艦これ〜鴛鴦のコンツェルト〜 作:自由主義国家カメルーン
はい、またも1ヶ月以上、間が空いた投稿です。
ぶっちゃけ書いててオチが一切見えてきません。ていうか毎回悪ノリだけで書いてるといっても過言ではないでしょう。今回も今回とてメタネタは当然のようにぶっ込みましたから。
批評などお待ちしてます。
陽だまりの中でぼんやりと帆立が縁側に佇む。隣にちょこんと叢雲が腰を下ろした。
「何を考えてるの?」
「んー? まあ、ちょっと昔のことをな」
「話してよ」
「いいぞ。ってもお前もいた時のことだから完全に思い出話だけどな」
「なら最近のことかしら?」
まあなー、と気の抜けた返事が帆立から返る。板張りの廊下についていた帆立の右手を叢雲の左手が包み込む。
「ほら、あの時のだよ。吹雪に会いに行ったやつ」
「ああ。あれね」
懐かしむように叢雲が目を細める。そうはいっても割かし最近の出来事ではあるのだが。
ふたりが思い返す。そう、あれは帆立が叢雲にプロポーズした数日後のこと……
「ね、ねえ。本当に行くつもり?」
「まあ、なんだ。挨拶はしといた方がいいかと思ってな。親と呼べるものがお前にいないんだから、そうなると相手はひとりしかいなくね?」
「そうだけど……」
そんなわけでふたりは現在進行形でとあるカフェへと向かっていた。中に入り、予約していることを告げると用意されている個室へと案内される。
その個室には既に先客がいた。落ち着かない様子でそわそわとしている少女。
「わざわざ忙しい中で呼び出したりして悪かったな」
「い、いえ! 私は大丈夫ですから」
全身を使って大丈夫だということをアピールする少女。
彼女が吹雪型駆逐艦の一番艦、吹雪だ。
「あ、叢雲ちゃん。久しぶり」
「ええ。相変わらず元気そうね」
吹雪は叢雲を見つけて少しほっとした。何のために呼び出されたのか聞かされておらず、しかも異性とふたりきりというシチュエーションは緊張するものだ。
「ま、まあ好きなもの頼んでくれ。ここのケーキは結構いけるぞ」
「えっ、じゃあイチゴのショートケーキで」
「じゃあ私はガトーショコラ」
「なら俺はミルフィーユだ。飲み物は……吹雪、紅茶で大丈夫か?」
「あっ、はい。それでお願いします」
「じゃあダージリンをポットで頼めばいいか」
手早く注文すると、すぐに店員がケーキとポットを個室に運び込んで、丁寧に一礼すると下がっていく。
吹雪がフォークを手に取り、ショートケーキにストンと刺して分けるとぱくりと頬張った。
「甘酸っぱくておいしいです!」
「そ、そいつはよかった」
帆立がさくさくとしたパイ生地を掬いあげる。なめらかでブランデーの香りがするカスタードクリームは絶品なのだが、まったく味がしない気がする。
隣の叢雲をちらりと見る。黙々とガトーショコラを食べているだけのように見えるが、いつもより減りが遅い。
そこではたと気づいた。ちらりちらりと叢雲がアイコンタクトを送ってきていることに。
《早くしなさいよ》
《じゃあお前が言えよ》
《あんたがやるって言ったんじゃない》
《ちょっとくらい口添えしてくれてもよくね?》
《要件を切り出させることを口添えとは言わないわよ》
「あのー、私はなんで呼ばれたんでしょうか……」
呼びつけておいて、いきなり目線だけで会話を始めたふたりに吹雪が困惑する。というか目の前でイチャコラしてんじゃねえ。ぶん殴るぞ。
「なんかダーク吹雪さん出てたような……」
「地の文を読まないでください」
「このメタいノリ、いい加減に何とかならないの……?」
なりません。趣味です。文句があるならカスタマーサポートセンターまで。フリーダイヤル嫁の叢雲がかわいい。今すぐお電話を。
「気を取り直して、私が呼ばれた理由は何なんですか?」
「あー、やっぱりそこに戻るよね。原点回帰しちゃうよね」
「帰っていいですか?」
「すいません調子に乗りました勘弁してください」
「最初からやらなきゃいいのに……」
呆れた様子で叢雲がため息をつきながら紅茶を飲んだ。
「あー、それでだな。まあ何で軍務で忙しいであろう吹雪を呼んだかというとだな」
「はい」
「先日、叢雲にプロポーズしまして」
「は……えっ?」
「なんかまあ、OKされまして」
「えっ……えっ?」
「吹雪型の長女であるところの吹雪さんに挨拶くらいはしとこうかと思い、話の席を設けさせていただいた次第です、はい」
「…………………………えっ?」
吹雪が叢雲を見つめる。ふい、と目を逸らした叢雲はポーカーフェイスを気取っているが、その頬は紅潮していた。耳に至っては真っ赤だ。
「……マジなんですね」
「マジなんです。ありきたりではあるけどもまあ、言うべきことがあるかと思いまして」
お冷で唇を湿らせる。覚悟は決まった。あとはその口を開くだけだ。
「妹さんを俺にください」
テーブルにぶつかるくらいまで頭を下げた。吹雪がぽかんと思考停止した頭でそれを見続ける。
プロポーズ。それはつまりケッコンということ。待って、ケッコンってなんだっけ? 血の痕跡のこと? つまり流血沙汰が起きたということですねそうですよね? わあー、後処理が大変ー。
「って違う! そうじゃない戻れ私!」
机に吹雪が額を打ち付ける。帆立と叢雲が驚いてびくっと震えるがそんなものは関係ない。
「えーっと、つまり血の跡……じゃなかった結婚ってことですよね?」
「まあ、そういう、ことになる、な?」
「歯切れ悪すぎですよ……でもとりあえず事態は飲み込めました」
吹雪がティーカップに手を伸ばす。口を付けかけて、空になっている事に気づき、苦笑いを浮かべながらポットから紅茶を注いだ。
「ちょっと……いえ、かなり素直じゃない妹ですけど、よろしくお願いします。幸せにしてあげてください」
だんだんと陽が落ちてきた縁側でふたりともがぼんやりと夕日を眺めてたそがれている。思い返せばついこの間の出来事だったような気もするし、大昔の話だったようにも感じる。
「そういや後から聞いた話だが吹雪はお前がいちばん結婚できないと思ってたらしいぞ」
「予想が外れて吹雪型でいちばん最初になっちゃったわね」
「ちなみに問題の吹雪はというと、軍で独身ライフを邁進してるらしい」
「まあ出会いの場が多いわけではないから仕方ないんじゃない?」
「最近は口癖が『結婚したい……』になってきてるそうだ」
「…………もうそこまでくるといっそ哀れさすら覚えるわ」
我らが姉君に心の中で合掌。いつか彼女に良き出会いがあらんことを。
「……そろそろ夕飯にするか」
「そうね」
立ち上がるとふたり揃ってキッチンへ。何を作ろうか頭を悩ませながら冷蔵庫を開けるのだった。
吹雪「妹に負ける姉って価値あるの……」
がんばれ吹雪ちゃん! 諦めるな吹雪ちゃん! きっとたぶんおそらくいい相手がいるはずだよ!