水面に映る月   作:金づち水兵

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みなさん、明けましておめでとうございます!

そして、長らくお待たせいたしました!! 10月に「第1章 時空を超えて」が完結してから3か月。『劇場版艦これ』も封が切られ、2016年も終わり、世間は2017年。本日より「水面に映る月 第2章 過ぎし日との葛藤」の投稿を開始いたします。(1章完結時の言葉がフラグにならずに良かった・・・・)

今回は第2章一発目ということで、話の区切りもいいので3話を連続投稿します!

相変わらず、文才なし+にわか知識ですが、温かい目で見守っていただければ幸いです。

では、どうぞ!!!(といいつつ、しょっぱなから暴走が著しいですが・・・)



第2章 過ぎし日との葛藤
23話 歓迎会 前編


横須賀鎮守府  講堂

 

 

太陽は完全に地平線の下へと沈み、空は月と小さくも堂々と輝く星たちの見せ場となっている。夜になっても雲が広がる気配はなく、昼間と同様に美しい自然の営みを拝むことが可能だ。そんな空の下、横須賀市街だけでなく鎮守府も明日に向けて寝支度を進めていた、はずだった。いつもなら・・・・。しかし、あちこちから歓声、果ては何やら楽器の演奏音まで聞こえてくる。落ちるはずの明かりは落ちず、府内を闊歩する大勢の人間。ある意味、お祭りのような雰囲気が横須賀鎮守府を覆っている。

 

その中の1つ、1号舎と同じく赤レンガ造りの講堂。その外見通り、普段は士官の着任式など堅苦しい年中行事や作戦のブルーティングに使用され厳格な雰囲気が漂っている場所なのだが、今日のように新しい仲間の着任を祝う歓迎会の時も使用される。その時の雰囲気はまた別物だ。講堂は煌々と明かりを灯し、周囲まで照らしている。構内は既に準備が完了し、出席者は歓迎会の開始を待っている。複数設置された円テーブルの上には軽食ながらも立派な料理が用意され、一部艦娘の目をくぎ付けにしている。これがあったから百石は艦娘を含めた出席者に「あまり食べすぎるな、後悔しても知らないぞ」という命令を出したのだ。その命令を無視し本能のおもむくまま夕食を堪能した一部の者たちは、それを見て後悔の念に駆られるがそれでもつまみ食いしそうな雰囲気を漂わせている強者がいる。ことあるごとに語る一航戦の誇りはどこへいってしまったのだろうか。青い顔をしてまで食べ物を胃に入れようとするその強い意志に、監視する艦娘たちはあきれ顔だ。決して感心などしない。

 

和やかな光景。しかし、ただ一名だけは別の世界を彷徨っていた。心拍数は高止まり、暑くもないのに汗をかき、目の前の一点を見つめて微動だにしていない。さきほど、食堂でみせた嬉しそうな顔とは大違いだ。講堂内からは見えないステージ横にいてもこれである。見かねた百石は苦笑しつつ、みずづきに声をかけた。

 

「そんなに緊張しなくても大丈夫さ。さっきも言っただろ?ここの艦娘たちはみんないい子たちだ。君の気分を害するような言葉はおろか視線すらも投げかけたりしない」

「それは分かってますけど・・・・でも、やっぱり緊張しますよ。私こういうの苦手なのに・・」

 

胸を張る百石に対し、みずづきは少しじっとりした視線を向ける。軍人であり一艦娘部隊の隊長を務めてきただけはあり、このような状況は何度も体験してきた。しかし、それでも慣れないのだ。思い返しても例外なく、そのたびに緊張していた自分しかいない。では何故、歓迎会でそこまで緊張している理由のか? 理由はほかでもない百石から告げられたある言葉が原因だ。

 

“自己紹介の後に、艦娘たちとの質疑応答を行ってほしいんだ。みんな、君に対して聞きたいことが山積みだからな。質問と回答は共有していたほうが後々のためになるし”

 

(マジ・・・・・・?)

それを聞いたみずづきの感想はこれだ。一理はありありで反論の余地はないのだが、応える側としては恐怖だ。なにせ、第二次世界大戦時の艦艇、いうなれば過去の先人たちから質問がくるのだ。しかも、あくまで推測だが彼女たちは21世紀の歴史を知らない。21世紀でも2016年まではある程度和やかな雰囲気でも語れるが、2017年以降は・・・・・・・・無理だ。そんなのこの場で言えるわけがない。そんなド直球の質問がくるか分からないが、関係ない事柄でもそれを説明しなければ答えられない質問もあり得る。また、自身の知識で回答可能な質問かどうかも不安材料だ。一応、艦娘なのでみずづきは軍人として優秀な部類に入る。対深海棲艦の切り札である艦娘には勉強ができるできないの意味でのバカ、ではなれない。しかし、優秀とは言ってもなんの変哲もない一般人レベルだ。通ってきた学校は普通の公立学校で、大学には行っていない。

 

「はぁ~、歓迎会やるって言ってもらえて舞い上がってたけど、よくよく考えればあり得る話だよね・・・・・、ここに来て初めて公式に姿を見せるわけだし。なんで、予測できないかな・・・・」

 

自分の単純さについため息が出てしまう。昔からずっとこれで、もはや性格の域だけに直すことは不可能かもしれない。

 

「はぁ~」

 

もう1度ため息。もし、ここに知山がいたらなら「幸せが逃げていくぞ」と、笑いながら声をかけ、面白がりつつもなぐさめてくれるだろう。

 

・・・・・時計を見る。そろそろ始まる時間だ。

 

「よしっ。全員そろっているようだし、予定通り。さて、始めるとしますか」

 

対照的に百石は喜々とした表情でちらりと構内の様子を覗い、小さくガッツポーズを決める。そこに偽りはなく、百石は本気で歓迎会を成功させようとしていた。そんな百石を見ていると、自身の動揺がひどく恩知らずなものに感じられる。ここはみずづきの歓迎の場。しかも、百石たちが善意で準備してくれたのだ。こんなことで主役が動転していては、台無しだ。

 

みずづきが気持ちを落ち着かせ深呼吸を終わらせた頃合いを見計らい、百石は声をかける。

 

「それじゃあ、行くぞ」

「はいっ」

 

そう言うと百石は壇上ではなくその前、艦娘や各隊の士官たちと同じ目線で話せる位置へ進み、みずづきも後を追う。講堂内へ目を向けると昨日一緒に市街へ出掛けた吹雪・白雪・初雪・深雪をはじめ、多くの艦娘たちや筆端や川合などの鎮守府重鎮たちがおのおのの場所でテーブルを囲み談笑している。しかし、それも2人が現れると一時中断。全員前に立った二人に視線を向ける。

 

「・・・・・まず、始める前に言っておかなければならないことがある。いろいろなゴタゴタがあったなかこの歓迎会の準備に多くの者が協力してくれ、開催に至ることができた。この場を借り、みなに謝意を表する。ありがとう」

 

その言葉にみな照れくさそうな微笑を浮かべる。

 

「では、これより新しい仲間の歓迎会を始める。まずはみんな注目、彼女の自己紹介からだな」

 

不敵な笑みを浮かべた百石がみずづきへ視線を向ける。それにみずづきは、焦る。打ち合わせの時には聞いていなかった言葉が入り、若干ハードルが上がったのだ。みずづきはそれにデジャヴを覚え、百石を睨みつけそうになる。が、今自分が立っている場所を思い出し、なんとか止める。

(誰かさんみたいなことを・・・・・。ここは冷静に冷静に・・・)

百石のペースではなく、自分のペース、自分の言葉を再度意識する。

 

「本日から皆さんとともに精進させて頂く、日本海上国防軍防衛艦隊第53防衛隊隊長あきづき型特殊護衛艦のみずづきです。4日前からいろいろとお騒がせしてしまい、申し訳ありません。おとといは醜態をさらしてしまいましたが、あれは特別、特別です! 普段の私はあんなに好戦的ではないのでご安心を」

 

みずづきの必死な訴えに控えめな笑いが起きる。咄嗟に出た言葉だったが痛い空気にはならず、心の方も一安心だ。

 

「これから、ご迷惑をおかけすると思いますが、どうぞよろしくお願いしますっ!!」

 

言い終わると、旧軍時代から続く脇を閉めた特徴的な敬礼を決める。それに対して巻き起こる温かい拍手。怪訝、というよりは心の中に抱いている疑問を聞ききたそうな表情をしている子が何人かいるものの、彼女たちを含め歓迎しているのは間違いない。中には「ようこそ、横須賀鎮守府へ」と眩しい笑顔で言ってくれる人たちがいる。みずづきがここに来た当初とは大違いだ。それについ笑顔がこぼれる。あの時、見せたみずづきの本気と信念。これがあったからこそ、得体のしれない存在に対する艦娘たちの疑念は着実に解消されたのだ。

 

自己紹介が終わると、お待ちかねの質疑応答タイムだ。

 

「それじゃあ、質疑応答に入る。質問がある者は挙手をしてくれ。・・・くれぐれも常識の範囲内で頼むぞ」

 

質疑応答を聞いた瞬間、一気に目を輝かせ、いつでも手をあげられる準備をする一部の艦娘たち。彼女たちはお互い、顔を見合うと視線で火花を散らす。ここが歓迎会でなければ、周囲の艦娘や将兵が必死になだめるほどの迫力だ。それもそのはず。彼女たちは、みずづきの身の上を聞いて、質問したいことが湯水のようにあふれているのだ。みずづきは、2033年の、未来の日本から来た“人間”。絶対にあり得ない、そう思われていた()()()()()機会がやってきたのだ。そして、質疑応答は当然ながら時間制限付き、有限である。これを逃しても、みずづきは横須賀鎮守府に留まるのだからいつでも話は聞けるのだ。しかし、いまだ彼女の人となりが分からずどういった行動体系になるのか全く想像できないなか、不確かな未来にかけるよりも、彼女たちは目の前の明確なチャンスにかけていた。これを逃してたまるものか、と。

 

そう構える彼女たちに、百石は“くれぐれも”を強調する。こうでもしないと雰囲気に飲まれ、とんでもない質問をする輩が出かねない。百石の苦笑と一部艦娘たちの眼光にみずづきは後ずさりしかけるが、覚悟という名の不可視装甲でなんとかはじき返す。

 

「では、質問したい人っ!」

「はいっ!!」

「はい」

「はい!! はい!! はーい!!!!」

 

ほぼ同時にあげる複数人。艦娘たちは挙手のメンバーを見て息を飲む。その中には、艦娘以外に筆端などの横須賀鎮守府幹部も含まれていた。してやったり顔の彼ら。それを見てみずづきと共に艦娘たちも「はい?」と固まる。だが、よく考えてみると百石はなにも艦娘限定とは一言も言っていない。彼らは勝手に艦娘限定と思い込んでいた彼女たちの意表を突く作戦に出たのだ。しかし、彼らは当てられなかった。百石は、その動体視力で最も早く手を挙げた者を見抜いていたのだ。百石は栄えある第一質問者の名前を呼ぶ。

 

「よし、響!!! 一番がお前だ。早かったな」

「やったっ」

 

いつのも大人びた様子からかけ離れた、子供のような笑顔を浮かべる響。それを見て、悔しそうに拳を握るその他の狼たち。

 

「響、すごーいっ!!」

「おめでとうなのですっ、響ちゃん!!」

「レディーらしく譲ってあげたんだから、しっかり質問しなさいよ!!」

 

同じ部隊、そして自身の姉・妹が質問する機会を勝ち取ったことに、暁・雷・電はまるで自分のことのように嬉しがる。彼女たちも「みずづきに聞きたいことはないのか?」と問われれば「ある」と答える。だが、自分たちよりもはるかに聞きたそうにしている響を見て、機会を譲ったのだ。だから、3人が手をあげる気は全くない。

 

「ありがとうみんな」

 

照れた顔を見られたくないのか、響は被っている帽子のつばを持ち深くかぶり直すしぐさを見せる。

 

「・・・えっと、その・・まずは自己紹介からが筋かな。はじめまして、みずづき。僕は特型駆逐艦の22番艦、別の言い方をすれば特Ⅲ型駆逐艦2番艦の響だ」

 

雪のような清楚さあふれる白髪で、どこか日本人離れした小学生。そうとしか見えない子が礼儀正しく自己紹介する。その姿にみずづきは目を奪われる。だが、その愛らしい姿とは裏腹に表情は真剣そのものである。それを見て、みずづきは一瞬驚いた心を落ち着かせ、響の問いに精一杯応えようとする。

 

「いろいろ話したいことはあるけれど、それを話すとみんなの迷惑になるからやめておく。日本のこと、君のことは僕以外の誰かが聞くと思う。・・・・・だから、僕は僕にしか聞けないことを聞くよ」

 

 

 

深呼吸をし、響はみずづきをまっすぐ見つめ、そして・・・・・・・・・口を開く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「冷戦は、どうなったんだい?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「れ、冷戦・・・・ですか?」

 

予想外の問いに、思わず言葉が途切れ途切れとなってしまう。

 

「僕はその・・・・・あの戦争で沈まずにすんだ僕は日本の敗戦後、賠償艦としてソ連に引き渡され、ほとんど浮き砲台みたいな感じだったけど、冷戦を・・・世界を滅ぼしかねない歪な戦いをずっと見てきたんだ。でも、知っているのは沈んだ1970年まで。日本はもちろん僕の故郷だけど、ソ連も僕の第二の故郷なんだ。その故郷がどうなったのか知りたい」

 

冷戦。その言葉を聞いた出席者は響と質問権を巡ってコンマゼロ秒の戦いを繰り広げた者も含め、例外なく響の質問とみずづきの回答に耳を傾けていた。並行世界証言録を目にし、日本世界の世界情勢に関心がある百石や筆端たち鎮守府幹部、もとい高学歴組だけでなく、長門など政治や外交に明るい艦娘、彼女たち以外の難しいことに頭痛を引き起こす微笑ましい艦娘たちもそれは同様であった。いくらそういうことが苦手な彼女たちも分かっているのだ。そして、冷戦の行方が、彼女たちが最も関心を寄せる日本の未来に深く直結することを十分に認識もしている。

 

世界を二分し、ひとたび理由の如何に関わらず超大国・軍事同盟間で戦端が開かれれば、地球の滅亡という現実離れした()()を叩きつけた冷たい戦争(cord war)

 

アジア・太平洋戦争敗戦後、再スタートを切った日本は日米安全保障条約の締結を通じ、民主主義・資本主義を掲げ、ソ連を盟主とする東側陣営と対立する西側陣営の一員となった。日本海・オホーツク海の向こうに敵対陣営の親玉がいた日本は、世界の激流に容赦なく飲み込まれていたのだ。

 

両親の話で、テレビで、ネットで、学校でそれを耳にタコができるほど聞き、勉強してきたみずづきは結果を当然知っている。若干の心苦しさを感じつつも質問に答える、いや未来を語り始める。

 

「なるほどね、そういうことですか。旧軍の艦艇がソ連に引き渡された話は小耳にはさんでいます。それがあなただとは・・・・・。結果から言いますと、冷戦はアメリカ合衆国の、日本を含めた西側諸国の完全なる勝利に終わりました」

「・・・・・・アメリカの完全なる勝利? ま、まさか・・・」

 

アメリカの勝利、つまりソ連が破れたという言葉よりも、“完全なる”の部分に響は顔を凍らせる。彼女は20年以上ソ連に、あの国にいたのだ。だから、内心で分かっていたのかもしれない。汚職にまみれ、国民を見下し、保身に走る政治家が溢れる国では資本主義の頂点に君臨し、民主主義を信念とする超大国には決して勝てないということを。だが、結果は想像できても、そこに至る過程は未知数だ。対立する数多の大国、拡大する軍拡競争。その果てに訪れるものを響は、いや艦娘たちは知っている。

 

「ん? あっ、ふふふ。安心して下さい。その勝利がなされる過程は平和裏に終わり、核戦争や大規模な国家間戦争は起きていませんよ」

 

響の想像していることが手にとるように分かったため、それを笑顔で否定する。その言葉とみずづきの表情に響は胸を撫で下ろす。だが、ここでみずづきは「第三次世界大戦」というべきところを、「大規模な国家間戦争」に置き換えていた。意味的には似たようなものだが、それは決して言えない。

 

理由など簡単。

 

・・・・・・第三次世界大戦は2026年、実際に勃発し全世界で2032年までに約5億1500万人が犠牲となっているのだから。

 

「良かった・・・・・・。そうか、やっぱりアメリカが勝ったんだね。そうなるとソ連は一体・・・」

「少し酷かもしれませんが、ソ連は汚職などの政治腐敗や社会主義の破綻による経済低迷、アメリカとの対立でかさむ莫大な軍事費による財政負担が引き金となって、1991年に複数の国に分裂し、崩壊しました」

「!?!?」

 

みずづき以外全員が顔を驚愕に染める。

 

「なので、2033年にはソ連などという国はありません。かくいう私も冷戦崩壊後に生まれたので、ソ連は知らないんですよね」

 

周囲の空気を察知して苦笑する。史上初の社会主義国にして、戦前・戦中・戦後を通し常に日本の仮想敵国だった国が、もうないと言われたのだ。彼女たちの衝撃は計り知れないだろう。

 

「ソ連は、もう・・・」

「たださきほども言ったように、冷戦は平和裏に終わりました。崩壊前夜は、いかなソ連といえども大混乱に陥っていたみたいですけど、崩壊・・・ソ連解体はソ連国民の意思に基づいて行われたんです。現在、旧ソ連領域の大半を持つロシア連邦は、社会主義の影響もあり少々強権的なところもありますが、市場経済と民主主義を採用し、名実ともに世界の大国になっ()んです。日本とは、その・・・・色々あって笑顔で握手しつつも足をけり合う関係ですかね、もちろん平和的な意味で」

 

遠くを見ながら苦笑するみずづきに、響も自然と笑みがこぼれる。みずづきが無意識のうちに言った妙な過去形に気付かないまま・・・・・。

 

「そうか。ソ連の終焉は終わりではなく、新たな時代のはじまりになったわけ、か」

「はい」

 

みずづきの断言。それを聞き、響の表情に浮かんでいた不安は急速に消えていく。

 

「ありがとうみずづき。いい話が聞けたよ」

「いえいえ、とんでもないです。私は単なる歴史を話しただけですから」

 

可愛らしいお辞儀をし、「もう終わり」といわんばかりに百石を見る響。その顔に質問したことへの後悔は全くなかった。百石は響の姿を視界に収め我に帰る。みずづきの話に集中しすぎて、つい自分の役割を忘れていた。

(すごい・・・!!)

だたそれだけを思い、拳を震わせる。自らの探求心や好奇心を刺激され感動に身を震わしているのはなにも彼だけではない。幹部の中には、速筆の才能を買われ質疑応答で交わされた会話を一字一句に至るまで詳細に記録している猛者もいるほどだ。

 

「ゴホンっ。では、次にいきたいと思う。質問したい者h・・・・」

「はいはいはいっ!!」

「はい! ハーーイ!!」

「はい」

「司令、どうかわたしを!!」

「・・・・・」

 

言いかけ言葉を遮られ、フライングされた挙句、「当ててくれ~~~~~!!!」と物凄い重圧を伴う必死のプレッシャーを容赦なくかけられる。さすがの百石でもこれには一歩後ずさりしてしまう。だが、心と体は負けても動体視力は一歩も引かず、公正な判断をしっかりと下していた。はなからフライングしていて、公正もなにもあったもんじゃないという批判は知らない。

 

「はい陽炎!!」

「やったぁぁーー!! 陽炎型ネームシップの実力ここに見参っ!!」

 

百石にあてられ盛大なガッツポーズを決める、橙色の髪の毛を黄色のリボンでツインテールにしたいかにも活発そうな少女。彼女の顔も腕と同じように喜びを爆発させている。

 

 

 

 

 

 

だが、それとは対照的にその少女の名前を聞いた瞬間、みずづきの表情が固まる。全く同じである。みずづきの大切な部下であるあの子の名前と・・・・。

 

 

 

 

 

 

 

「とてもそうには聞こえませんでしたよ? いつも通りの掛け合いに思えましたけど。相変わらずお二人は仲良しですね」

「みずづき隊長!! 大丈夫ですか!?」

 

 

 

 

 

 

 

甦る記憶。仲間に囲まれ信頼する上官のそばにいられた楽しかった日々。その表情が、声がついさっきのことのように思える。

 

 

 

 

 

 

“今までありがとうございました。お元気で・・・・”

 

 

 

 

 

 

あの時の表情を、声を、そして感じた絶望と後悔を思い出してしまう。仲間に囲まれ信頼する上官のそばにいられた楽しかった日々。それはもうないのだ。絶望の中で見つけた希望は自らの手からとっくに滑り落ちていた。

 

(なんで・・・なんで同名の子が・・)

そこまで思い、みずづきは海防軍の艦艇命名規則に行きあたる。「名前」が名付けられたものを象徴する非常に重要な符号であることは船も変わらない。ましてや国防を一身に担う軍艦ならばなおさらのこと。そのため艦艇は海防軍の訓令、正式名称「海上国防軍の使用する 船舶の区分等及び名称等を付与する標準を定める訓令」に基づいて付けられる。だが、これの元になったのは旧軍が制定した「艦名命名則」である。また、海防軍そして海上自衛隊は旧帝国海軍の伝統を強く受け継ぎ、その精神を脈々と後世に残している組織でもある。そのため、海上自衛隊・海上国防軍の艦艇には帝国海軍時代の艦名が使用されることが多いのだ。というか、それがほとんどだと言っても過言ではない。2033年現在では艦娘の人員数が、平和ボケしていた頃の防衛省と海上自衛隊が卒倒するほど増えたため、「みずづき」をはじめとする旧帝国海軍とはなんの関係もない名前の艦も増えているが、「かげろう」のようなケースももちろん往々にして存在するのだ。だから、旧帝国海軍時代の艦娘がいるこの場で、彼女と同名の子がいてもなんら不思議ではいない。「陽炎」という艦名も、帝国海軍では東雲型駆逐艦5番艦、そして陽炎型駆逐艦1番艦として2度使用されている。

 

(これはただの偶然、落ち着け私・・・・)

周囲にばれないよう静かに深呼吸し、急上昇した心拍数をなんとか平常値へ移行させる。ここで変に動揺すれば、訝しまれること確実である。

 

 

陽炎ははしゃいで、同じ艦隊の子と喜び合っているほんの一瞬にみずづきを一瞥する。それにはみずづきも、そして陽炎の周りいた少女たちも誰1人として気付くことはなかった。

 

 

「じゃあ、行くよー。響みたいに長々と話すのは嫌なんで単刀直入に聞くわっ! ・・ああっ、もぉー、私より排水量が大きそうだけど、いろいろ複雑だから呼び捨てでいかせてもらうわ。みずづき、あんたが口にする日本海上国防軍っていったいなんなの?」

 

(うわぁ・・・、かげろうと全然性格違う。私の感傷返してよ)

いきなり呼び捨てにされ、あまりの元気さに唖然としてしまう。だが、質問の方は予想した通りのものが飛び出してきた。響の言っていたことは事実だったようだ。周囲を見渡せば陽炎と同じ疑問を抱えているのであろう。うんうんと頷いている姿が散見される。

 

「やっぱりきましたねその質問。まぁ、気になりますよね」

「なに、予測してたの?」

「そりゃまあ・・・。百石司令も第5遊撃部隊もみなさんも、私が日本海上国防軍所属って言ったらキョトンとされてましたし、21世紀の歴史をご存じないようでしたから」

 

当時のたどたどしいやり取りを思い出し、つい苦笑がもれる。

 

「みんなおんなじなのね、まあ分かってたけど。そんなことより、早く説明!」

「はい。って、言ったはいいですけどなんて説明したらいいのか・・・・・・、えーっと、日本国海上国防軍は私みずづきが所属する、諸外国やあなた方でいうところの海軍です。4年前まで海上自衛隊という組織でしたが、今から3年前の2030年に自衛隊が国軍化され日本国国防軍が創設されました。そして、海上自衛隊も海上国防軍という軍隊になったわけです」

「2030年? 道理で誰もその組織を知らないはずだね、納得したわ。あなたのいう通り私たちは1970年までの歴史しか知らない。だから21世紀もしかり」

 

うんうんと頷く陽炎。彼女と同じく平静を保ってみずづきの言葉を咀嚼している艦娘たちがいる一方、彼女とはかけ離れた反応を示している者たちもいた。百石たち鎮守府幹部や自衛隊や憲法、そして日本が戦後歩んだ道について一定の知識を有する一部の艦娘たちだ。彼ら・彼女たちには、みずづきの言葉は衝撃だ。

 

()()()()()()()()()

 

言葉ではたった9文字だが、それに至った過程、交わされた議論、新たに見据えられた国家観、法整備などはとても9文字で収まるものでは到底ない。

 

「理由は聞いてもいい?」

「うーん、いいことはいいんですが・・・その」

「どうしたの? 歯切れが悪い」

「私、軍人になる前は普通に学校へ行って、友達と遊んでいた1人の子供でしたから詳しいことは・・」

 

陽炎はそれを聞いて、みずづきが人間であることを思い出す。つい自分と周囲が人間ではないため、どうしても自分たちと同じ艦娘と表現される彼女を自分と同じように見てしまうのだ。ただ、みずづきの()()()ともとれる言葉に違和感を抱く者もいた。

 

「ただ、自衛隊なんていう中途半端な組織に国防を担わせる余裕がなくなった、ということはできます。だっておかしいじゃないですか。日本国憲法の第9条で軍隊の保持が禁止さていると言われて()()とはいえ、法的に軍隊とは位置づけられない組織が、軍隊として日本を守ってたんですから。21世紀になっても残念ながら、戦争は世界のいたるところで起きてました」

 

その言葉に、さすがの陽炎も表情を曇らせる。分かっていたことだが、自分の中にあったわずかな希望があっけなく幻想と思い知らされたのはきつい。戦争を直に行い、敵味方問わず大切な人たちが、守ると誓った存在が無残にも殺され破壊される地獄を見た者として、戦争には嫌悪しかない。だが、それと同時にどうしようもない現実も分かっていた。

 

「備えあれば患いなし。国防軍の創設は世界の現実に目を向け、あってはならない矛盾を解決したに過ぎないんですよ」

「国防の矛盾については私も少しは耳に挟んでるわ。なるほどね、日本はまた一歩前へ進んだのね・・・・・・・。そういえば、あんたは自分のことを秋月型特殊護衛艦って言ってたそうだけど、それって・・」

「特殊護衛艦っていうのは、私たち艦娘の堅苦しい名称と理解していただければ大丈夫です。もともとはこっちの名称の方が先にあったんですけど、艦娘って言葉の方が一般的になちゃって・・・・今では日本政府の公式文書ぐらいでしか使われてないんですよ」

 

陽炎は「そっちもだけど」と前置きし、特殊護衛艦と聞いて浮かんだもう一つの疑問を口にする。

 

「戦後の日本では、駆逐艦や巡洋艦のことをまとめて護衛艦って言ってたじゃない?」

「よ、よくご存じですね」

「私だって2度目の生を受けた身だから未来が気になったのよ。2030年に軍隊になったんなら、なんでいまだに護衛艦なんていう曖昧な表現を使ってるの? 駆逐艦とか堂々と名乗ればいいのに」

 

陽炎のいうことはもっともである。平和主義を謳った日本国憲法、特に9条の制約下で誕生した自衛隊は憲法違反の存在とならないように自らを警察力と戦力の中間たる実力を持つ実力組織とし、徹底的に軍隊を連想させる名称の使用を回避したのだ。海上自衛隊では駆逐艦や巡洋艦、果ては空母と見做される艦までも総じて護衛艦とし、強襲揚陸艦を多目的輸送艦と言い換えた。陸上自衛隊では、歩兵を普通科、砲兵を特科、工兵を施設科、黎明期には戦車のことを「特車」と呼んでいたりもしたほどだ。そして、航空自衛隊では戦術的な爆撃任務を担う戦闘攻撃機を支援戦闘機と呼んでいた。また、階級や部隊名もしかりである。

 

しかし、国防軍というれっきしとした軍隊になった以上こうした「誤魔化し」はもう必要ない。しかし、日防軍ではいまだに自衛隊時代の特殊な名称を使い続けている。

 

「陽炎さんのおっしゃることは日本でもかなり主張され政府も本腰で検討したようですが、結局無理という判断になったんです」

「へ? なんで?」

「お金がかかりすぎるんです。1つ例をあげるとかつて防衛庁と呼ばれていた組織は現在防衛省という組織に格上げされています」

「ほぉぉ」

 

感心するような声。その声は陽炎のような少女のものではなく、男の低い声だ。声の聞こえた方向から察するに筆端たち幹部だろう。筆端たちも「並行世界証言録」で日本が抱えている矛盾を当然知っており、国防組織を管轄する官庁が防衛庁という明らかに格下の存在に留め置かれていることを疑問視していたのだ。瑞穂では日本のような矛盾は皆無なので、国防省という頑丈な組織がきちんと設置されている。

 

「省から庁へ、たった一文字変えるだけで、億単位の費用がかかったんです」

「えっ!? 億!?」

 

絶句する陽炎。「たった一文字変えるだけでどんだけ血税使ってるんだ」と思いたくなるが、これは簡単なことではないのだ。もし、漢字一文字を変えるだけにとどまらず、それこそ無限にあふれている言葉を全て変えるとなったらどうなるか。封筒や印鑑、階級章の作り直しからはじまり、自衛隊時代の名称がインプットされているソフトの変更、基地などの看板架け替え、そして名称に関する規則の変更など、実務的・物理的な手間と発生する費用は馬鹿にならないのだ。そして、2030年は艦娘の実戦配備によって深海棲艦との戦線がこう着状態にあったとはいえ、国内は破壊し尽くされ、経済は崩壊していた。名称変更ごときに莫大な予算を使える余裕は皆無だったのだ。

 

「たった一文字変えるだけでそれなんです。もし、自衛隊時代の名称を変更するとなった場合、とんでもない予算が必要になるんです。だから、断念されたんです。また、もう国民から軍人・政治家に至るまで自衛隊時代の名称に慣れてしまい変える必要性を感じなかったってのも理由ですが」

 

陽炎たちの唖然とした表情も相まって、ついみずづきは苦笑をもらしてしまう。陽炎が指摘した名称の矛盾。最もつみっこみどころが多いものを真っ先に挙げたが、その理由はそれだけではない。この場で語らなかったがこれにはあと二つの理由があった。一つは自衛隊時代、そして日本が戦争で大敗し国家存亡の淵に立ったことの残滓を後世に伝えていくためだ。歴史は必ず風化する。そして、風化した歴史は教訓としての抑止力を失い、子孫たちが同じ過ちを引き起こしそうになった時の歯止めにならない。国防軍がこれから先もこの名称を使い続ければ、多少の風化は宿命だとしても、国防軍が自衛隊であったことそして自衛隊の創設に至った歴史が「なかったこと」になることはない。国民を守り、そのために人を殺す組織がこの戒めを抱えることは非常に大きな価値がある。

 

そして、もう1つは憲法に絡む問題である。

 

「ですから、ちなみにですけど、海上国防軍艦艇そして艦娘の名前は全て今でも漢字じゃなくてひらがななんですよ。そのことも一応覚えておいて下さいね」

「あぁ~、ということは()()じゃなくて()()()()なんだね」

「言葉では分かりませんが、おそらくそうです」

 

陽炎が頭のなかで「水月」と「みずづき」を思い浮かべているのが、手に取るように分かり思わず苦笑してしまう。よく見れば、陽炎と同じような表情をしている艦娘もかなり受けられる。

 

「ま、言葉だったら分かんないわ。それにしてもいいことたくさんを聞けたわーーー!! みんなの視線が痛いし、私の質問時間は終了っ! いろいろ教えてくれてありがとねみずづき」

 

響のようにお辞儀はしなかったものの、満足げな笑みを謝意の表れとする陽炎。それにみずづきも笑顔で応える。そこには陽炎の満足げな笑みに対する喜びもあったが、別の意味もあった。

(なんとか、乗り切ったぁぁ~)

安堵。国防軍の話はもっとも聞かれる可能性が高い話でありながら、みずづきの「2017年以降の歴史は話さない」という、仮の決意を根底から崩壊させかねないのだ。自衛隊の国軍化。これは、2017年以降の血で血を洗う戦争と終わりが見えない混沌が密接に関係しているのだ。あまり深くつつかれれば、それがぼろっと出てしまいなかねない。国軍化の理由を陽炎に問われたときは正直焦ったが、なんとか頭が悪い風を装い抽象的な物言いに終始し、誤魔化すことができた。それは響との話でも、だ。ロシアは確かに社会主義という魔の温床を脱し、世界の大国しか参加を認められないG8(先進8ヶ国)の一翼を担うまでに発展し、分野を限れば旧ソ連よりも対外的な影響力を強めた。しかし、それはもう過去の話。日本やアメリカ、華南や中国と同様、ロシアも世界の激流に抗うことはできなかった。

 

ロシア連邦は2033年現在、事実上4つに分裂している。事実上としているのはロシア連邦、モスクワの中央政府が他の3ヶ国の独立を容認しておらず、いまだにロシア連邦の一員であり、中央政府の統治下と主張しているためだ。しかし、現実に目を向ければ他の3か国は十分、統治機構として成立し国内を他の主権国家と同じレベルで統治している。一つはロシア連邦南部、北カフカス連邦管区に相当する地域を統治する北カフカス共和国。ロシア中央政府の管轄地域と境界を決しているが、この国は1990年中ごろから2009年まで続いた第一次・第二次チェチェン紛争、そして第三次世界大戦中の2026年に勃発した第三次チェチェン紛争にて、ロシアと激戦を繰り広げた旧チェチェン共和国が主導して成立した。そのため、深海棲艦が暴れまわっている現在でもモスクワの中央政府とは、絶賛戦争中である。もう一つはロシア中央部・シベリア地域、ウラル・シベリア連邦管区に相当する地域を統治するシベリア共和国である。ヨーロッパとアジアを穿つウラル山脈がロシア中央政府との境界だが、北カフカス共和国と異なり近隣の国々、政府とは良好な関係を築いている。そして最後の1つはロシア極東部、極東連邦管区とシベリア連邦管区の一部を統治する、東露連邦である。この国の成立過程には日本が直接的・間接的に深く関わっているため、日本をはじめ東アジア諸国とは同盟関係である。とりわけ、日本にとって東露連邦は現在、死活的に重要な国家となっている。かの国は石油や天然ガスをはじめとする地下資源など、日本がシーレーン断絶で供給を失った各資源を莫大に埋蔵しているのだ。好都合なことに日本海やオホーツク海の制空・制海権は日本と東露が押さえている。そのため、損害を気にすることなく資源を平和なころと同じように輸入できる。東露産の資源は、文字通り日本の消えかけた命を支えているのだ。その代わり、オホーツク海防衛のため日本は東露が管轄すべき北西太平洋の哨戒を艦娘や通常戦力を用いて行っている。

 

 

だが、きわどい質問が来ないことを祈っていたみずづきの心は、近くから発せられた言葉に疲労の増大を感じざるを得なかった。

 

「みずづき、ちょっといいか?」

 

思わぬ人物の問いに当事者を除いた全員が声のした方向に顔を向け、口を開ける。それは絶対にないと思っていたことだった。質問は挙手をした者のみ。このルールを自ら指示した進行役の百石が乱入したのだ。彼の性格からは予測できない奇行。これにはさすがに我慢ならなかったようで挙手していた艦娘たちがいち早く冷静さを取り戻し、百石に抗議の声を上げようとする。しかし、百石はそれを予測していたようで、神妙な雰囲気を醸し出しながらやんわりと手で制止する。その滑るような動作は百石が、いつも通り至って冷静で部下思いの指揮官であることを物語っている。さすがにそれをされては、抗議しようとした艦娘たちも声を飲み込むしかない。

 

「みんなすまない。道理にかなわないことをしているということは理解している。だが、どうしても俺はここで聞きたいことがあるんだ。そこまで時間は取らないから、どうか見逃してくれ」

 

先ほどのみずづきの言葉を聞いて、百石は司令官のメンツを賭しても聞きたいことができたのだ。

 

「君の言う通り海上国防軍と聞いてキョトンとしていた身としては、さきほどの説明を聞いて大いに納得できた。だが、1つ気になった点がある。君たちの国、日本は太平洋戦争での敗戦を教訓に、我々の世界でも類を見ない軍隊の保有を禁じた平和主義を掲げる日本国憲法を制定したと聞いている。しかし、君は軍人だといい自らを日本海上国防軍というれっきとした軍隊の所属だと言う。ましてや、日本国憲法の結果生まれた自衛隊という実力組織を国軍化したとも。これらの言から察するに君たち、現在を生きる日本人は憲法を改正して、軍隊の保有に踏み切った、と解釈できるのだが、そうなのか?」

「(きわどいの来た・・・さすが鎮守府の司令官)すみません、私ちょっとそういう法律のことは・」

「君は()()だ。国防軍では徴兵制の有無が分からないが、少なくとも君は徴兵されて軍に入った()()ではなく志願して入った、そうだろ?」

 

これ以上の深入りを回避しようと、さきほどと同じように煙に巻く作戦に出ようとするが、発動する前に百石によって阻止される。一艦娘には効いても、鎮守府を任せられるほどの大物かつ優秀な人物には歯が立たない。

 

「・・・・・・」

 

内心で焦りを覚えていると、一瞬関係なく思えてみずづきの退路を塞ごうとする質問が投げかけられる。みずづきは百石のペースに乗るまいと沈黙するが、もう勝敗は決していた。

 

「だったら君は優秀な人間のはずだ。憲法問題など十分に理解できるほどの。私も志願して軍人になった人間だから分かる。兵士は前線で戦うため、その戦い方を集中的に学ぶ。そこにややこしい法律やらは存在しない。軍規や交戦規定はあるが。だから、極端な話、学力が低くても日常生活を送れる者ならば誰でもなれる。しかし、軍人は言い換えればその兵士たちの命を預かる指揮官だ。作戦も考えなくてはならない。そこには、的確な判断力と相応の学力が必要だ。君は後者。そして、君は言ったよな。艦娘がまとう艤装は“日本の技術の粋を結集して開発された”・・と。そんなものを任せられるのは、選抜された優秀な人材しかありえない。軍人で艦娘の君は、国防軍の中でもエリートの部類に入る。そんな君なら、余裕で、私の質問に答えられるだろう?」

 

不敵に笑う百石。回避するための外堀は完全に埋められた。ここは受けて立つしかないようだ。

 

「・・・・・分かりました。但し、これだと私がとんでもないエリートだ、みたいな誤解を抱かれかねないので、返答の前に言っておきたいことがあります」

「ん? なんだ? 私の言った通りだろ?」

「ち・が・い・ま・すっ!! 確かに軍に入るため艦娘になるため、必死に勉強して試験に合格しました。しかし、艦娘になるための試験は筆記の場合、一般的な幹部候補生学校、えっと士官学校の入学試験と変わらず、その気になれば合格は不可能ではありません。別に特別頭がいいわけではありませんよ。心理テストやDNA・・・遺伝子検査を主軸とする適性検査の方が比重としては大きかったです。筆記試験に合格したのに、艦娘になれなかった人たちはたいてい適性検査で引っかかっていました。だから、極端な話、そこまで賢くなくても、運動神経が良くて要領がよくて、運も持っていれば、艦娘にはなれるんです。その代わり、誰もが憧れる艦種にはなれませんし、大きな部隊にも配属されず僻地勤務になります。艦娘もそれぞれの個人が持つ階級以外に結構序列があるんですよ。私は・・・自分でいうのもあれですが、いろいろあって運が良かった方です。エリートなんかではありませんっ!! エリートだったら、私の司令官と同僚に“ドジで天然”“見てて危なっかしい”なんて言われませんよ。なんか自分でいっときながら、むなしくなってきた・・・」

 

自業自得なのだががっくりと肩を落とすみずづき。周りから特別視されることは嫌だが、かといって自身のダメさを見つめるのも堪えるのだ。彼女の必死さに目を見張っていた百石であったが、その嘲笑気味な姿を見て申し訳なさそうに眉を下げる。

 

「分かった、分かったから。変なこと言ってすまなかった。君は普通の人間、そうだろ?」

 

こくりとみずづきは頷く。

 

「だったら、そういうことだ。ひと段落ついたところで話をもとに戻そうか」

 

途中まで困ったように笑っていた百石だったが、最後にはみずづきの退路を断った時の真剣な表情に戻っていた。どうしても聞きたいらしい。

 

「そうですね。えっと、憲法を改正したのかですよね? 結論から言いますが、()()()()()()()()

「なっ!?」

 

その言葉に百石はおろか、改正していると踏んでいた筆端や一部の艦娘たちも驚きのあまりうめくような声を出してしまう。ちなみにあまりそういうことに関心のない、または分からない艦娘たちはただ空気を読んで置物と化していた。

 

「ちょ、ちょっと待て。君たちは憲法を、9条を改正せずに軍隊の保持に踏み切ったのか?」

「そうです」

 

簡潔明快に即答するみずづき。百石の驚愕する顔を見て複雑そうな苦笑を浮かべる。しかし、それを向けられている百石は、悪寒を感じていた。

 

「憲法は国の最高法規で、全ての法律は憲法の制約下で制定される。それだけにとどまらず、憲法は暴走しがちな国家権力の歯止めとなり、国家のあるべき姿を提示し、国民・国家の繁栄をもたらすためにある。この世界、私はこう解釈している。すべての根幹だからこそ憲法の運用、特に条文の正確な適用は必要不可欠だ。私でも、君たちの世界に比べれば恵まれている世界の、一個人たる私ですらその重要性が分かるのに、なぜだ?」

 

百石は拳を握りしめ、みずづきを直視する。

 

「何故なんだ? 君たちの世界も憲法は私が言ったものと同じ位置づけなんだろ? しかも君たちの世界の憲法の歴史は私たちより遥かに残酷だ。あの太平洋戦争、大日本帝国の凋落にも明らかに、憲法が噛んでいる。なにも知らない他世界の人間がとやかくいうのは理にかなわないのかもしれないが、残酷な歴史を持つからこそ、君たちは憲法の大切さを身に染みて分かっているはずだ。なのになぜ? あんな素晴らしい憲法をないがしろにしたんだ」

「あんな素晴らしい憲法??」

 

しっかりと礼儀正しく、百石の言葉を聞くみずづき。だが、彼女は百石の最後の発言を聞いて、表情1つ変えることなく呟いた。その声はとても小さく少し距離があれば言ったのかも判別できない。しかし、百石はそれをしっかりと聞いていた。今までみずづきから全く想像できない、聞くものに言い知れぬ恐怖を抱かせる、低く粘りつくような声を・・・・・・。しかし、次にみずづきが発した声は普段通りの声だった。

 

「さきほどから思ってましたけど、なにか勘違いされてませんか?」

「勘違い?」

「これは結構ややっこしくて私も聞いた時は四苦八苦したんですけど、日本国憲法第9条はよく読むと軍隊の保有もそして戦力の保有も禁止してないんです」

「なに、どういうことだ? 君たちの政府は9条に基づき軍隊、戦力の保有を禁止していたではないか?」

「あっ」

 

その言葉を聞いて、みずづきは抱いていた違和感の正体を看破する。ある程度、百石たちの言葉や持っている知識を使い予測していたがさきほどの陽炎の言葉ではっきりと分かった。陽炎は言っていた、「あなたのいう通り私たちは1970年までの歴史しか知らない。だから21世紀もしかり」と。それなら、今では政治および憲法学者の汚点とされている9条全面放棄論を百石が発言しているのも納得だ。

 

2033年の日本では、それはもやは過去の話だ。

 

だから、みずづきは説明する。滑りそうになる口を必死に抑えて。日本国民が拍手喝采を送った“英断”を。自衛隊から国防軍へと、戦後日本の国防政策を根底から覆した決定を。絶滅寸前に至った左翼過激派が「憲法は、死んだ」と宣言することになった結果を。

 

「それは2027年までの話です。百石司令のおっしゃる通り普通に読めば、そうです。しかし、普通に読まないのが憲法です。日本国憲法9条の第一項では冒頭に全ての戦争を放棄するかのような文言がありますが、そこには“国際紛争を解決する手段としては”永久にこれを放棄すると記されています。前半部分は後半部分にかかっているんです。ここで言われる国際紛争とはずばり侵略戦争のことです。そして、第二項は最初に1項で述べた“前項の目的を達するため”に戦力を持たないとしているんです。読みようによっては、侵略戦争を行うための戦力は捨てます、つまり()()()()()()()()()()()、と捉えられるんですよね」

 

それを聞いて百石は絶句する。

 

「なんだそれは、ただの言葉遊びではないか・・・・」

 

まさしくその通りである。そして、これはある意味、悪質なまでに筋が通っている。みずづきが自分でかつ即席で言っていることではないのは明らかだ。だとするならば、それを議論し、国民にこのようなものをまき散らしたのは、政府と憲法学者しかいない。百石はそれをすぐには信じられなかった。瑞穂でも憲法の解釈を巡り、論争となったことは幾度となくある。しかし、その際に最優先されたのは「いかに憲法の理念を法律に反映されるか」であり、決して「いかに憲法の条文に反さず国益を追求するか」ではなかった。それは瑞穂ではタブー視される姿勢である。それを日本では、止めるはずの政府が率先して行っているのだ。

 

「私も全くその通りだと思います」

 

今まで散々繰り広げられてきた不毛な論争を思い出し、みずづきは苦笑する。それを少し言っただけでも、百石はこの反応である。もし、百石が日本に行ってこれまでの憲法論争を聞いたなら、馬鹿すぎて耳を塞ぐのではないだろうか。

 

「ふふっ。しかし、政府は2027年にこの解釈、侵略戦争放棄論を9条の新解釈として、閣議決定を行い、9条解釈の根本的な変更を行ったんです。当然、一部の勢力から苛烈な批判が出ましたが。日本では幾度となく、当たり前に行われてきたことです。この解釈変更により日本は日本国憲法下でも自衛的戦力の保持が可能となり、国防軍の創設につながったのです」

 

国防軍が自衛隊時代の各種名称を使い続けるもう1つの理由。それはここにあった。要するに日本国防軍は正統な憲法解釈から生まれたのではなく、歪曲に歪曲を重ねた解釈の末に生まれたまがい物だからだ。

 

みずづきが所属する日本海上国防軍。なぜ、国防海軍ではなく、海上国防軍という組織名になったのか。これは日本国憲法を改正しない限り絶対に保持できない正統な軍隊である他国軍、そしてかつて徹底的に否定された大日本帝国陸・海軍を連想させる危険があるとし、現行の憲法解釈下でも憲法違反と判断される可能性が指摘されたためだ。国防軍創設過程において政府・与党内には「そんなの関係ない。国防軍を実質的に正統な軍隊に近づけるためにも名前は“国防○軍”にすべき」と意見も多数存在した。最高裁判所がこの件に関して統治行為論を持ち出して判断を避けるとの見解が大きかったことも要因の1つだった。しかし、結局名称は○○国防軍となった。こちらの方が新生日本を明確に象徴できるとの理由付けもなされたが、憲法問題が大きく影響していたことは否定できない事実である。

 

まあ、国民の多くは「軍隊になって、自分たちをしっかりと守ってくれるならどんな名前でもいい」と思っていたが・・・・。

 

沈黙する百石。信じたくないと顔に書いてあったものの、これが現実なのだ。

 

「そんな荒業を使ってまでどうして・・・」

 

思わず出たうめき。それをみずづきは聞き逃さなかった。おそらく、平和だったころの日本人も百石と同じような反応するだろう。みずづきも、そして表では拍手喝采を行っている日本国民も、内心ではこれが()()()()()()ということは分かっていた。だが、その間違いを受け入れなければならない状況だったのだ。

 

「本来は、憲法を改正しきちんとした条文を作るのが筋です。でも、そうできない、ひどく言えば、権力者が反旗を翻さない限り、軍隊の保持を可能とする事は出来なかったんです」

「それは一体・・・」

「・・・・・単純な話ですよ。日本の中には自衛隊のままでいい、軍隊を持つ必要はないという意見の国民も多く、憲法改正に踏み出せなかったんです。国民の多くは国益や国の将来よりも、目先の利益に固執する。民主主義ですから国民がそうならいくら良識ある政治家や専門家が危機感を抱いても国家の制度は変えられない。そんな中、世界情勢は絶えず変動してたものですから、時間がなくて結果的にこんな形になったんです。」

 

本当のことであるかのように言っているがこれも嘘である。2017年、日本に未曽有の被害を与えた西日本大震災。そしてそれに触発され生じた中国の経済危機「チャイナ・ショック」による経済混乱は、既に「安定」という土台が崩れつつあった世界にすぐさま拡散し、世界情勢の緊迫化につながった。各地で頻発する戦争・紛争・テロ。そして、それはついに戦後1度も戦火に巻き込まれることのなかった日本も引きずり込んだ。第二次日中戦争での無差別攻撃、同盟国といいつつその国の国民を顧みず日米安保条約の履行を渋ったアメリカ。その時、日本に潜入し破壊工作を担った中国人と民族的・思想的に現体制へ不満を抱く日本人との間で起こった丙午戦争。その理不尽さを前に日本国民はある結論へと至った。人類が誕生したときから変わらいな世界の摂理。

 

“自分の身は自分で守る”

“やられる前にやる”

 

・・・・・・・と。

 

二つの戦争を経た日本人は一気に右傾化。以前では考えられなかったほど憲法改正を支持した。それを受け結党以来、憲法改正を党是としてきた与党はすぐさま憲法改正に着手した。しかし、できなかったのだ。

 

議席不足のため国会で発議できなかった?

 

そうではない。国民投票には従来の投票と同じく各自治体の選挙管理委員会が作成した投票人名簿が必要である。そして、それの作成には各自治体が有する住民基本台帳が必要なのだ。丙午戦争では国内各地で戦闘が起き、公権力の象徴たる役所は国家・地方問わず格好の標的となり、甚大な被害が出ていたのだ。その過程で、紙の書類は消失、電子データはサーバーの破損で消しとぶ、という事態が全国で多発していた。また、そのような機能不全状態では、そもそも選挙管理委員会を立ち上げることも不可能だった。転出届など他市区町村への移動を知らせる手続きを行わずに、戦火を逃れて引っ越す住民も多く、自治体は正確な人口数すら把握できなかったのだ。

 

だから、政府は憲法解釈の変更という内閣が倒れかねない手段までも使ったのだ。

 

そして、2027年。この閣議決定がなされたすぐ後に深海棲艦が出現。日本は絶対に国民投票ができない状態へと追いやられたのだ。

 

「・・・・君たちの世界も推測通りやはり私たちでは分からない複雑な事情があるのだな。あることを聞くと、それに関連する話も聞きたくなってしまう。国防軍の話から気付いたら憲法の話まで来てしまった。・・・・・・はははっ」

 

百石の疑問に必死で応えるものの、段々気まずそうな顔になってくるみずづき。それを見て苦笑を浮かべながら百石は我に返り、急いで左手首に付けている腕時計で時間を確認する。それほど、時間は経過しておらず焦りを感じていた心臓は平常運転に進もうとする。だが、響や陽炎と比べれば3倍近い時間を使ってしまった。ここでようやく自身が半分暴走していることに気付いた。見れば、百石の疑問に関心がある者は真剣に聞き、記録係(仮+強制徴用)は必死にメモを取っているが、それ以外は百石の話についていけず頭がオーバーヒートしている者や退屈そうにあくびを決め込んでいる者までいる。

 

みずづきは出席者の正面という、この場で最も見通しの良い場所にいたためそれを常に目にしていたのだ。みずづきもさきほどのような回答を言ったが、難しい話は嫌いなので、つい彼女たちに同情してしまう。

 

「・・・いやはや、私のこの癖も直さないといけないな。思い返せば感情的になってついきつい言い方をしていた。すまなかったな、みずづき」

「いえいえ、とんでもないです。感情的になってたのはお互いさまのような気がしますし、お相子です。それに、百石司令のおっしゃってることや疑問は正しいと思いますから」

 

百石は恥ずかしそうに少し赤くなって、ほほをかく。鎮守府の最高司令官とは思えないしぐさに、少し硬くなりかけていた場の空気かもとに戻り始める。その姿を、みずづきは伏し目がちに笑いながら見ていた。みずづきの心の中で今まで必死に抑え込んでいた何かが、動き始めていた。

 

「それでは、俺がこの辺で・・・・・っと、悪いまだ1つ聞きたかったことがあった」

 

申し訳さなそうに頭をかく百石に、ようやく自分のターンがきたと息を吹き返し手を上げかけた艦娘たちは「えぇぇ~」とあからさまに落胆した様子を見せる。だが、百石は引かない。艦娘たちからの無言の圧力に耐えきれず「ごめんなさい」オーラを放ち続けながらではあったが。もう最高司令官としても威厳が消えている。

 

「すまない、だがこれも聞きたいんだっ!! 本当に最後だが、解釈の変更で日本が保有化可能になった自衛的戦力とはどういう風に定義されているんだ」

「どんな質問がくるかと戦々恐々とでしたが、なるほど。さすが、百石司令ですね。詳しい定義は難しくて、かみ砕いたものしか私も覚えていないんですが、それでもいいですか?」

「ああ、もちろんだ。こちらは聞かせてもらってる立場だからな。いちゃもんはつけないさ」

「聞かせてもらってる立場って、なんか恐れ多いです。えっと、自衛的戦力っていうのは他国を半永久的に占領、もしく・・は・・・・・・・もしくは、他国に回復不能の損害を与えうる侵略的戦力以外の全て、だったと思います」

 

その言葉に笑顔を浮かべ様々な衝撃という名の連打から立ち直りかけていた百石は再び痛烈な一撃を食らう。

 

侵略的戦力以外は全て自衛的戦力。

 

それの危うさを百石は瞬時に理解する。これでは侵略戦争放棄論が採用されていも、残っていると思っていた平和主義が骨抜きにされているようなものではないか。侵略的戦力の定義も人によってどうにも解釈可能であるし、それを前提にした自衛的戦力の定義も曖昧の極みだ。「自衛の為に必要」と唱えれば、どんな戦力も保持可能。そうと捉えられる、いやあえてそう捉えられるよう曖昧にしている感がある。これは、平和主義をあの戦争を教訓とし不戦の誓いを示した日本がやってはいけないことではないか。そして、並行世界の、文字の記録しか読んでいない人間でも分かるのに、みずづきは憲法解釈のことを話していた時と異なり、苦笑ではなく純粋な笑顔を浮かべながら話していた。

 

「しかし、無尽蔵に武力の行使を認めているわけではありません。きちんと歯止めをかけるため、武力行使の3要件という原則があります。これに該当しなければ、武力の行使は不可能なので、化け物軍隊になることも、他国に()()()なちょっかいをかっけることはできませんよ」

 

言い忘れてはならない重要なポイントを説明するみずづき。いくら自衛的戦力の定義が曖昧とはいえ、日本は決して侵略を許容しない。これは2つの戦争を経験し、1つの大戦を継続しているとはいえ、日本に生き続けている確固たる精神である。自衛的戦力を拡大解釈して侵略戦争を行わないように、自衛隊時代から変わらず武力の行使に厳格な要件をつけたのだ。しかし、それを聞いても百石の心は険しいままだ。その要件も法律と同じ類であるから、解釈はいかようにもなる。にもかかわらず、みずづきはまるでその可能性、日本が将来的に拡大解釈を通して侵略戦争を行う、というものが全く想像できていないように見える。

 

百石はみずづきから垣間見た日本と、「並行世界証言録」から垣間見えていた日本が大きく異なっていることに、消しきれない疑念を抱いた。




いかがでしたか?

歓迎会と言いつつ本話では、今まで触れてこなかった日本世界の状況についてかなりきわどいところまで踏み込んでみました。作者のにわかぶりが露呈しているかもしれませんが、これが限界です。

いやはや、憲法はやっぱり難しい・・・・・・。こんなのを日常茶飯事、議論している人々の精神が怖いです。

所々に今年である「2017年」が出てきて、これ以降なんか世界がやばい状況に!? という雰囲気が出ていますが、お気になさらず。現実になったら筆者ももちろん困ります(苦笑)。
というのも、漠然と当物語の骨子を考えていたのが一昨年だったんですよね。ある程度期間をあけていろいろな設定を考えたんですが、気付けばもう2017年・・・・・・。

時の流れは早いですね(涙)。

話の中で、初雪が怯えるシーンのもとは、あの事件です。

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