白銀の王   作:うたまる♪

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二人の弟子

 サーゼクス・グレモリーとの摸擬戦を終えて数か月

 

 

 イースレイは今二人の弟子に魔法を教えていた。

 

 

「アイスメイク大鷲(イーグル)!」

 

 

「アイスメイク槍騎兵(ランス)!」

 

 

 氷の造形魔法が衝突し、辺りに爆散した氷が弾ける。

 

 

「アイスメイク白虎(スノータイガー)!」

 

 

「アイスメイク氷巨砲(アイスキャノン)!」

 

 

 氷で造形された虎が氷で造形された砲台から発射された氷の弾丸によって破壊される。その余波が両者を襲う。

 

 

「そこまで」

 

 

 イースレイの掛け声によって両者の戦闘が中断され、両社から発せられていた魔力が霧散する。

 

 

「どうですかレイ!私の造形魔法は!」

 

 

 自身の造形魔法の評価をもらおうとイースレイに詰めかかる少女。イースレイは少し困ったようにしながら答える。

 

 

「ああ、私と同じ【静】の造形を上手く造り出している。君は実に優秀な悪魔だ、カテレアさん」

 

 

 目の前の少女カテレアはイースレイの評価を聞き嬉しそうに笑顔を浮かべる。

彼女の名前はカテレア・レヴィアタン、魔王レヴィアタンの血統者であり、現在はイースレイの弟子だ。

 

 

 カテレアがイースレイの弟子になった経緯はというと、イースレイが最上級悪魔になった時だ。

 イースレイが最上級悪魔に昇進したその日に魔王レヴィアタンに呼び出されたのだ。イースレイは何事かと思いながら魔王レヴィアタンの場所まで赴いた。魔王レヴィアタンはイースレイを迎え入れある頼みごとをしたのだ。その内容こそがカテレアの家庭教師だった。

 魔王レヴィアタンはイースレイの魔法の開発力を見込みカテレアにあった修行方法と魔法を教えるように頼み込んできたのだ。さすがのイースレイも魔王からの頼み事となれば簡単に断るわけにはいかず渋々それを了承したのだ。

これがカテレアとの師弟関係の全容だ。

 

 

「お兄ちゃん、私はどうかな!」

 

 

 今度はセラフォルーがイースレイに感想を聞きに詰めかかってくる。イースレイは困ったような顔をしながらも的確なアドバイスをしていく。

 

 

「セラフォルーはまだ造形のバランスが少し悪いね。もう少し丁寧に魔力を込めなさい。君は魔力操作が少し慌ただしすぎる。今は持ち前の魔力量でどうにかなるかもしれないけど、それじゃあ最上級悪魔にはなれないよ」

 

 

 イースレイの酷評にしゅんとした表情になるセラフォルー、逆にカテレアは自分のほうが上だと思うかのように優越感に浸る。イースレイは自分の身内であるセラフォルーには少し厳しめに指導をしていた。それは彼女を大切に思えばこその行動であり、決してイースレイがセラフォルーを嫌っての行動ではない。仮にイースレイがセラフォルーのことを嫌っているのなら稽古は付けず、一切関わろうとも知らないだろう。まだ若いセラフォルーには難しいかもしれないが、それも一種の愛なのだ。

 

 

「二人とも昔に比べて格段に上達したよ。まさか私が使う魔法を覚えたいといった時は驚いたけどね」

 

 

 彼女たちが現在使っている魔法はイースレイが初めて覚えた魔法、ある意味イースレイの原点の魔法、氷の造形魔法だ。当時彼女たちが覚えたいといった時は驚いた。事実、この魔法はある程度の適性がなければ使用することはおろか、覚えることすらできない魔法だ。幸い二人とも氷に対しての適正は他の悪魔よりも高く無事に使えるようにはなった。

 カテレアは【静】の造形、セラフォルーは【動】の造形、互いに違うタイプの造形だがお互い切磋琢磨して日々頑張っている。まだまだ粗削りな部分はあるがそれは時とともに解消されていくだろう。二人とも名家の家に生まれ潜在能力も高く、自身を高めることを怠らない。そういった者はいつか大成するだろう。イースレイはそう考えていた。

 

 

「ねえねえレイ、私も片手で造形魔法を使えるようになりたい」

 

 

 カテレアの言葉にイースレイは首を横に振る。

 

 

「駄目だ。何度も言っているが片手での造形魔法はバランスが悪い。操作も今までと違い難しくなり造形も雑になりやすい。なにより肝心な時に力を出すことができないときが多い。だから教えるつもりはないよ」

 

 

「でもレイは片手でやっているじゃない」

 

 

「私には私の考えがあって片手でやっているんだ。君たちはマネしなくてもいい」

 

 

 イースレイは基本片手で造形魔法を行う。その理由はいくつかあるがその最も大きな要因はイースレイの心にあった。イースレイは生物の殺生を嫌っていた。イースレイは命はどんなものでも尊いものであり、儚くも美しいものだと思っている。だからこそ不完全な片手での造形魔法を使い威力を殺しているのだ。片手での不完全な造形魔法なら戦争中に相手を殺さなくても済む。

 イースレイは初めての戦争の際に数え切れないほどの天使と堕天使を造形魔法で殺した。たった一度の両手による造形魔法によって50を超える者たちの命を奪った。その時のイースレイは頭が真っ白になり思考が停止した。イースレイにとってほんの小手調べの攻撃で多くの命が消えたのだ。これにイースレイはひどく心を抉られる様な気持になった。そんなイースレイの気持ちを露知らず周りの同胞たちはイースレイの一撃を称賛し、その一撃で総崩れとなった堕天使と天使を次々と殺していった。そのおぞましい光景は今でも脳裏にまとわりつきイースレイを苦しめている。

 

 

 そんな過去を思い出していると二人は心配そうにイースレイをのぞき込んでいた。イースレイは『何でもないよ』と言い二人の頭をわしゃわしゃと乱雑に撫でる

 

 

 イースレイは嫌なことを思い出したと苦笑いをしたい気持ちを抑え何でもないようにふるまう。

 

 

「今日はここまでだ。そろそろ私も公務に戻らなければいけないしね」

 

 

 イースレイは最上級悪魔の中で唯一眷属を一人も持たない悪魔なのだ。それ故に仕事はイースレイ一人で片づけることが多い。父や母から知人の悪魔を紹介をされているが、イースレイは誰一人として眷属にしようとしなかった。それにはある理由があり、そうなっているのだが、それは今は関係のないことだ。とにかくイースレイは基本仕事で忙しい身なのだ。

 

 

「あ、あのレイ、こ、今度食事でも一緒にどうでしょう?」

 

 

 カテレアは恥ずかしそうにもじもじしながらイースレイを誘う。その初々しくも可愛らしい仕草にクスリと笑いがこぼれる。

 

 

「な、なにがおかしいのですか?!」

 

 

 それに機敏に反応するカテレア。イースレイからしたら彼女は大人のように背伸びしているようにしか見えないのだ。彼女たちはすでに20を超える歳だが悪魔の寿命を考えるとまだまだ子供だ。

 

 

「悪い悪い、馬鹿にしているつもりはないよ。今度時間が空いた時に一緒に会食でもしよう」

 

 

 イースレイの返事にカテレアはパァッと明るい表情に変わる。イースレイはその様子を見て表情がころころ変わる面白い子だと思った。

 

 

「それじゃあ、私はセラフォルーを家に送っていくからカテレアも家に帰りなさい。ここは君の領土なのだから大丈夫だろ?」

 

 

「もちろんです。我が領土に問題などあるわけがないでしょう」

 

 

 カテレアはそういうとまだ未発達な胸を強調するように胸を張り自慢をする。

 

 

「なら私たちはこれでお暇させてもらうとするよ。行くよセラフォルー」

 

 

「うん、じゃあねカテレアちゃん!」

 

 

「ええ、お疲れさまセラ」

 

 

 挨拶を終えイースレイとセラフォルーは仲良く手をつなぎながら家に帰って行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その時は誰も思ってもいなかった。

 

 

 まさかこの仲睦まじい兄と妹が仲たがいをすることになるなんて。

 

 

 




どうだったでしょうか?

今回はカテレアも話に組み込んでいきました。

これからイースレイとセラフォルーはどうなっていくのか?!

次回にご期待ください。

感想、評価お待ちしております!

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