インフィニット・ストラトス ~グレモリーの白騎士~ 作:ELS@花園メルン
ゴールデンウィークが始まり、俺たちグレモリー眷属は早朝から山登りをしていた。
理由はもちろん、レーティングゲームに向けた合宿である。
部長の持つ人間界の別荘の一つがこの山の中にあり、そこでゴールデンウィークが終わるまで訓練に没頭する、という計画だ。
で、その目的の一つに兵藤先輩を戦えるようにするまでの育成があった。
その為、山の入口からかなり離れた別荘まで徒歩で移動する際、兵藤先輩は巨大なリュックを背負っていた。
あの中には自分の荷物と部長、朱乃さん、アルジェント先輩の荷物が入っており、それと合宿中の食料も入っていた。
「...ヒィ...ヒィ......、ま、まだ着かないんですか?」
リュックの重さに挫けそうな兵藤先輩が部長にそう訊ねた。
「あと、20分ほどよ。
やっぱり、少し前まで人間ということもあって上手く力を使えてないようね」
「い、一誠さん!やっぱり私も持ちます!」
「い、いや、アーシアには持たせられないって...。
てか、木場!お前はなんで持ってないんだよ!?」
「僕かい?僕は荷物は魔術で収納してるんだよ。
頑張ってね、一誠君」
「じゃ、じゃあ、織斑は...!?」
「当然、俺だって持ってますよ。
自分のと小猫の二人分を」
量的には兵藤先輩の方が多いけれど、重さは大体近いんだよなぁ。
小猫の荷物の中には着替えは勿論だけど、菓子類も結構な量入ってるし。
その後は兵藤先輩は部長やアルジェント先輩に励まされながらなんとか別荘にたどり着くことができていた。
「それじゃあ、早速特訓に入りましょう。
イチカ、祐斗、二人が最初にイッセーの訓練をしてあげて」
「「分かりました」」
俺たち男子勢は更衣室に向かい、動ける格好に着替え始めた。
俺はジャージの下に慣らし運転するつもりでISスーツを着ていた。
「お前らって実は結構鍛えてたんだな。
ただのイケメンかと思ってたが意外と侮れん...」
「先輩もいずれ慣れますよ」
「うん、そうだよ。
なんなら僕らと一緒にずっと訓練するかい?」
「それだけは絶対ゴメンだね!!
俺は部長や朱乃さんたちと楽しく訓練するんだい!」
と、兵藤先輩は拒否し、なんか変な顔をしていた。
あ、これだけは言っておかないと...
「あ、兵藤先輩ひとついいですか?
訓練するっていうのは構わないんですけど、もし小猫に対してふしだらなことをしたら――――どうなるか分かってますね?」
「ヒ、ヒィ!?了解であります!!」
と、クギを刺しておいたが小猫に触れようなんて考えてたら多分、壁にめり込まされてるんだろうなぁ...。
俺たちは森の中に入り、訓練を開始した。
「じゃあまずは一誠君にはこれを使って僕たちと打ち合ってもらおうかな」
そう言って祐斗は刃を潰した魔剣を創造し、兵藤先輩と俺に渡してきた。
「僕たちとは武器を使っての戦いに慣れるように訓練してもらうよ。
君は恐らく無手が基本だろうけど、自分が剣を使うことで剣を持つ相手と戦う時の想像がしやすいだろうからね」
「おう、分かったぜ!」
「それと俺と祐斗。
それぞれを一度相手して1セットということにします。
セットを重ねるごとに神器の倍加を一段階ずつ解放していって下さい。
そうすることで俺たちの訓練にもなりますし、神器を扱う訓練にもなりますから」
「おっしゃ!任せろ!!じゃあ、先ずは木場からか?」
「そうだね。
じゃあ、一夏、合図を頼むよ?」
「おう」
で、俺が合図をした後に祐斗と兵藤先輩が模擬戦を開始したが、日頃から剣を扱っている祐斗と剣を握って間もない兵藤先輩ではそう長く勝負が続くはずも無く、結果は祐斗の圧勝だった。
「は、早すぎて、分からなかったぜ…」
「じゃあ、次は一夏とやってもらうよ」
「お願いします、先輩」
「あ、て、手加減とかは…?」
「先輩の為の特訓ですよ?
そんなことするとでも?」
「ですよね~!!」
ひとまず、俺は騎士の駒を活かした機動力で先輩の眼から逃れるように動き回った。
「み、見えねぇぇ!!」
「眼だけで捕らえちゃいけませんよ、先輩。
視野を広くして周りの色々な情報を取り入れるんです」
「音、においなんかだって一夏の動きによって微妙に変化するんだ。
だから、深く集中するんだ、一誠君」
と、俺と祐斗はアドバイスをした。
「集中…集中……!!そこだぁ!!」
と、兵藤先輩が剣を振るうが、
「違います」
そう言って俺は兵藤先輩の後頭部に軽く剣を振り下ろした。
「ごはっ!!」
兵藤先輩が地べたに這いつくばった。
「全然違うとこ振ってましたね」
「集中できてないよ一誠君」
「くそっ、もう一度だ!!」
兵藤先輩は赤龍帝の籠手を発動し、訓練を再開した。