インフィニット・ストラトス ~グレモリーの白騎士~ 作:ELS@花園メルン
久しぶりに家で過ごした次の日に、俺と朱乃さんは合宿所へ戻った。
昨日のことが俺にはまだ整理ができていないけど、朱乃さんがいつも通りにしていたことから俺もなるべくいつものように振舞っていた。
今日の訓練は事前の会議で決めたタッグパートナーとの連携向上の訓練だ。
俺の相手は小猫なので、二人で組手や戦闘時の立ち回りを決めていた。
「まあ当然ちゃ当然だけど、小猫が前衛でいいか?」
「うん。
それで聞くけど、一夏君が悩んでるのって朱乃さんのことでしょ?」
いきなり、小猫は俺にそう聞いてきた。
見抜かれていたってことか...
「分かってたのか...。
凄いな、小猫って」
「これでも一夏君の彼女だし。
それで、一夏君はどうしたいの?」
「俺は...」
俺はどうしたいのだろう...?
小猫と別れ朱乃さんの気持ちに答える?NO
朱乃さんの気持ちに答えずこのまま何事も無かったように過ごす?NO
...誰も悲しまない様な結果を望む?YES
きっと、それを選べたら一番いいんだろう。
誰も悲しませない結果ということは、俺に対するそういった感情を持っている人全員の期待に答えるという事だ。
この結果は悪魔社会においては別段、問題視されない事だろう。現にライザーだってハーレムを築き上げているようなものだ。
けど、人間界ではその考えは異端だ。強いていえば俺の住む日本では一夫一妻が当然のことだ。
一誠先輩は悪魔社会に則ってハーレムを創ると宣言していたが、人間界でそんなことを行えば糾弾されるだろう。
俺が朱乃さんの気持ちに答え、小猫と朱乃さんの二人を纏めて愛するというのであれば、人間界でそう大っぴらと交流することは出来ないだろう。
「一夏君は誰も悲しまないようにする方法を考えてるんだよね?」
「!凄いな、小猫は。
お見通しって訳か俺の考えてる事なんて。
確かにそう考えてたよ...。でも、それって凄く最低な行為じゃないかって思うんだ。
第一、小猫は嫌じゃないのか?」
「...多分、少しは嫉妬すると思う。
でも、眷属の仲が悪くなるのも嫌。
だけど、一夏君は仮に二人と付き合ったとしても、大事にしてくれるよね?」
「それは、もちろん大事にするよ。
男の甲斐性でもあると思うし、何より付き合うと決めたのにほったらかしにする方が俺は誑しよりも悪いと思う」
「じゃあ、私からお願い。
一夏君が後悔しない道を選んでほしい」
小猫のお願い。
それは今の俺の悩みを解決する一番の方法を選んでくれと言ってるんだろう。
なら、俺はその道を選ぼうと思う。
「……わかった、小猫、ありがとう」
「ううん、じゃあ、朱乃さんに伝えないとね」
「そうだな。
まあ、今は訓練を再開しよう」
と、言うことで小猫との特訓を再開した。
俺は木刀、小猫はテーピングを巻いた拳で一対一の模擬戦を行った。
小猫は戦車の駒。
駒の恩恵によって繰り出される拳は並みの悪魔だったら普通にノックアウトするレベルだろう。
それを神器を扱っているときの要領で魔力放出を行い、木刀の耐久力を上げていなしていく。
更に、小猫は小柄な分身軽に動けるので、そこから繰り出される蹴りにも注意しないといけない。
普通に蹴っても大木を蹴り倒せるレべ―――ッッ!!
俺はそう小猫の技を分析していたら蹴りを防ぎきれず、横に蹴り飛ばされてしまった。
痛い……。
「一夏君、小さいって思ったでしょ…」
「違うって、そういう意味で思ったんじゃないから!」
「まあ、いいや。
それより、再開しよ」
その後も訓練は続き、俺は小猫の鋭い拳や蹴りを避けながら、木刀で攻撃を当てる。
というのを続け、夜、ご飯を食べ座学までの空き時間に俺は小猫と共に、朱乃さんを呼びだした。
「それで、お話というのは一体なんでしょうか?
と、聞くのは野暮、でしたわね」
「朱乃さん、昨日の話の事でお呼びしました。
二人に聞いて欲しい。俺がする選択は本来なら酷い選択なのかもしれない。
だけど、誰かを選んで誰かを傷つける、というのは嫌なんだ。
だから、俺は二人さえ良いのであれば、二人ともと付き合いたいと思う。
何を言ってるんだと罵ってくれても構わない。
けど、俺が選んだ答えはこれなんだ」
すると、二人は俺の手を取った。
「一夏君の選んだ答えが一夏君にとって正しいって思えるのなら私も賛成するよ。
それに、一夏君は複数人いても私のことを大切にしてくれるって言ったもんね」
「ありがとうございますわ、一夏君。
元より、二番目でも構わないと言っていたのに、きちんと答えてくれたこと自体が私にとっては幸せですわ」
こうして、俺は小猫、朱乃さんの二人ともと付き合うことになったのだが、朱乃さんのことはまだ皆には内緒にしておこうと思う。
けれど、朱乃さんのスキンシップが前よりも積極的だから、そのうちバレそうな気もするが…。
俺たちはその後も順調に訓練を重ね、最終日に一誠先輩の実力を測るために神器を使って、祐斗と模擬戦を行ってもらった。
「行くぜ、木場!」
「いいよ、一誠君!」
「それでは、はじめ!!」
俺が審判を行い、試合を開始した。
今回、一応、祐斗の剣を一本、一誠先輩に貸し出している。
≪Boost!≫
「じゃあ、行くぜ!
これが俺の新しい力!【ブーステッド・ギア・ギフト】だ!!」
≪Transfer!≫
籠手から緑色のオーラが剣へと伝わっていっている。
「へぇ、面白いね。
それじゃあ、見せてもらおうかな!」
祐斗が攪乱のために素早く動き回る。
一誠先輩は剣をどっしりと構え、
「行くぜ、え~と、ドラゴ~ンスラッシュゥゥゥ!!」
剣を大きく横振りすると、籠手から剣へ伝わったオーラが一気に放出され、斬撃となり周囲を切り裂いた。
斬撃により、辺りの木は切れてしまい、周りを一気に伐採したようになっている。
「凄いな…。
大方、倍加した力を剣に譲渡したってところか?」
「でも、祐斗に当たらなければ意味はないわ」
と、部長がコメントしたすぐ後に、祐斗が一誠先輩の首筋に魔剣を添えた。
「は、早すぎですぅ!」
「祐斗君も速度が上がってますわね」
「けど、一誠先輩の力もかなり上がっています」
眷属全体の力も上げることができ、更に一誠先輩の強化が充分な成果を得られたので、今回の合宿は成功だろう。
俺たちはレーティング・ゲームに向けて、学校へ戻った。
そういえば、SAOの小説も書きたくなってきたんですよね…。
一応、武器を短剣にってしてるんですけども、活動報告でアンケートしようかな・・・