦娘の中にはこれを喜んでいる者もいる。

 

特殊護衛艦システム

 日本が世界に先駆けて開発し、2028年10月に実戦配備した対深海棲艦用の切り札。その実用性には、感服するばかりである。戦闘艦の戦闘能力を個人単身でも発揮できるため、少ない物的・人的資源でも通常戦力並みの作戦行動が可能。艤装装着による深刻な身体的悪影響は存在しないものの、同期により老化の停止が存在する。老化停止の副作用は現在のところ確認されていない。日本以外に、アメリカ・イギリス・フランス・ドイツ・イタリア・ロシアが既に実戦配備済み。各国とも実在する戦闘艦をベースにしているが、それだけでは数が足りず日本のように実在せず独自のシステムを開発している国もある。

 

なみかぜ型護衛艦

平成26年度中期防衛力整備計画(26中期防)で計画された全く新しいタイプのコンパクト護衛艦。何故かまいかぜ型護衛艦と同じく艦名に“かぜ”がついている。命名当時、何故同じなのか論争が巻き起こったが、一説にはネタぎれで仕方なく、とさえ言われている。一時期は軽武装過ぎて作戦能力の低さが露呈したアメリカ海軍の沿海域戦闘艦(LCS)の二の舞だとの指摘も出たが、深海棲艦との戦闘ではその高速性と機動性を主軸とした一撃離脱戦法で高い評価を受けた。この戦法は、レーダーなど捜索機器が満載されている現代艦には自殺行為だが、目視による哨戒が主な敵に対してはかなりの戦火をあげた。それでも多くの同型艦が撃沈されている。

 

いず型輸送艦

派遣先の海上でも休息や食事、また艤装の点検・補修を可能とするいわば臨時海上基地をコンセプトとし、平成26年度中期防衛力整備計画(26中期防)で計画された「コンパクト護衛艦」である、なみかぜ型護衛艦をベースに開発された、艦娘運用に特化した特殊輸送艦である。これにより、艦娘の弱点である継戦能力の低さと作戦行動範囲の狭さが解消され、護衛艦や航空機と並び第一線級の戦力として確立された。船体の後部に艦娘発着艦用ウェルドック、艦橋下部の第二甲板に戦闘時の司令部となるFIC(司令部作戦室)と艦の戦闘を担うCIC(戦闘指揮所)が設置されている。武装は僚艦や艦娘との共同行動を大前提としているため、62口径76mm単装速射砲(ステルス・シールド版)や21連装SeaRAM、20mm CIWS ファランクスなどの自衛火器のみ。対空ミサイルや対艦ミサイル、アスロック、魚雷などの攻撃兵器は搭載していない。基準排水量は3300トン。2033年現在、2個防衛隊(艦娘8人)に対して一隻の割合ですべての艦娘部隊に配備され、後継艦の開発も始まっている。艦名の由来は深海棲艦の本土侵攻を多大な犠牲の果てに防ぎきった、伊豆諸島防衛戦である。

 

・たかなわ

須崎基地に配備されているいず型輸送艦。第53・54防衛隊の臨時海上基地として数々の作戦に参加してきた。日向灘では、潜水艦型深海棲艦の魚雷攻撃により後部ウェルドック付近と、FIC・CIC下層を被弾。突然の奇襲だったため隔壁の閉鎖が間に合わず、浸水域と傾斜角が拡大。岩崎艦長が退艦命令を発した後、62口径76mm単装速射砲の弾薬庫が誘爆し、沈没した。

 

まいかぜ型護衛艦

 あきづき型護衛艦の次に建造された対潜重視の汎用護衛艦。他の護衛艦と同様、同型をベースとするまいかぜ型特殊護衛艦の方が艦の数が多い。

 

いぬわし型ミサイル艇

壊滅した既存戦力の穴埋め、本土侵攻を目論む敵の足止め・戦力漸減を目的に沿海域防衛の柱として開発されたはやぶさ型ミサイル艇の後継艦。基準排水量は1500トン。武装は76mm速射砲、21連装SeaRAM、17式艦対艦誘導弾Ⅱ型8連装発射筒で前型よりかなりの強化が図られている。艦娘が前線に投入される以前の国防方針で配備が決定されたため、艦娘登場後は「用済み」との意見があがり開発が中止になりかけたこともあった。しかし、防衛手段多重化の必要性が重視され2031年から順次、各地の海防軍基地に配備されている。艦娘が海防軍の作戦において比重を高める中、まともに前線にたっている通常艦艇部隊は彼らいぬわし型ミサイル艇を配備する部隊のみである。

 

 F-3 ステルス戦闘機

国防軍創設と同じ2030年に実戦配備された日本初のステルス戦闘機、そしてアジア・太平洋戦争以来初の純国産戦闘機である。上記のようなあまりに大きすぎる肩書きと期待を背負っているものの、世界最先端の技術力を誇る日本の申し子にふさわしい、性能を誇っている。生戦により壊滅した従来航空戦力たるF-15戦闘機やF-2支援戦闘機の代替として、F-35ステルス戦闘機と共に急速に配備が進められている。長大な滑走路を有する航空基地での運用を想定したA型と空母での運用を想定したB型の2タイプが存在する。但し、開発費と開発時間を削減するためF-3BにはF-35AとF-35Bほどの相違はなく、外見ではF-3Aかどうかほぼ判断できない。

 

 17式艦対艦誘導弾(SSM-2B blackⅠ)

90式艦対艦誘導弾(SSM-1B)の後継として、2012年に制式化され陸上自衛隊に配備された12式地対艦誘導弾を艦載化した新型艦対艦誘導弾。SSM1-Bと比較し命中精度や目標識別機能の向上、射程距離の伸長が図られた。射程は150km以上。弾体の塗装はこれまで通り視認性の低い白。しかし、これも人間大の深海棲艦などを想定していなかった。それほどの小型目標を通常の軍艦を念頭に開発されたSSM内蔵のアクティブ・レーダー装置や赤外線識別、画像識別装置で判別するのは非常に困難であった。また、弾種はHE(高性能爆薬)。駆逐級や軽巡級など低装甲目標にはそれなりの効果があったが、重巡級や戦艦級などの重装甲目標には効果が乏しく、結果、17式艦対艦誘導弾の撃沈率は悲惨なほど低い水準にとどまってしまった。

 

 17式艦対艦誘導弾Ⅱ型(SSM 2B blockⅡ)

従来の対艦兵装では対処困難な深海棲艦の出現により、開発された17式艦対艦誘導弾の発展型。弾種はHE(高性能爆薬)から対戦車弾などで使用される成形炸薬弾へ変更。また、誘導装置のプログラムに改良が施され、人間大の小型目標対処が可能になった。もっとも、開発が完了し実戦配備されたのは、海上自衛隊が壊滅しシーレーンが寸断され、艦娘が活躍しだした2028年の暮れ。

 

30式空対地誘導弾(AGM-1)

2030年に制式化、実戦配備が開始された初の国産空対地誘導弾。誘導方式はアクティブ・レーダー誘導で、いわゆる撃ちっぱなし式。発射後、誘導に機動を縛られることもなく即座に回避機動が行えるため、母機の安全が格段に向上した。弾頭は戦車など装甲目標の撃破を念頭に置いた成形炸薬弾頭。搭載可能数は2発。第3次世界大戦と生戦によって、使用してきたアメリカ製の空対地ミサイルヘルファイアが入手困難となったため、ヘルファイヤミサイルの代替・後継、そして対深海棲艦戦闘でも重要な攻撃手段となることを目的に開発された。一部の専門家からはヘルファイアを丸パクリした模造品と酷評されたりもしたが、そこまで言われるほどの欠陥品ではない。日本がかつて実戦配備していたヘルファイアはAGM-114Mと形式番号が付されたタイプで、誘導方式はアクティブ・レーダー誘導方式ではなく、弾頭が命中するまで母機が目標にレーザーを照射し続けなければならないセミアクティブ・レーザー誘導。またその弾頭は爆風破片弾頭であり装甲の薄い地上の装甲車や小型艇への攻撃を念頭に置いていた。そして、射程が9kmと短いこともあって、AGM-114M ヘルファイアⅡは対深海棲艦戦闘において全くと言っていいほど役に立たなかったのだ。

それを教訓とし最後の手段でも切り札となれるよう開発されたのが、この30式空対地誘導弾である。これによってこのミサイルでも、戦艦は困難であるものの重巡洋艦クラスまでなら戦闘不能にさせることが可能になった。ただ、開発が急ピッチで行われ射程の伸長は見送られたため、9kmのままなのが玉に瑕である。

 

 登場人物

知山 豊(ちやま ゆたか)

 須崎基地の第53防衛隊司令官。階級は三等海佐。基本的に真面目だが、親交の深い同僚や部下には子供のような悪戯を働くこともある。防衛大学校などエリートコース出身者以外の艦娘部隊司令官というのは珍しいため、他部隊の司令官から時々遠回しの嫌味を言われる。部下を想う気持ちが非常に強く稀に昇進を餌に懐柔を図る上層部と衝突している。その立場上、東京などへ出張する機会が多かった。2033年5月26日戦死。

 

みずづき

 あきづき型特殊護衛艦であり、第53防衛隊の隊長。あまり社交的ではないが、親しい人間とは積極的に交流する。知山は第53防衛隊創設時よりの上官。そのため同隊の中で最も多くの時間を知山と過ごしている。少々天然な所もあり、よく始末書を書かされていた。2010年生まれ。父・母・弟がいる。2033年5月26日に敵潜水艦の魚雷を受け戦死、かと思われたが、あり得ない事象に巻き込まれる。

 

かげろう

 まいかぜ型特殊護衛艦。同隊で一番の新人。物静かで温和だが、みずづきをからかったりなど、意外な一面もある。出身は徳島県徳島市。父・母・兄がいる。2033年5月26日、みずづきをかばい戦死。

 

おきなみ

 たかなみ型特殊護衛艦。活発で男盛り、The運動部といった感じのムードメーカー。気兼ねなく初対面の人物、上官にも話しかけるため初印象は上々。ただ、知山に無茶な要求をしすぎるなどフレンドリーすぎるところもある。はやなみとは結構仲がいい。2033年5月26日戦死。

 

はやなみ

 たかなみ型特殊護衛艦。人見知りが激しく、基本的に無口。第53防衛隊の仲間など親しい人間とは話すものの、声量が小さく言葉も断片的でよく聞かないと何を言っているのか分からない。何故か性格が真逆のおきなみとは仲良し。2033年5月26日戦死。

 

岩崎 友助(いわさき ともすけ)

いず型特殊輸送艦たかなわの艦長。階級は一等海佐。一等海佐という階級、そして艦長という肩書きを具現化したかのような威厳をたたえている。例に漏れず彼も深海棲艦との戦闘経験があり、地獄を味わった。そのため、自身がのうのうと生き残っていることに責任を感じている。一人の青年の最期を案じ、みずづきに奇跡の発現を託した。たかなわの損害状況を鑑み、総員退艦命令を発令。艦橋を目に焼き付けた後、最後に艦橋を後にした。

 

坂下 芳樹(さかした よしき)

いず型特殊輸送艦たかなわの航海長。階級は三等海佐。岩崎の性格や葛藤を理解している良き部下。岩崎の退艦命令に従い、艦橋を後にした。

 

瑞穂世界(日本世界とは異なる歴史を歩んだ並行世界)

 用語

瑞穂世界

日本世界とは異なる歴史を歩んだ並行世界の呼称。地形や気候、自然環境は日本世界と差異はない。但し、国名は全くの別物であり、地名も異なるところが多々存在する。近代以前は同一ではないものの、大方日本世界と似たような歴史をたどっていた。だが、近代以降は明確に分岐している。「力よりも言葉」が万国共通の概念として定着しているため、戦争や紛争は日本世界と比較して圧倒的に少なく、あっても小規模な紛争でとどまっている。そのため、日本世界では数えきれないほど行われてきた国家間の大規模戦争や、果てしなく続く宗教・民族戦争、ましてや第一次世界大戦や第二次世界大戦もない。そのため、深海棲艦との戦争が史上初の「大戦」である。大戦による犠牲者は全世界で約9700万人と推定されている。技術水準は日本世界と比較にならず、日本世界の1940年代~1960年代に相当する。

 

 

瑞穂国

 日本に相当する国家。立憲君主制かつ議院内閣制。太古の昔から瑞穂を治めてきた天皇家は国民統合の象徴と位置付けられ、統治能力の一切は瑞穂政府が握っている。領土は本州・四国・九州・北海道と周辺に存在する諸島。他国と同様に深海棲艦との戦争で海軍は壊滅。一時は第二次列島線を占領、シーレーンも完全破壊され本土決戦の可能性も浮上したが艦娘の登場により、本土決戦は回避された。そればかりか、艦娘との共同作戦で部分的なシーレーンの回復にも成功している。それを経た戦況の改善により、多温諸島奪還に動くなど攻勢をかけている。人口は約8200万人。国内総生産(GDP)は世界第7位で、経済規模・成熟した政治・社会制度から先進国の一角を占めている。陸軍・海軍は存在しているものの、両軍から航空兵力を完全独立させた空軍は創設されていない。そのため、陸軍は航空輸送力を、海軍は制空権確保を担当する航空兵力の分割が行われている。

 

硫黄島

小笠原諸島の一部の火山島で、ろくに水も出ず火山性ガスと硫黄満ちている過酷な島。一時は深海棲艦に奪われたが度重なる戦闘の果てに奪還。しかし、第2列島線の要衝であり、西太平洋の制空・制海権を握る上での重要性は深海棲艦も認識しているようで、奪還後も度々小競り合いが発生している。現在、横須賀航空隊硫黄島分遣隊をはじめとする陸海軍の航空・地上部隊が展開し、艦娘の停泊地としての機能も整備されるに至っている。

 

三宅島

伊豆諸島を構成している一島。一時は陸軍守備隊の奮戦虚しく深海棲艦に占領されたが艦娘との共同作戦により奪還に成功。海軍三宅島観測所以外に陸軍基地が設置され歩兵を中心とする守備隊が駐屯している。また、島民の帰還も行われ漁港には多くの漁船が停泊している。

 

多温諸島

 マリアナ諸島に相当する。語源は原住民であるタオ人が自分達や自分たちの住む土地をタオと呼んでいたため、イスパニアから瑞穂へ割譲された際に当て字で「多温(たお)」とした。一応「すごく暑い」という意味も込められている。深海棲艦侵攻初期に占領されたが、奪還作戦の成功によって再び瑞穂の領土となった。

 

大宮島

 グアム島に相当する。多温諸島命名時と同様、イスパニアから割譲された際に瑞穂語名がつけられた。意味は「大いなる神が住まう」である。深海棲艦登場以前から海軍基地がおかれており、奪還作戦後急ピッチで再建され、多くの艦娘がここに移動している。

 

大本営

 統合幕僚監部に相当。大日本帝国の「大本営」と異なり、法的根拠を有する常設機関である。

 

瑞穂海軍

 瑞穂国の海上国防組織。最高司令部は軍令部。

 

海軍軍令部(軍令部)

 海上幕僚監部に相当。作戦立案・実行、兵站などの後方支援を指揮・監督する瑞穂海軍の最高司令部。軍令部の元に全実働部隊を指揮する連合艦隊司令部があり、隷下に艦隊司令部、航空戦隊司令部、陸戦隊司令部、後方支援集団司令部が存在する。直率する特別の機関として、横須賀鎮守府をはじめとする各鎮守府、海軍兵学校などが存在する。

 

横須賀鎮守府

 神奈川県横須賀市にある瑞穂5大鎮守府の内の一つ。

 

・横須賀鎮守府工廠

通常艦艇の修理・点検、及び艦娘用艤装の修理・点検・新装備開発を行う鎮守府直轄の施設。田浦町・長浦湾にある工廠隷下の横須賀造船部が通常艦艇を、横須賀鎮守府中枢に隣接する工場群が艦娘用艤装を担当している。後者は主に艤装の点検・修理を行う艤装工場と新装備の開発を行っている開発工場で構成される。

 

・横須賀警備隊

 横須賀鎮守府内の警備を担う部隊であり、一般的に陸戦隊と呼ばれる海兵団のように外地へ展開することはない。そのため、武装も小銃や機関銃など軽い。

 

・三宅島観測所

 横須賀鎮守府隷下の横須賀防空隊伊豆・小笠原警戒隊の施設。電波収集や付近海域を航行する船舶の監視・観測が主任務。深海棲艦から三宅島が奪還された後に新設された。瑞穂海軍施設の中で最も早く、みずづきの救難信号を受信した。

 

瑞穂陸軍

 瑞穂国の陸上国防組織。伊豆・小笠原諸島以外に本格的な戦闘を行っていないため、壊滅した海軍とは対照的に大戦勃発以前の戦力を保持している。だが、あくまで自分たちを「陸の防人」と自負しており、戦力を盾として海軍の方針に口出しすることはあまりない。

 

国防省

 防衛省に相当する。国防政策を担う中央官庁。

 

大蔵省

 財務省に相当する。多温諸島奪還作戦にかかる費用を過小評価したため、瑞穂国の財政運営を危機におとしいれた。

 

通商産業省(通産省)

 経済産業省に相当。瑞穂の通商に関する行政を一手に担う。

 

並行世界証言録

 艦娘たちの証言を集め、日本世界の歴史・文化・社会情勢・技術レベルなどを体系的に記した一大史料。雪風や響も加わっているため、戦後1970年代ごろまでの出来事も掲載されている。製作は国防省主導。当初は国防省の官僚たちも並行世界の情報を欲していたが、艦娘たちに様々なトラウマがあったことから関係悪化を避けるため、聴取の計画は棚上げにされていた。しかし、艦娘たちの出身を知った政治・歴史・文化・民俗などから生物や物理・化学いたるまでの学界、それら管轄学界の要望を受けた各省庁の突き上げを受け、製作が決まった。決まったはいいが製作主体や各省庁の関与を巡って、激しい闘争が繰り広げられ、軍の全面的なバックアップを受けた国防省が最終的に勝利した。製作開始直後は艦娘たちが消極的で難航したが、少数の艦娘たちが協力したことをきっかけに参加人数が増加。現在ではほとんどの艦娘が協力し、各学界も大満足し研究に励んでいる。

 

 登場人物

・横須賀鎮守府

百石 健作(ももいし けんさく)

 横須賀鎮守府の司令長官。年は30代前半と非常に若いが、通常ならあり得ない官職につけるだけの実力は兼ね備えている。艦娘たち・一般将兵との関係は良好で、信頼も厚い。ただ、それを妬んだり、快く思っていない軍人が上層部を中心に存在している。

 

川合 清士郎(かわい せいしろう)

 横須賀鎮守府の警備を担う横須賀警備隊の隊長。階級は大佐。百石より年上だが、それに不満を抱くこともなく命令には忠実で、警備隊内の人望もあつい。要領が良く仕事は早く済まれられるタイプ。

 

筆端 祐助(ふではし ゆうすけ)

横須賀鎮守府の副司令官。最高司令官の百石とは先輩・後輩の仲で、考え方も非常に近くとても親しい間柄。誰に対しても分け隔てなく接し、いつも豪快な笑顔で周りに元気を与えてくれるので、百石と同様に部下からの信頼が厚い。そんな性格のため、キレる姿はめったに拝めない。

 

宇島 忠 (うじま ただし)

横須賀鎮守府参謀部の青年将校。階級は中尉。冷静沈着な性格で、みずづきの第一報が入ったときも多少の動揺はあったが、比較的落ち着きを保っていた。

 

西岡 修司(にしおか しゅうじ)

横須賀鎮守府警備隊の青年将校。階級は少尉。まだまだ、士官学校(海軍兵学校)卒業したての新人だが、なにどこにも懸命に取り組むため川合も含めた上官から信頼されている。だが、未だに警備隊の雰囲気には完全に馴染めていないようで、川合たちの暴走に振り回されることもしばしば。気が少し弱いところがまたにきず。

 

・軍令部

的場 康弘 (まとば やすひろ)

 瑞穂海軍の最高司令部たる軍令部の総長。階級は大将で名実ともに瑞穂海軍のトップ。艦娘擁護派の筆頭に挙げられる「爽風会」の会長で、擁護派の中心的存在。温和で情に厚く、部下想いの性格ゆえに士官・兵士問わず、部下からの信頼度は文句のつけようがない。百石や筆端も同会に所属しているため、彼らとの関係は深い。一見すると対立派閥である艦娘排斥派のリーダー格、例の問題児さんとは関係が険悪だと思ってしまうものの、実は・・・・。かなり古い付き合いである。

 

御手洗 実 (みたらい みのる) 

 瑞穂軍の最高意思決定機関、大本営統合参謀会議の委員。階級は中将。瑞穂の政・経・軍界に、多数の人材を輩出してきた旧士族の名家である御手洗家出身。性格は、独善的で自己中。自分が格下と思った相手は、例え上官であろうと噛みつく。軍規を無視した自己中心的な法外行為は当たり前で、軍の意思決定に自分の見解が反映されていなければ不満らしく、何かと介入している。その悪評は、海軍内において辺境の一兵卒にまで轟いている。艦娘の排斥を主張する排斥派の1人。排斥派の中心派閥である「憂穂会」の助言役でありながら、会長を抑え、実質的なリーダー。そして、裏の権力を使い、作戦局の裏のトップとなっている。そのため、擁護派の百石や筆端とはすこぶる仲が悪い。

 


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。