銀の星   作:ししゃも丸

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第31話

 

 

 

 二〇一五年 十月某日

 

 

 346プロダクションのオフィスビル。元チーフプロデューサーとなった彼のオフィスは依然これまでと同じ状態を保っていた。

 部屋の主であるプロデューサーは美城常務の新プロジェクトに関する業務で日夜作業に没頭していた。

 表向きとはいえ降格された彼ではあったが、今までと同じように仕事をこなしている。ただ、以前とは仕事内容がまったく違うものになったが、それは些細な事である。

 しかし、オフィスを出れば以前とは違った雰囲気となった。

 美城常務の新しい改革により、職場の雰囲気は緊迫したものになったとプロデューサーは肌で感じ取っていた。

 特に彼女はアイドルのバラエティ路線に対する方針は特に強気で、担当している部署は結果を出さなければと切羽詰っている状態。さらに、その線で活動しているアイドル達も不安な状況におかれている。

 先月に行われた会議の内容は瞬く間にアイドル部門に知れ渡り、その効果は目に見えて発揮されていた。

 この状況の一端を担いでいるプロデューサーであったが、不満や後悔といった感情は湧いていなかった。必要な事だと思い彼女に賛同しているのだ。その所為か周囲の人間の目には美城派についたと影で言われるようにもなった。きっと自分がいない場所では陰口を言われているのは間違いなかった。

 ただ、それが社員だけではなくアイドルからも冷たい視線を送られるようにもなった。面と向かって文句は言われてはいないが、皆不満を持っているように見える。

 特に幼少組からは、捨てられた子犬のような目で見られるのだから堪ったものではない。まるで、自分が悪者になったような気分だ。

 いや、似たようなものか。

 立場など気にしない大人組には、ずかずかとオフィスに入り込んでは愚痴の一つや二つを言っては去っていくのを何回もされたので、中々仕事が進まなかったのが不満ではあった。

 しかし、彼女達が怒っているのは自分が降格されて美城派についたことではない。まして、彼女達を見捨てるような態度を取っていることでもない。

「今まで担当なんかしなかったくせに、なに今更アイドルの担当になってるのよ!」と誰かに言われたが、きっとこれが一部のアイドル達の本音なのではとプロデューサーは薄々睨んでいた。

 346プロダクションに来てからのプロデューサーは、アイドル達全員を主に一人でプロデュースしていたためか、誰かの担当になったりはしていなかった。言うなれば全員の担当である。とプロデューサー自身はそう認識していた。

 現に当時は口うるさく担当になってとせがまれた。

 765プロダクションの時とは違い、ここでは全員が担当なのだ。当人たちにはわかってはもらえないことなのは理解しているが、彼女達は些か私情を挟み過ぎだと思っている。

 本当に困ったものだ。

 ただ、一つ。良かった点があるとすれば、オフィスに訪れる頻度が以前より減ったので、静かに仕事ができる時間が増えたことである。少し、物足りなさを感じるが。

 物思いにふけていると、誰かが扉を叩いてきた。声からしてちひろであった。

 

「どうしたんだ、ちひろちゃん。何か問題も起きたのかい?」

「ああ、いえ。そういう訳では……。でも、そうなのかな? トレーナーさんから言伝を預かってきました。ちょっと来てくれと」

 

 どうやらトレーナー達からも嫌われたらしい。内線で呼べばいいのに、彼女を伝言係にして呼び出しときた。

 

「あ、いえ! 私が近くに用があったので、そのついでですから!」

「本当かねえ……」

「ほ、本当ですよ。たぶん……」

「わかってるよ。時間的にあの子達のレッスンが終わるころだ」

「途中までご一緒しても?」

「構わないよ」

 

 オフィスを出た二人はエレベーターに向かって歩く。両腕に書類を抱えながらちひろは隣を歩くプロデューサーを見ながら尋ねた。

 

「……あの、プロデューサーさん」

「ん?」

「みんな、今はちょっと気持ちの整理ができていないだけですよ。あの子達はまだ子供です。難しい年頃ですから」

 

 心配してくれているのか、ちひろは優しく言葉をかけた。

 

「そうだな。まあ、アレだ。しばらくは静かでいい」

「そんなこと言うと、みんな怒りますよ?」

「事実迷惑してたからな。ちょっぴりだけど」

「ほんと、素直じゃないんですから」

「そんなことないさ。お、丁度来た」

 

 エレベーターがタイミングよくこの階で止まった。出てきた人間と入れ替わりで二人は中に入った。

 

「何階だ?」

「あ、私は――」

 

 

 

 ちひろと別れたプロデューサは別館に向かっていた。道中アイドル達とすれ違うことはない。新プロジェクトのアイドル達と他のアイドル達のレッスン時間はずらしてあるからだ。

 表向きはまだメンバーは公表していないし、そもそもデビューすらしていないということもあるし、自身のこともあるのでわざとそうしている。一応常務には了承を得ているから問題はない。

 彼女達のトレーニングルームの前まで来た。いつものように一声かけて中に入る。ただ、その光景は意外にも予想通りであった。

 

「いやー、やっぱりレッスンきついね!」

「のわりには、フレデリカは余裕そうに見えるけどね」

「えー、そんなことないよ!」

「そう言う周子もまだいけそうに見えるわ」

「まあ、若いんで。唯もまだ平気そう」

「一応みんなよりは早く活動してたしー。ただ……」

「ぜぇ、ぜぇ……ぜぇ」

「……ぅ」

 

 四人の視線の先。そこには、床で倒れている二人のアイドルがいた。彼女達が言う前に部屋に入ってきたプロデューサーが頬を掻きながら言った。

 

「やっぱり、ありすと文香はこうなるか」

「あ、プロデューサーだ! なに、サボりかな?」

「お前らの様子を見に来たんだよ。おーい、生きてるかー?」

 

 失礼な事を言うフレデリカに軽いデコピンという制裁を加え、壁際に置いてあった二人の飲み物を持って生存確認をした。

 

「た、たちばな……です」

「ほれ、飲み物。ゆっくり飲めよ。で、文香は?」

「……」

「隊長! どうやら文香隊員は……」

「フレデリカは調子に乗らないの。一応言っておくけど、最後までレッスンを耐えてたわよ」

「なるほど。教えてくれて感謝するが……。奏、近い。もっと離れろ」

「あら、つれない」

 

 言われてプロデューサーの隣を離れる奏と入れ替わるように今度は周子が隣に座った。

 

「素人のシューコちゃんも頑張ったんやけどなー? ちらちら」

「ならもっと頑張ってくれ。見た感じ余裕そうだしな」

「えー、酷いなあ」

「唯はどうだ? 初めてのユニットでのレッスンは?」

「アタシはそれなりによゆーだったかな? まあ、みんなよりレッスンはしてたしねー」

「そうなるとだ。ありすは……まあ、これからだからな。時間が解決するだろう」

「橘です」

 

 少し休んで息が落ち着いたありすはすぐにいつもの調子に戻った。みんなに囲まれながら見守られていた文香であったが、ようやく息が整ったのかやっと声を出した。

 

「す、すみません……。飲み物を……あ、ありがとうございます」

「わかっていたことだが……。お前、年の割には体力ないな」

「……体を動かすより、本を読んでいる方が好き、でしたから」

「あー! プロデューサーチャン、差別発言―!」

「そーだ、そーだ」

「お前らは黙ってなさい!」

 

 鷺沢文香。長野県出身、年齢は19歳の現役女子大生。文香という女の子は、一言でいうなら超インドア派な女性だ。趣味も本屋めぐりと言っているように読書が好きな子で、暇な時間はよく読書をしているのを346プロにやってきてから度々目にしている。そのためかと言わんばかりに体力はない。運動は苦手と本人も言っているのだが、

 

「筋力にはちょっと自信があるんですけど……」

「そこだけ鍛えても仕方がないだろ。ありすはどうだ?」

「橘です。疲れるし、大変ですけど……嫌じゃないです」

「お前は成長期だからな。一番の成長株だ、期待してるよ」

「と、当然です」

「これは提案で強制ではないが。文香、時間がある日は体力づくりするか? あとありすも」

 

 アイドルはかなり体力が求められる。ライブでも連続で歌うことはまずない。個人の場合だと少し長めの休憩を入れたりはするが、プロダクション所属のアイドル達で開催されるライブがほとんで交互に歌うのが当たり前だ。

 それを踏まえても、現状の文香の体力では耐えられないと判断した。そのためのトレーニングである。

 二人は彼の提案に頷いた。少し戸惑っていたように見えたが、嫌々やるというような顔には見えない。二人の返答にプロデューサーは「よしっ」と声をあげて立ち上がった。

 

「なら話は通しておかないとな。特に文香は大学生だから講義がない時間はトレーニングな」

「え……! あの、読書……」

「しばらくお預けだ」

「……」

「文香さん、さっきより顔が死んでます……」

「さすがに重症すぎるだろ。にしても、こういう時に面倒見のある奴に頼みたいが、今は無理だろうしな……。茜はやってくれそうだが、そうすると文香が死ぬか」

 

 本来であれば仲間内で交友を深めるためにもとプロデューサーは考えていた。しかし、新プロジェクトのアイドルは公表するまでは秘密。よって交流もできない。

 例えそうでなくても、現状のアイドル達の関係にヒビが入った状態では無理だと気付いていた。

 そんな中、プロデューサーの軽はずみな発言に彼女達が食いついた。

 

「あ、そう言えばプロデューサーってみんなからハブられてるんだっけ? 可哀そうなプロデューサー。フレデリカも同情するよー」

「どうせ、プロデューサーが泣かしたんでしょ? シューコちゃんもそのうち泣かされちゃうー」

「ふふっ。一度でいいから、男の人に泣かされてみてみたいものね」

「女性を泣かすなんて、最低です」

「……泣かしているんですか?」

「あはは……。まあ、今回の場合はプロデューサーチャンが、ね?」

 

 メンバーの中で唯一他のアイドル達と面識のある唯は、今回の件に関してはそれとなく事情を知っている。知ってはいるが、同情はできないのか中々フォローはしてくれなかった。

 少女達から遠慮ない言葉ばかりを浴びせられているプロデューサー。彼自身は、彼女達の言葉を軽く受け流すだけだった。

 大人をいじめて楽しいか……?

 言葉には出さないがそのようなことを胸に秘めていた。

 

「さて、休憩は人を弄っていたから十分とれただろ? レッスンを再開しろ。オレはトレーナーと打ち合わせしてくるから。それと、トレーナーが来ないからってサボるなよ? サボったらもっとキツイレッスンさせるからな!」

 

 釘を刺しつつ、ほんのちょっぴりの仕返しを混ぜながら、プロデューサーは部屋を出て行った。

 

 

 

 トレーニングルームを後にしたプロデューサーは別の部屋に向かっていた。同じ新プロジェクトのアイドルである神谷奈緒と北条加蓮の二人の所だ。

 二人はユニットとして活動させると当初から決めていたためか、予定していたプロジェクトがかなり前倒しに進んでいた。

 常務自身がすでに作詞家に依頼していたらしく、それでも予想以上の早さで歌詞と曲が届いたのだ。そのため二人だけボイスレッスンを中心にスケジュールを組んでいた。

 本来……というよりも、理想であればもう一人。凛がいるのが望ましかった。

 武内からの報告では、凛とアーニャには話はすでにしてあるとのことだった。反応は想像通りのものだったらしい。

 プロデューサーもこれ以上は待てないと判断し始めていた。プロジェクトに参加しないのであれば、奈緒と加蓮の二人によるデュオでのプロデュースをしなくてはならない。それに肝心の美城常務には、仏のような慈悲深さはないだろう。そろそろちゃんとした報告も急かされているようなものだった。

 

「さて、二人はちゃんとやっているか……」

 

 ボイスレッスン専用の部屋まで来たプロデューサーはドアの窓から中を覗き込むように二人の様子を確認する。

(これは、たまげた)

 奈緒と加蓮とはもう一人、一緒に歌を歌っている人間がいた。

 渋谷凜。

 なぜとその疑問が頭の中を過ったが、それはどうでもいいのだ。肝心なことは、渋谷凜がそこにいて、奈緒と加蓮と共に歌っている事だ。後ろ姿しか見えないので彼女達の表情はわからないが、雰囲気は最悪というわけではないように見えた。

 もし、仮にだ。凛が自分の意思でこの場にいるのならば、期待してもいいのだろうか。

 いや、変に期待をするのはやめよう。

 決めるのは凛自身だ。そう自分にいい聞かせ、しばらくプロデューサーはそのまま部屋に入ることはなく外から様子を見ていた。

 そして、歌が終わる少し前にその場を離れた。

 

 

 

 後日。

 武内のオフィスに渋谷凜とアナスタシアがいた。二人は覚悟を決めたような、真剣な眼差しで武内に自分達の答え。美城常務の新プロジェクトに参加することをいま、この場で伝えたのだ。

 武内もまた、覚悟を決め告げた。

 

「そう、ですか。わかりました。美城常務には私からお伝えしておきます」

「反対、しないんだ」

「……私も、凛と同じです」

 

 二人はたくさん悩んだ。悩んで悩んで、そして答えを出した。きっと武内Pは素直に頷いてはくれないだろう、そう思っていた。だが、彼の答えはすぐに返って来た。二人は意外でならなかったようだ。

 

「そう思われているということは、貴方達のプロデューサーとして嬉しい限りです。ですが、私はプロデューサーです。アイドルの可能性を閉ざすのではなく、広げるのが私達の仕事だと思っています。……ですが、素直に賛同はしたくないのが本音です。」

「……武内Pも、そう思っているんですね」

「やっぱり、シンデレラプロジェクトのこと?」

「経緯がどうであれ、プロジェクトの担当プロデューサーになったわけですから、最後まで皆さんとやり遂げたい。……我儘でしょうか、自分は」

「ううん。むしろ、あの武内Pがそういうことを言うなんて、ちょっと意外。でも、いいと思う」

「ダー。わたしも、そう思います」

「ただ、私達がそういうこと言う権利は……ないと思うけどさ」

「いえ、そんなことはありません。……ああ、そうでした」

 

 武内は二人に尋ねることがあったことを思い出した。それは同じユニットである卯月、未央、美波に今回の事を話したかということである。

 最初は自分で考えて決断をしてほしい、それから打ち明けてもらいたいと少し我儘なことをしてしまったからだ。ただ、二人がこうして決断をしたことを省みれば、しっかり話し合ったということは想像がついていたが、武内もあとでフォローをしなくてはと考えていた。

 それに最後にはメンバー全員に通達もしなくてはならないが、同じユニットメンバーには特に慎重な対応が求められる。

 

「美波とは、いっぱい話しあいました。わたしも、美波と……ライブライカとしていられなくなるの、とても悲しい。けど、美波は背中を押してくれました。私も頑張るからと。だから、アーニャも美波に負けないようがんばります!」

 

 二人がどれだけ話し合ったのかが伝わってきた。アナスタシアさんが離れている間、新田さんもソロで活動する計画になっている。新田さんはメンバーの中では一番の年長者だ。組織というものをそれとなくだが察してくれているだろう。現にアナスタシアさんの背中を押してくれたのだ。あとで本人に謝罪とお礼を言わなくてはならないと武内は思った。

 逆にアーニャと違って凛は正反対の雰囲気に武内は気付き尋ねた。

 

「渋谷さんは……なにかあったのですか?」

「私は……その。最初は乗り気じゃなかったんだ。けど、偶然二人を見ちゃって、自分でもわからないんだけど、一緒に歌ったんだ。不思議な感じで、なんていうか波長が合うっていうか、すごくわくわくした。新しい何かが掴めそうな気がしたんだ。それから悩んで、卯月と未央に話したよ」

「あまり良い形で終わらなかった、と?」

「わからないんだ。あ、別に口論にはなってないから! ただ、二人ともあまりいい顔はしてくれなかったかな。なんか、裏切った感じ」

「私が言える義理ではありませんが、渋谷さんが決断したのなら、それを貫き通してください。途中で投げ出さず、最後まで。島村さんと本田さんに関しては、後ほど私からフォローをします。それに三人だけではなく、他のメンバー全員にも話さなければいけませんから」

 

 凛はありがとうと礼を言って頭を下げた。

 渋谷さん達は年が近いせいか、仲間というよりも友人、または親友のような意識が強い。だからなのだろう。今まで一緒にいたのに突然離れて別のユニットにいくというのは、許せない。いや、急なことでうまく考えがいきつかないのかもしれない。

 武内は卯月と未央の今後を特に案じていた。美波はソロという選択肢があるが、二人はどうすべきだろうかと未だに頭を悩ませていたからだ。二人でユニットという選択肢はまずなく、今は別々に活動させるのがよいのではと考えていた。二人にもそれぞれ新しい道を切り開いてほしいと案を練っている。

 考えるべきことは多いが、まずは報告だ。武内はすぐに切り替えた。

 

「とりあえずですが、今は待機していてください。ユニットとしての仕事は今回の件を考慮して最小限にしていたので、残りの仕事を消化してから合流になると思います」

「うん、わかった」

「ダー。わかりました」

「それでは、これで一旦解散ということで。私はいまから美城常務に報告に行ってきます」

 

 どんなことを言われるかわからないが、とりあえず身だしなみは整えていこう。

 武内はネクタイをきゅっと絞めた。

 

 

 それから少し経ち。

 美城常務が立ち上げた新プロジェクトは「Project Krone」となり、ソロユニットがアナスタシア、速水奏。二人組ユニットが鷺沢文香、橘ありす。三人組ユニットが神谷奈緒、渋谷凜、北条加蓮。大槻唯、塩見周子、宮本フレデリカの構成となった。

 また、神谷奈緒、渋谷凜、北条加蓮のユニット名だけはすでに決まっていたらしく、「トライアドプリムス」と命名された。

 そして、プロジェクトクローネに用意されたアイドルルームでは、今日初めてメンバーが全員揃うことになった。

 

「本日よりクローネに合流することになったアナスタシアと渋谷凜だ。アナスタシア……アーニャは奏同様ソロ。凛は奈緒と加蓮のユニットで活動となる。一応二人のが先輩だ。困ったことがあれば相談するといいだろう」

「Очень приятно。はじめまして、アナスタシアです。気軽にアーニャと呼んでください」

「渋谷凜。その、今日からよろしく」

「お~! いかにもロシアって感じ! フレデリカさんと一緒だね! ま、私はフランス語喋れないけど!」

「慢心、環境の違い。一体どこで差がついたのやら」

「ふふっ。アーニャ、よろしくね」

「おぉぉ! 凛、来てくれたんだな!」

「改めてよろしく、凛」

「いやー、賑やかになったね! ね、ありすちゃん」

「橘です。文香さんは……」

「……」

「ありゃりゃ、本に夢中だね」

「文香さん……」

 

 普段から騒がしかったのが、また一段と騒がしくなったとプロデューサーは呆れながら感じていた。彼は一人だけ自分の世界に入り込んでいる文香の意識を戻すために本を取り上げた。

 本が取られてようやく我に返った文香は「か、返してください」と声を震わせながら訴えるが、プロデューサーは無視して話を進めた。

 

「さて。メンバーが全員揃ったことで、ようやくプロジェクトクローネが本格的に始動だ。喜ばしいことだなというわけで、早速レッスンの時間だ。さっさと移動開始! 今日からもっと真面目にやってらもうからな」

「うへー」

「ま、いつも通りにやりますかなー」

 

 プロデューサーの言葉を軽く受け流しながらアイドルルームを出て行くアイドル達。そんな中、最後までなぜか残っている文香。彼女は立ち上がることすらせず、ただ座りながら一言。

 

「本、返してください」

「レッスンが終わったらな」

「そ、そんな……」

 

 返してくれるまで動かないと抵抗する文香であったが「抱きかかえて運んでもいいんだぞ?」と言われ、ようやく動き出すのであった。

 

 

 

 






 ミリシタのイベントとかその他もろもろやっていたせいで遅れました。ま、報酬欲しいし多少はね?
 それはそれとして、アニメで美城常務が登場しからの内容は若干弄っています。間違ってなければ15話から20話のいくつかの展開を混ぜています。
 そのため、文字数にもよりますがあと2話か3話でデレマス編を終わらせる気でいます。
 できるだけ1万文字を目指していますが、今回でこれだからなあ……。








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