戦姫絶唱シンフォギア 戦姫と鬼   作:MHCP0000

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次は遅くなると言ったな
あれは嘘だ



でもこの次は遅くなりそうです


第五話 出会う弟子たち

パ~ン! パ~ン! パフパフ!

 

「ようこそ!人類守護の砦、特異災害対策機動部二課へ!」

 

 

「これから行くところにほほえみなど無用」と翼が言った場所にたどり着いた五人を出迎えたのは、鳴り響くクラッカーとラッパ、舞い散る紙ふぶきと、満面の笑みを浮かべた人物を筆頭とした、笑顔の集団だった。本来はエントランスであろう場所には、料理が並べられ、さながら立食パーティーのような状態になっていた。よく見れば、後ろのほうでは「ようこそ 立花響さん&加々井快翔くん」とポップな字体で書かれた横断幕が掲げられている

 

「「「…は?」」」

「はあ……」

「ははは…」

 

予想外の光景に、響とあきら、快翔は目を見開き、翼はあきれて額に手を当て、緒川は困ったように笑うしかなかった

 

 

 

 

 

 

第五話 出会う弟子たち

 

 

 

 

 

 

 

「俺は風鳴弦十郎。ここの指令をやっている」

「そして私はできる女、櫻井了子!」

 

赤いシャツを着た男性と、メガネをかけた女性が三人にあいさつする。響はすでに手錠を外してもらっている。余談だが、緒川が外す前に了子が響と手錠をしたままの記念写真という、響曰く『悲しい思い出』を残そうとしていた

 

「どうも。天美あきらです」

「俺は加々井快翔っていいます。俺たちは荷物を持っていなかったから知りませんよね?」

 

響は持っていた荷物から、名前がばれてしまっていたが、荷物を持っていない二人は改めて自己紹介をした

 

「うむ。実は、今日は君たちに頼みたいことがあってきてもらったんだ」

「頼みたいこと…?」

 

ここまで状況に流されていた響だったが、弦十郎の言葉でようやく自分の身に起こった異変を思い出した

 

「教えてください! いったい私の身に何があったんですか?!」

 

響が食って掛かる。了子が弦十郎に一つうなずいて、

 

「それを説明するために、二つお願いがあるの。一つは今日のことを誰にも言わないこと。そしてもう一つは…」

 

歩み寄った了子は、響の腰を抱き、耳元でささやいた

 

「とりあえず脱ごっか♪」

「……だから何でえええええ?」

 

自分の常識が音を立てて崩れていくのに、響はただ悲鳴を上げるしかなかった

 

「さて、君たちには俺のほうからいいかな」

 

連行されていく響を見送っていた快翔とあきらに、弦十郎が話しかける

 

「今日はご苦労だったな。市街地に出たノイズ、君が処理したのだろう?」

「ええ。まずかったですか?」

 

快翔が聞くと、弦十郎は笑う

 

「そんなわけないだろう。ノイズは放っておけば被害をまき散らす。それを食い止めたのは君だ。我々が起こる必要などない」

 

だがな、と弦十郎は神妙な面立ちに変わる

 

「俺個人はそれで構わない。だがお役所仕事としてはそうもいかなくてな。君の力がいったい何なのか、そしてなぜノイズに対処できるのか、それを教えてもらうことは可能かな?」

 

快翔は言葉に詰まる。別に鬼の力は完全な秘密ではない。だが、一般市民に正体を明かすのとは少し話が違ってくる。ここで自分の正体を明かしていいのか、考える快翔の横から、あきらが答える

 

「それを答えるのは問題はありません。ですが、そちらの正体も教えていただきたいのですが。これから、共闘することもあるかもしれませんし」

 

あきらが明確に態度を示す。まだ鬼としても組織の一員としても未熟な快翔にとって、あきらの存在はありがたいものだった。一時期猛士から離れていたが、それでもこういう時の判断は快翔よりもきっぱりしている

 

「……わかった。こちらも、できる限りのことは話そう」

 

弦十郎が下した判断は、互いに説明することだったようだ。あきらが確認して、弦十郎に問いかける

 

「ありがとうございます。そちらは私たちについて、どこまでご存じなのですか?」

「そうだな、そこの彼が鬼と呼ばれる存在で、魔化魍と呼ばれる化け物と戦うことを目的としており、それを束ねる猛士という組織がある、ということぐらいか」

 

ぐらい、と言っているが、それはほぼすべてじゃないのか、と快翔は感じた。快翔の表情を読み取ってか、弦十郎が肩をすくめる

 

「仕事柄、機密なんかに触れる機会が多くてな。知る必要のないことまで知っちまうのさ」

 

軽く言って弦十郎が話を進める

 

「だが、君たちがなぜここに来たのか、そして何より、なぜノイズと戦えるのか、俺はそれを知りたいんだが」

 

ノイズを人類の脅威足らしめているのは、炭化能力以上に、位相差障壁と呼ばれる防御システムである。物理的エネルギーを減退してしまうこの障壁のせいで、通常の攻撃では有効なダメージを与えることはできない。だが、快翔は実際に有効な打撃をノイズに与えている

 

「実は最近、このあたりで魔化魍の異常発生が確認されています。その調査と、魔化魍の対処のために私たちは拠点を構えることにしました」

 

あきらが説明する。基本的に、鬼は一つの地域にとどまることはない。住民の情報や、観測による予報に従って該当地域に出向く。だが、今回のように明らかに一つの地域で大量に発生している場合などには、一人の鬼を送り込んで重点的に対処させることがある。この方法は割と最近できたもので、猛士内部では『常駐任務』と呼ばれている

 

「なるほどな。君たちがこの街に来た目的はわかった。だが、なぜノイズに対抗できる?」

 

弦十郎は次の問いを投げかける。今度は快翔のほうに視線を向けた

 

「あ~、え~と」

 

だが、当の快翔は言いよどむ。実を言うと、快翔自身よくわかっていないのだ。先に挙げた位相差障壁と清めの音がどうとかという話だった気がすると快翔はおぼろげな記憶を掘り起こそうとするが、それすらも差だけではない。以前に開発部からの報告書に(ヒビキに言われて)目を通したが快翔にはよくわからなかった。一緒に読んでいたトドロキなんかは、「ようするに気合っすね!」などと言い出す始末である

 

「……鬼の攻撃は、清めの音という特殊な波長をまとっているんです」

 

助けを求める快翔の視線を感じ、あきらが助け舟をだす

 

「詳しいメカニズムはまだわかっていません。ですが、私たちの研究機関の調査では、その清めの音をノイズに打ち込むことで、私たちと同じ次元に存在するように『調律』しているのではないかといわれています。快翔くん以前みどりさんの報告書読んでましたよね?」

「いや、読んだんですけど難しくってつい…」

「…まあ、気持ちはわかります」

 

よく知らない波形だのグラフだのが満載の資料を思い出し、あきらも快翔に同意する。あきら自身、先に自分で言ったことしか理解できていないのだ。これ以上説明するには、専門家に来てもらわなければならない

 

幸い先ほどのあきらの説明で弦十郎は納得したようで、うなずきながら口を開いた

 

「ふむ、そういうことか…。いや、済まない。なるほど、君たちの言う清めの音とは、俺たちにとってのフォニックゲインのようなものなのかもな」

「フォニックゲイン、ですか?」

「ああ、それについては、シンフォギアについて」

「あたしが説明しちゃいま~す!」

 

弦十郎のあとを継いだのは、響を連れて行った了子だった

 

「了子。彼女はいいのか?」

「ええ、検査だけですから。データを見るのは全部そろってからだし。安達くんに任せておけば大丈夫よ」

 

弦十郎に言うと、了子は『シンフォギア』についてあきらと快翔に説明する

 

 

 

「要するに、立花さんや翼さんがまとっているのはシンフォギアと呼ばれるもので」

「特異災害対策機動部二課の保有する、対ノイズ用の装備であると」

「そうそう、そんな感じ」

 

二人は、了子からうけた『シンフォギア』についての説明をまとめる。二人の認識は、正しかったようだ

 

「さて、お互いに秘密を明かしたところで本題に入ろうか」

 

二人が理解したところで、弦十郎が言う

 

「快翔くん、あきらくん、この街にいる間、俺たちに協力してもらうことはできるか?」

「司令!?」

 

弦十郎の言葉に口を挟んだのは、風鳴翼その人だった

 

「どうした翼」

「どうしたではありません! なぜその二人に協力など依頼するのです! 私だけでは不十分ということですか!?」

 

それまでの快翔の印象をひっくり返すように強い口調で弦十郎に食って掛かる翼。弦十郎は、それをなだめるように言う

 

「そうではない。だが、ここ最近のノイズの発生件数は異常と言ってもいいぐらいだ。お前ひとりより彼や響くんがいれば、同時に異なる場所で対処が可能だ。それとも、お前のつまらない意地で救える命を見捨てるつもりか?」

「そ、そういうわけでは…」

 

翼が言葉に詰まる。その空気を破るように、快翔はいう

 

「申し訳ありませんが、今この場で返事をするわけにはいきません。こちらも組織の一員ですので。それに、俺たちの目的の第一はあくまで魔化魍です。一度、本部と連絡をしてからではいけませんか?」

 

正体を明かすだけならまだしも、協力体制をとるとなれば話が別だ。ここまで来ると、快翔やあきら個人では判断できない。あきらもそう感じていたのか、うなずいている

 

「む、そうか…。いや、そうだな。結論が出たらこっちに連絡してくれ」

 

そう言って弦十郎は名刺をあきらと快翔に渡し、通信機で連絡を取る

 

「安達、響くんの検査は終わったか?」

『司令? はい、終わりました。今ちょうど連絡しようと思っていたところです』

「わかった。今から緒川を迎えに行かせる。それと、もう一人検査をしてくれ。体に異常が無いかだけでいい」

『え? はい、わかりました。準備しておきます』

 

通信を終えると、快翔に向き直る

 

「今日は急に連れてきて済まなかったな。お詫びと言っては何だが、君も戦ったあとなんだ。簡単な身体検査だけでも受けて帰ってくれ」

 

弦十郎にそういわれ、快翔とあきらは緒川に連れられて医療区画へと案内された

 

 

 

「それでは、僕は響さんを送ってきますので。終わったら、先生の言うことに従ってください」

「はい。ありがとうございました」

 

緒川が響を連れて去ると、待合室にはあきらと快翔の二人になった。緒川が言うには、準備ができたら医者が呼びに来るということだ

 

「なんか、初日なのにいろいろありましたね」

「そうですね。今日はもう遅いですから、明日になったらたちばなに連絡しないと」

 

それにしても、とあきらは続ける

 

「シンフォギア…。鬼の力以外にも、人々を救うために動いている人たちがいたんですね」

「そうですね。なんか俺、うれしいです」

 

快翔がいうと、部屋のドアが開き、白衣の人物が入ってきた

 

「準備ができました。えっと、加々井さん、ですね。こちらに…」

 

来てください、と続けようとしたのだろうが、快翔のほうを見て表情が固まっている。いや、快翔ではなく、隣にいるあきらを見ている

 

「天美さん…?」

 

その医者は、不意にそう呼んだ。天美はもちろん、あきらの名字である。最初は不思議そうにしていたあきらだったが、次の瞬間には驚きの表情に変わる

 

「安達くん…?」

「やっぱり!天美さんだよね? 久しぶり!」

 

医者の顔が笑顔に変わる。あわせてあきらの表情も柔らかくなった

 

「お久しぶりです。安達くん、お医者様になられたんですね。おめでとうございます」

「う、うん。でも、天美さんはどうしてここに?」

 

そこで快翔は、ようやく会話に割り込む

 

「あの、お二人はお知合いですか?」

 

快翔の言葉を聞いて、あきらが紹介する

 

「すみません、快翔くん。彼は安達明日夢くん。ヒビキさんのお弟子さんです」

「元、だけどね」

 

快翔は一泊おいて、ようやく言葉の意味を理解し、

 

「え、ええええええ?!」

 

響ばりに大きな驚きの声を上げた

 

 




次もできるだけ早く投稿できるように頑張ります。

シンフォギアXDU、なんでもっと早く発表してくれなかったんだ。
もう少し早ければ奏生存のifでストーリーが作れたのに

1時間後に用語解説を投稿します。今回は人物紹介のみです

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