遊戯王5D'sタッグフォース 満足の意志を継ぐ者   作:ゾネサー

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詰めデュエルの答え合わせ。多少順番が前後しても基本この1パターンしか答えはないはず。



この世に使えないカードなどあまりない

セキュリティの監視ルームへと侵入を試みるコナミであったが、詰めデュエルを前に頭を悩ませていた。すでに2回の問題を失敗しておりもう1回間違えばセキュリティが来てしまう。

 

「まずいな…ここで正解しないと遊星を助けるどころじゃなくなっちまう」

 

コナミはとりあえず深呼吸をして落ち着いた。そして再びデュエルの画面を見渡す。

 

「相手のライフが8000…どうしてもこれが削り切れそうにねえ。何か…自爆スイッチ以外で使えそうなのはねえか!」

 

手札を見るコナミ、すると2枚ある魔法カードに目がいく。

 

「モウヤンのカレー…ライフを200回復するカードか。遊星はどんなカードでも生まれてきた以上使い道があるっていうけど…こいつで何ができるんだ?待てよ…確かこのカード拾った時に遊星に見せたような…?」

 

コナミは目をつぶり、その時のことを必死に思い出していった。

 

「コナミ、カードを拾っているのか」

 

「ああ、俺のデッキを完成させるためにな」

 

「ナーブが愚痴を言っていたぞ、働けと」

 

「遊星だって最近はD—ホイールの調整で他のことに手が回ってないだろー」

 

「ふふ…そうだったな」

 

仲良く談笑する2人、そこにコナミが1枚のカードを取り出す。

 

「でも落ちてるカードだとさすがにこういうカードも拾っちまうなー」

 

「それは…モウヤンのカレーか。だが必ずそのカードにしか出来ない使い道があるはずさ」

 

「と言っても200の回復じゃさすがになー。もっと回復するカードあるんじゃないか?」

 

「あるさ。だけどそのカードは変わっていてな、1つ面白い事ができるんだ。あまりそういった使い方をする機会はないが他にはそうない特徴だ」

 

そう言い遊星はコナミに1つ豆知識を教えた。最も、教えた使い方は自分を不利にする使い方なため実戦で使う機会はないだろう…そう思われていた。この話を思い出したコナミは脳内にまばらに散らばっていたカードの内、2枚のカードが線で繋がるのを感じた。

 

「あったぜ遊星…この効果を使うときがな!俺はモウヤンのカレーを発動する!」

 

《その効果であなたはライフポイントを200回復しますか?》

 

電子的な声に問いかけられた質問、コナミが返す言葉は決まっていた。

 

「モウヤンのカレーは何も自分のライフを回復させるだけじゃない、対象が決まっていないから相手のライフも回復出来るんだ!俺が選ぶ対象はお前だ!」

 

コナミの返答を受け、デュエル画面に映っていた相手側の人物がカレーを平らげる。

 

相手 LP8000→8200

 

「これで俺とおまえのライフの差は8000!このカードを使えるぜ、ライフチェンジャー!このカードの効果でお互いのライフは3000になる!」

 

相手 LP8200→3000

 

コナミ LP200→3000

 

モウヤンのカレーとライフチェンジャーのコンボにより2人のライフが並ぶ、だが相手のライフはまだ3000残っている。

 

「俺の手札には攻撃力2000のジェネティック・ワーウルフがいる。だけどこいつを召喚してしまえばあいつが伏せてやがるトラップに引っ掛かっちまう」

 

手札にある残りの2体に視線を動かすコナミ、彼はどちらのモンスターを選ぶだろうか。

 

「単体でダメージを大きく与えられるのは…スピード・ウォリアーか、攻撃力を倍にして1800のダメージを与えられる。倍といえば…そうだ!巨大化もこっちの方がライフが少なければ装備モンスターの攻撃力を倍にできる!モウヤンのカレーをもう1枚相手に使って…スピード・ウォリアーで奈落の落とし穴をすり抜け、効果と巨大化で900の倍の倍…3600!これで…いけるか?」

 

この詰めデュエルの突破口を見出したコナミ。しかし、スピード・ウォリアーが遊星のカードであったことが幸いし、1つのことを思い出した。

 

「っ…!いやダメだ!スピード・ウォリアーは元々の攻撃力の倍の数値分の攻撃力になるんだ。巨大化は…こいつも攻撃力を元々の攻撃力の倍にする効果」

 

コナミは遊星がスピード・ウォリアーと相性のいい元々の攻撃力を変化させる『進化する人類』を見せてくれたことを思い出す。しかし巨大化は元々の攻撃力には干渉しない。

 

「つまりさっきのプランで行けば…結局は元々の攻撃力の倍で1800ダメージしか与えられねえ!スピード・ウォリアーでもダメなのか…!」

 

迂闊に突っ込んでいれば失敗していた事実にコナミは冷や汗を垂らす。しかしまだチャンスは残っている。

 

「残っているのは堕天使ナース・レフィキュル、攻撃力は1400だからあのトラップは躱せる。モウヤンで相手を回復させ、こいつに巨大化をつけて攻撃…ダメだ、ライフが400残っちまう」

 

あと1手が足りない、何が足りないのか必死に考えるコナミ。だが答えは単純だった。デュエルとはモンスターだけでも魔法だけでもトラップだけでも勝てはしないのだ、と。かつてジャックが言っていた言葉だ。コナミは自身が尊敬する2人のデュエリストの言葉を胸に、この問題を解くために必要な全てのカードを線で紡ぐ。

 

「…!そうか、助かったぜ2人とも。俺はもう1枚のモウヤンのカレーを発動する!」

 

《どちらを対象として使いますか?》

 

再び迫られる選択肢、だがコナミの目にもう迷いはない。

 

「今度は俺のライフを200回復する!」

 

今度はデュエル画面に映っているコナミの分身がカレーを平らげた。

 

コナミ LP3000→3200

 

「食べ終わったところ悪いが俺はこのカードを発動するぜ!トラップカードデステニー・デストロイを発動する!こいつの効果で俺はデッキに残っていた魔法カードを3枚墓地に送り、3000のダメージを受ける」

 

先ほど食したカレーがよほど辛かったのかコナミの分身は火を噴き出し、それが自身の体に燃え移り丸焦げになってしまう。

 

コナミ LP3200→200

 

そしてコナミのライフは詰めデュエルを始めた時の初期ライフに戻ってしまった。

 

「すげえダメージを食らったがこれでいける!俺は手札から堕天使ナースーレフィキュルを召喚するぜ!」

 

4本の翼を持つ堕天使がフィールドに舞い降りる。

 

「そして装備魔法巨大化をレフィキュルに装備だ!ライフは俺の方が下、よって攻撃力は倍だ!」

 

堕天使の紫色の髪が突然増毛し、元々鎌のような髪型をしていた前髪は大鎌のようになっていった。

 

堕天使ナースーレフィキュル 攻撃力1400→2800

 

「待ちかねたぜ…バトルだ!レフィキュルで攻撃、ダーク・シック・コール!」

 

堕天使が4枚の翼をはためかせ、相手に近づくと邪悪な笑いを上げながら巨大化した前髪で相手を斬る。満足したのか前髪の大きさは元に戻り、コナミの場に帰ってくる。

 

相手 LP3000→200

 

「さあ…最後の1押しだ!メインフェイズ2に入って、俺は手札のジェネティック・ワーウルフとスピード・ウォリアーを墓地に送って魔法石の採掘を発動!このカードの効果で墓地にある魔法カードを加える。俺が加えるのはデステニー・デストロイで墓地に送られた3枚のカード…ではなく!モウヤンのカレーをもう1度手札に戻す!」

 

コナミの手札に再びモウヤンのカレーが戻る。残る手札はこれのみ、行動は1つしかない。

 

「俺はモウヤンのカレーを発動!」

 

《対象はどちらにしますか?》

 

「俺はもうお腹がいっぱいでね!お前に食べてもらうぜ!」

 

デュエル画面に映っている相手の前に再びカレーが置かれる。

 

「ここでレフィキュルの効果発動!相手のライフポイントを回復する効果はこいつがフィールドにいる限りダメージを与える効果になる!アンチ・キュア!」

 

こっそりとカレーに近づいた堕天使はタバスコのようなものを気づかれないようにカレーに入れる。そのままカレーを食べてしまった相手はあまりの辛さに口から火を吐き、それが火の粉となって自分に返ってくる。

 

「お前が回復する予定だったライフは200!よって200のダメージを与える!」

 

相手 LP200→0

 

《詰めデュエルのクリアを確認しました。ロックを解除します》

 

見事詰めデュエルのクリアに成功したことで監視ルームの入り口が解放された。

 

「よっしゃあ!やったぜ遊星!」

 

コナミは監視ルームに入り、遊星がいるであろう収容所を探す。意外にもそれはかなり分かりやすかった。

 

「俺は残骸爆破の効果を発動し、お前に3000のダメージを与える!」

 

「馬鹿なあああ!」

 

驚くことに遊星は収容所でデュエルをしていたようで、しかもそのデュエルに勝利しており、収容所に遊星コールが沸き起こっていた。さらにこのデュエルを見ていたゴドウィン長官により収容所の所長の横暴が収められ、遊星の出所が認められていた。

 

「マジかよ…流石は遊星だな」

 

遊星の捕まっていた収容所を確認し、迎えに行こうとしたところで1つの映像に気付く。

 

「これは…遊星のDホイール!そうか、捕まっちまった時に押収されちまったのか。こいつは取り返さねえとな…場所はここの奥の倉庫か!今のうちに…」

 

遊星のDホイールが押収された場所を確認しそれを取りに行こうとしたところ、入り口に人がいるのに気付く。

 

「むむっ、こんなところで何をしているのですか!さっさとあの赤帽子を探しに…ああっ、あなたは!」

 

「やべっ…!」

 

帽子のつばを上げていたためマトモに顔を見られてしまう。しかもその人物はコナミがサテライトから脱走したことを知る者だった。その人物とはイェーガー、彼は取り調べに時間がかかっていると思い、中に入って様子を伺ったところこの部屋が空いているのに気づいたのであった。

 

「ドブネズミがこの私をコケにしてくれましたね…」

 

そしてイェーガーは懐にあったスイッチを押す。

 

「どうでしょう、ここは1つデュエルでも。もし私に勝てば見逃してあげますが?」

 

「そんなのに騙されるかよ!今お前が押したスイッチ…どうせセキュリティを呼んだんだろ…時間稼ぎにデュエルとはせこいな!」

 

「チッ…勘のいいドブネズミですね」

 

早めに逃げたほうがいいと判断したコナミはイェーガーの鳩尾にパンチを決めて気絶させようとする。…が、パンチを決める瞬間視界からイェーガーが消えてしまった。

 

「何!?どこ行きやがった!」

 

「こちらですよ」

 

「なっ…俺の後ろをとるだと!」

 

人間後ろからの攻撃はどうしても不意を突かれてしまう、この場合でも例外ではなかった。イェーガーに腕をがんじがらめにされた上に部屋の外の壁に押し付けられほとんど身動きを封じられる。

 

「ヒヒッ、私を舐めすぎましたね。このままセキュリティが来るまでじっとしていなさい」

 

「くそっ…サテライトで鍛えた勘が鈍ったか!」

 

「いえいえ、あなたの殺気もなかなかでしたが私に及ばなかっただけの話でございます」

 

足も腕もほとんど動かせない。そんなコナミの視界に入っていたのは壁と…詰めデュエルの画面であった。コナミはとっさに画面の方へ体をねじる。

 

「逃がしませんよ!」

 

イェーガーはコナミの腕と足が動かないように固めようとする。その状態で無理やりある場所に頭突きを決めた。

 

「壁に頭突きなど気でも狂いましたか!」

 

「それはどうかな」

 

「なんですと?」

 

2人の耳にこの場には場違いな電子的な音声が聞こえてくる。

 

《自爆スイッチの発動により互いのライフは0になりますが勝利条件を満たしていないため失敗となります。3回の失敗によりあなたを侵入者と判断します》

 

コナミが頭突きにより自爆スイッチのパネルを押したことで警告が出る。その言葉が終わるや否やその機械からとてつもない音の警報が鳴り響き、同時にセキュリティへ通達が送られる。突然の大音量にイェーガーは耳を両手でふさいでしまう。だが警報が鳴り響くことを知っていたコナミはこの隙を見逃さず、出口の反対側へ走り出す。

 

「よ、よくもやってくれましたね!待ちなさい!」

 

耳を塞ぎながらイェーガーもそれを追いかける。コナミは先ほど確認した倉庫へ走り込み、遊星のDホイールを見つけた。

 

「デッキは…よし。Dホイールのデュエルディスクに一緒に入ってるな。行くぜ!」

 

ここでイェーガーが倉庫の入り口にたどり着くも、コナミがDホイールで真横を通過したことで体が回転し目を回してしまう。

 

「あとはあいつが呼んだ上にあの詰めデュエルの機械の通達で集まっているセキュリティをどうするかだが…このDホイールがありゃなんとかなるだろ!」

 

そうしてコナミは出口をでると、そこには大量のセキュリティが道をふさいでいた。

 

「う…さすがにやべえか!」

 

以前のようなライトみたいな踏み台もなく打つ手なしかと思われた時、突然Dホイールに通知が届く。

 

"捕まりたくなかったら出口から出たところのすぐ左側の壁に突っ込め!"

 

「…!だ、誰からだ。いや…迷ってる時間はねえか!」

 

とっさにDホイールを左方向へカーブさせ、治安維持局の壁に突っ込んだ。すると突然壁が爆発により大破し、Dホイールが通れるような隙間を作った。そこを通りセキュリティから離れるコナミ、このDホイールに並走するDホイールがあった。

 

「よう。無茶するねあんたも」

 

「お前は…!…だ、誰だ?」

 

「俺は雑賀、シティの情報屋さ。あんたはコナミだな」

 

「お前が助けてくれたのか…、ありがとな。だけど何で俺の名前を?」

 

不思議そうにするコナミ、だが情報屋にとっては愚問だったらしい。

 

「おいおい、サテライトからパイプラインを抜けてシティに来た2人組なんてすぐ情報屋の耳に入ってくるぜ。」

 

「それもそうか…。だけど何で俺を?」

 

「氷室の奴に仕掛けた盗聴器から情報を仕入れてたら氷室が遊星って奴にDホイールを取り戻すなら俺を頼るといいとか言ってやがったんだ。前金はもらってるし仕事を果たそうと様子見に来たら大量のセキュリティが集まってる所に1人、治安維持局が保管してた遊星のものらしきDホイールに乗って出てくるじゃねえか。そんなことをするのは遊星と一緒に来たコナミって奴だろうなと思って助けてやったんだよ。仲間のためによくそんなことするねえ」

 

「当たり前だ!俺たちは仲間だ、仲間なら困っていれば助け合う。それだけだぜ」

 

「そう…か。下らないと言いたいが実際お前はDホイールを奪い返した。仲間を助ける、それは当たり前のことなんだろうな…」

 

「…?とりあえず俺は遊星の元に向かうけどどうする?」

 

「俺がいても特に意味はないだろう、俺の場所は遊星に伝えられている通りブートレグにくればわかる。用があったら来な」

 

「ああ、さっきはマジで助かったぜ。またな!」

 

そう言うとコナミは遊星が捕まっていた収容所に向かっていく。

 

Dホイールを走らせ収容所の入り口につくとタイミングよく遊星が釈放されていた。コナミは遊星に近づいていくが、1つ気付かなかったことがあった。遊星が出てくるのを見ていたセキュリティが1人いたのだ。

 

「出てきやがったな屑野郎…。この傷の痛みにかけてテメェを追い回してやる。ん?あいつは…!」

 

彼はセキュリティ捜査官、牛尾。以前遊星とコナミにデュエルで敗北したことでパイプラインのゴミの流出に巻き込まれてしまい、頬に大きな傷を負っていた。

 

「おーい遊星!」

 

「コナミ!無事だったのか…。…そのDホイールは!?」

 

「俺が治安維持局に侵入して取り戻してきたぜ。デッキも無事だ!」

 

「ありがとうコナミ。このDホイールとカード達は俺の命と言ってもいいくらい大事なものだ」

 

この様子を見ていた牛尾はいやらしい笑みを浮かべ、2人の前に出る。

 

「へっ…まさかこうも早く罪を重ねるとはな!そのDホイールはもう治安維持局の物なんだよ!それを盗んだら窃盗罪だ。当然そのDホイールを返してもらおうとしているテメェも同罪だ!もう1度お縄につきな!」

 

牛尾はDホイールを走らせ、遊星達に近づいてくる。

 

「げっ…こんなところに!後ろに乗れ遊星!」

 

「ああ!」

 

2人乗りで牛尾から逃げるコナミ達、だがこの土地に慣れていない彼らは執拗に追いかけてくる牛尾を振り払うことが出来ないでいた。

 

「ちくしょう…結構走ったのに全然撒けねえ!」

 

「デュエルで追い払うことが出来れば…」

 

「ダメだ…デュエルしている間にさっき俺がDホイールを奪った時にいた大量のセキュリティ達が増援に来ちまう!」

 

「くっ…」

 

気付かないうちにトップスの区域に入る遊星達、だがそこは限られたものしか入れない。

 

「馬鹿め!この先はトップスしか入れねえ、つまり行き止まりだ!」

 

万事休す、そう思った瞬間緑色の髪をした双子が2人を誘導する。

 

「えーと龍可、あの2人だよね?精霊が騒いでるっていうのは。おーい!こっちこっち!」

 

双子のうち兄の龍亞は彼らを誘導しようと手を振っている。

 

「…!ど、どうする遊星」

 

「このまま行ってもいずれ追いつかれてしまう…。ここは賭けるしかない」

 

「そうだな!」

 

コナミはDホイールを龍亞の指し示す方へ動かせる。

 

「あの2人私たちの客人なの!入れてあげて!」

 

妹の龍可がトップス区域へのゲートの管理員に頼むと龍亞が誘導した方向へのゲートが開く。コナミ達はそこを通過した。

 

「あ、おじさん!あっちの人は入れないでね!」

 

龍亞がそう頼むと再びゲートは閉じてしまう。

 

「な、何い!おい、開けてくれ!」

 

「トップス区域へのセキュリティの捜査は1度治安維持局を通し、申請する必要があります。許可を貰ってから再度お越しください」

 

「チッ…!これだからお上は!」

 

牛尾がゲートを通ることは叶わず、なんとか振り切ることに成功したのであった。




火の粉「モウヤンの奴、2枚のカードで200ダメージか。俺なら1枚で出来るぜ」

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