艦これ〜鴛鴦のコンツェルト〜   作:自由主義国家カメルーン

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またまた1ヶ月も間を開けた投稿です。なかなかネタって転がってないものですね。

批評とネタはいつでも募集中です。

ではいきましょー!


第4話 風邪っぴきの面倒見

 

急性上気道炎。

 

この単語を聞くと何事だと思われるかもしれない。だがこれは世間一般で言われるある言葉を難しく言っただけだ。ではその言葉とは何か。

 

そう、風邪である。

 

ちなみに風邪の語源は中国医学の風邪(ふうじゃ)によって引き起こされるなんたらかんたらでホニャララとのこと。(よく理解していない上にめんどくさくなった)

 

まー、長々と何が言いたいのかと言うとだ。

 

帆立は風邪をひいていた。

 

 

「あー、だるい……」

 

いつも寝ている寝室とは別の部屋で帆立は布団を被り、転がっていた。先ほど脇に挟んだ体温計は38C゜の表示を突き返してきたのだ。喉が痛み、鼻水がとめどなく流れ出る。誰がなんと言おうと風邪以外の何者でもなかった。

 

「くそ、不覚だ……まさか風邪とは」

 

「ま、あんたも人の子ってことよ。大人しく寝ときなさい」

 

叢雲が小さなお盆にスポーツドリンクと伏せたグラスを持って部屋に入る。水分をしっかり取る必要があるため、風邪の時にはスポーツドリンクがいいのだ。口の中が甘ったるくなるため別でお茶も用意してあるが。

 

「あー、悪いな」

 

「何をいまさら言ってるのよ。いいから休んでさっさと治しなさい」

 

「そうするよ」

 

「にしても珍しいわね。あんたが体調崩すなんて」

 

「熱と喉の痛みと鼻水が出ることを除けば健康体なんだ。別にそこまでヘタってるわけじゃねえ」

 

「健康体って……それだけ症状出てれば役満だと思うけど?」

 

「それは否定できねえなあ」

 

ゲホゲホとマスクの下で咳き込む。叢雲の言う通り、症状は揃いすぎているくらいに出揃っていた。

 

「食欲はあるの?」

 

「ああ。ほんとに症状だけ出てるって感じだ」

 

「そ。じゃ、なんか作るから寝ときなさい」

 

叢雲は台所に立つとエプロンを身にまとい、しっかりと手を洗う。

ミルクパンぐらいの大きさの鍋に出汁を注ぎ、解凍した米を入れてくつくつと煮込み始める。

本当ならばお粥は生米から作るのだが、手早く作るなら既に炊けた米を使って作る方が楽だ。そして味のクオリティもさして変わらないのである。

煮込んでいる間に菜箸で卵を溶き、薬味ネギを小口切りに。そして程よく米が出汁を吸って柔らかくなってきたところに溶いた卵を菜箸で円を描くようにして流し入れる。まんべんなく卵を絡ませるように混ぜて塩と少しの醤油で味を整え、ネギを散らせばお手軽なお粥の完成だ。

梅干しの種を取り除き、包丁で叩いてペースト状にして適当な小皿に乗せ、出来たてで湯気をあげるお粥をお玉で掬い、茶碗によそった。

 

エプロンを脱いでもう一度、帆立の寝ている部屋に向かう。

 

「暇だ……立ち上がる元気があるってのが余計にタチ悪い」

 

「風邪人は大人しくしとくものよ。はい、お粥」

 

「何から何まで悪いな」

 

「だからいまさらよ。こっちはあんたの秘書艦としてどれだけ苦労させられたことやら……」

 

「……ほんとにすまん」

 

叢雲は頬を掻いた。こんなに素直に謝られると調子が狂う。適当に言い返すなり、ちょっとした憎まれ口を叩くなりしてくれればいいのだが、やはり風邪の影響か多少なりと弱気になっているのかもしれない。

 

「とりあえず冷める前に食べなさいよ」

 

「そうだな。いただくよ」

 

レンゲにお粥をすくうと一口。帆立の口の中に卵のふわりとした食感と出汁の香りがやわらかに広がる。

 

「うん、美味い」

 

「ふふ、当たり前じゃない」

 

ついでに持ってきた自分用の茶碗から叢雲もお粥をすくってぱくり。我ながらいい出来だ。飽きが来たらお手製の練り梅を少し投入してやるとまた味が変わって楽しめるのがいい。

 

 

「うまかったよ、ごちそうさま」

 

「お粗末さま。ほら、食べたらさっさと寝る」

 

「お前は俺の保護者かよ……」

 

「配偶者ではあるわよ。くだらないこと言う余裕があるならすぐに治るんじゃない?」

 

「……そんなにお前って口うまかったっけ?」

 

「あんたに鍛えられたのよ」

 

さんざん人を口八丁でからかったくせにどの口が、と叢雲は内心で付け加えた。

 

食べ終わった食器をお盆に回収すると帆立の方に向かって身を乗り出す。

 

「ん……熱の方は少しは下がったみたいね」

 

右手を床につき、左手で前髪をかきあげて帆立の額にトン、とあてた。まだ熱っぽさは残っているが、今朝よりマシになったような気がする。

 

「まあ、まだ顔が赤いってことは熱が下がりきったわけではないんだし寝なさい」

 

起き上がっていた帆立の体を押して布団に寝かせた。軽く押しただけで横になったあたりは、やはり弱っている証拠なのかもしれない。

 

「じゃ、私は食器あらってくるから」

 

かけ布団を被らせるとお盆を持ち上げて台所へ戻る。水につけてあった鍋とお玉も手早く洗い、乾燥棚に伏せるようにして置いた。

 

「そういえば薬のませないと」

 

常備薬として家においてある漢方薬と水が多めに注がれたグラスを持って帆立の寝ている部屋へ。

 

「あんた、薬を……って寝てるのね」

 

帆立は目を閉じて静かに寝息をたてていた。風邪は寝て治せ、と言うくらいだ。これなら早く治るかもしれないと漠然と思った。

 

「薬を飲ませたいけど……起きてから飲ませる方がよさそうね。無理に起こすわけにもいかないし」

 

グラスと薬を枕元に置くと布団から飛び出ていた帆立の手を叢雲は包み込むように優しく握った。

 

「早くよくなりなさいよ」

 

そうして空いているもう片方の手でその短い黒髪をくしゃりと撫でた。





叢雲に看病して欲しいだけの人生だった(迫真)

髪をかきあげる仕草とかおでこにピタッて当ててくるのとか萌えるよね! 萌えるし燃えるよね! 

ところで帆立さん、あなたの顔が赤かったのって本当に熱のせいだけなんですかねぇ?

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