白銀の王   作:うたまる♪

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悪魔殺し

 此処は冥界のある辺境の土地、そこは龍が巣くっている為誰も寄り付こうとしない場所だ。そんな辺境の土地にある二人の悪魔が訪れていた。

 

 

「グレモリー君、悪いねえ。私の昼寝に付き合ってもらって。でもたまにはこうして時間を気にせずのんびりとするのもいいものだろう?」

 

 

 それに対してのサーゼクスの答えは沈黙だった。

 

 

「ねえ、聞いているかいグレモリー君?」

 

 

「聞いてますよ………ただ私が聞きたいのは何故こんな危険地帯で昼寝をしようとしているかですよ。それに時間を気にせずのんびりしているのはいつもの事でしょう?」

 

 

 原っぱで寝転びながら欠伸をするイースレイに呆れながら答える。サーゼクス自身もできることならここには立ち入りたくはなかった。この辺境の地にはかの六大龍王の一角魔龍聖(ブレイス・ミーティア・ドラゴン)タンニーンが支配しているドラゴンの巣窟だ。如何に最近最上級悪魔の昇進試験の資格を得たサーゼクスでさえ入りたくない、用があっても行きたくないような場所だ。ここに来た理由はイースレイから大事なようがあると聞いて仕方なく来たのだ。

 

 

「で、用って何ですか?」

 

 

 サーゼクスは真剣な表情でイースレイに問いかける。サーゼクスとしては一刻も早く用をすましここから立ち去りたいのだ。そんなサーゼクスの気持ちを知ってか知らず、イースレイはのんびりとした声音で欠伸交じりに答える。

 

 

「ふわぁ~……ただ一緒に昼寝をしたかったじゃダメかな?」

 

 

 その答えを聞いた瞬間サーゼクスは無言で立ち上がる。それをイースレイは慌てて止める。

 

 

「冗談だよ、冗談!そんなに本気にしないでくれ!」

 

 

 イースレイの必死な説得によりサーゼクスは仕方なしに再び座りなおす。まったく昼寝は好きじゃないのかい、とイースレイは半ば愚痴に近い呟きを漏らす。サーゼクスものんびりと昼寝をするのは嫌いじゃない。それもこんな危険地帯じゃなかったらの話だ。

 イースレイは珍しく真剣な表情で話し出す。

 

 

「サーゼクス、君から見てセラフォルーはどう見える?」

 

 

 イースレイの質問に対してサーゼクスはどういう意味だ、と考えながら率直な意見を述べる。

 

 

「彼女は優秀だと思いますよ。悪魔の中でも群を抜いた才能を持っていると思います。それに努力も惜しまない。それにその才能にかまけることなく、他の者に優しく接することのできる心の優しさも持っている。まあ、精神的に甘いところがありますが、それも踏まえて優秀な悪魔だと思います」

 

 

 サーゼクスは嘘偽りのない心の底から思っていることを包み隠さずイースレイに伝える。イースレイはサーゼクスの返答を聞くと少し口角を上げそうか、とだけ言う。サーゼクスにはそのそうかの言葉の真意がわからなかった。

 サーゼクスの言葉から少し間をあけイースレイが話し始める。

 

 

「セラフォルーは優しい子だ。真っすぐで純粋な心を持つ悪魔らしからぬ悪魔だ。それに他の悪魔の中で群を抜くほどの才能を持っている。あの子は何時か魔王に匹敵するほどの力を持つことも可能だろう。それでも周りはそれを良しとしない。私がいるからね。今の私の実力は冥界の中でトップだろう。それこそ悪魔同士での戦いにおいて私の敗北は絶対にありえない。だからこそセラフォルーは認められないだろう。私と言う大きな背中がある限り、彼女は私と同じものを求められるだろう。それが手に入ることはないと知らずに」

 

 

 その時サーゼクスは理解した。この場に自分を呼んだ理由が。なぜこんな誰も立ち入らないような危険地帯にまで自分を呼んだのか。それと同時に疑問に感じた言葉があった。

 

 

「何故セラフォルーがイースレイさんと同じ力を持つことができないんですか?確かにセラフォルーはイースレイさんには未だ力及ばないでしょう。しかし、それは今の現段階での話です。将来的に見たらわからないんじゃないんですか?」

 

 

 サーゼクスの問いにイースレイは首を横に振る。

 

 

「そう言う単純なことじゃないんだ。対悪魔戦においては私は誰にも負けることがないんだ。相手が無限の龍神(ウロボロス・ドラゴン)のような相手でもない限りね」

 

 

 その瞬間、辺りの空気の温度が急激に下がっていく。それと同時にサーゼクスは言いようのない温度とは別による背筋が凍るような寒気さに襲われる。

 サーゼクスはすぐさまイースレイから離れ身体に滅びの魔力を纏わせ反射的に滅びの魔力を放つ。滅びの魔力が迫る中、イースレイの右腕には謎の刻印が浮かび上がっている。イースレイは無造作に腕を振り払い滅びの魔力を凍結させる。そこから流れるような動作で居合いの構えを取る。

 

 

「氷魔零ノ太刀‼」

 

 

 刹那、白い閃光がサーゼクスの身体に襲い掛かる。白い閃光がサーゼクスを斬り払った瞬間サーゼクスの身体は真っ二つに分かれサーゼクスは氷に覆われる。

 

 

「!はあ……はあ……」

 

 

 サーゼクスは現実に引き戻される。何ださっきのは………幻?幻術?いや、違う。あれは未来だ。サーゼクスは目の前に着きつけられた氷の刀を見て理解する。あれはあのままイースレイが氷の刀を振り切り自分の身体を斬った時の未来だ。

 サーゼクスは自分の鮮明な死のイメージを叩きつけられたことに驚愕する。イースレイが本気になれば自分など歯牙に掛けない程刹那の瞬間に殺すことができる。その事実に悔しさを感じる。サーゼクスも他の悪魔を一線凌駕するほどの魔力を持ってる。だが、イースレイの前ではその力を発揮する前に殺される。

 イースレイは氷の刀を消し、その場に寝転がる。

 

 

「中々上達したねグレモリー君。あの殺気に対して即座に対応し、反撃をすることができるようになったことを私は嬉しく思うよ」

 

 

 サーゼクスもは息を整えースレイの近くに腰を下ろし先程の異質な魔力について聞いてみる。

 

 

「さっきの魔力は………」

 

 

「ああ、あれがさっきセラフォルーが私を超えることができないと言ったわけだよ。少し寒気がしただろう?」

 

 

 サーゼクスは少しではないのだが、と思いながら先程の刹那の戦闘を思い返す。あの魔力の感じは天使や堕天使が使う光に似た威圧感、寒気さを覚えた。あれは一体何なのか気になるところだった。

 

 

「あれは私が本気で闘う時に使う力………滅悪魔法、私はこの形態を悪魔殺し(デビルスレイヤ-)と呼んでいる。対悪魔に対する戦闘に特攻効果を持つ魔法だよ」

 

 

 イースレイの言葉に絶句する。イースレイの言葉が正しいのならイースレイは悪魔との戦闘に絶対的なアドバンテージを持っていることになる。先程サーゼクスが見せられた圧倒的な死のイメージを思い出す。並の悪魔達よりも一線も二線も上に位置する力を持っていると自信のある自分でさえあの刹那の時に殺されるのだ。その力はイースレイの言葉通り悪魔同士の戦いにおいてイースレイの敗北はないと言ってもいいだろう。

 

 

「これは特別な魔法だ。私以外には使うことができない特殊な力だ。心悪しき者が使えば悪魔としての力に呑まれ、誰彼構わず悪魔を殺しまわるだろう。この魔法がある限りセラフォルーは私を超えることはできない」

 

 

 イースレイの言いたいことはわかった。だが、セラフォルーは心悪しきものではない。別に教えてもいいのではと思う。そのサーゼクスの表情を読み取り、イースレイは説明を始める。

 

 

「この魔法は良い事だけではない」

 

 

 そう言いイースレイは右腕を見せる。右腕から黒いナニカが浮かび上がってくる。それと同時に禍々しい魔力が辺りを充満する。

 

 

「これは代償だ。この魔法を使いこなせなければこの黒い痣が身体を浸食する。これに飲み込まれたら最後、心まで悪魔の様になり、見境なく生物を殺しまわるだろう」

 

 

「大いなる力には大いなる対価が必要という事ですか?」

 

 

「そんなたいそうな物じゃないさ。私にはこの力が一番私に合うんだ。それに上手くコントロールすれば飲み込まれることもない。私に危険はないさ」

 

 

 そう言う問題じゃないと言いたいが、イースレイにそんなことを言っても意味がないだろう。何事にも縛られず、自由な悪魔だ。私が言ったところで意に介さないだろう。

 

 

「セラフォルーはこのことを知らない。このことは君の中に留めておいてくれ。あの子は今焦っている。このことを知ると無理にでも覚えようとするだろう。それだけは駄目だ。あの子にはこういった魔法は使ってほしくない。グレモリー君、君は優しい。それにセラフォルーの事を理解し、あの子個人を見てくれてくれている。君はあの子の味方で合ってくれないかい?」

 

 

 そんなことを言われたら断ることなんかできやしない。ずるい人だこの人は(人じゃなくて悪魔なんだけどね)

 

 

「わかりました。何があっても彼女の味方でいましょう。彼女が道を誤った時は私も尽力を尽くしましょう。彼女を支えていきます」

 

 

 サーゼクスの答えにイースレイは満足そうにしながら微笑む。

 

 

「ありがとう」

 

 

「あなたはずるい。あそこまで言われたら断れませんよ」

 

 

「そう言うつもりはなかったんだけどね………と、そろそろか」

 

 

 サーゼクスはイースレイの言葉に?を浮かべる。すると大地が震え何かがこちらに接近していることを感じる。

 

 

「また貴様か」

 

 

「やあ、タンニーン。久しぶりだね、またお邪魔させてもらってるよ」

 

 

 やってきたのは此処の支配者魔龍聖(ブレイズ・ミーティア・ドラゴン)タンニーンだった。サーゼクスは突然現れた六大龍王に警戒を示すが、イースレイとタンニーンの親しそうに挨拶をする姿を見て柄にもなくあんぐりと口を開ける。

 

 

「何度も言うが無断で入ってくるな。他の龍に襲われても仕方ないぞ」

 

 

「そうケチケチしないでくれよ。ここはいい場所なんだ。広くて静かで自然が多い。何より人気が少なくていいんだ」

 

 

「だからといって勝手に入いられたらこっちが堪らんわ」

 

 

 談笑する悪魔とドラゴンその光景にサーゼクスは乾いた笑いが出る。

 

 

「イースレイさん貴方の交友関係は一体どうなっているんですか?」

 

 

「知りたいかい?」

 

 

「………遠慮しときます」

 

 

 聞くのが怖かったとは言えない………

 

 


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