・・・・・といっても、全然本編らしくありませんが。
俺は・・・・・・・・・。
何も・・・・・・・・・。
守れなかった。
男は、歩く。ついこの間まで無数の自動車が走り、多くの人々が足を進め、活気に満ちていた街。そこを縫う道路の上を歩く。
部下も・・・・・仲間も・・・・・。
男は、歩く。ガラスが砕け散り、鉄骨がむき出しとなり、今にも崩れそうなビルの群れ。道路の両端にある信号機や各種標識は無残にひしゃげ、路面には至る所に穴があき、アスファルトの隙間から雑草が生えている大通り。ビルの破片に押しつぶされたり、横転している自動車。今や人の気配が消え去り、廃墟となった街の中をただ歩く。吹き抜ける風によって、それらが発する音は街の泣き声に聞こえる。
せめて・・・・・せめて・・・・・彼女たちは守ると誓ったのに・・・・・。
男は歩く。1人で歩く。
守れたと思った。俺が、俺だけが死ねば、彼女たちにやつらの手が及ぶことはないと思った。
だが、結局やつらは・・・・・。
ふと、立ち止まる。道路の上に散らばっているガラス。そこに男の顔が映る。瞳は濁り、生気は感じられない。
やっぱり、俺は、ただの駒だったんだな。
どうせ死ぬのに、必死に生きようと飛び跳ねるまな板の上の鯉。
うまくやれていると思っていた俺は、しょせんやつらの手の平で踊っていただけだったんだな・・・・・・。
俺は、一体・・・・・・なんのために・・・・・・。
“なんで、なんで、なんで、あの人が死ななきゃならなかったんですか?”
“あたなが代わりに・・・・・と言うわけではないんです。ただ、なんで?っと・・・・・・あなたがいながら、なんであの人が・・・・・・・。これからだったのに。これから二人で、二人で歩いて行こうって・・・・・・。なのに・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。”
パリンッ。
男は自分の姿が映るガラスを踏み砕く。何度も、何度も。ガラスが粉々になるまで。
「司令官!!」
この場には似ても似つかない明るい声が木霊する。男が声のした方向へ振り向くと、そこには漆黒の闇を照らす太陽のような笑みを浮かべた4人の少女たちと16人の男たちが立っていた。彼女たちに近づこうとするが、すぐに足を止める。気付いたのだ。もう、あの頃には戻れないと。自分が無力だったばかりに、死んでしまった大切な人々。去来する様々な記憶。ついに、男はその場に崩れ落ち、とめどなく大粒の涙を流す。
「俺は・・・・・・俺は・・・・・・・・・」
おびただしい人々が死んでいった廃墟の中で、男は泣き続ける。周囲には、男の泣き声のみが響いている。