艦これ〜鴛鴦のコンツェルト〜 作:自由主義国家カメルーン
正直一ヶ月以上あげられないとおもってましたよ、ええはい。
批評やネタ提供、お待ちしてます。
それでは本編参りましょう。
「晩酌、ねえ」
「ああ。たまにはいいだろ? 昔はそんな暇なかったしな」
風呂上りの浴衣姿で帆立は日本酒の瓶を振りながら叢雲を誘った。この酒は昔馴染みに貰ったものだ。せっかくだからと思い、晩御飯の後に叢雲を誘ってみたのだ。
「ふーん。ま、いいわよ。つきあってあげるわ」
「恐悦至極でごぜえますよっと」
縁側に座ると、マダイの刺身が盛られた皿と焼いたしいたけの乗った皿をおぼんの上に乗せて隣に置いた。それを挟むようにして叢雲も浴衣にシワが寄らないに気を使いながら座った。
わざわざ瓶から移した徳利を持ち上げる。
「ほれ、猪口だせ」
「ん」
叢雲の差し出す猪口に帆立が澄んだ酒を注ぐ。そのまま自分の猪口にも注ごうとして、その手を叢雲が掴んだ。
「あんただけにはやらせないわよ。ほら、徳利よこしなさい」
「ん、じゃあお願いするかな」
「任せなさい」
置いた徳利を叢雲が持ち上げ、帆立の掲げる猪口に注ぐ。
「とりあえず乾杯するか」
「いいけど、何に乾杯するのよ?」
「む……じゃあこの日々に乾杯」
「取ってつけた感じがすごいわね。はいはい、乾杯」
互いに猪口を軽く打ちつけあって小さく唱和。くいっと猪口を傾けると軽く喉を焼くようなアルコールの感覚と一緒に、胃に日本酒がすとんと落ちた。
「ぷはあっ……」
叢雲が猪口を干して息を吐く。どこか艶かしい吐息が帆立の鼓膜を揺らした。邪念を振り払うために箸でマダイの刺身を摘む。しっかりと身が締まり、適度に油の乗った白身は非常に美味だ。若干お値段が張っただけはある。
空になった猪口に徳利から酒を注ごうとすると、すでに満たされていた。いつの間にか叢雲が入れておいてくれたらしい。ちびちびと舐めるように呑みながら肉厚なしいたけを頬張った。
「うん、いけるな。素材がいいのか。そんなに手を加えなくても充分うまい」
「……ふふふっ」
隣から楽しそうな笑い声。特に何を話しているわけではないが、それでも満足だった。心地よい沈黙の合間にコロコロと虫の鳴き声が挟まる時間が緩やかに続く。
「あーんたっ」
「うん? ……待て、なんでもう瓶が半分以上空けてあるんだ? いくらなんでもペース早すぎだろ!」
帆立はまだ、そこまで量を呑んでいない。という事は叢雲一人でこの量を呑んだということだ。曲がりなりにも日本酒。度数は割とある。そんな酒をハイペースで水も飲まずに煽れば酔いがすぐに回るに決まっている。
「ねー、しょーいちー」
「なんだよ?」
「よんだだけー。んふふふー」
「うん、お前完全に酔ってるな」
昔は飲む量を次の日のことを考えてセーブしていたのだろうか。もう明日の執務などを考える必要がなくなった今、箍が外れて好きに飲んだ結果として、幼児退行するまで酔ってしまったらしい。
ぽやーっとした視線に上気して朱の入った頬。なんだか体か小さく揺れている気もする。
「ここらでやめとくか。ほら、片付けるぞ」
「やー。まだのむー」
駄々をこねながら叢雲が帆立にしなだれかかる。おぼんをひっくり返さないように急いで退散させていた帆立はされるがままにもたれかかられていた。
「お前酔うとこうなるのか……」
「にゃによ。いやなのー?」
すりすりと叢雲が帆立の腕に頬擦りをし、潤んだ瞳で見上げてきた。
なんだこのかわいい生き物。いや、俺の嫁なんだがな。俺の嫁なんだがな! 大事なことだから以下省略。続きはWebで。
「とりあえず水飲め、水。なっ?」
「んー、やー」
駄々をこねる叢雲。かわいい。
ってそうじゃない。どうするよこれ。なんとか水だけ飲ませて寝かせるべきなんだろうか。
「あんたものみなしゃいよー」
「俺はまだ大して量いってないからいいが、お前はもうやめとけよ?」
「いーやーだー」
「たった今、これ以上飲ませるべきじゃねえって確信したわ」
縁側をごろごろと転がり始めた叢雲の姿を見て、こいつは明日記憶が残ってるタイプかどうかなどという現実逃避じみた思考にシフトする。もし残ってたら…………うん。まあ、あれだ。なるようになるだろ。
「むぅ……えーいっ」
ぽすっとあぐらをかいていた帆立の足の間に叢雲が座り、背中を帆立の胸板に預ける。
「いきなりどうした?」
「んー? なんとなくー」
「なんとなくで座られてもなあ……」
「もしかして……いや?」
「いや、そういう問題じゃなくてだなあ……」
うるうると子犬のような目で見つめられては無理にどかすことなどできない。それに、だ。
「別にいやじゃないんだが……」
「そう! ならいいじゃない!」
普段は滅多に見せることのない太陽のような笑顔を浮かべると、鼻歌を口ずさみながらテンポにあわせてゆれ始めた。
そう、確かにいやじゃない。だが問題はそこにあらず。むしろこの上でゆれている状態にある。こう、ナニとは言わないナニかがぐりぐりと押されているのだ。
「煩悩退散煩悩退散……」
「にゃにブツブツいってるのよー?」
「なんでもありませんことよ」
いや、待てよ。冷静に考えれば何を躊躇ってるんだ? 別によくね? 初めてってわけでもないし。
いやでもやめとこう。酔った勢いでやると翌日死にたくなる気がする。
「おい、叢雲。そろそろ寝よう。叢雲?」
コテン、と叢雲の頭が胸に当たる。直後にスヤスヤと規則的な寝息が聞こえてきた。どうやら寝落ちしたらしい。まあ、あれだけ呑めば当然とも言えるだろう。
「よいしょっと……軽っ!」
首の後ろと膝の下に腕を差し込む、いわゆるお姫様だっこの状態で叢雲の体を持ち上げる。深い眠りに入ったのか、それでも目を覚まさない叢雲を夫婦共用の寝室へ運び、そっとベットに横たわらせる。
「ん……むにゅぅ…………」
よく意味のわからない寝言らしきものを言いながら大人しく叢雲はベットに転がってくれた。
「世話が焼けるぜ、まったく……ま、気を許してくれてるからこそ、こういう姿を見せてくれるのかもしれねえけどな」
青みのかかった銀髪をくしゃっと撫でながら呟く。その口元は柔らかな微笑みを湛えていた。
「さて、片付けだけやったら俺も寝るとするか」
まだ撫でていたい誘惑に駆られながらも立ち上がり、縁側に置きっぱなしになっていたおぼんを回収。台所へ運ぶと手早く片付けた。
そういえば水を飲ませるの忘れてたけどまあ大丈夫だよな。飲ませようにも、もう寝ちまったし。
片付けを終わらせて、寝室に入る。叢雲が寝息をたてる隣に滑り込むと、もう一度だけ叢雲の頭を撫でた。
「おやすみ」
そのまま帆立は微睡みに身を任せて、ゆっくりと眠りに落ちていった。
なお、翌日に叢雲の記憶があるかどうかはご想像にお任せします。
記憶が飛んでて一人悶々とする帆立。
記憶がモロに残ってて悶絶する叢雲。
どっちも見たいからあえて続きは書きませんでした。
だれか書いてくれてもいいのよ?
それでは!