水面に映る月   作:金づち水兵

38 / 102
先週、お知らせしたとおり、今までのペースで投稿します!


36話 演習 中編

ほぼ無風で、波も穏やかな相模湾。曇天でなく空気が澄んでいれば瑞穂でも変わらずこの国の至宝となっている富士山が見えるのだが、今日はあいにく輪郭すら捉えられない。海上にいて、しかも風がないため、蒸し暑く感じるかと思われるがそうではない。いや、それを感じている余裕がないだけだ。

 

「いよいよ、この時が来たわね」

 

いつもなら第1機動艦隊旗艦である、正規空母赤城の独白。誰にも向けられたものではないが、それは真剣そのものでこの場の全員が抱いている緊張感を体現している。

 

現在、みずづきと特別演習に向け()1()()()()()は輪形陣、()3()()()()()は単縦陣で第1機動艦隊の後方を航行している。いつもなら例え演習前であろうとも談笑が絶えず、実際さきほどの演習までそうであったのだが、今は異様な静寂に支配されている。聞かされたみずづきの戦闘能力。それを思えば誰でもこうなるだろう。明らかに自分たちを凌駕する相手との対峙。赤城を含め全員、平静を装っているが顔がこわばっている。言葉を交わさずとも緊張していることは明らかだ。

 

「ん・・・・んん・・・・」

「ん? どうしたの陽炎さん・・・・って、ああ。ふふふっ」

 

戸惑うようなうめき声をあげながら、ぎこちなく身をよじらす陽炎。だが、その姿はいつもの彼女ではない。いつも通りの制服と陽炎型の艤装を身に付けてはいる。しかし、それに加えて、雪のような白髪のカツラを被り、手には正規空母が持っていうような弓を持っている。弓など持ったことがないためか、非常に持ちにくそうにしている。いつものように髪を結ってトレードマークのリボンをつけてしまうとカツラがかぶれないため、現在陽炎は寮でくつろいでいる時のように髪を降ろしていた。しかし、カツラは陽炎の髪以上に長いためオレンジ色の髪はすっぽり収まっている。遠目から見るととある艦娘ようだ。

 

「どう? ()()()()になった気分は? ふふふふっ」

 

不自然といえば不自然、大丈夫といえば大丈夫な何とも形容しがたい姿に赤城はつい笑ってしまう。今まで必死に抑えてきたがもう限界だ。

 

「ちょっと赤城さん! 笑わないでよ! 私、これすっごく恥ずかしいのよ!」

 

顔を真っ赤にして反論する。それが白髪との対比を促進させ、さらにカツラの存在感を強調する。自ら面白味を増してしまう陽炎に赤城の笑いは止まらない。そして、笑いは陽炎の意向とは正反対に艦隊全体に波及する。

 

「ええ~、結構似合ってるって。・・ふふふっ。でも、やっぱり変装するならとことんまで極めたらよかったのにな。制服もうちらのじゃなくて、白と赤を基調とした着物で! いや~、結構いける、いけるで! 今度やってみいへん?」

「あんた、他人事だと思って・・・・・。じゃんけんで私が負けてなかったらあんただったのかもしれないのよ!!」

「そのじゃんけんを言い出したのは誰だったっけな~」

 

在りし日を回想する深雪。ギクッと体を凍らせる陽炎にニヤついた笑みを浮かべる。

 

「陽炎は言った、じゃんけんはこの世で最も公平な判断を下せる手段なのよ! だから負けても文句なしいいわね! っと」

「初雪ちゃん、何気に上手。そのあと、言い出しっぺの陽炎ちゃんが一回戦目で負けるっていう、典型的な結果になったけど」

 

いつのもの気だるげな口調はどこへやら。ばっちり物まねを決める初雪と、それに苦笑する白雪。吹雪型3人の的確かつまっとうな反応に陽炎は言い返せず、がくりと肩を落とす。

 

「じゃんけんなんて、言うんじゃなかった・・・・」

 

今更後悔しても遅い。そこにはいつも通りの元気で、少し猛進ぐせのある陽炎の姿があった。影は微塵もない。消えたかどうかは分からないが、少なくとも現在は影を潜めている。それを確認し陽炎の些細な変化を感じ取っていた3人はそれぞれ安堵のため息をはく。

 

そして、赤城もまた別の意味で安堵していた。自身の周囲を囲む駆逐艦たち。こわばっていた表情は和らぎ、肩の力も抜けている。

 

「まあまあ、陽炎さん、そう落ち込まないで。これは遊びじゃなくて立派な作戦。提督や工廠、参謀部のみなさんが考えて下さった作戦を成功させるための重要な役割だから」

「はい、それは分かってるんですけど・・・・・・。本当にこんな古典的な方法でみずづきの電探を欺けるんですか?」

「それは・・・・・私にも分からない。ただ、あなたも知っているでしょ? 軍隊は無駄なことはしない。それをなす、ということは必要なことなのよ。規格外の相手に一泡吹かせるためには」

 

赤城はそういうと陽炎から前方の海上に視線を向ける。鋭い眼光。視認は当然できないが、この先に特別演習の相手がいる。敵機動部隊をたった1隻、しかも無傷で葬った存在が。

 

 

 

~~~~~~~~~~~

 

 

 

「なあ、これ・・・・どう思う?」

「どう、どうって、同じ格好してる私に言われても・・・・」

「・・・・・・・・・・」

 

本来は何も身に付けない背中に背負っている張りぼての艤装。それを榛名に見せつける摩耶。いつもとは違う髪型で苦笑を浮かべる榛名。2人の会話を無線で聞きつつも、無反応の翔鶴。いや反応したいけれども、その余裕がないのだ。翔鶴は顔を真っ赤に染め、艦娘になってから初めてした髪型に意識の大部分を持っていかれていた。

 

赤城が指揮する艦隊では陽炎だったように、翔鶴が今回限りで指揮を任された艦隊でも同じような役柄に抜擢されてしまった犠牲者たちがいた。

 

「ふ、ふふふふふっ」

 

聞こえる笑い声。隠している風を装っているが全く隠す気が感じられない。カチンと来た摩耶は単縦陣の先頭を任されている艦娘を睨んで、無線に向かって怒鳴る。

 

「おい川内!! 笑ってんじゃねぇよ!! 他人事だと思って・・・・・こっちの身にもなってみろよ!」

「あ、ごめん。聞こえてた?」

「余裕で聞こえてるっつうの!!」

 

「ははははっ、ごめんごめん」といつもよりも明らかに盛っている気楽さで適当にあしらわれる。

(この野郎~~~)

心の中で煮えたぎる怒り。だが、それは次に発せられた言葉でかなり沈静化された。

 

「もう! いきなり怒鳴らないでよ!! 耳がおかしくなるじゃない! もうすぐ開始なんだから、もう少し落ち着いたらどうなの?」

 

明らかに覇気がない声が無線から聞こえる。いつもなら川内と同じようにからかっているだろうに、面白がっている雰囲気も全くない。それに摩耶は複雑な心境になる。からかわれないことはラッキーなのだが、いつもと違うため調子が狂うのだ。

 

「あ、ああ。曙の言う通りだな、わりぃ・・・・」

「曙ちゃん・・・・・・・」

 

すこし気勢がそがれる摩耶。ぽつりと曙の反応に心配そうな潮。他のメンバーもどう対処したらよいか分からず、沈黙が訪れる。

 

「曙、あきらめた方がいいよ。摩耶の騒々しさは他人がどうこうできるもんじゃないから」

「はあぁぁ!?」

 

それを破ったのは、本来ここにはいないはずの川内であった。予想外の一言に摩耶が複雑な心境を一気に消し去り、素で驚愕の声をあげる。

 

「ほら、こんな感じ」

「てめぇぇ・・・・・。さっきから好き放題言いやがって・・・」

「いいじゃん、いいじゃん。私は結局のところ囮みたいなもんだし、主役はあんたたちでしょ? ・・・・・・・・うらやましい限りだよ」

 

最後の寂しそうな響き。それを聞いてしまうと摩耶も反論のしようがない。

 

「だからさ、頑張りなよ!」

 

先ほどの発言が幻聴であったかのように元気で陽気な声を出すと沈黙する川内。それに苦笑すると摩耶は気合を入れ直す。雰囲気から察するに榛名や翔鶴も同じようだ。曙について不安ではあるものの、誰も彼女の性格は知っている。普段はいろんな人やモノに噛みついている彼女も、激戦をまたにかけてきた立派な艦娘なのだから。

 

 

 

~~~~~~~~

 

 

 

「ふぅ~」

 

目を閉じる。視覚という五感の一角を遮断されたため他の感覚、特に聴覚の感度が上がったように感じる。聞こえるのは海面が波打つかすかな音と、自身の息遣い、心拍音。どれも特筆すべきものはない。脳裏に浮かぶ、この世界に来て初めての戦闘。あの時とはそもそも状況が違うが、みずづきに動揺はこれっぽっちもない。多機能レーダーの対水上画面に映る12隻の艦影。前方を進む艦隊は輪形陣、後方の艦隊は単縦陣をとっている。おそらくは前者が第1機動艦隊、後者が第3水雷戦隊であろう。今回の演習はあらかじめ相手のいる場所を通知し索敵を省略して、最初から戦闘を始める方式で行われる。理由は簡単。索敵ありにするとそもそも桁外れの索敵能力を有するみずづきとは勝負にならず戦闘そのものが発生しない、または本格的な戦闘へ入る前に赤城たちをほぼ確実に殲滅できるからだ。その気になればみずづきは赤城や翔鶴などの索敵機から逃げればいいだけであるし、万が一見つかるコースをたどれば、ESSMで撃ち落とすだけである。赤城たちは自分たちの位置が既にこちらにバレていることを知っているのか、なぜか無線を使っているものの、航空機もそうするとは限らない。自分たちの居場所を暴露しないために無線封鎖を行うのが常道だ。もし想像通りの動きを敵機がした場合、敵がこちら見つける前に落とすことができれば、無線でのやり取りがないためどこで落とされたかもわからず、相手方にとって未帰還機扱いになってしまうのだ。百石からこの方針を説明されたときは、「本気も本気、真剣勝負でいく」と聞いたとき並みに驚いたが、みずづきとしてもただ逃げ回るだけでは面白くないし貴重な機会の無駄遣いと感じたので了承した。但し、瑞穂側には大きなハンデである。

 

「・・・・・・おっかしいな~」

 

多機能レーダーが映し出す瑞穂側の反応を見て、みずづきは首をかしげる。第1機動艦隊の構成艦は赤城・翔鶴・榛名・摩耶・曙・潮で、第3水雷戦隊は川内・白雪・初雪・深雪・陽炎・黒潮だ。歓迎会で横須賀鎮守府に所属する艦娘たちとは全員顔を合わせているため、身体的特徴などは一通り頭に入っている。だが、対水上画面に映る構成艦とみずづきの頭の中にある情報が合致しない反応が複数あるのだ。例えレーダーといえども細かい特徴まではわからないが、艦種ぐらいは光点の大きさやレーダー反射断面積(RCS)から判別できる。

 

「う~ん・・・・。深海棲艦と違って1人ひとり特徴が違うから、邂逅時に得た吹雪たちのデータは使えない。そもそもこの世界の兵装データがないから詳しいことは・・・・・。乱反射してるのかな?」

 

レーダー波の不規則な反射によって探知目標が大きく見えたり、小さく見えたりすることはそれほど珍しいことではない。それを補うものこそ情報収集部隊が大きな犠牲を払って得たり、レーダーをはじめとする様々な電子機器によって蓄積された情報である。あいにく、日本世界の情報は腐るほどあるが瑞穂世界の詳細な戦術情報はほぼ皆無なのため、よく分からないのだ。一応は乱反射という結論を下したみずづきだが、心の中にいい知れぬ不安が沸き上がる。説明しろといわれればタジタジになるしかないが、それでも不安なのだ。百石たちが立てていると言う作戦が不明な点もそれを後押ししている。

 

だが、それが形になる前に「大隅」からの通信が届く。不安は頭の片隅に追いやられ、全意識が耳元に集中する。いよいよ、始まるのだ。通信機越しに感じる雰囲気。これまで行われていた演習の際はかなり司令室の慌ただしい様子が伝わっていたが、今回はそれが全くない。異様な静けさ。それが司令室に漂う緊張感を表していた。

 

「諸君、もうまもなく特別演習が開始される。双方ともそれぞれが所属している組織の名に恥じぬ正々堂々の戦いを期待する」

 

低く冷たい印象すら受ける百石の声。今回の演習の勝利条件は相手を全て中破もしくは大破させること。上空にいくら航空機が飛んでいようが、中破に陥っても戦闘能力があろうが例外はない。対戦グループの戦力を考えた場合、みずづきは第1機動艦隊と第3水雷戦隊の2個艦隊12名を倒さなければならないのに対して、赤城たちはみずづき1人のみを倒すだけで、勝敗が決する。これも索敵に続き瑞穂側に大きなハンデである。だが慢心を生ませない、その余裕が生まれないという点はみずづきにとって、ある意味利点だろう。

 

20秒ほどの間が空いたのち、百石から運命の号令が発せられた。

 

 

「状況、開始!!」

 

 

光昭10年度第1回横須賀鎮守府演習、それの大トリが今、始まった。

 

 

開始と同時に次々と現れる航空目標。それは時が経つにつれて急速に数を増やしていく。航空機が発艦しているのは輪形陣を敷いている第1機動艦隊と思われる艦隊。これだけの機数を瞬時に上げるとは、みずづきでもその練度の高さを窺い知ることができる。その彼女が操っている航空隊も手練れである間違なし。頭の中に、自衛隊に入る前、そして自衛隊入隊後に聞いた旧帝国海軍航空隊の伝説が浮かびあがる。

 

だが、少数の機体が上がることは織り込み済み。空母との戦いではいかに艦載機が上がる前に、そして上がってしまった後、航空隊の帰還を不可能にし塩漬けするためいかに空母を即座に沈めることができるかが勝負だ。

 

と、その前に。

 

「ECM起動、通信妨害(ジャミング)開始!」

 

みずづきがつけているカチューシャ型の艤装。ここには多機能レーダーのみならず、電子戦を行うためのECMポッドも埋め込まれている。微妙に四角型の盛り上がった部分から発せられる妨害電波。対戦相手がみずづきと同じようにレーダーをガン積みしていれば、レーダーに対するジャミングを行うが今回の相手はレーダーを持っていない。そのため、行うのは通信に対する電子戦だ。ちなみに、演習の様子を各所に届けるべく撮影係を乗せ飛行している観測機は味方識別がなされており、妨害電波の周波数情報も伝えてあるので中継には何の影響もない。少しはノイズが入るかもしれないが。

 

現代戦の基本であり相手が人間であろうが、深海棲艦であろうが使用されるこの戦法。しかし、百石と話をしていても電子戦を知っているとは感じられなかったので、あちらでは先ほどまで使えていた無線たちが砂嵐に襲われ、大慌てしているだろう。みずづきは心の中で「お気の毒に」と合掌しつつ、現実の手は力が入る。

 

「対水上戦闘よーい!! 目標、敵第1機動艦隊及び第3水雷戦隊! SSM1番から8番まで発射よーい!」

 

諸元入力はフライングかもしれないが、何も言われていないので既に完了済みだ。後は右手のMk45 mod4 単装砲の持ち手にある発射ボタンを押すだけ。ちなみに破壊力の大きいSSMは炸薬量を少し減らした訓練弾を使用している。もし実弾を撃てば演習であろうと装甲の薄い空母や駆逐艦は轟沈してしまう。日本では例え訓練弾でも当たれば損傷確実の砲弾を味方に向かって撃つことはない。普通はペイント弾である。そのため、万が一敵の攻撃を食らったときが心配で仕方ないのだ。一応は向こうも訓練弾とは言っていたが果たして・・・・。

(今は集中、集中・・・・)

邪念を払い、みずづきは発射ボタンに指を置く。刻々と増える対空目標。それを放つ元凶を仕留め、母艦を守ろうと17式艦対艦誘導弾Ⅱ型(SSM-2B block2)が今か今かと曇天にげんなりしているものの大空へはばたく時を待っている。

 

「SSM、攻撃はじめ!! 一番、撃てぇぇぇ!!」

 

声帯が壊れんばかりに叫びながらみずづきは発射ボタンを押す。周囲にまき散らされる轟音と背中に感じる衝撃。それは1発だけではない。次から次へと日本の技術力に恥じない世界有数の対艦ミサイルが飛翔していく。真っ白な現代の矢は白色の噴煙を上げていた固体燃料ロケットを切り離すと、噴煙の代わりに確認すら困難な青色の炎を出しながら加速し、スキーミングといわれる低空飛行に入る。すぐに海面スレスレの低高度を飛びながら曇天の彼方へ消える。多機能レーダーに映る8つの光。迷うことなく、慣性航法により目標へ一直線だ。相手に迎撃ミサイルやチャフ・フレア、ECMなどの対抗手段がない以上、終末誘導で用いるアクティブ・レーダー誘導の妨害やSSMの撃墜は困難。いや、不可能と言ってもいい。全弾数の一斉発射などみずづきにとって初めてだ。この間、敵機動部隊相手に6発発射した自己記録はこうしてあっさりと更新された。みずづきは肩の力を抜き、思考を空で乱舞している航空隊へ向ける。

 

 

目標命中まで残り1分40秒。

 

 

 

~~~~~~~~~~~

 

 

 

「だ、ダメです!! 全周波数帯、ノイズがひどくて交信不能です!!」

「了解! 第3水雷戦隊とは以後、発光信号で交信を! 黒潮さん! これを川内さんへ!」

「了解や!」

 

突然の電波障害。しかも全周波数帯が一気にしかも完全に使用不能という常識では考えられない事態。みずづきの心配通り、艦娘側はしょっぱなから大混乱に陥っていた。赤城は白雪と黒潮へ発艦準備の間に指示を出す。そして、弓をつがえ、矢を放つ。加賀や瑞鶴の時と同じく矢はしばらく飛翔するとまばゆい光を放ち、9つに分裂しそれぞれが()()()()()()()()を抱えている艦上攻撃機天山に姿を変え離れていく。発艦を終え息つく暇もなく、腰から新たな矢を出し弓につがえる。その額にはじんわりと汗が浮かんでいた。赤城は今、尋常ではない重圧を感じていた。今作戦の成否は赤城が敵の長距離対艦攻撃によって沈められる前にどれだけ艦載機をあげられるかにかかっているのだ。そして、みずづきはほぼ確実にこちらを捕捉し、時間がある程度経過している以上、すでに攻撃を・・・・ミサイルを発射しているとみて間違いない。加えて、百石や漆原の口から一切聞かされていない、電波障害。演習開始と同時に始まったそれはほぼ確実にみずづきの仕業だろう。

 

「っち、信じらんねぇ! こんな範囲にたった1隻で妨害をかけるなんて・・」

「私たちなにも聞いてない!」

「これは司令官でも予測できないわよ初雪っ。それよりも問題は、航空隊が無線なしで連携できるかどうか・・」

 

そう、そうなのだ。赤城の驚きは深雪が、愚痴は初雪がそして一番の懸案事項を陽炎が代弁していた。赤城の航空隊は加賀と並んでトップレベルの練度を誇っている。今回、みずづきの策敵能力を見越し赤城は航空隊に対し無線の使用を解禁していた。とはいってもこれまでほぼ全ての任務を無線が使えない状態でやってきたため大丈夫とは思うものの、妖精も艦娘たちと同じく動揺する。そして実際、この事態を受けて妖精たちはかすかに動揺しているのだ。

 

妖精たちを信じる心と案ずる心が拮抗する中、かなり先を飛んでいた航空隊が翼を一斉に振り出す。これはあらかじめ、敵のミサイルが飛翔してきた際、先に見つける可能性が高い航空隊が接近を本隊に知らせるために決めていた行動だ。

 

 

そのバンクを航空隊が行い始める。

 

 

傍らで騒いでいた駆逐艦たちがそれを見て静かになる。かすかに聞こえてくる未知の、そして恐怖を感じさせる轟音。百石たちの言った通りだ。

 

赤城は弓をつがえながら、黒潮に叫ぶ。

 

「黒潮さん!! 第2特別艦隊に打電! 諸君の健闘を期待する。大日本帝国海軍の意地とあきらめの悪さをとことん知らしめてあげないって!!」

「くぅ~。粋やね赤城さん! うちこの艦隊でみずづきとやり合ってみたかったわ!」

 

こわばった表情から一転、黒潮は眩しいほどの笑顔を浮かべると第3水雷戦隊に発光信号を送りだす。それを耳で確認し、赤城は最後となるだろう航空隊をあげる。再び9つに分裂し腹に重たそうなものを抱えているとは思えないほど軽やかに天山は急速上昇を開始する。赤城や白雪たちに真剣な表情で敬礼するパイロット妖精。それに笑顔で応える艦娘たち。赤城は腰に残っている矢を見てため息をつく。

 

「あげられたのは半分の41機、か。作戦通りだけど、まだまだ鍛錬が必要なようね」

 

雰囲気とは隔絶した呑気なため息を吐く赤城。だが、それも一瞬で赤城は勇ましい表情に戻ると最後の命令を下す。

 

「対空戦闘用意! みなさん、第3水雷戦隊もとい第2特別艦隊にああいった手前、最後まであがきますよ。・・・・・撃ち方はじめ!!」

 

赤城の命令に全員決意を秘めた美しい笑顔で応えると、ものすごい、戦闘機など比較にならない速さで猛進してくる「白い矢」へそれぞれの兵装、主砲・高角砲・対空機銃で防戦を開始する。

 

だが、もちろん全く、1発も当たらない。速度も厄介なのだが、海面スレスレという高度がさらに迎撃を困難にしていた。虚しく海面に突っこみ水柱を立てる弾が後をたたない。

 

「は、速すぎる!!」

「ほんっと、これ化け物だな! しゃくだけど、深海棲艦の気持ちが想像できちまうぜ」

「うち、ちょっとばかし砲撃の成績あがったんやけど、へこむわ・・」

 

口々に愚痴る駆逐艦たち。だが、目視できる距離に近づいた瞬間、「白い矢」は早さそのままに、一気に急上昇を開始する。後部から青色の炎のような何かが出ている。

 

「っ!?!?」

 

ホップアップ。主砲や機銃などの対空迎撃手段を封じる急機動。その効果はアジア・太平洋戦争期の軍艦にも絶大だった。

 

こんどこそ固まる駆逐艦たち。それぞれの直上に進入した「白い矢」は弾道部分にそれぞれの目標の姿を反射させる。このような急機動を取られてしまえば、いくら砲や銃を積んでいたところで無用の長物だ。どの武器も真上から侵入してくる奇天烈な敵などそもそも想定してないのだから。

 

迫る「白い矢」もとい、17式艦対艦誘導弾Ⅱ型。飛翔ではなく、もはや落下という表現がふさわしい動きはかなりゆっくりに見える。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

赤城の脳裏に、1日たりとも決して忘れたことのない光景が甦る。

 

 

 

 

 

 

 

自身の直上に悠々と侵入してくる、青空と同じ色をした敵の急降下爆撃機。

それに思考が、呼吸が固まる乗組員。

 

母機から分離し、風切り音を響かせながら迫る黒い点。

 

 

 

 

 

「いつの時代も、上から狙うものなのね・・・・・・・」

 

 

 

 

 

その言葉を最後に、赤城は・・・・白雪・初雪・深雪・陽炎・黒潮は戦車の装甲を貫くために開発された成形炸薬(HEAT)の尋常ではない衝撃と爆炎に包まれた。

 

 

 

~~~~~~~~~~~

 

 

 

第1機動艦隊もとい第1特別艦隊は6隻で構成されている。みずづきが放ったSSMは8発。では、残りの2発はどこへ行ったのか。

 

「あ、赤城たちが!?」

 

目の前で自分たちのレベルを超えた攻撃によりなすすべもなく全滅する第1特別艦隊。全艦がほぼ同時に轟音と赤い爆炎に包まれる光景は、現実逃避したくなるほど過酷なものだった。

 

そして赤城たちを葬った敵―みずづきの“ミサイル”はボロボロになり苦悶の表情を浮かべている第1特別艦隊には目もくれず、まだ生きている目標へ向け正確にそして冷酷に突進していく。

 

 

遊んでいた2発のお出ましだ。

 

 

「っ!?!? 全艦撃ち方はじめ―――!! みなさん、とにかく一発で多く撃ってください!!」

 

無駄と分かりつつも、翔鶴はまぐれ当たりを期待し叫ぶ。自分が錯覚を起こしているのではないか思うほど、瞬きをするたびに大きくなる白い影。それに向かって放たれる無数の砲弾や銃弾。

 

しかし、当たらない。それどころか、かすめもしない。艦隊に広がる驚愕と絶望。

 

「なんんんんんじゃありゃ!!!???」

「艦攻や艦爆と、次元が違うっ!!」

「これは・・・・・・・」

「あんな怪物に当てられっこないっ!!!」

「ね、狙いがつけられませーん!!・・・・えっ!?」

 

目の前から突然消えるミサイル。なにも居なくなった空間に時々橙色や黄色の光を放って視認できる砲弾がむなしく空気をきっていく。艦隊全員が抱いた動揺を潮の叫びが代弁していた。

 

「上っ!!!」

 

翔鶴が全員に聞こえるよう震える口を、懸命に開ける。その声で全員が応戦を停止し上を見る。いや、停止せざるを得なかった。

 

そもそも撃てないのだから。

 

単縦陣の先頭を行く川内と潮に迫るミサイル。彼女たちだけでなく、艦隊の全員があまりの衝撃にただただその姿を固まった顔で見るしかない。

 

 

話にならない。

 

 

 

第2特別艦隊で共通の認識が生まれた直後、川内と潮がまるで戦艦の砲撃をくらったかのような爆発に包まれる。衝撃波が腹まで届き、凄まじい爆音が鼓膜を揺さぶる。数々の戦場をここで、そして日本で駆け抜けてきた彼女たちにとっても、それはいまだにある恐怖心をあおるには十分すぎる。

 

ミサイルに搭載されている成形炸薬によって生じる黒い煙。それは比較的小柄な川内と潮を完全に包み込む。無風であるためか晴れて姿を確認にするまでには少し時間がかかる。それがいつもより長く感じる。

 

露わになる2人の姿。

 

「い・・・・・て、てて・・・・」

「うぅ・・・・・あっけなくやられちゃいました・・・・」

 

痛々しいほどにボロボロになった2人がそこにはいた。制服は破れ、すすにまみれ、至る所に血がにじんでいる。体だけでなく艤装も損傷して所々黒煙を上げていた。痛みに耐え苦しそうな表情。

 

 

祖国が未来で作り出した、誇りに恥じぬ兵器。その嵐が去った跡だ。

 

 

百石が考えた作戦通りの展開だが、それを考慮してもやりきれない想いが募る。翔鶴と榛名は悲しそうに視線を落とし、摩耶は悔しいそうに唇をかみ拳を握る。曙にいたっては、先ほどまでの情緒不安定さがどこに行ったのか。小刻みに肩を震わせ、艤装が振動音を発している。顔が下に向いているためショックを受けているのか、妹をこんなめにあわしたみずづきへの怒りか。はたまた、無力な自分自身に怒っているのか分からない。ただ、その瞳にはなにか熱いものが宿っている。

 

「私の出番もここまで、か・・・・・・。ま、夜戦じゃないから・・いっかな。一応、分かってたことだし。みんな、後はよろしく、ね。赤城さんたちと私も同じ気持ちだから、簡単にやられたりしたら承知しないよ!」

 

明らかに無理していることが丸わかりの笑顔を浮かべ、川内は発破をかける。

 

「私も・・・盾という立派な役目を果たせて悔いはありません。私が囮になることで、他の人を守ることもできました。みなさん、頑張ってきてください!!」

 

曙を一瞥した後、傷だらけにも関わらず今日一番の笑顔を見せる潮。とんでもない破壊力が込められたその笑顔に男子ではなくとも一瞬、見とれてしまう。そのあと艦隊に広がる微笑。

 

「ったく、格好いいこと言いやがって・・・・あたしも言いたいな、そんな台詞」

「榛名も同感です。金剛お姉さまに褒めてもらえること間違いなしですし」

 

12隻いた戦力はもう4隻しか残っていない。3分の2の喪失。1単位の部隊としてはもやは効果的な作戦行動は不可能であり、壊滅だ。だが各々の顔にはもう恐怖はない。あるのは勝てないと、越えられない壁だと分かりつつも、それに立ち向かっていく闘志。作戦通りの展開ということもあるが仲間の声援、そして自身の中にある誇りと覚悟がそれを後押ししていた。

 

翔鶴は鋭い眼光で眼前を見据えると、揺らぎのない確固たる足場を持った声で残存艦に命令を発する。

 

「狩月作戦発動! 私たちはこれより、敵みずづきに対して肉薄を開始します。全艦、最大戦速! 」

「「「了解!」」」

 

迷いを感じさせない声とともに残った第2特別艦隊の4隻はただ悠然と進んでいた進路を特定の方向に向ける。足元の波しぶきが勢いと高さを増し、海面に生み出される白い航跡。囮役だった第1特別艦隊のすぐ脇を通りかかる。どんな雰囲気なのか気になっていたが、全員やりっきた清々しい笑顔で談笑しており、悲壮感は皆無だった。向こうもこちらに気付いたようで全員、美しくブレのない敬礼を第2特別艦隊に対して行う。それに応えると、再び視線を前方に向ける。目標は今頃、こちらの作戦に引っかかり血相を変えているであろうみずづき。

 

 

そうでなければ、終わりだが・・・・・・。

 

 

~~~~~~~~

 

 

「全目標の撃破を確認。SSM撃ち方やめって、もう残弾ないんだっけ・・・・」

 

苦笑するみずづきの目の前に映し出される多機能レーダー画面。といっても実際は対空画面と対水上画面の2つに分割表示されている。そこに映る反応は当然ながら消えていないが、SSMの命中を確認した8隻は1つの集団を形成し、離脱する兆候を見せている。一方、SSMによる攻撃がみずづきの兵装構造的に撃ち漏らした4隻は依然単縦陣を組んだまま、かなりのスピードで近づいていた。

 

「うーん・・・・・。やっぱり、レーダーの反応が気になるけど、相手は軽巡洋艦と駆逐艦を有する第3水雷戦隊。例え、駆逐艦のみにあたってたとしても、最上位の艦は軽巡。深海棲艦と同じ装甲なら4隻同時に来ても、余裕で殲滅できるから、やっぱり・・・」

 

かけているメガネ(ウェアブル戦術情報端末)に投影される多機能レーダーの対空画面。そこには赤城から発艦した航空隊がバッチリと映し出され、尋常ではない存在感を発揮していた。その数、41機。これほどの数の航空機を1人で相手にしたことなど、シュミレーターを使用した艦娘学校の訓練でもない。航空隊は事前に通知されたこちらの位置からだいだいの見当をつけているようで、密集陣形ではなくある程度こちらが動いていることも想定して、編隊間の距離を比較的開けて飛行している。

 

一糸乱れぬ飛行。しかも、現在はみずづきの電波妨害により相手は無線が一切使えない。無線封鎖が常識だとしても、そこから赤城航空隊の練度を窺い知ることは容易だ。

 

みずづきは演習開始直後からあまり動いていない。赤城航空隊はみずづきに向け一直線だ。そして、彼らとの距離はすでに20kmを切っている。時速約350kmで飛行している航空隊がみずづきの直上に到達するまで、約3分30秒。

 

41機、3分30秒、20km、350km。それらの数字が頭を覆い、否応なく心拍数を上昇させる。

 

「早くしないと対空迎撃が間に合わない・・・・。最優先は対空目標の迎撃。例え、相手が化け物みたいな数でも、やることは変わらない!」

 

みずづきが焦る理由。それはあきづき型特殊護衛艦が搭載するFCS-3A多機能レーダーの限界にあった。このレーダーは昨今では常識となりつつある、対水上・対空レーダを融合させ両探知範囲内の捜索・追尾、そしてESSMを誘導するイルミネーター、Mk45 mod4 単装砲の管制までを一体化させた統合レーダーシステムである。そして、電波を照射するレーダー素子を常時一定方向に向けているフェイズド・アレイ・レーダーのため、回転式レーダーのように回転している間に特定方向の探知が不可能にならず、探知の隙間を減らすことが可能となっている。

 

だが、探知と攻撃は全くの別物である。FCS-3A多機能レーダーは探知距離250km、同時捕捉目標約300を誇る。また、イージス艦のSPY-1レーダーと異なり捜索はCバンドと呼ばれる周波数を用いているため、イージス艦が苦手としている低高度目標の捕捉もFCS-3A多機能レーダーの方が優れているとさえ言われているのだ。では、対処能力はどうか。FCS-3A多機能レーダーはレーダー面1面に対してイルミネーターを1つ有している。誘導に母艦のイルミネーターを必要とするセミ・アクティブ・レーダー誘導などのミサイルは搭載されているイルミネーターの数によってミサイルの同時誘導数、そして艦の同時対処能力が決まる。言い替えれば、イルミネーターの数によって同時対処能力が制約されるのだ。それは1つで90度をカバーし、4つ合わせて360度をカバーする構造になっている。そのため、あきづき型の有しているイルミネーターは4つである。だが、あきづき型ではイルミネーターの誘導レーダー波照射方法に間欠連続照射方式(ICWI)と呼ばれる方式を採用している。これでは複数目標に対してイルミネーターを断続的に切り替えて照射することが可能な方式で、1イルミネーター単体での同時対処可能な目標数が増加するのだ。そして、ESSMは断続的に誘導レーダー波が途絶えても追尾が可能。どれだけ誘導可能かはそれこそ艦のによってバラバラだが、あきづき型は1つのイルミネーターにつき8発の誘導が可能である。

 

そして今、航空隊はみずづきの真正面、180度の範囲に展開している。それを捉えているのはレーダー面に対応しているイルミネーターのみ。この場合は、レーダー面2面が航空隊を捕捉、追尾している。そして、ESSMを誘導可能なイルミネーターは、2つだ。

 

つまり、現在みずづきが同時に対処可能な目標数は16だ。

 

少ないと思うかもしれない。しかし、あきづき型のFCS-3A多機能レーダーはEU諸国やロシア、中国などが開発・実戦配備した同世代の多機能レーダーと比較しても、日本製の名に恥じることなく全ての面において立派な性能を誇っている。イージス艦でさえ、同時対処可能目標数はあきづき型と大差ないのだ。そもそも、現代艦は集団で行動することを前提に装備が整えられている。艦は艦隊という機械を動かす、1つの歯車という位置づけなのだ。

 

この、1隻で41機もの航空機を相手にしているこの状況が、日本はおろか日本世界の常識を逸脱しすぎているのだ。それが例え、時代遅れのレシプロ機であろうとも。

 

「対空戦闘よーい!! 目標赤城航空隊群! ESSM発射用意っ!!」

 

みずづきはレーダー画面と透過ディスプレイの先に見える空、曇天を睨む。まだ航空隊は視認できないが、視認できる距離まで接近されたらいくらみずづきといえども危ない。

 

高速で目標を識別、火器管制レーダーを照射してロックし、ESSMを収めているMk41VLSの蓋を開放。いつもは何とも思わないのに今日に限っては遥かに遅く感じる。

 

メガネにでかでかと“準備完了”の表示がなされた瞬間、みずづきは叫び発射ボタンを目いっぱい押す。後からボタンが壊れていないか心配になったのは秘密だ。発射数は限界数の16発!

 

「ESSM、発射ぁぁぁ!!」

 

瞬間、SSMと比較して随分と軽い衝撃。轟音という表現まではいかない静かな発射音が背中から聞こえる。次々とVLSから放たれる「光の矢」。ただ、発射数が16にものぼるため、それだけで時間がかかる。17式艦対艦誘導弾Ⅱ型と同じく白い塗装を施されたESSMはイルミネーターが照射するレーダー波に従い、噴煙による白い飛翔煙を描きながら自らの目標へ突き進んでいく。見えなくなるESSM。曇天でいつもより空が白いためか、視認できなくなった時間は短い。

 

「命中して、イルミネーターが空いたら第二次攻撃。落ち着て対処すれば大丈夫・・・」

 

みずづきは祈るようにレーダー画面を見る。刻々と近づく、ESSMと航空隊。41機という数字のインパクトは、加賀に大見得をきった自信に影を指させるには十分すぎる威力を持っている。

 

 

 

~~~~~~~~~

 

 

 

みずづきがいると推測している海域へ直行する赤城航空隊、総数41機。予備機も含めた全力出撃を行えばこれのちょうど倍の数になるのだが、歴戦を共にしてきた戦友たちは自身の土俵に上がる前に自らの母艦と共に運命を共にしてしまった。操縦桿を握る手には自然と力が入る。41機の指揮を任され隊長妖精はキャノピー越しに周囲の味方機を見る。今日は風が弱いため、もてあそばれている機体は見受けられない。訓練通り、「当たり前」の飛行だ。だが、そのブレない翼には戦意がみなぎっている。

 

「隊長、発艦してから9km。目標推定位置まで19km!」

 

後部にのる補佐妖精が隊長妖精に戦術情報を伝える。

 

「了解。いいか! 計器ばっかりじゃなくて、外にも目をむけてどんな些細な変化も見落とすなよ!」

「はい!」

 

鋭くなる眼光。赤城、そして翔鶴の航空隊は工廠の妖精や母艦からみずづきの情報をある程度入手している。深海棲艦航空隊の末路が頭をよぎる。

 

自分達でも損害発生必至の敵はみずづきを前にして、一撃を加えることもなくわずか数分で全滅。引きつった苦笑を浮かべてしまうほど現実離れした完敗だった。

 

そして、伝聞の光景は突如として現実のものとなった。いきなり。本当にいきなり爆発・四散するを先頭を飛行していた天山。何が起こったのか一瞬、理解できない。

 

「っ!?」

 

目を見開くまでにさらに2機が爆発し、バラバラにされた濃緑の機首や、日の丸が描かれている主翼が無気力に落下していく。やわな連中でもないのに回避行動がろくに取れていなかった。彼らもなにが起こったのか理解できていないだろう。

 

「ああ・・、4番機と7番機が・・・」

 

情けないこえを出す補佐妖精。いつもなら怒鳴り散らすところだが、今回は隊長妖精も出していたかもしれないので無視を決め込む。飛び散る天山だった破片。だが、そこに驚愕はあれど混乱はない。

 

これも、作戦通りだ。

 

 

破片に交じって空中を舞う、わずかな太陽光をきらきら反射する無数の金属片。

 

 

「俺たちの腕を見せる時が来たぞぉぉ!! ブツを投下! 急速降下ぁぁ!!」

「了解!!」

 

天山の腹に抱えられていた3つの魚雷のようなもののうち、両翼のしたに取り付けられていたものを投下。隊長機は即座にジェットコースターばりの急機動を描き高度を急速に下げていく。その数秒の間に追加で3機が落とされる。その後も次々と無残な残骸となって海に落ちていく部下たち。彼らも味方がなすすべもなくやられるところを呆然と見ていたわけではない。捕捉された各機は自身に向かって猛進してくるミサイルを認識した瞬間、天山の高運動性を全力発揮し3次元である空をあますことなく利用して回避を行った。前後左右、上下に。だが、天山、いや妖精たちが知る全ての航空機を遥かに凌駕する機動性。意思を持っているかのように方向を変え追尾してくる矢には太刀打ちできなかった。これまでの血反吐の努力をあざ笑うかのようにあっさりと天山を食らってしまったのだ。

 

あちこちに現れる黒い花。わずか1分足らずに3分の1にあたる16機が落とされた。

 

だが、彼の犠牲は決して無意味ではない。黒煙に交じる白い光。それは投下し、本来積んでいるはずの魚雷や爆弾と比べるまでもない小規模な爆発を起こしたブツから、上空にまき散らされる。そして、それに次元を超えた攻撃から運よく逃れた25機もまるで鏡で反射しているのではないか思えるほど、同時に全く同じ動作で続く。数え切れないほど投下されるブツ。そして、そこからまき散らされる自分たちにはほとんど害のない金属片。但し、エンジンの吸気口に運悪く吸い込めまれれば最悪の場合、エンジン不良を起こし墜落の危険もある。しかし、それは承知の上。全ては艦隊の、赤城の仇をとり、自分たちの腕を21世紀の未来人に思い知らせること。

 

「さぁ、舞台は整った。機械ではない、血の通った身体から生み出される力、見せてもらおうか!」

 

吹雪の中を飛行したときのことを思い出し急降下による重力に耐えながら、隊長妖精は狩人の目を水平線の先に向ける。

 

 

 

~~~~~~~~

 

 

 

「う、嘘でしょ!! なんで! なんでよ!! どうして!!」

 

朗報であるはずの航空隊16機撃墜。しかし、それはみずづきの不安を解消することも、やわらげることさえできなかった。周囲に響き渡るみずづきの悲鳴。心拍数は跳ね上がり、制服が汗で急速に湿り具合を増していた。

 

メガネに映されたみずづきの目たる対空画面。先ほどまで航空隊がいた空域。本来なら距離を表す罫線が入り航空隊を示す光点だけが表示されているそこは、現在大規模なノイズで覆われ、捜索・追尾が不可能になっていた。故障を疑いシステムを稼働させながら、スキャニングを行うが異常はない。周波数をランダムで変更してみるが、信じられないことに全周波数帯がやられている。挙句の果てには、25機もの大編隊をロストする始末だ。今まで、いやみずづきが艦娘になって初めて遭遇する事態。しかし、遭遇したことはなくとも知識はあった。教本や訓練の記憶が甦る。

 

そして、みずづきは1つの結論に達した。

 

「チャフによるレーダー妨害・・・・・・信じられない。発想といい、それを可能にする装備といい、あり得るのこんなことが・・・・」

 

絞り出すように呟く。チャフ攻撃時のお手本のようなレーダー反応と、起こった時の状況。それはみずづきの結論に強力な説得力を与えていた。航空隊がチャフの入った()()()()を腹に抱えており、それを投下し内蔵していた金属片をまき散らしたと考えれば面白いほど説明が行く。

 

「私が初日に行った戦闘を見ただけで、現代艦の弱点を見破るなんて・・・・。しかも、レーダーの周波数まで・・・」

 

チャフとは細かい金属片やプラスチック、グラスファイバーの小片を用いて敵のレーダをかく乱、麻痺させる装備だ。第2次世界大戦で使用されたのがはじまりとされる古典的な装備であるが、この威力は21世紀の今日でも健在であり様々な作戦、装備で先進国ですら多用している。これを完全に防ぐ手立ては皆無で、まかれれば最後、チャフが地上または海に落ちるのを待つしかない。せいぜいできるのは周波数帯を変えることぐらいだ。チャフをレーダーに効果的に反応させるためには、その周波数帯をもっともよく反射する長さ・大きさのチャフを用意しなければならない。そのため、みずづきは周波数帯の変更を行ったのだが、航空隊のチャフはFCS-3A多機能レーダーの全周波数帯に干渉していた。

 

「いつの間にレーダーの周波数を調べたんだろ・・・・」

 

底知れぬ恐怖に声が震える。

 

しかし、事実はみずづきが考えるより単純なのだ。レーダーが一般化もしてなければ実戦配備も始まったばかりという、状況・技術水準で大出力及び高周波であるFCS-3A多機能レーダーのレーダー波を解析し、それに見合ったチャフを用意するなど不可能な芸当である。百石たちはただ、みずづきの使っている周波数帯が分からないため、全周波数帯に干渉するようにチャフを用意しただけなのだ。

 

言ってしまえば、適当な選択である。

 

だが、その適当がみずづきに精神的な大ダメージを与えていた。

 

「チャフをだしても、相手はレーダーに一切頼っていない装備だから、影響はこちらにだけくる。・・・・・・・・・・・さすが海軍のお膝下、横須賀鎮守府ね。やってくれる」

 

19km先でまかれたチャフ。第二次世界大戦も経験せず技術的に日本世界と隔絶しているにも関わらず、こちらの弱点を的確についてくる戦法。艦娘や妖精たちの入れ知恵があるとはいえ、もはや驚愕過ぎて顎が外れそうだ。ぎこちない笑顔も浮かんでしまう。

 

「でも、全周波数に干渉しているとはいえ、ESSMの誘導に不可欠なXバントがダメにならなくて良かった」

 

このチャフ攻撃はどちらかといえば、全周波数帯の中でも、低周波数に干渉していた。そのため、FCS-3A多機能レーダーの中でも低周波数を使って捜索・追尾を行うCバンドが特に、酷い状態となっている。こちらの攻撃手段を封じる目的も含んでいたのであれば、これは僥倖だ。もし、誘導用に高周波数を使っているXバントにまで干渉していたら、ESSMの誘導が困難になり、結果あさっての方向に飛んでいくことになるのだ。また、チャフ攻撃がロックオン完了後に行われたこともそうだ。その前にやられていたらそもそも捜索と追尾が困難になるのでロックオンすらできなかった。ただ、そのロックオンすらできない状況が、今だ。

 

「敵の残存機は25。敵が海面ぎりぎり飛んで、接近されないとレーダーで捉えられない以上、確実に捉えられる主砲迎撃圏で迎撃するしかない。ESSMの誘導に支障はないから、それと主砲を両用。しかし・・・・このFCS-3A多機能レーダーでも捉えられない高度飛んでるって、あの連中ばけもの過ぎでしょっ!!」

 

FCS-3A多機能レーダーは捜索・追尾の周波数にCバンドと使っているため、あのイージス艦が搭載しているSPY-1レーダーよりも低高度目標を探知する能力は高いのだ。それをかいくぐる赤城航空隊。もう、波をかぶる高度を飛んでいるとしか思えないが、よくよく考えてみると今日の波は穏やか。天気は一応敵に味方している。だが、それでも信じられない。みずづきではなくとも、海防軍人のほとんど全員が似たように悲鳴をあげるだろう。

 

そして、もう1つ厄介なことが起きていた。航空隊は第1機動艦隊・第3水雷戦隊からみずづきへ向かう最短コース上でチャフをばらまいた。その空域では現在の気象条件が無風のため、なにかの意思が働いているかのように同じ場所がレーダーの機能不全箇所になっている。そして、軽いとはいえ金属片も重力に従い落下する。無情にも残存艦隊が通るであろうコース上に。なにが言いたいかというと、つまり・・・・・。

 

「残存艦隊までロスト。・・・・・・・位置が分からない」

 

対水上目標の捜索領域までチャフの影響下に入ってしまったのだ。思わず頭を抱えてしまう。なにもかもかみずづきの予想を超える方向に動いていく。これが全て計算されたものだとしたら、これから先何が出てくるか分かったものではない。

 

そんな、見るからにどんよりしているみずづきの目に待ち望んだ目標探知情報がメガネを通じて届く。ついに技量で姿を隠していた敵はFCS-3A多機能レーダーの前に晒された。

 

「やっと来た・・・・・・。踊らされてる感がものすごいけど、見つけた以上やることは変わらない!! ただ、殺るのみ。日本海上国防軍の力、化け物どもだけじゃなくてあんたたちにも教えてあげる。覚悟!!」

 

さきほどのまでの態度が嘘のように消え、悪役のようなセリフを躊躇なく吐き出すみずづき。瞳にもう動揺はなく狩人の色を宿していた。演習開始直後の控えめな態度はどこへやら。若干鬱憤がたまっているようで、言葉と同じくそこにも邪悪な雰囲気がひしひしと感じられる。

 

「ESSM第二次攻撃用意っ!!・・・・・・・・発射ぁぁぁ!!」

 

みずづきの心理状態など何処吹く風。FCS-3A多機能レーダーをはじめとする各種システムは、これまで通り冷静沈着かつ冷徹に命令を遂行していく。そこに人間のような感情の起伏は全く存在しない。

 

火器管制レーダーの照射による目標のロックオンを確認し、容赦なく押されるESSMの発射ボタン。

 

指示を受け取り、VLSからまばゆい紅蓮の光を放ち撃ち上がるESSM。その数、第一次攻撃と同じ16発。

 

白いロケット煙を噴射しながらすぐに視認圏外に達する。彼らもただの機械。いつもと同挙動かと思いきや、一瞬垣間見た姿は先ほどよりも軌道のブレが明らかに少なかった。弱かった風がさらに弱くなり無風とさえ言っても過言ではない現状が成したのであろうが、艤装のシステムたちと違いそれには何か熱い意志が籠っているように感じる。

 

発射された21世紀の産物と、それに肉薄する20世紀の伝説。

 

舌なめずりをし狩人と意気込む者同士の第2ラウンド、開幕だ。

 

 

 

~~~~~~~~~

 

 

 

「現在、15km飛行。目標推定位置まで13km!」

「了解。だいたい半分か。・・・・・・・静かだな」

 

チャフを散布し急降下してから1分と少し。眼下には着水体勢に入ってるのかと錯覚してしまいそうになるほど紺青の海がすぐそこにある。時折、海面ギリギリを滑空するトビウオらしき生物も確認できるほどだ。みずづきの第一次攻撃を逃れた赤城航空隊25機はみずづきの推測通り、日頃の訓練の賜物である常識はずれの低空飛行を行っていた。これを1機の脱落もなくしかも引き続き一糸乱れぬ隊形で全機が飛んでいるのだから、もはや言葉も出ない。だが、同じ艦娘のみならず瑞穂や日本の軍人すらも感嘆してしまうこの美しく力強い飛行も彼らにとっては当たり前。特段興奮したり感動したりすることはなく無線封鎖つきなので静かなことは静かなのだが、今日の静寂はいつもと違っていた。いや、いつもと同じと言った方が正しい。

 

戦闘前の緊張。

 

単なる演習にも関わらず、隊長機の二人を、航空隊を言い知れぬ緊張感が覆っている。いつもは落ち着きがない機体も、搭乗員が別人になったかのように大人しい。本当に自分達が虫ケラ同然の存在であることを見せつけられた後では、不気味に感じる。

 

隊長妖精は操縦桿を握る手に湿度を感じ、反射的に握り直す。

 

 

 

そして、そのときがきた。

 

 

 

雲のように白い噴煙を吐き出しながら、自分たちに向け恐ろしいほど一直線かつ正確に猛進してくる光の矢。隊長妖精はキャノピー越しにそれをはっきりと視認した。

 

「全機、回避行動!!!!!!!って、無線使えねぇんだった!!」

 

思わず掴んだ無線機を怒りに任せて投げつける。それに目を丸くする補佐妖精。

 

「隊長、お気持ちは察しますが今は耐えて下さい!!」

「クッソ・・・、練度に任せた電探のかいくぐりもここまでか」

「ミサイル数7・・・いやさらに多数!! 先行する第3飛行隊に接近!! あ、ああ、だ、ダメです!! このままでは」

 

そこから先の言葉は必要なくなった。わずかな時間差で発生する爆発。破片が落ちることによって発生する海面の水柱。口にしかけた言葉が現実となって、目に映る。もとよりここはトビウオが見えるのではないかと思えるほどの低高度。そんな状況では下手に動くと海面に激突する可能性が往々にしてあるためろくな回避行動は取れない。みずづきのレーダーを欺くために覚悟した対価だったかが、来ると分かっていてもただ飛び続けることしか叶わず、爆発し、翼がもげ、きりもみ状態で海に落ち、散っていく部下はあまりにも憐れだった。中には上昇して一気に距離を離そうと賭けに出た機体もいたが、当然と言わんばかりの軽やさで方向転換するミサイル。延命にすらならなかった。電探撹乱のための金属片が撒き散らされた点だけが、唯一姿すら確認できていないみずづきへのささやかな攻撃だ。ただ、これも作戦の内。想定の範囲内なのだ。だから、先ほどの攻撃を受けた際、チャフの入った魚雷モドキを3発腹に抱えているにも関わらず、2発しか投下しなかったのだ。最後の1発は撃墜されることが前提なので、後生大事に持ったまま。

 

「くぅぅ・・・・・・・。作戦通り、上昇を開始。これより突撃を開始する!目標はみずづき! 分かってるだろうが、前代未聞の格闘機動になる。舌噛まないよう注意しろよ。その前に丸焦げにされるかもしれんがな」

「了解! 私を隊長を信じてますし、どれだけ負けず嫌いかも身に染みてます。後ろと戦術情報は任せて、どんっと行ってください!!」

「ふ・・格好つけやがって。後から、後悔しても知らないからな」

 

部下の少し気取った台詞に苦笑しながら、隊長妖精は操縦桿を握り直す。先程もしたが手には闘志の熱さはあれど、緊張からくる汗は引いている。

 

「突撃!!!!!!」

 

鬼気迫る大声と共に限界まで引かれる操縦桿。濃緑の機体は部下が散った証拠である爆発煙をかき分け、高度を一気に上げていく。視界に入る輝きを持った小さな光。刹那、エンジンの不調を覚悟するが、運が良かったのか金属片を吸いこんでも空気を割き、推進力を生み出しているエンジンは絶好調だ。それに続く各機。だが、みずづきの放ったミサイルは赤城航空隊の機動に関係なく、冷酷なまでに殺到し、時間の針が進むごとに天山たちの命を刈り取っていく。

 

そこに慈悲や幸運は全く介在していなかった。

 

「なんと・・・・・し、信じられない。40、8、12、13、15、26、22、32番機爆散! 39、28番機、制御を失い海面に激突!! 31番機が・・・・、っ!? あ、新たに敵ミサイルを確認!! 数、4!!!!」

 

補佐妖精の悲痛な叫び。一挙手一投足のあいだに1機、また1機と自身の部下たちが訓練の成果を、自らの闘志を発揮することなく、みずづきを視認すらできずに果てていく。次々と曇天に出現する黒い花。それを見て補佐妖精の悲鳴を背中に受けてなお、隊長機は微塵の迷いもなく突き進む。僚機、そしていまだに攻撃を受けていない天山も同じで、例外は皆無である。

 

部下の士気が例え圧倒的な相手を前にしても萎えていないことを確認した隊長妖精は、それに誇らしげな心境となり不敵な笑みを浮かべる。先ほどまで繰り広げられた一方的な狩りが何故か収束したことも笑みを浮かべられた理由の1つだ。

 

その「何故」が引っ掛り思考の海に浸りかけたその時、眼前の海上に小さい、本当に小さく少しでも集中力を別のところに向けていれば見落としかねない影が現れた。

 

待ちに待った艦影。多くの部下に瞬間移動および海水浴を強いた元凶がようやく手の届く世界まで来た。自ずと操縦桿を握る手に力が入る。

 

「目標を確認」

「現在の飛行距離、23km! 目標、みずづきまで約5km! 残存機数・・・9」

「9・・・・。あれだけの策を施してもここに来るまでに32機もやられたか・・・」

 

キャノピー越しに見える部下たち。赤城発艦時は前後、左右、上下に頼もしい濃緑の翼を広げていたが、今となっては前方と左右にしかいなくなっていた。

 

「隊長・・・・・」

「・・・・・マリアナの七面鳥落とし。あいつらもこんな気分だったんだろうか。なにも出来ず苦楽を共にした仲間が、次々と落とされていく。悠々とゆく敵に・・・。俺たちは瑞鶴や加賀の連中から相模湾のカモ狩り、と揶揄されるかもしれんな」

「・・・・・・・・」

「覚悟はあったんだが・・・。あいつらがハエみたく叩き落とされて、しかもその方法がこっちの常識の次元を越えていると、きた。さすがに作戦通りとは言えこれは堪える。だが・・・・」

 

言葉を発しながら漠然と捉えていたみずづきの姿。こちら側から見えているのだから彼女からも当然見えているはずである。だが、彼女に近傍まで接近された深海棲艦のような動揺は一切見当たらない。彼女は前方を向いていた一門しかない中口径の主砲を目にも止まらぬ速さでこちらに指向する。大日本帝国海軍や深海棲艦との格差に目を見張ったのも束の間。それ以上の絶対的な格差の降臨に見張った目が限界まで見開かれ、凍り付く。

 

みずづきの主砲が火を噴いて数秒。突如として爆発、四散し虚しくチャフと機体の破片をばらまく前方、中央を飛行していた機体。

 

 

艦載砲が初弾で、航空機に砲弾を命中させた。

 

 

自分たちと同じ兵器で原理も仕組みも分かっているがゆえに、その衝撃はどこまでも超高速で追尾してくるミサイルよりも凶悪だった。

 

 

もう一度言おう。艦載砲が初弾で、航空機に砲弾を命中させた。

 

 

新幹線並の速度で飛行するドローンに、音速一歩手前で投げた野球ボールを初球で当てた。例えるとこのようなものだ。果たして、可能だろうか。

 

「お、おい、嘘だろ!? あり得ない、こんなのあり得ない!!」

「そんな馬鹿な・・・・・、これが未来の科学が成せる業・・」

 

そう。これが日本の、日本世界の力だ。

 

隊長妖精はそれを確認した瞬間、驚きのあまり隊長の威厳を損ないかねないほどの大声をあげる。彼、いや彼だけではない。残存機の搭乗員は全員同じ反応を示しただろう。

 

まぐれかとわずかな希望を願うが、それはすぐさま発射された次弾と再び爆発する部下によって、天山同様完膚なきまでに叩きつぶされる。

 

未来の衝撃からいち早く立ち直った隊長妖精は、回避行動のため一気に上昇。僚機もそれに続き前方の編隊は逆に降下を開始する。立体的に二手に分かれ、迎撃の撹乱を狙うが、効果は皆無。あり得ない連射を見せつけるみずづきの主砲によって天山は凄まじいスピードで数を減らしていく。撃ちだされる砲弾はまるで、未来を予知しているかのようにどんなに不規則な機動をとっても一発も外れない。

 

「百発百中の命中精度、主砲では考えられない連射速度。・・・・今は敵ですけど、本当の敵でなくてよかった」

 

緊迫感あふれる修羅場なのだが、それに構わず心の底からの安堵の溜め息をつく補佐妖精。

 

「それには俺も大賛成だ。こんなの勝てっこない」

 

下方で勇猛果敢にも突撃していた最後の1機が至近で炸裂した砲弾の破片によって、ズタズタに引き裂かれ爆発。見るも無惨なジュラルミン片と化し、海に落下していく。

 

「直撃ではなく、近接信管で炸裂した破片によって仕留めているのか。思想自体はあまり変化していないようだな。変化したのは、技術か」

 

即座に砲身をこちらに向けるみずづきの主砲。洗練されたその動きからは人間味が全く感じ取れない。

 

とうとう年貢の納め時が来たようだ。

 

「だがな」

 

隊長妖精はキャノピーのガラスにわずかに映った補佐妖精の顔を見る。光の加減で鮮明に見えなかったが、補佐妖精はそれでもはっきりと捉えた。隊長妖精の顔には、何度も垣間見せた闘志が健在だったのだ。

 

「大日本帝国海軍空母航空隊、そのなかでも誉れだかい赤城航空隊がへばるわけにはいかないんだよ!!」

 

隊長妖精はハンドサインで両サイドを固めている僚機に「突撃」の指示を出す。それにいい笑顔でグッドサインを返してくる。

 

「あいつら、格好つけやがって。おいっ!! 見ての通りだ。・・・・・・覚悟はいいか?」

「はいっ!!」

「相変わらず臆病なくせにお前も大概だな。だが、それでこそ空母航空隊の搭乗員だ!! いくぞ」

 

みずづきの砲身から噴き出す硝煙。それを見た瞬間、隊長妖精は思いきり叫ぶ。

 

「突撃ぃぃぃ!!」

 

甲高いエンジン音がさらに大きくなり、機体が傾くと体が前から強烈に締め付けられる。眼前いっぱいに広がる海。だが、彼らも、隊長機に続く僚機3機も視線は海ではなく、その上を堂々と白波を立てて進むみずづきを捉えていた。

 

瞬く、みずづきの主砲。

 

右翼を飛んでいた天山が爆発。その衝撃で機体が大きくゆれ、破片が機体に当たるが構わない。徐々に大きくなっていくみずづきの姿。それと引き換えに叩き落とされていく僚機。

 

 

 

 

 

ついに自分たちのみとなってしまった。大空を1機で、みずづきに肉薄する。

 

 

 

 

 

発射される砲弾。

 

補佐妖精は目をつぶるが、隊長妖精はそれを見て恐怖するどころか笑っている。

 

「隊長なめんなよ!!  だてに部下が散っていくところを指くわえて見てた訳じゃ・・・・・」

 

心のなかのカウントダウン。それがゼロになった瞬間、壊れる覚悟で操縦桿を力いっぱい引きエンジン出力を全開にする。

 

「ねぇぇエェ!!」

 

体に襲いかかる重力。機首が急角度で上がり雲しか見えなくなった視界。その下で機体が壊れる錯覚を覚えるほどの爆発が発生。隊長妖精は操縦桿を握っていたためなんともなかったが、後ろからは何かがぶつかった音と「いってぇぇ」という呻き声が聞こえてくる。しかし、今はそれに構っている暇がない。すぐさまエンジン出力を限界まで絞り、機首を方向転換しながら下げる。雲から海に変わる視界。そこに目を見開いて、固まっているみずづき。

 

 

そりゃそうなるだろう。レーダー情報からFCS-3Aシステムの一つである射撃統制システムが算出した結果を、感覚だけで覆したのだから。

 

 

好機と見た隊長妖精はそのままみずづきへの突撃コースに突入。今回の狩月作戦における赤城航空隊の役割は、みずづきに少しでも弾薬と精神力を消耗させ電探の機能低下を誘発。このあと登場する残存艦隊たる第2特別艦隊の攻勢を優位にすることだ。よって、はなから爆弾投下や魚雷によるみずづきへの打撃は期待されていないため、赤城航空隊はチャフの入った特性爆弾し積んでいないのだ。

 

そんな丸腰の状態で艦上攻撃機が敵に損害を与える方法。

 

それはもう1つしかない。航空機の最終攻撃手段。そして日本がアジア・太平洋戦争末期に編み出した狂気かつ愛国心の体現たる、自身を誘導装置とし機体自体を爆弾とする・・・・・・・・・。

 

 

 

 

特攻だ。

 

 

 

 

「みずづきよ、俺たちの覚悟を受けとれぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!」

 

 

 

 

 

 

恐怖を感じるほどのスピードで大きくなるみずづきの姿。彼女が右手に持っている主砲はこちらを向いているものの、砲身は若干ずれたところをにらんでいる。

 

 

勝った!!

 

 

確信する隊長妖精。しかし、その儚い光はまばたきをした刹那、機体と共に無数の穴を開けられ、朽ち果てる。

 

「な・・・・・・・」

 

驚愕に顔を染めるのも、一瞬。容赦なくエンジンや燃料タンクに穴を開けられた機体はみずづきへ到達する前に 爆弾としての機能を終える。

 

その間際、隊長妖精は自分の意地を叩き割ったハンマーを確かに見た。上部に白い筒のようなものを乗せたガトリング砲。それはこちらを寸分たがわず睨み付け、細い砲身から硝煙をわずかにあげていた。

 

 

~~~~~~~~~~~~~

 

 

艦娘司令艦「大隅」 司令室

 

「隊長機撃墜。これを持って赤城航空隊41機は、全滅。・・・・みずづき、損害なし」

「・・・・・・・・・・・・・・・」

 

演習前まで御手洗の怒号やそれに対応する視察組のなだめ、はなからそれらのやり取りを無視し議論や他部署との交信に没頭していた参謀部員の声で、ある意味賑やかだった室内。しかし、現在はそれが夢か幻であったかのように、ただただ静寂に支配されていた。聞こえるのは戦況を報告した参謀部員の震えた声と、テレビから流れる撮影隊が乗っている零式水上偵察機のエンジン音のみ。

 

想像を絶する光景に、身じろぎすらも憚れるほど重たくなる場の空気。それを破れるのはただ一人だけ。全員、もしかすると彼の言葉を待っているのかも知れない。瑞穂海軍トップの言葉を。

 

「いやはや・・・・・ここまで目と口をだらしなく開けたのは何年ぶりか。長生きはするものだな」

 

1つ小さな溜め息を吐くと、的場は達観したような笑みを浮かべる。それがきっかけだった。場の空気が少しばかり軽くなり、同じ席についている他のメンバーも的場につられ乾いた笑顔になると口を開きはじめる。ただ、笑顔から放たれる言葉は、とてもとても笑顔から出てくる温かみを帯びたものとは次元が異なっていた。

 

「たった1隻で、空母航空隊41機を、しかも赤城の部隊を無傷で殲滅するとは・・」

「赤子の手をひねる、いやこれはもうそれ以下だ。虫を叩き落とすかの如く、がもっとも現実を言い当てている」

「数十km先まで走査可能な電探に、追尾機能付きのロケット弾たるミサイル、航空機に対してすら百発百中の主砲に、半端じゃない連射速度の対空機銃」

「ヤマアラシやハリネズミが可愛く思えるほど、ハリネズミだよ彼女は」

「百石提督と吹雪の報告書は寸分たがわず真実だったことが、はっきりと証明された訳ですな」

 

カーキ色の軍服を着た百石より少し年上の男の発言。それには百石もただただ苦笑するしかない。吹雪から報告を受け、それをもとにした報告書を上に提出し、第5遊撃部隊や漆原と作戦を練ったとはいえ、百石も視察組と同じく完全に飲み込めていた訳ではなく半信半疑だった。実際に見なければ信じられないのだ。このような、自身の世界の常識に喧嘩を売るような光景は。

 

しかし、それは今、現実として目の前に出現していた。

 

度を越えた驚愕と衝撃。的場や百石たちのようにこれにうまく折り合いをつけられる人間もいれば、いかに海軍の上層部まで上り詰めようとも簡単には許容できない人間も存在した。いや、軍人だから、常識を糧として国を守り、部下の、国民の命に責任を有する佐官・将官であるからこその葛藤といった方が正しいだろう。彼らは的場の気遣いを感じつつも一応に顔色を悪くし、視線をテーブルに落としている。だが、そのなかでも意気消沈とはほど遠い反応を示している者がいた。小刻みに震える拳と腕。ぶつぶつと他人には聞き取れない独り言を漏らす口。

 

「なんなんだこれは。俺は・・・・夢でも見ているのか?」

 

御手洗は常日頃ばらまいている尊大な態度からは全く想像できない弱りきった雰囲気で口を開く。聞くだけで他人の気分を害するような挑発的な口調はなりを潜め、御手洗の皮を被った全うな人間が話しているのではないかと錯覚を覚えてしまうほどだ。そんな彼の姿を初めて見た、緒方を筆頭とする参謀部員は例外なく目を丸くしている。中には、というか全員がみずづきの暴れっぷりを見たときよりも、明らかに驚いて動揺している。百石や筆端も例に漏れない。その一方で御手洗の様子を百石たちとは全く異なったベクトルて見つめている者たちもいる。御手洗の彼らしからぬ光景はいつもなら的場や海軍上層部の爆笑を我が物にしていただろうが、今はそんな空気ではない。

 

「あり得ない。こんなことが、こんなことが・・・・・・・・。次元が全く違うではないか・・・・・・・」

 

静かで、すぐに床へ落下しそうなほどの重さを持った独白。驚きのあまり固まっている百石たちや、ただその言葉を思慮深い表情で聞いている的場たちは何の反応も示さない。

 

「日本世界。我々と異なる歴史を歩み、おぞましい人同士の殺し合いがなくならない世界。そこから来た同じ人間が、同じ年月を歩んだ2033年の存在が、何故ここまで私たちを超越しているんだ? 何故ここまで進んでいるのだ? 戦術と兵器の進化、それを成し遂げる科学の発達は、大まかにいえば戦争の規模と数に比例する。日本世界は、いったいどれだけ・・・・・・」

「悲観的になるのはまだ早い」

 

御手洗の言葉を遮り、瞑目したまま呟く的場。その言葉は誰に向けられたものなのか。百石たちは首をかしげるが、御手洗は的場に噛みつくこともなく、一瞬目を見開くと口を固く閉ざす。顔には若干いつもの強気な雰囲気が戻りつつある。それを肌で感じ取った的場は心のなかで、相手に肩をすくめると目を開ける。

 

「まだ、作戦と演習は折り返し地点だ。それにこれは百石たちが立案した通りの展開だろ? お前も私や御手洗と同じように固まっているんじゃない」

「す、すみません!」

 

海軍トップの苦笑を一身にうけ、百石は背中に板でも入ってるのかとツッコミたくなるほど背筋を伸ばす。それにどうしても重くなりがちな空気が、再び弛緩する。

 

「対空能力はいやほど把握した。次は対空戦と砲雷撃戦の二重打。強大な盾を持つみずづきと凶悪な矛を持つ第2特別艦隊。さて、どちらともどうでるかな?」

「根拠なく勝てるなどと無責任な発言は致しませんが、彼女たちは見せてくれると思います。ハリネズミの懐まで入った赤城航空隊の隊長機のように」

 

的場の挑発が含まれた言葉に、百石は朗らかな笑顔で答える。不安や心配は微塵も感じさせない。

 

「彼女たちを信じているのだな」

「私の大切な部下ですから。的場総長や筆端先輩の信念はしかとここに息づいております」

 

そういうと百石は自身の胸に拳を当てる。

 

「ふっ、そうか。やはりお前をここに寄越して正解だった。未来に抗う彼女たちの姿、最後まで見届けさせてもらうぞ」

「はいっ!」

 

嬉しそうに笑う的場。そこには軍人以外の、ただの優しそうなおじいさんの顔が垣間見えている。百石の口から名前があがった筆端も照れ臭そうに鼻の下を指で擦っている。

 

それとは対照的に、いつもの雰囲気を少しだけ被り直し「お前は横須賀鎮守府の司令官にふさわしくない。ガキは学校に行っておけ!」と、散々罵ってきた御手洗は、衆人環視のなか、ささやかな抵抗として「ふんっ!!」とどこぞの艦娘のように顔をそらすのであった。

 

 

 

~~~~~~~

 

 

 

曇天のもと、海と雲のちょうど境を飛ぶ白色の物体。航空機であることは、翼と機首にあるレシプロエンジンで分かるが、その翼に。正確には主翼と胴体のつけ根。戦闘機がよくつけている増槽タンクのようなものを左右に2つぶら下げている。雲に遮られ弱々しい太陽光を、時おり弱々しく反射するキャノピー。そこには、茶色い飛行服を来た2人の男性がいた。1人はゴーグルをつけ前方を注視。その後ろに座っているもう1人は裸眼で、しきりに周囲を見回していた。

 

「先ほどから続いていた閃光は確認できなくなりました。一体なんだったんでしょうか?」

 

比較的まだ若く見える男性は、首をかしげる。突如、発生した複数の閃光。オレンジ色の光が霞みながらもハッキリと視認できた。

 

「方向は3時で間違いないんだな?」

 

操縦捍を握っている中年の男性は前方に視線をやったまま座席越しに問いかける。

 

「はい、間違ありません。武田機長」

「なら、おそらくそれは、演習の類いだ。3時の方向じゃ、今まさに一大イベントが行われてる」

 

武田機長は一瞬、前方から視線を反らし3時の方向を見る。だが、閃光などは確認できず、灰色の雲と群青の海が広がるばかりだ。

 

「一大イベント? って、まさか!?」

「そう。そのまさか、だ。さっき、発艦前に聞いた話じゃ、時間が押してるって言ってたからな。ちょうど今、行われてる時間だ。かなりのめっけもんを見たかもしれんぞ、高橋少尉」

 

片手を操縦捍から離し、後ろの高橋にも見えるよう高く掲げる。そこにはグッドサインがあった。

 

幸運と機長から祝福され、高橋は照れ隠しに鼻の下を擦る。奇跡を体現したもの同士、しかも一方は瑞穂と違う歴史を辿った平行世界の軍人。本来は見ることすら叶わない彼女たちの戦闘を拝めたのだ。嬉しくもなるだろう。微笑を浮かべながら、哨戒を続けるため再びキャノピーの外へ視線を向ける。武田・高橋両名が乗る一見変わった機体は、30式水上偵察機と呼ばれる艦載の偵察機である。母艦は、現在演習海域の警戒・監視任務にあたっている横須賀鎮守府所属の第5艦隊、その旗艦たる巡洋艦「因幡」だ。

 

増槽タンクのようなものは増槽タンクではなく、着水時に浮きの役割を果たす、フロートである。この基本的な構造は日本世界でも同じで、海防軍が装備しているUS-2救難飛行挺もフロートを2つつけている。

 

どこまでも続く海。海面がわずかな日光をキラキラと反射する中、一瞬チカッと波の反射にしては強すぎる光を捉えた、ような気がした。方向は本土ではなく太平洋側。

 

「ん? 光?」

「どうかしたか?」

「い、いえ、なんでもありません」

 

無意識の内に言葉が出ていたようで、高橋は我ながら驚き、冷静に取り繕う。それに武田も違和感を覚えなかったようで、意識を操縦捍と前方に向け直す。

 

それに安堵する高橋。

 

「気のせい、か・・・・・」

 

新幹線並の速度で飛行していく30式水上偵察機。

 

 

彼らが悠然と飛行している空から少し離れた海面。気のせいと片付けてしまった高橋が光を捉えた場所。そこには、なにもない。ただ静かに波打つ海面と、ブクブクと絶え間なく湧き出している気泡があるだけだ。




80年もの時を経た対決の行方は・・・・・!?

ついにやってきました演習本番です。かなりの分量になってしまい申し訳ありません。(まだ、後編があるんですよね・・・・)

いろいろとご都合主義や無知があるかと思いますが、温かい目で見て下さるとうれしいです。やっぱり、戦闘描写は難しい・・・・・・・。

文中でお示ししたあきづき型の戦闘能力ですが、本作では同時対処目標について「最小8、最大32」説を採用したいと思います。資料によってはひゅうが型護衛艦を参考に「最小3、最大12」と書いていたり、ヨーロッパ各国のフリゲートに搭載されているAPARという名前の多機能アクティブ・フェーズドアレイ・レーダーを作ったタレス・ネーデルラント社(オランダ)のシステム(ESSMの誘導方式の1つであるICWI=間欠連続波照射方式とか)をあきづき型護衛艦も採用していることから、同時対処目標を最大48としていたり、本当にまちまちです。(同じ文脈で、wikiなどは最大32と書いてありますから、もうなにがなにやら・・・・これを考えていたとき、人生で初めて“考え過ぎの発熱”を経験しました)

ただ、各アレイ(レーダー面)を疑似的に4分割し、それぞれ2つの目標を割り当てることが可能。よって、レーダー面1つに対して、8目標、全周だと8×4=32目標に対処可能という話が個人的にしっくり+想像しやすかったのでこれにしました。

本当のことは当然ながら、軍事機密なので分かりません!!(上記のうちのどれかだとは思いますが・・・・・・)

後、先週さらっと出てきた「元号」についてですが、一応明治以降に宮内省(宮内庁)や内閣・専門家のおじいちゃんたちが検討・発案したものの中から、気に入ったもの(文字から意味が連想しやすいもの)を選んでみました。

継明=「明」るい(=平和な)世が受け「継」がれていきますように。(←個人的な解釈です!)

もし、政府が正式に次の元号を発表した場合は公式な元号に変更するかもしれません。おそらく、そのころも本作は継続投稿されていると思います・・・・。一体、どんな元号になるんでしょうかね。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。