戦姫絶唱シンフォギア 戦姫と鬼   作:MHCP0000

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みなさん、遅くなってしまい申し訳ありませんでした。

前回の更新から2か月、いろいろ立て込んでしまいこの時期になってしまいました




第九話 動き出す魔物

「すまないな快翔、天美くん。昨日の今日で来てもらって」

「いえ、問題ありません。それよりも、話って何ですか?」

 

ノイズとの戦闘の翌日、朝のひと段落した時間に快翔とあきらは弦十郎に呼び出されていた

 

「いや、君たちも昨日の戦闘の後だ。協力してもらったんだし、精密検査ぐらいはと思ってな。それに……」

 

弦十郎はいったん言葉を区切り

 

「知っておいてもらわなければならんこともあるからな」

 

表情を少し変えながらそう言った

 

 

 

 

 

 

 

 

第9話 動き出す魔物

 

 

 

 

 

 

 

 

報告書は後で上げます、という明日夢を残して、快翔とあきら、弦十郎はミーティングスペースへと向かった。三人が着くころには、先客が二人いた

 

「どうも。昨日はお疲れ様でした」

「お疲れ様。今日はあたしもお話会に参加させてもらうわよ~」

 

三人に気が付いた二人が同時に声をあげる

 

「知ってると思うが、改めて紹介する。俺の部下の緒川慎次と、研究担当の櫻井了子だ」

 

緒川とは接点があるが、最初の歓迎会や昨日来た時に響のほうに行ってしまった了子と話すのはこれが初めてだった

 

「初めまして。天美あきらです」

「よろしくね~、あきらちゃん」

 

差し出された手を、あきらは何の抵抗もなく握る

 

「加々井快翔です」

「鬼の子ね。よろしく~」

 

同じように差し出された手を握る

 

「!!!!」

 

握った瞬間、言い知れぬ悪寒が快翔の背筋を駆け抜けた。思わず快翔が勢いよく手を離す

 

「快翔くん? どうかしましたか?」

 

心配そうに話しかけるあきらの声で我に返る

 

「い、いえ、すみません櫻井先生。少し静電気が走ったみたいで……よろしくお願いします」

「そう? 私は何も感じなかったけど……よろしく♪」

 

言いながら再度手を握る。今度は先ほどのような悪寒はなかった

 

 

「さて、こうやって集まってみたわけだが、何から話したものか……」

 

言いながら弦十郎は快翔とあきらを見る。その表情は「何から聞きたい?」と言っているようだった

 

「それでは、昨日のことについて説明してください」

 

要求を出したのはあきらだった。昨日あきらに何があったのか説明したとき、かなり怒っていたのを快翔は思い出した

 

「せっかくこちらが協力体制を受け入れてノイズ殲滅に協力したのに、そちらから斬りかかられたのはどういうつもりですか?」

 

声のトーンは低めで、怒鳴り散らしている声ではない。だが、あきらからしてみれば危うく仲間を殺されかけたのだ。その目は怒りで満ちていた

 

「すまない。それについては俺からも謝る。俺も、まさか翼があそこまで短絡的な行動に走るとは思っていなかったんだ」

 

叱責を受けた弦十郎は、素直に謝るしかなかった。非は完全に自分達にある。そういうときは謝るしかない

 

「それより、翼さんは何故あんな行動に? 実際に攻撃された身としては、その辺りをしっかりと聞いておきたいんですが」

 

弦十郎の謝罪で少し沈黙になったところで、改めて快翔が訊ねる

 

「……そうだな。君たちには知っておいてもらわないとな」

 

弦十郎は、一度佇まいを直す

 

 

「君たちはツヴァイウィングを知っているか?」

 

知らないわけがない。ツヴァイウィングといえば、風鳴翼が所属していたツインボーカルユニットだ。

 

快翔はその頃からの風鳴翼のファンだし、あきらも取り立ててファンというわけではなかったが、オリコンに入っていた彼女たちの曲は知っている

 

「知っていますが、それが何か関係あるのですか?」

 

今一話が見えてこないあきらが訊ねる

 

「関係あるとも。何せ、ツヴァイウィングの翼ともう一人の天羽奏はシンフォギア適合者だったのだからな」

 

驚きが半分、同時にやっぱりな、という気持ちが半分。それが快翔の胸中だった。弦十郎は続ける

 

「二人はシンフォギアの装者としてノイズと戦っていた。そしてある目的のための実験をしていたとき、事件が起きた。二年前のことだ」

「事件…ツヴァイウィング…二年前…もしかして」

 

あきらが何かに気が付いたように声をあげる。弦十郎は肯定するように一つうなずいた

 

「ああ。その実験は、完全聖遺物の起動のために必要なフォニックゲインを集めるために彼女たちのライブ会場の別室で行われていた」

 

「完全聖遺物? シンフォギアとはまた別ものなんですか?」

「シンフォギアはあくまで聖遺物の欠片から作られたものなの。それに対し完全聖遺物とはその形や力をそのままの形で残してるもののことよ」

 

快翔の疑問に了子が答える。そのまま説明を了子が引き継ぐ

 

「実験は成功。我々は完全聖遺物を制御下に置き、より効率的にノイズ対策をとれる……はずだった」

 

はずだった。その一言で、この話の結末が快翔とあきらにはわかってしまった

 

「原因は謎。結果は暴走。聖遺物の制御は失われ、実験室は爆発。その上ライブ会場のほうは…あなたたちもご存じよね」

「ノイズの襲来。かなりの人間が死んだ。そして、その中にはツヴァイウィングのボーカル、天羽奏も含まれていた。今までの話を合わせると、天羽奏はノイズとの戦いで命を落とした、ということですね」

「ああ。正確には、ノイズを殲滅するために命がけの技を使って、だな」

 

弦十郎が話を締める。その場を沈黙が包むが、それはあきらの疑問によりすぐに破られた

 

「ツヴァイウィングがノイズの殲滅に深く関わっているのはわかりました。ですが、まだ翼さんの行動について説明をしてもらっていません。いくらそんな経験があっても、やはり人に向けて攻撃する理由にはなりません。まして、響さんんおような素人相手に」

 

あきらとしては、ツヴァイウィングよりも天羽奏よりもこちらのほうが問題だった

 

「翼のまとうシンフォギアは第1号聖遺物天羽々斬、そして奏が使っていたのは第3号聖遺物、ガングニール」

 

弦十郎はあきらの疑問に説明を始める。あきらの求める答えは、一言に集約されていた

 

「響くんが装着したのも、ガングニール。奏のガングニールの、さらに小さな欠片から作られたものだ」

 

その一言で、快翔とあきらはわかってしまった。翼が、なぜあそこまで響を認めないのか。そして、響が昨日口走ってしまった言葉の重さを

 

 

 

 

 

 

 

 

快翔とあきらが地上に戻るころには、日はすでに頂点を超え、徐々にその高度を下げていくところであった。帰りの車の中で、あきらが快翔に言う

 

「快翔くん、やはり今回の協力体制、やめたほうがいいんじゃないでしょうか」

「いきなりですねあきらさん。まあわかりますけど」

 

あの後は翼に関わる話はなく、ノイズの発生状況や快翔の健康診断の結果だけを話した。というよりも、それ以外に話すことがなかった、というのが本音だ

 

「快翔くんだって、そう思ったから深く話を聞かなかったんでしょう?」

「ん、まあそうなんですけどね」

 

先ほどの話にも、まだまだ不明瞭な点は多くあった。暴走した聖遺物はどうなったのか。命がけの技とは何なのか。なぜ、天羽奏の使っていたガングニールを響が使用するに至ったのか

 

だが、それを聞くということは、より深く│特異災害対策機動部二課《彼ら》とより深く関わるということである。場合によっては協力体制を解消する必要がある相手に対し、それは得策ではない。ゆえに、あきらも快翔も深くは聞かなかった

 

「彼らと関わり合うことなく活動することは、難しいですができないわけではありません。ノイズは放っておいて、魔化魍だけに対応すればいいわけですから」

「そうですけどね。でも実際、目の前でノイズが出たらそうはいかないわけで。それに、司令の言うとおりだとしたらこれからノイズはさらに増えるみたいですし」

「それはそうですが…」

 

弦十郎が言うには、最近ノイズの発生件数が異常らしく、快翔たちに協力を依頼したのもさらなる発生件数の増加に備えてということだった

 

「というか、快翔くんはどうしたいんですか? 話だけ聞いていると、このままか、より深く付き合っていくように考えてるように聞こえるんですが」

 

あきらが少し険のこもった声で言う。批判まではいかないが、それでいいんですか?と案に言わんばかりである

 

「そうですねえ…」

 

あきらに言われて快翔は考える。あきらの言いたいことはわかる。自分たちの仕事は魔化魍退治だ。ここでノイズ対策から降りたところで咎めるものはいない。だが、知ってしまった以上放っておくわけにはいかない。ノイズもそうだが、風鳴翼のことも、もちろん立花響のことも

 

「やっぱ放っておけないですね。俺としてはしばらくこのまま付き合っていってもいいのではないかと思います」

「……そんなに女の子が放っておけないんですか?」

 

快翔の返事に、あきらはあきれたような、からかうような声で返す

 

「ちょっとあきらさん。その言い方はどうかと思いますよ。それじゃ俺がまるで女の子のために頑張ってるみたいじゃないですか?」

「違うんですか? 少なくともわたしにはそう聞こえたのですが」

 

運転しながら、あきらが完全にからかいモードに入っている。こうなってしまっては、快翔に勝ち目はない。まあ、普段から勝てないのだが

 

「ああもう、じゃあそれでいいですよ! どうせ俺は女の子のために頑張る不埒な輩ですよ!」

 

膨れ面で快翔が言う。あきらはそれを笑いながら見ているだけだ

 

「あまり膨れないでください。私は快翔くんのそういうところ、好きですよ?」

「……あきらさん、そういうこと、そういう顔でキョウキさんとかに言っちゃだめですよ」

 

全く無防備な鮮の笑顔と発言内容に、からかわれた仕返しとばかりに毒づく。すると、二人の話が終わるのを待っていたかのようにあきらの携帯が着信を告げる

 

「あ、快翔くん、出てもらっていいですか?」

「はい…っと、香須実さんからですね。スピーカーにしますよ」

 

応答の操作をして挨拶をする

 

「お疲れ様です香須実さん。どうかしましたか?」

 

普段通りに快翔は言ったが、電話の向こうから返ってきたのは緊張感のある声だった

 

『快翔、あきら、魔化魍の反応よ。あなたたちの担当の区域内から。今快翔の携帯にも詳しい場所と状況を送ったわ』

 

 

ドクン、と自身の体が大きく脈打つのを快翔は感じた

 

 

 

 




今後も遅くなるかと思われますが、よろしくお願いします

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