インフィニット・ストラトス ~グレモリーの白騎士~   作:ELS@花園メルン

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23 黒猫の涙

俺は黒歌の前に立ち、カオスブリゲードの奴らからかばうように構える。

 

 

「リアス・グレモリーだと?偽りの魔王の血族の僕か!

構わん!こいつごと攻撃しろ!!」

 

「君・・・」

 

「あんたには聞きたいことがある。

だから、協力してこの場を乗り切るぞ!」

 

「にゃん、OKよ!」

 

「はぁぁぁ!!」

 

 

俺はエクスカリバー・イマージュで敵を切り裂いていく。

風王結界により剣が見えずにカオスブリゲードの奴らは混乱していた。

 

 

「何だ!?あの剣!?」 「刀身が見えん!不用意に近づくな!!」

 

 

と、剣の範囲から離れる。

そして、遠距離からの魔法を使って攻撃してくる。

 

 

「それなら私の出番にゃ!」

 

 

黒歌が俺の後ろから飛び出し、

魔力と何かの力を混ぜたものを敵に放つ。

 

 

「さぁ!仙術と魔力のミックスのお味はいかがかにゃ!」

 

 

敵は苦しみだし、ばたばたと倒れていった。

なんで、あんなに苦しんでるんだ?

 

 

「なんでって顔してるわね。

仙術は相手の体内に流し込むとその力の流れを狂わせることができるのよ。

今、あいつらは体内の魔力が異常をきたしてる筈よ。

これで、止めね!!」

 

 

黒歌は動けなくなっている敵の足元に魔法陣を展開させた。

あれって、転移の術式か?

 

 

「次元の狭間に飛ばすわ。

運が良ければ生きて出られるはずにゃ。

真龍に喰われないように気を付けなさい」

 

「ま、待て―――」

 

 

何か言おうとしていた悪魔も転移させられ、周囲にカオスブリゲードの連中はいなくなっていた。

 

 

「次は、この結界を解くにゃ。っと、その前に、助けてくれてありがとね、騎士ちゃん」

 

「騎士ちゃんて…。俺は織斑 一夏。あんたは、黒歌でいいんだよな?」

 

「そうよ。冥界では主殺しのSS級はぐれ悪魔って呼ばれてるけどね」

 

「その話、詳しく聞いてもいいか?」

 

「ぷっ、あはは、あんた面白いにゃ。今までの奴は話を聞こうともしなかったのに。

いいわ、話してあげる。

 

私は猫又の上位種なんだけど、その力を狙って元主の貴族悪魔がやって来たの。

数の暴力には流石の私でも無理だし、何より妹が一緒にいたから、私は妹に手を出さないってのを条件にその悪魔の眷属になったわ。

でも、ある時を境に私の力が急激に伸び始めて、元主は私の妹である白音にまで眷属になれ、と強要しようとしてた。私は妹をアイツから守るために殺し、逃亡したわ。

冥界では一方的に私が悪者扱いされて、今ではSS級のはぐれ悪魔よ。

妹の白音は魔王ルシファーに保護されたって話を聞いてるわ。

 

これが事の顛末よ」

 

 

何だよ、それ!?黒歌はただ、家族を守ろうとしただけじゃないか!

その仕打ちがこれなのかよ!?

待て、一旦、落ち着け。

 

 

「それで、黒歌はこれからどうするんだ?」

 

「また逃亡生活を続けるわ。逃げるときに妹を傷つけてしまったからね。本当のことを話すまでは死ねないもの」

 

「黒歌の妹、白音…だっけ?ルシファーに保護された後の話は何か無いのか?」

 

「使い魔で探らせた情報だと、グレモリー家で引き取られたって……あ!?あんた、リアス・グレモリーの眷属なのよね!?だったら、知ってるんじゃないの!?」

 

 

黒歌は俺の肩を掴み揺さぶってくる。

やっぱりか!?俺が初めてグレモリー家に行った時に小猫の話を聞いたときと今の話はどこか似かよっている!

て、ことは黒歌の妹って!

俺は黒歌を引放し携帯を開き、画像フォルダを開く。

 

 

「お前の妹ってもしかして、この子のことじゃないか!?」

 

 

その中にあった画像で一番上にあったものを黒歌に見せた。

 

 

「そう!この子にゃ!……でも、何で、あんたと一緒に寝てるのよ?」

 

 

黒歌に見せたのはさっき朱乃さんに送られてきた、昼間の俺と小猫の寝顔写真だった。

 

 

「ついさっきからだけど、俺と小猫ってその、付き合ってるんだ」

 

「な!?恋仲?しかも、さっき?てか、白音がこの町にいるなんて…」

 

 

おおう、黒歌が明らかに取り乱してるよ……。

 

 

「はぁ、白音にまさか先を越されちゃうなんてね。

とりあえず、ありがとう、一夏。妹の元気な姿を見れて良かったにゃ」

 

 

…このままでいいのか?このまま黒歌を行かせてしまっても?

次に会えるのがいつか何て分からないし、それこそ、追っ手に捕まったら生きて会えるかどうかも分からない。

……あ、そうだ!

 

 

「悪い、黒歌。少し待っててくれ!」

 

 

俺は携帯であるところへ電話する。

 

少ししてから、

 

 

「黒歌、俺と付いてきてくれ。これ以上、逃げないで済むようにできるかもしれない」

 

「え?あ、ちょっと!?」

 

 

問答無用で黒歌の手をとり、転位魔法を使う。

 

 

 

 

転位した先は、以前、サーゼクス様と共に訪れたアザゼル総督の人間界での家である。

 

 

「いきなり連れてきて…。どこなのよ、ここ」

 

「堕天使総督の隠れ家だよ」

 

「堕天使!?あんた悪魔でしょ!?何で堕天使のところに!?」

 

「お~、一夏。電話もらったから、準備はできてるぜ」

 

 

と、ローブ姿のアザゼル総督が部屋の奥からやって来た。

 

 

「お?お前さんがはぐれ悪魔の黒歌だな?お~、いい乳じゃねぇか」

 

「…一夏、どういうつもり?セクハラのために連れてきたのかしら?」

 

「いや、それについては本当に悪い。総督、あなた会ってそうそうにセクハラってどうなんです?人として」

 

 

俺と黒歌は冷めた目でアザゼルを睨む。

 

 

「なんだよ?いいだろ?俺は堕天使だし、それに俺が堕天したのはエロいこと考えてたからだ。

お前さんもいずれ分かるようになるぞ~」

 

「分かりたくないです。

それより、黒歌の保護の件OK何ですか?」

 

「へ?」

 

「おー、それに関しては今しがたサーゼクスに了解を得たところだ。

はぐれ悪魔の烙印を完全に消すには暫く時間がかかるから、それまではウチで引き取ることになっている」

 

「ちょ、ちょっと待つにゃ!?私を保護ってどういうこと!?」

 

「だから、黒歌。お前さんのはぐれ悪魔の烙印はサーゼクスが消すために動いているから、それまではウチでいろってことだ」

 

 

アザゼル総督が掻い摘んで説明する。

 

 

「黒歌、これでもう逃げなくていいんだ。これからは普通に生活できるぞ」

 

「嘘…?本当に?夢なんかじゃ無いわよね?」

 

「嘘じゃないって、何なら頬でもつねってみるか?」

 

 

俺は黒歌の両頬をつまみ、グニグニする。

 

 

「どうだ?」

 

「痛い…。夢じゃない…。これで、本当に白音に会えるの?」

 

「まだ、先だけどな──おっと」

 

「うにゃあー!ありがとう、一夏~!!」

 

 

黒歌が抱きついてきて、泣き出した。

俺は黒歌の背中を擦ってやる。

 

 

 

「今まで、頑張ったな、黒歌」


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