水面に映る月   作:金づち水兵

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ついに「出撃! 北東方面 第五艦隊 (2017年春イベント)」が開始されましたね。
イベントに勤しんでいらっしゃる方もおられると思いますが、今回は2話連続投稿でいきたいと思います!


45話 船団護衛 その1 ~大海原へ~

横須賀鎮守府 艦娘用桟橋

 

ついに、この日がやってきた。一日の始まりを告げる朝日がゆっくりと照らす領域を広げ、地上の時間を夜から朝へと切り替えていく。空は雲が浮かんでいるものの、十分晴れといえる天気。風も穏やかで、昨日までとは大違いだ。心配された台風も瑞穂よりかなり離れた位置を北上中で、3・4日後は分からないが明日・明後日に関しては少し波が高いものの留意する必要はない。時刻は6時半を回ったところ。

 

みずづきの目の前に百石、彼より半歩下がった位置に長門が立ち、左右に第3水雷戦隊の面々が並んでいる。ついさきほどまで百石からの訓示を受けていたのだが、それも終了。既に艤装を装着した状態なので、後は回れ右をして出発するのみだ。

 

「みんな気をつけてな」

 

訓示の最中は軍人らしく険しい表情の百石だったが、終わった途端いつもの温和な表情となり声をかけてくる。日々の激務で疲れているだろうにそんな様子は微塵も見せない。

 

「言われなくても、夜戦ばりばりして意気揚々と帰ってくるよ。提督はいつも通り、長門にせかされながら書類に判子押しておけばいいの!」

 

珍しく朝から元気な川内。陽炎たち総出で、無理やり布団へ押し込んだのが幸いしたようだ。そんな彼女の声に「夜戦なんかされた日には、俺過労で倒れるぞ」とツッコむ百石。一気に笑いが巻き起こる。長門はいかにも自分が悪者のような語り草だったためか、口を尖らせ、艦娘たちと一緒に笑っている百石にジト目を向けている。見送りには長門も来てくれていた。最初は2人が来るとは全く思っておらず、「いつもこんな感じなの?」と黒潮に聞いたら、「そうやで!」と即答。なんでも、艦娘たちが出撃するときは、出張で留守のときを除き、例え雨が降っていようが、真夜中だろうが来てくれるそうだ。それを聞いたときは、つい嬉しそうに話す黒潮のように笑ってしまった。百石や長門と同じ行動を知山もやっていたのだ。相違点といえば、「さっむ」とか「眠たい・・・」とか司令官としてこういう場では言ってはいけないことを平気で言っていたところだ。

 

そんなことを思い、周囲に意識を向けていなかったからだろうか。突如、巻き起こったやけに懐かしい感覚が理解できなかった。

 

「え・・・・・・・・・・・」

 

頭に乗せられる大きくごつごつとした手。規則的に髪の上をスライドし、髪の毛がスポンジのように厚みを変える。そこから伝わってくるほんのりとした温かみ。

 

初めてなら、照れ隠しであろうが嫌悪であろうがもう少し反応できたであろう。だが、みずづきにとってこの感覚は初めてのものではなかった。須崎において、何度も感じた、何度でも感じたいと思った、心休まる少しくすぐったい感覚。

 

「みずづき、今回の作戦に参加してくれてありがとうな。並行世界での初任務だけに緊張しているかもしれんが、君なら大丈夫。頼りにしているよ」

 

眼前まで急接近している百石から、かけられる優しい言葉。

 

意味は、分かる。こちらを気遣ってくれている優しさも十分分かる。だが、自分は今、何をされているのか。

結局、深雪が声を上げるまで分からなかった。

 

「ああーーー!! 司令官がみずづきを撫でてる!!」

 

その抗議とも、からかいとも取れる声を聞いた瞬間、一気に心拍数が上昇し顔が火照る。自分でも真っ赤になっていることが分かるほど、顔が熱い。百石の手が離れても、その熱は一向に収まらなかった。

 

「え? な、なんだよ・・・・お前たち。私、なんか悪いことしたか?」

 

深雪をはじめ、艦娘たちからの重い視線を受け、百石は顔をこわばらせる。だが、効果はあまりなかったようで、特に重い視線を向けていた深雪と黒潮が百石に迫る。

 

「ずるい! ずるいわ!! なんでみずづきだけに、んなことしてうちらはさっさと行けって言わんばかりに笑顔を向けるだけなん?? 不公平や!!」

「そうだ! そうだ!! 不公平はんた~い!!」

 

どうやら、2人も撫でられたかったようだ。その意思を察知した百石は「悪かった」と謝りつつ、2人の頭を撫でる。嬉しそうに頬を緩める2人は年相応の少女そのもの。深雪は「漆原のおやっさんとはやっぱり違うけど、どちらも・・・」と実況をしていたりする。川内たちはその様子を苦笑交じりで眺めていたが、1名複雑そうに視線を泳がせている艦娘が・・・・・・。

 

それに気付いたのであろう。苦笑を浮かべながら、百石が手招きをする。

 

「はら、初雪。別に気にしなくていいさ。ここには曙もいないし、気心の知れた子たちばかりじゃないか」

「え・・・・。いや、その・・・・私は・・・・・」

「ああーーー!! もう!! 黒潮!!」

「了解や!! 深雪!!」

 

初雪のじれったい様子にしびれを切らした彼女の妹は、陽炎型2番艦と作戦行動を起こし、初雪の両脇をがっちりと固めて、百石の目の前に差し出す。初雪も「ちょ!? なにすんの!! 離して!! 私は別に!」と先ほどまでの気だるげな様子はどこに行ったのか。必死に抵抗していたが、さすがに2対1では勝てない。

 

だが、いざ百石の前に立った瞬間、顔をほんのりと赤く染まてじっと立っているあたり、やはり撫でてもらいたかったのだろう。百石に撫でられている初雪は少し微笑んでいた。

 

「まったく・・・・。そして、いつまで上の空なのよ・・・・。おーい、みずづき!!」

「うわっぁ!! ちょっと、陽炎。いきなり大声出さないでよ!! びっくりしたぁぁ・・・・」

 

別の意味で心拍数が大変なこととなる。視線でも抗議の意を示すが、全く構われない。それどころか「動揺しすぎ」と非難された。「なんのことだ」と一瞬思ったものの、頭に残る感覚がその言葉の意味を解説してくれた。同時に自分の状態を。

 

陽炎の言った通り、みずづきはここまで上の空で目の前で繰り広げられている状況を全く飲み込めてなかったのだ。

 

「まぁ、司令も司令だけどね・・・」

「まったくだ。提督には繊細さが欠けている。みずづきは1人の女性だというのに・・・」

「それはそうですけど、司令官に悪気は・・・・・・・」

「そうそう。それに司令がああなっちゃったのも、あの2人みたいに駆逐艦たちが迫るからだしね。というか、ここに川合大佐あたりがいれば、大変なことになるよね。物陰から監視してないかな?」

「せ、川内さん? それは司令官にとって最悪の事態じゃ・・・・・」

 

いつの間にか漂っていた緊張感は四散し、艦娘たちは百石に撫でられる側と傍観する側の2つのグループに分かれている。とりあえず、こちらが被害者的な立場となっていることに安堵しておこう。

 

「さてと、そろそろ時間だな。はいはい、そこまで!」

 

初雪を撫で終わった後も、3人の掛け合いを眺めていた百石が大きく手を叩く。まだ、鎮守府は始動したばかりなので軽快な音がよく響く。抜錨前のお遊びもここまでだ。

 

「はいは~い。全員集合!」

「川内、お前・・・・」

 

少し緊張感のかけた声に長門が眉間を押さえ、ため息を吐く。

 

「まぁ、お前たちのことだから心配していないが、油断は禁物だぞ。それだけ、言っておく。・・・・・・また、ここでな」

 

優し気な笑みをたたえる長門の言葉に、いつのまにか再び整列し終えていた全員が「はい!」と威勢よく答える。こちらもみな、いい笑顔だ。

 

「では、良い頃合いですしそろそろ出撃します」

「ああ」

 

交わされる敬礼。それを終え、全員が岸壁と桟橋をつないでいる階段を降り、桟橋から海に足をつける。当然、沈まない。全員が艤装の最終確認を行い、「異常なし」を告げる。この頃には全員に緊張感が戻っていた。そして、川内から発せられた「全艦抜錨」の掛け声と同時に機関始動。各々の艤装が唸りはじめ、体が海面を滑っていくと同時に足元の白波が高くなっていく。遠ざかる2人と桟橋、横須賀鎮守府。流れる景色とかすめる風。訓練で散々体験した感覚だが、今日は違う。艦隊の雰囲気からしてそうだ。川内、陽炎、黒潮、白雪、初雪、深雪。全員、真剣な表情をしている。

 

それを確認しながら、そっと空いている左手で自分の頭を触る。百石に撫でられたところだ。

突然のことで動揺はしたものの、あれは善意と気遣いによるものであり決して下心からなされたものではないと分かっているため、不快感はなかった。むしろ、少し照れてしまったぐらいだ。

 

しかし、やはり思ってしまう。あの頃は自分がどれほど嬉しく思っていたのか分からなかったが、今回のことではっきりと認識した。

 

「やっぱり、知山司令に撫でられるほうが・・・・・・・・・嬉しいな」

 

深雪あたりに聞かれたなら、そういう話に興味がある艦娘たちも巻き込んでの一大騒動になりそうな発言だが、幸いその独白は波しぶきに紛れ、誰にも聞かれることはなかった。

 

 

 

 

 

横須賀港を抜錨後、左右に港湾都市ならではの風景を見ながらすぐに横須賀湾を向け東京湾へ至る。こんな時間にも関わらず、というよりはこんな時間だからこそかもしれないが、数隻の漁船がそれぞれの目的地に向け海上を疾走している。その中に、一際異彩を放つ船が・・・・いや船団がいた。

 

「ん?」

 

漁船とは明らかに規模が違う船体。あまりの違いに錯覚を疑い、目をこすってしまうほどだ。

 

「で、でっか・・・・・・・」

 

船団は三隻で構成されていたが、最も大きい船を前にすると茫然としてしまった。海の上に浮かぶ巨大な鉄の塊。黒や白、茶褐色の塗装を灰色にして遠くから見ると、高確率で日本にかつて()()()()()()艦と間違えてしまいそうだ。

 

「吃水から高さは敵わないだろうけど、全長ならひゅうがやいせと同じぐらいじゃないの?」

 

みずづきではなくとも、海防軍の軍人や実際にひゅうが型護衛艦の「ひゅうが」や「いせ」を見たことがある人間ならば誰でもそう例えるだろう。感覚的な感想だったが、これはかなり正確な表現だ。みずづきが見ている貨物船の全長は170m。対するひゅうが型護衛艦の全長は187m。もちろん、船の大きさは長さだけでなく、排水量や総トン数で決まるため一概にはいえない。実際、そうは言うもののひゅうが型護衛艦の方が大きく、目の前の船にあそこまでの迫力はない。だが、これもこれでインパクトはすごい。その一方で川内たちは慣れているのか、はたまた自分たちも昔は船だったからか船団を見ても平然としていた。

 

「こちら、五美商船所属、小牧丸(こまきまる)。瑞穂海軍第3水雷戦隊旗艦川内、聞こえるか?」

 

突如、耳に付けている通信機から聞こえる声。少し雑音が入っているが、聞き取りには支障はない。艦隊で言えば旗艦の役割を果たしている艦が代表して他集団との交信を行うため、おそらく小牧丸とはあのでっかい船だろう。

 

「こちら、川内、感度良好。あなた方が今回の護衛船団ですね?」

「はい、そうです。誉高い艦娘のみなさんに護衛して頂けるとは心強い限りであります。紀伊水道までどうかよろしくお願い致します」

 

心底、安心したような喜んでいるような声。この世界に来て、個人を認識できる民間人の声を聞いたのは何気にこれが初めてだった。ラジオを耳にした時や吹雪たちと横須賀市街へ出かけた折には散々民間人の声は聞いていたが、自分たち以外に向かっている声と自分たちに向けられている声とでは意味が全く異なる。そして、それからはこちらへの信頼が満ち溢れていた。漁船の漁師たちといい、電波の向こう側の人物といい、艦娘たちがこの国に受け入れられていることがよく分かる。それはラジオからも感じることができたが、実感としてこちらの方が強い。

 

「いえいえ、そんなとんでもないです。こちらとしても全力で貴艦らを護衛いたします」

 

互いを確認しあい、簡単な事務確認を終えた両者は1つの船団として、一番船足の遅い船に速力を合わせ航行開始する。15ノット(時速27km)で一路紀伊水道を目指し、東京湾から太平洋への進出を図る。到着は明日の今頃。常時とはいかないものの、みずづきはおろか川内たちも発揮可能な30ノット(時速54km)ならば、由良基地まで半日でいける。しかし、商船は基本的に船足が遅いため、どうしてもノロノロ航行にならざるを得ない。目の前に、どこまでも続く大海原。だが、対照的に海の下には何がいるか分からない。視界に占める大海原の比率が上がるにしたがって、体に入る力が確実に増していく。

 

 

~~~~~~~~~~~

 

 

台風とは、人智を越えた存在である。それとも数百km離れた場所での局所的な気象現象の影響がここまで来る点に着目して、大洋の相関性に驚くべきか。いつも以上に潮の流れが速くなった海中。魚たちをかき分けるように、日光が届くぎりぎりの深度を何かが進んでくる。

 

黒い体。

 

色彩だけでは説明できない、光を浴びても恐ろしいほど真っ黒な何か。一見しただけで、人智を越えた存在であろうことはいくら高度な知性を持とうと生物の本能が教えてくれる。見る者を恐怖させるそれは何かを感じ取ったように動きを止めると航行を中止。ゆっくりと感情を一切感じさせない機械的な動きで、浮上し、頭部を水面から突き出す。正確には目の下までだ。視界はここ数日で最もいい。かなり遠くまで見渡せる。この条件を存分に生かし瞳に何かを映した後は、すぐに潜航。来た道を戻ろうと体を反転させる。

 

 

が、それは「反転した」ではなく「回転させる」で終わった。何の予兆もなく、いきなり叩きつけるように襲ってきた衝撃波。同時に聞いたこともない規則正しい音も聞こえてくる。

 

ターン・・・・・・・。ターン・・・・・・・。

 

潮流と体の接触する音が耳を刺激しても、特異性を示唆するようにこの音はなぜか耳に入ってくる。まるで「聞かせてあげよう」といわんばかりに。

 

 

 

~~~~~~~~~~~

 

 

 

みずづきを含む艦娘たちはおろか、護衛されている五美商船の船員たちも誰もが危惧していた事態。いつ襲い掛かってきても被害を最小限度に食い止めるため、あらゆる準備と心構えをしていた。しかし予測していても構えていても驚かざるを得ない地点で、危惧していたそれは襲い掛かってきた。みずづきの悲鳴が、通信機を通じ各々の耳に響き渡る。

 

「やっぱり、いた・・・・・。ソナーに感! 音紋より敵潜水艦と思われる! 方位267、距離・・・・10500!」

 

現在、みずづきたちは東京湾を出て、伊豆半島の下田沖に差し掛かっていた。抜錨したときは地平線を這っていた太陽も今は堂々と空の頂点で輝いている。ここまでの航路上は特になにもなかったのだが、哨戒のため前方海域に展開させていたロクマルのピッティング・ソナーが不審な雑音を捉えたのだ。音紋データと照合しても不明でクジラやイルカの鳴き声とも推察されたが、みずづきは瑞穂世界における深海潜水艦の詳細な音紋を保有していない。距離が離れていれば離れているほど、音紋での発生源探知は困難となる。

 

そして、そうである以上、雑音が敵である可能性は絶対に排除されないし、絶対に排除しては()()()()。万が一に備え川内に報告した後、曳航ソナーでアクティブ捜索を行った。相手が人間の操る潜水艦ならばアクティブソナーの発信源をすぐさま探知可能なため、こちらの位置を大声で叫ぶことに等しいが、今対峙している存在は敵であったとしても深海潜水艦である。ごく一部の例外を除き日本世界もそうであったように、瑞穂世界の深海潜水艦も第二次世界大戦レベルの兵装であり、アクティブ捜索を行ったとしても逆探知は不可能。

 

この情報は既に、百石・川内たちを通して頭に入っている。

 

そして、アクティブ捜索の結果、みずづきの懸念は見事に的中した。

 

 

 

 

 

敵潜水艦が、21世紀の日本世界でも実現困難な静粛性を生かして潜んでいたのだ。

 

 

 

 

 

みずづきの悲鳴を受け、艦隊が一気に緊張に包まれる。だが、そこには緊張に限らず驚きと感嘆も含まれていた。

 

「うへぇ~、やっぱりすごいなぁ、みずづきは。ヘリコプター?なんていう哨戒機も持ってて、雷撃も受けず、気泡や水上航行している潜水艦を見ることもなく、ただただ航行しているだけで敵を見つけるなんて」

「しかも、10km近く先の敵を方位も込みで、ね。話は耳にタコができるほど聞いてたけど、実際に見てみるとそりゃ、もう・・・・・笑うしかないわね。あ、はは・・・・・はは・・」

 

陽炎たちにとっての対潜戦闘は、常に潜水艦が圧倒的に優位な状況にあった。それは敵が連合軍であろうが深海棲艦であろうが変わらない。発見するにしても、相手が酸素補給中のため海上航行しているときを偶然見つけるか、排出している気泡を見つけるか、雷撃を受けるか、など多くが運に左右され、潜水艦が主導権と先手を握っていた。またそれは攻撃にも該当する。水上艦からは潜水艦が見えないのに対して、潜水艦からは聴音や潜望鏡を駆使し、水上艦を「見ること」が簡単でないとはいえ可能だ。攻撃手段である魚雷は狙って撃てるのに対し、水上艦はそもそもどこにいるのか分からないため、「このあたりかな」と思った大雑把な海域を闇雲に走り回り爆雷を、それこそ適当に落とすしかない。数を撃てば、当たるとはえい、精度は雲泥の差である。だから、潜水艦に葬られる船が後を絶たなかった。そのため、潜水艦は水上艦の、特にやつらと正面切って戦い深刻な被害を被った駆逐艦にとって恐怖の存在である。

 

 

だが、現状はどうだろうか。見えないはずの手強い敵をいとも簡単にあぶり出したみずづき。彼女の存在のみで、苦戦必至の戦いの主導権をこちらが握れた。

 

見つけられたのなら、あとは攻撃するのみ。そして、その攻撃手段も神業。

 

だが、ある意味呑気なその感嘆は次の報告で完全に吹き飛んだ。

 

「数は・・・・・6! 繰り返します! 数は6!!!」

「6!?!?」

 

みずづき以外の全員が、一斉に驚愕する。あと少しタイミングが合っていれば絶妙なハーモニーとなっていただろうが、誰もそれを気にも留めない。場所が、場所だけに段々と顔が青くなっていく。今、自分たちはどこを航行しているのだろうか。

 

「こんな本土の近海に潜水艦隊がいるって・・・・・」

「ここ、主要航路のど真ん中だぜ? さっきだって、民間船とすれ違ったじゃねえか」

「嫌な、予感がする・・・・・・」

 

ここは、伊豆半島の下田沖。海岸線は水平線に隠れているが青々と新芽を茂らした沿岸にある山々がはっきりと視認できる。まさしく目と鼻の先だ。だからといって、潜水艦がいること自体はそれほど驚くものでもない。多温諸島奪還作戦成功後、西太平洋の制海・制空権を回復しつつあると言っても完全な敵部隊の本土接近阻止は困難を極めていた。みずづきが初めてこの世界に出現した際、本土攻撃を目論み2個の敵空母機動部隊が侵攻してきた出来事は記憶に新しい。ましてや潜水艦は隠密性による偵察、監視、通商破壊が主任務。問題なのは、その数だ。

 

艦娘たちや深海棲艦部隊が基本的に6隻で行動するのと同じように、潜水艦隊を構成する場合は6隻で一艦隊となる。だが、偵察や監視の場合、潜水艦は1隻で行動する。6隻などという大所帯で密集していれば、1隻が発見されると芋づる式に他の艦が発見される可能性は大。そして、発見され全滅などという事態になれば、何のために戦力を割いたのか分からなくなる。

 

そのため、潜水艦隊で行動する場合は戦術目的を達成するため分散ではなく、集中を欲するとき。特定区域において火力投射性を高めたい時だ。

 

今まで幾度となく深海棲艦と戦ってきた川内たちも本土近海でこれほどの勢力と接敵するのは、まだ瑞穂近海を深海棲艦が跋扈していたころ以来だ。そして、船団護衛中は皆無である。

 

「川内さん! 事前の打ち合わせ通り、指示をお願いします!」

 

敵の不穏な意思を感じ、若干の焦りを抱きつつもみずづきは自信をみなぎらせた声で叫ぶ。あらかじめ鎮守府においてみずづきの艤装説明や陣形説明の合間に、川内たちとは「みずづきが矛となる」潜水艦の対処方針を決めていたのだ。概要はいたって簡素で、咀嚼すれば出来る限りみずづきに丸投げ、ということだ。薄情に思われるかもしれないが、これがもっとも合理的な戦術である。精密誘導魚雷を持つみずづきと無誘導の爆雷しか持っていない川内たちが、同時に対潜攻撃に挑んでも混乱を生むだけであるし、その隙を敵に突かれる可能性もある。

 

それを使えるものにするための訓練も十分に行った。後は旗艦である川内の指示を待つだけ。敵がどんな意思を宿していようとも、こちらにはその意思を理不尽に葬れる力がある。

 

「分かった! 総員対潜戦闘よーい!! 私たちは船の護衛に専念するよ! みずづき? 敵に雷撃の兆候は?」

「注水音は確認していないので、ありません!」

「了解! みずづき! 後は任したよ!」

 

川内の信頼を受け、みずづきは真剣な瞳で海面を睨む。

 

 

 

 

ついに来た、あの日以来の対潜戦闘。もう、へまは許されない。・・・・・・・・・・絶対に!!!

 

 

 

 

やることは1つ。たった、1つ。見つけた以上は、魚雷の餌食になってもらうだけ。

 

「対潜戦闘、07式VLA攻撃用意!!」

 

新鮮に感じる声。よくよく考えれば出現初日に深海棲艦空母機動部隊、演習の際に横須賀鎮守府艦娘部隊のと度にわたり戦闘を行ったが、対空・対艦戦闘のみであり対潜戦闘はこの世界に来て今回が初めてだ。そのため、ESSMやSSM-2B block2、Mk.45 mod4 単装砲各種砲弾、CIWS 20mmタングステン弾と異なり、工廠により複製された07式VLA及び12式短魚雷の使用も、また初めてだ。しかし、ESSMなど工廠で複製された弾薬は演習時にも正常に作動していたため、不安はない。

 

既にロクマルとのデータリンクにより、敵の詳細な位置は把握できた。敵はこちらがアクティブ捜索を始めて以降、各艦バラバラに当船団から離れる進路を取っている。人間視点で見れば、動きを鑑みるに相当混乱しているように感じられる。だが、それの方が好都合である。要するに敵は、日向灘沖で遭遇した敵潜水艦と異なり逃げているのだ。これなら、護衛対象である船団に、仲間である川内たちに魚雷が猛進してくる可能性は低い。

 

みずづきの号令を受け、開かれるVLSの蓋。蒼空を睨む白い弾頭は長期間VLSや鎮守府の弾薬庫で眠っていたとは思えないほど、新品同然に白く輝いている。VLSを映すカメラ映像を凝視していると、それを押しのけて「準備完了」を知らせる表示がなされた。生唾をゴクリと飲み込む。

 

「・・・・・・・っ。撃てえぇぇ!」

 

発射ボタンを思い切り押し込んだ瞬間、まばゆい閃光と耳を塞ぎたくなる轟音を奏でながら、VLSより07式VLAが天に昇っていく。もちろん、それは1発だけではない。

 

合計6発。彼らの行軍はESSMと比べれば見劣り必至だが、それでも空に伸びていく6つの白い筋は壮観である。だが、その行軍も束の間。発射されて息つかぬ間に遊覧飛行を終えると、弾頭とロケット部分が分離。蒼空に放り出された弾頭はパラシュートを展開。時間差で6発が白い花を咲かせたため、対潜攻撃をしているというよりは、落下傘部隊が敵拠点の強襲攻撃をしている光景に思えてしまう。弾頭は急激に減速したのち、ゆっくりと海面に着水。「魚雷を即座に敵潜頭上まで運搬する」という役目を終えたロケットはそのまま海面に激突、一足早く波間に消えていく。自分の土俵に運ばれた12式短魚雷たちは、潜航すると即座にアクティブソナーによるアクティブ捜索を開始。こうなっては目標である敵潜水艦の命は秒読み段階である。当てれば当てただけ、バカ正直なほど跳ね返ってくる音波。その源へ向け、容赦なく一直線に突き進む。HATE(対戦車榴弾)搭載弾頭による爆発は潜水艦ごときの装甲ではどうあっても耐えられない。

 

 

 

~~~~~~~~~~~

 

 

 

 

ついさきほどまで、我が物顔でここを泳いでいた黒い何かは、戦略的撤退などの外見をかなぐり捨て逃げていた。もぎ取れるかもしれないと思うほど必死に足を動かし、逃げていた。もし知性があるなら「何から?」と問うても「分からない」と答えるだろう。だが、それでも逃げていた。頭の中で鳴り響く警報。それらにとって、最重要の行動原理である本能が叫んでいた。

 

逃げろ、と。

 

断続的にやってきた謎の衝撃波。それは、今は自身を追いかけているものからも発せられている。深海よりも冷たい単調な音。段々と近づいてくるそれがさらに恐怖を高める。唐突に海水をもろともせず、やってきた爆発音と衝撃。その時、確かに聞こえた。爆発音のような自然発生的な音ではない、絶叫のような生物的な声を。

 

後ろを振り返る。そこには白い、何かよりも白い肌を思った円筒形の物体がいた。恐怖に慄くが、オーバーヒート寸前の頭でやっと理解した。絶叫を次に発するのは自分自身だということに。

 

 

 

~~~~~~~~~~~

 

 

 

 

海面の林立する水柱。その数、6。ロクマルを急行させ、搭載カメラにより当該海域を撮影する。映像からは多数の明らかに人工物である浮遊物が確認された。しかし、日向灘沖のことがあるので、今回はそれだけで敵の撃沈を判断せず、海中の状態が落ち着くのを持ってアクティブソナーによる再度の確認を行った。結果出るまでの間、艦隊を妙な静寂が支配する。額から頬に滴り落ちる一筋の汗に意識を向けることなく、みずづきはメガネに表示される情報に注目する。そして、緊張を解き放つように息を吐いた。

 

「敵の反応なし。全隻の撃沈を確認しました」

 

その瞬間、さきほどまで静寂が嘘だったかのように「おお!! やったぁぁーー!!」と川内たちから歓喜の声が上がる。いつもならあまりの喜びように苦笑を浮かべるところだが、今日に限ってはそれをしっかり噛みしめる。

 

あの日と状況は全く異なるが、潜水艦を味方の損害なく殲滅できた事実は紛れもない現実だった。黒潮などからの「さすがみずづきや!! 頼りになるわ!!」との声に思わず頬を緩めながら、前方を見る。右手には伊豆半島。左手には太平洋。戦闘を経てかなり航行したような気分になるが、由良基地への道のりはまだ半分にも達してない。

 

 

実績を噛みしめ、心の底から一息をつけるのはまだまだ、先のことだ。

 

 

 

―――――――

 

 

と、思ったが心の底からではないものの一息つける時間は案外すぐにやってきた。いや、やってくることは知っていたのだがすっかり忘れていた。

 

「へぇ~、瑞穂の貨物船ってどんなだろうと興味ありましたけど、そこまで日本の船を変わらないんですね」

 

周囲をきょろきょろと眺めながら、川内と陽炎の後ろを歩いて行く。青空の下にいたためか少し暗く感じる廊下。カツン、カツンと歩くたびに響く軽快な音が、それなりに雰囲気を出してくる。お世辞にもピカピカとは言えず、錆び付いていたり黒ずんでいる配管が天井や壁に走っているが、物は時間が経てば劣化していく。そこに瑞穂も日本もない。

 

「え? そうなの?」

 

みずづきの呟きを聞いて、心底意外そうな顔する陽炎。

 

「船の基本的な構造は、昔から変わってないから。積載量や速力みたいな性能面になってくると、相当違うだろうけどね」

「ふーん、そうなんだ。てっきり、そこまで科学が進んでいるのならもっと、こう、すごい感じになってるのかと思ったけどそうでもないのね。ちょっと、びっくり」

「それは私も同感。まあ、安堵もあるけど。正直、みずづきにあれやこれやと説明するのは骨が折れるからね。私も夜戦に備えて早く仮眠取りたいし」

「わ、私をなんだと思ってるんですか!? 気持ちは分からなくはないですけど、私、日本人ですからね。いくら科学が発達しても、不変のものはたくさんあります。こういうのを見ると、やっぱり世界は違いますけど現在と過去はつながってるんだなって感じます」

 

技術とは多重的な時間の積み重ねがあってはじめて、人の役に立ち、社会を発展させる触媒となるのだ。決して、過去は過去。現在は現在と切り離して捉えるべき性質のものではない。

(あ・・・・・ちょ、ちょっと、生意気なこと言っちゃったかな・・・・)

咄嗟にそのような感情が胸に浮上するが、2人の表情を見て杞憂であったことを思い知った。

 

「そうなんだ」

 

一言。呟いたのは陽炎だったが、彼女だけでなく川内も透き通るような笑みを浮かべていた。そこには隔絶した科学力を持つに至った世界でも、自分たちのいた時代とのつながりが確かに存在すること知った嬉しさが込められていた。

 

「えっと、割り当てられた区画って・・・・」

「あと少し、あそこに見える角を曲がったとこ」

 

船内を歩くみずづきたち。これだけ見ると護衛任務はどうしたんだと聞きたくなるが、彼女たちは決して任務放棄をしているわけではない。これは護衛任務を万全の状態で成し遂げるための行動だ。

 

ここはみずづきたちが護衛している3隻のうち、最も小さい「木曾丸」。といっても総トン数は7000トンもある船で、その居住区画内を3人は歩いていた。今回の任務でもそうだが、数日単位で護衛や紹介を行う場合は艦隊全艦が四六時中ぶっとおしで張り付くことなどという社畜も白目の過酷配置は行わない。全くないわけではないが、それは撤退戦など切羽詰まったごく一部の事例に限られる。艦娘とて、いくら転生体という常識外れの存在であろうと人間を変わらない。疲労もすればお腹もすくし、眠くもなる。そんな状態で戦闘ともなれば、全力を出し切れないのは明らかだ。そのため、こういう場合は艦隊を複数の班に分け、ある班が休息中は別の班が任務につくという交代制が取られる。みずづきにもなじみ深く、試行を重なればたどり着く当然の帰結を反映した運用だが、1つ日本と異なっている点があった。その休息時にご厄介となる場所が、護衛している船舶なのだ。瑞穂海軍は演習時に出てきた「大隅」のような艦娘母艦を複数建造・実戦配備しているが、軍事作戦の場合にしか使用されない。ここが日本との相違点である。日本では通常、特殊護衛艦が艦娘部隊の拠点となる。民間船のご厄介になることは機密保持の関係もあり非常時を除いてない。

 

そのため、新鮮味はすごかった。貨物船に泊まる人生で初めての経験であることも拍車をかけている。ちなみにみずづき・川内・陽炎は1班にあたり、12時から18時までが非番の時間だ。今も海上で頑張っている残りの4人のうち、白雪と初雪は18時から24時までが非番の2班、深雪と黒潮は24時から翌6時までが非番の3班に割り当てられている。対潜戦闘があったものの、明日0630に船団の護衛を終え0700に由良基地へ入港という予定に変更はない。

 

そして、今は13時前。そのため、みずづきたち3人は艤装を外して、木曽丸の居住区画を歩いている。船長へのあいさつを終え、自分たちが仮眠を取る部屋に向かっている。

 

「あった、あった、一番端の3人部屋。ここだね。・・・・・・ご丁寧にもきちんと分かるようになってる」

 

川内がとある船室の前で立ち止まった。意味深に含み笑いをしていたが、みずづきは相変わらず子供の用に好奇心の虜になっていたため気付かない。この階には6つの船室を有しているのだが、川内が立ち止まった船室は明らかに他より大きい。「本当に3人部屋なんだね、嬉しい!」などと思いつつ、川内と同じ箇所に目をやると確かに、「第3水雷戦隊さま」と書かれた紙が貼ってある。だが・・・その下には何やら物騒なものが貼ってあった。好奇心の延長でそれをまじまじと見るが、文字を追うにつれて苦笑が顔に張り付く。みずづきたちにとっては頼もしい限りのため誰も見て見ぬふりをする。今まで意識する機会もなかったのだが、やはり世界は違えど同じところは同じだ。

 

「警告。

お客様にご迷惑をおかけした場合は、年齢・階級・勤続年数に関わらず、天誅が下される。

日干しになったり、着衣海水浴をしたり、フカ(※サメのこと)と戯れたくない者は常識をわきまえろ! 

艦長 多久義昭(たく よしあき)

 

と、こんな感じである。多久艦長曰く、なんでも武勇伝や前線での出来事を聞きたくて、艦娘と接触を図ろうとする輩がいるとか。艦娘はかわいい子や美人揃いなのでそれだけではない気もするが、その輩たちも「海の漢」故に、決して悪気があってやっているわけではないそうだ。

 

艦娘たちの人気ぶりを垣間見たところで、部屋へ突撃である。

 

「おおおお!!!!」

 

3人の中でもっとも早く、そして嬉しそうに目を輝かせるみずづき。てっきり、日本と同じように二段や三段ベッドが配されているものと思っていたが、その認識は誤りであった。船室にしては広い部屋に、等間隔で普通のベッドが3つ並んでいたのだ。しかも各々のベッドや壁の間に小さな机まで置いてあり、清掃も行き届いている。これにはいくつもの船舶にお世話になってきた2人も笑顔だ。

 

「広いし、ベッドだし、ふかふか。うん! 今回は、あたりだ。いつもこの瞬間が緊張するんだよね」

「そうそう。あんまり変な部屋だと、上手く寝付けないし、何のために無理言ってまで使わせてもらってるんだか分からなくなるのよね」

「そ、そんなところもあったりしたんですか?」

 

2人の遠くを見るような視線に、好奇心を抑えきれずおそるおそる尋ねる。

 

「あったわよ。しかも、かなりの確率で。まあ、こういうのが普通じゃないんだけど。普通の船は軍艦と同じで三段ベッドが当たり前だし、かなり古い船になるとベッドとは呼べない板の上に雑魚寝なんてのも」

「それは・・・・」

「ほんっと、きついったらありゃしないわよ!」

「陽炎のいうとおり! みずづきは? 私たち以上に喜んでたけど、まさか瑞穂より劣悪なんてないでしょ?」

「まぁ、そうですね。基本的に私たちは軍所属の輸送艦を海上での拠点にしていたので、寝室とかも基本的に三段ベッドでした」

 

みずづきたちは三段ベッドだったが、これがもう少し格が高い部隊だったり、防衛隊群になると二段ベッドになる。軍内での、みずづきたちの扱いがこれを見ただけで分かるものだ。

 

「へぇ~、そういうところも私たちの時代から変わらないのね」

「うん。昔よりは広くなったって聞くけど、その昔を知らないからどれだけ向上したのか分からないんだよね。だから、この部屋は感動もの!」

 

海の上でぐっすり。非番の時間が6時間なので本当にぐっすり眠れるわけではないが、それは一種の夢だ。三段ベッド生活も入隊時から続けるため慣れたものだが、それでも人間、よりよい環境を求めてしまう生き物。

 

「あはは。この反応を伝えたら、きっと船長や船員の人たちも喜ぶだろうね。それじゃ、部屋も見たことだし、ご飯食べに行こう」

「ご飯? 食堂に?」

 

陽炎の確認。

 

「そう。船長も言ってたでしょ。ちょうどお昼時だし、早く寝ないといけないからちゃっちゃと行こ? 誰かさんもすっごく気になってるみたいだし」

 

向けられるニヤついた笑み。川内を見た瞬間、なぜか陽炎にも伝播する。2人の視線がこちらに向けて、照射。視線で2人が何を言いたいのか伝わってきたため、一気に顔が熱くなる。否定したいが「どんなごはんでしょうか!!」と気になる歴然とした事実があるため、反論できない。ささやかな反攻としてできるのは羞恥心を隠すことぐらいだ

 

「行くんでしょ!! なら、笑ってないで行動!」

 

笑みを深めつつ「はいはい」と適当な返事をして、廊下へ向かい出す2人。本心はバレバレだ。

 

この後、食堂で出されたの美味しさに食事に感動したのだが、終始2人のニヤつき顔を向けられることになってしまった。




さて、ついにやってきました船団護衛。
少し戦闘シーンが出てきましたが、よくよく考えると久しぶりの戦闘だったんですよね(苦笑)

作者としてももう少しそういう系の描写を増やしたいとこですが、まだ・・・・・・・。読者の方々の中には申し訳ない限りです。

今回も次話は「夢」シリーズです。本話もそうですが文章量がトンデモナイことになってしまったので、のんびり読んでいただけると幸いです。

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