遊戯王5D'sタッグフォース 満足の意志を継ぐ者 作:ゾネサー
全力のぶつかり合い
「32組のチームが参加したWRGPもいよいよ大詰め!熾烈な戦いを勝ち抜いた2組のチームが今日、このスタジアムで雌雄を決するぞ!」
MCの実況でスタジアムに集まった観客から歓声が湧き上がった。
「まずはチーム5D'sの入場だ!」
スタジアムのゲートが解放され、5D'sのメンバーが一人一人入ってくる。
「1人目はチーム5D'sの鉄砲玉!クロウ・ホーガン!」
「へえ…こんな状況だってのに結構人数入ってるじゃねえか。こりゃしくじれねえぜ!」
クロウはあらかじめサポーターとして入っていた龍亞や龍可、アキに誘導され、自分のチームのピットへと入っていった。
「2人目は元キングのジャック・アトラス!」
「ジャックー!」
「ジャックー!」
「アトラス様ー!」
「ふん…」
ジャックは応援してくれているファンに軽く手を挙げて応えながらピットへ入っていく。
「そして…3人目!ネオ童実野シティを救った英雄!不動遊星だ!」
遊星の名前が出た瞬間、会場は最高峰の盛り上がりを見せた。
「おのれ…遊星め。俺が呼ばれた時よりも大きい歓声を受けおって…!」
「しゃあねえだろ。遊星はこの街を救った英雄なんだから。それよりファーストホイーラーなんだから早く準備しろよ!」
「くっ…」
クロウとジャックがそんな会話をしている間に遊星は大きな歓声に戸惑いながらピットに入ってきた。
「みんな。このデュエルは鬼柳とも話した通り…」
「分かっている。住民の活気を取り戻すための戦いだと言うのだろう?だが、キングのデュエルは常にエンターテインメントでなくてはならない!俺は普段通りに戦うだけだ」
「そうだぜ遊星。俺達は俺達に出来ることをすりゃいいんだ」
「そうよ遊星。あんまり気負わないで。あなたのデュエルはきっとみんなの心に届くわ」
「…ありがとう。どうやら重荷を感じていたのは俺みたいだ」
遊星は息を大きく吸い、ゆっくりと吐き出した。
「これが俺達がチームとして戦う最後の試合となる。悔いが残らないように全力を尽くそう!」
遊星の言葉に皆が頷いた。
「よーっし!コナミ達には悪いけど…この勝負、遊星達が勝たせてもらうぜ!」
「あっ!噂をすれば…コナミ達も入ってくるみたいね」
龍亞と龍可の言葉で彼らの視線が入り口へと移った。
「さあ、次はチームネオサティスファクションの入場だ!…ん?この音は何の音だー!?」
観客は音の正体を探るために騒ぐのをやめ、耳を傾けた。
「あの音は……」
遊星はこの音に聴き覚えがあった。かつて死の街で起きていた悪夢のような状況を切り裂いた時、始まりはこの音だった。
「幸子。ハーモニカはフーって感じよりハーって吹いた方がいい音が出やすいぜ」
「結構難しいですわね。ピアノなどのメジャーな楽器はマスターしたのですが…」
コナミと幸子、そして鬼柳が吹くハーモニカの音がスタジアム中に響き渡っていた。
「何で…ハーモニカ?」
「ふっ、鬼柳らしいな…」
龍可が疑問に思う間も彼らはハーモニカを吹き続けた。やがてピットに入る手前で彼らは吹くのをやめ、鬼柳が人差し指を天に突き上げた。
「俺達はこれから全力で5D'sとぶつかり合う!必ずお前らを満足させてやるぜ!」
鬼柳が放った一声でそれまで思わず静まっていた観客が再び沸き起こった。
「…あっ。チ、チームネオサティスファクションの鬼柳、幸子、コナミもピットインしたぞ!早速だが、両チームのファーストホイーラーは配置についてくれ!」
MCの実況に合わせ、5D'sからはジャックがスタートラインへとついた。そしてネオサティスファクションからは鬼柳が出ていった。
「鬼柳!」
「何だ、コナミ?」
「このデュエルは鬼柳が願ったサティスファクションのメンバーでのデュエルでもあるんだ。満足してこいよ!」
「…ああ!」
ピットから出ていった鬼柳もスタートラインにつき、ジャックと並びあった。
「…鬼柳。貴様とデュエルするのは久しぶりだな」
「そうだな…サティスファクションの時以来か」
「俺は当然手加減はせんぞ。さらなる高みに昇るためにも…貴様を超える!」
「へっ…上等じゃねえか。そうこなくちゃなあ!」
2人はスピード・ワールド2を展開し、後はスタートのカウントダウンを待つだけとなった。
「いよいよ、この瞬間がやって来たぞ!観客の皆も今か今かと待ちきれないようだ!」
2人の前に出て来たスクリーンが10秒のカウントダウンを始め、ジャックと鬼柳はスタートの瞬間に備えて集中力を高めていく。
「この最後の戦い、始まってしまえば誰にも止めることは出来ない!ならば我々は勢いよく押し出そう!ライディングデュエル……」
そして最後のカウントダウンが点滅した瞬間、スタジアム中の観客が一斉にその言葉を口に出した。
「アクセラレーション!」
後押しされるように2人のDホイールも走り出した。先攻を取ることが出来るのは第1コーナーを回ったDホイーラー。走り出しは互角だったが……
「あーっと!ジャックのDホイールが加速していくぞー!」
「俺のDホイール、ホイール・オブ・フォーチュンに敵うと思ったか!」
ジャックのDホイールにはクロウのツテを通してボルガー&カンパニー社が開発した加速エンジンが組み込まれていたため、加速性能はキングだった頃よりも増していた。
「くっ!させるかよ!」
鬼柳は内側のレーンを攻め、最短の距離で第一コーナーを曲がろうとする。
「甘いぞ、鬼柳!」
しかし、それを読んでいたジャックに内側のレーンへと詰められてしまい、道を塞がれてしまう。
「そんな手でこのジャック・アトラスの前を走らせはしない!」
「…かかったな、ジャック!」
「何?」
ジャックのDホイールの真後ろに入ることになった鬼柳のDホイールが次第に加速していき、ジャックのDホイールへと追いついていった。
「これは!?…スリップ・ストリームか!」
ジャックと鬼柳のDホイールが直線上に並んでいるため、ジャックのDホイールが受ける空気抵抗を鬼柳のDホイールは受けず、その分鬼柳のDホイールは加速していた。
「くっ!だが、ここをどいてしまえば俺はその分外を回ることになる…!」
「どうだ…ジャック!」
「…まだだ!いくら加速しようとお前のDホイールは俺の後ろにある!ここから外回りで抜かすほどの時間は残っていない!」
「誰が外回りで抜かすって…?加速は十分についた…ここだ!」
「何…!?」
鬼柳のDホイールからモーメントが逆噴射され、鬼柳のDホイールが空中に浮いた。そのままジャックの頭上を越え、先に第一コーナーを駆け抜けた。
「先攻は鬼柳だー!」
「くっ、俺達が努力してきたようにお前達も勝つための努力を惜しまなかったということか…面白い。来い、鬼柳!」
「行くぜ、ジャック!」
「 「 デュエル! 」 」
「俺のターン、ドロー!俺はインフェルニティ・デーモンを召喚するぜ!」
ヤギのようなツノが頭に2本生えた悪魔が呼び出された。
インフェルニティ・デーモン 攻撃力1800
「カードを2枚伏せてターンエンドだ!」
鬼柳 LP4000
フィールド 『インフェルニティ・デーモン』(攻撃表示)
セット2
手札3
「俺のターン!」
鬼柳 sc0→1 ジャック sc0→1
「奴が使っているインフェルニティは手札が0になると本領を発揮する。ならば先手を打つまで!俺はチューナーモンスター、ダーク・リゾネーターを召喚する!」
紫色のローブを身に纏った悪魔が現れ、不思議な呪文を唱え始めた。
ダーク・リゾネーター 攻撃力1300
「そして手札の奇術王 ムーン・スターは俺の場にチューナーモンスターが存在する時に特殊召喚できる!」
月のオブジェクトがついた杖を持った魔術師が現れたかと思うと、突然現れた炎によって身を包まれてしまう。無事ではすまないかと思われたが、ダーク・リゾネーターの詠唱によって展開された魔法陣から傷一つ付いていない姿で現れ、観客を沸かせた。
奇術王 ムーン・スター 攻撃力900
「早速シンクロか…!」
「行くぞ!レベル3のムーン・スターにレベル3のダーク・リゾネーターをチューニング!」
ダーク・リゾネーターが音叉を鳴らすとムーン・スターと共に煙に包まれていった。
「天を焼くシリウス、孤狼の蒼き瞳よ、地に縛られた牙無き犬共を噛み砕け!シンクロ召喚!焼き焦がせ…天狼王 ブルー・セイリオス!」
煙が晴れていくとそこには3つの青い狼が連結し、鋭い銀色のツノを無数に生やした獣が誕生していた。
天狼王 ブルー・セイリオス 攻撃力2400
「まずはこいつで貴様のモンスターを相手してやろう!」
「待ちな!その前にこいつを呼ばせてもらうぜ…!俺は手札のカオスハンターの効果を発動する!」
「このタイミングで手札からモンスター効果だと!?」
「こいつは相手がモンスターを特殊召喚した時にこのカード以外の手札を1枚捨てることで特殊召喚出来る!さあ、来い!」
赤い鎧を纏ったレディが白い長髪を風でなびかせながらフィールドに降り立った。
カオスハンター 攻撃力2500
「カオスハンターの攻撃力はジャックの呼び出したシンクロモンスターよりも上だぜ!」
「やるな!強力なモンスターを呼び出し、かつハンドレスへと近づくとは…。だが、もう1体のモンスターは逃がしはしない!バトルだ!ブルー・セイリオスでインフェルニティ・デーモンに攻撃!
ブルー・セイリオスの牙が蒼く燃え出し、その牙でインフェルニティ・デーモンを焼きながら噛み切った。
「くっ…!」
鬼柳 LP4000→3400
「先制はもらったぞ、鬼柳!」
「へっ、甘いぜジャック!トラップ発動、命の綱!こいつは俺のモンスターが戦闘で破壊された時に手札を全て捨てることで発動できる!」
「何ぃ!?」
「その効果で、破壊されたモンスターを墓地から攻撃力を800上昇させた状態で呼び出すぜ!」
墓地へと続く穴に綱がおろされ、インフェルニティ・デーモンが引っ張り戻された。
インフェルニティ・デーモン 攻撃力1800→2600
「そしてインフェルニティ・デーモンの効果発動!こいつが手札0の時に呼び出された時、デッキからインフェルニティカードを手札に加えられる!」
「命の綱により貴様の手札は0…!計算通りというわけか!」
「俺はデッキからインフェルニティ・ガーディアンを手札に加えるぜ!」
「見事だ…!だが、俺も負けはせん!カードを1枚伏せてターンを終了する!」
ジャック LP4000
フィールド 『天狼王 ブルー・セイリオス』(攻撃表示)
セット1
手札3
sc1
「次はこっちの番だ!俺のターン!」
鬼柳 sc1→2 sc1→2
「バトルだ!インフェルニティ・デーモンでブルー・セイリオスに攻撃!ヘル・プレッシャー!」
インフェルニティ・デーモンは先程の仕返しとばかりに空中に魔法陣を出現させ、炎によって覆われた巨大な手でブルー・セイリオスを握りつぶした。
「ぐうっ…!?」
ジャック LP4000→3800
「通った!さらに俺はカオスハンターで……」
「そう簡単にやらせはせん!ブルー・セイリオスの効果発動!
カオスハンターの持っている鞭がどこからともなく現れた蒼い炎によって燃やされてしまう。
「な、何だ!?」
「ブルー・セイリオスは破壊され墓地へと送られた時、相手モンスター1体の攻撃力を2400ダウンさせる!俺はこの効果をカオスハンターに対して発動していた!」
カオスハンター 攻撃力2500→100
「何だと…!ちっ、攻撃力100じゃ攻撃しても意味はねえか…。俺はカオスハンターを守備表示にする!」
カオスハンター 守備力1600
「モンスターをセットし…カードを1枚伏せる。ターンエンドだ!」
鬼柳 LP3400
フィールド 『インフェルニティ・デーモン』(攻撃表示) 『カオスハンター』(守備表示) 裏側守備表示1
セット2
手札0
sc2
「俺のターン!…ふ、行かせてもらうぞ!」
「…!」
鬼柳 sc2→3 ジャック sc2→3
「トラップ発動、ロスト・スター・ディセント!墓地のシンクロモンスターをレベルを1つ下げ、守備力0の状態で守備表示で特殊召喚する!戻れ、ブルー・セイリオス!」
ツノの一部が炎によって溶けてしまったブルー・セイリオスがぼろぼろになりながらも帰還した。
天狼王 ブルー・セイリオス 守備力0
「あいつを破壊したらまた攻撃力を下げられちまう…!」
「このジャック・アトラスが同じような手を使うと思ったか!俺のデュエルは常に先を行く!俺はチューナーモンスター、チェーン・リゾネーターを召喚する!」
藍色のローブを纏った悪魔が現れ、手に持っている鎖をジャックのDホイールめがけて投擲した。
チェーン・リゾネーター 攻撃力100
「そしてチェーン・リゾネーターは召喚に成功した時にフィールドにシンクロモンスターがいる場合、デッキからリゾネーターを1体呼び出すことが出来る!俺が呼び出すのはクロック・リゾネーターだ!」
青色のローブを纏った悪魔がフィールドに引っ張り出された。
クロック・リゾネーター 守備力600
「もう1度シンクロしてくるか…!」
「レベル5となったブルー・セイリオスにレベル3のクロック・リゾネーターをチューニング!王者の鼓動、今ここに列をなす。天地鳴動の力を見るがいい!シンクロ召喚!我が魂、レッド・デーモンズ・ドラゴン!」
強固な肉体をフルに使い紅蓮の翼をはためかせ、ジャックの頭上を縦横無尽にドラゴンが飛び回った。
レッド・デーモンズ・ドラゴン 攻撃力3000
「く…!攻撃力3000…エースモンスターで勝負に来たか!」
「確かにレッド・デーモンズ・ドラゴンは俺のエースだ。だが、俺はレッド・デーモンズ・ドラゴンのさらなる力を解放する!」
「さらなる力だと!?」
「ふふ…フィールドにレベル8以上のシンクロモンスターが存在する時、手札のクリエイト・リゾネーターは特殊召喚する事が出来る!」
背中にプロペラをつけた悪魔がレッド・デーモンズ・ドラゴンに仕えるように駆けつけた。
クリエイト・リゾネーター 攻撃力800
「クリエイト・リゾネーターもチェーン・リゾネーターもチューナーモンスター…。一体何をする気だ?」
「俺の得た新たな力を貴様にも見せてやろう…!俺の荒ぶる魂…バーニング・ソウルを貴様にぶつけてやる!」
ジャックが自分の心臓を掴むように手を胸に当てると、目が燃え上がるように赤くなった。
「俺はレベル8のレッド・デーモンズ・ドラゴンにレベル1のチェーン・リゾネーターとレベル3のクリエイト・リゾネーターをダブルチューニング!」
「ダブル…チューニングだと!?」
「王者と悪魔、今ここに交わる。荒ぶる魂よ、天地創造の叫びをあげよ!シンクロ召喚!出でよ…スカーレッド・ノヴァ・ドラゴン!」
2体のリゾネーターが音叉を鳴らすと炎の輪となってレッド・デーモンズ・ドラゴンを包みこむ。炎の輪を抜けたドラゴンは赤黒く彩られ、より力強さを増していた。
スカーレッド・ノヴァ・ドラゴン 攻撃力3500
「スカーレッド・ノヴァ・ドラゴン!?まるで地縛神みてえな威圧感を感じるぜ…!なんて圧力だ…!」
「これが俺の新たな切り札だ…!俺はこいつでお前を超える!スカーレッド・ノヴァ・ドラゴンの効果発動!俺の墓地に存在するチューナーモンスター1体につき、攻撃力を500アップさせる!俺の墓地には4体いる。よって……!」
ただでさえ巨大なスカーレッド・ノヴァ・ドラゴンがさらに大きくなり、フィールド全体を包み込むほどの大きさとなってしまう。
スカーレッド・ノヴァ・ドラゴン 攻撃力3500→5500
「なん…だと…!?」
「バトルだ!スカーレッド・ノヴァ・ドラゴンでインフェルニティ・デーモンへ攻撃!バーニング・ソウル!」
スカーレッド・ノヴァ・ドラゴンは手足をたたみ、まるで弾丸のような鋭さで突っ込んでインフェルニティ・デーモンを地面に叩きつけた。
「うおおおっ!?」
鬼柳 LP3400→500
あまりの衝撃に鬼柳もバランスを崩しかけてしまう。
「どうだ鬼柳…俺の渾身の一撃は!」
「効いたぜ…!だが、俺もタダじゃ転ばねえ!墓地のインフェルニティ・リベンジャーの効果発動!手札が0枚の時に俺のモンスターが戦闘で破壊された時、そのモンスターのレベルと同じレベルで墓地から特殊召喚する事が出来る!」
2丁の拳銃を握る小さな戦士が墓地から這い出て来た。
インフェルニティ・リベンジャー 守備力0 レベル1→4
「俺は場に2枚のカードを伏せ、ターンを終了する!さあ、ここから逆転出来るものならしてみるがいい!」
ジャック LP3800
フィールド 『スカーレッド・ノヴァ・ドラゴン』(攻撃表示)
セット2
手札0
sc3
「やってやるぜ…!俺のターン!」
鬼柳 sc3→4 ジャック sc3→4
「よし…いいカードだ。俺はインフェルニティ・ガーディアンを反転召喚する!」
フィールドの一部が赤く燃え上がったかと思うと、その炎に浮くようにガイコツが姿を現した。
インフェルニティ・ガーディアン 攻撃力1200
「インフェルニティ・リベンジャーはチューナー…お前もシンクロで来るか!だが、スカーレッド・ノヴァ・ドラゴンを超えるシンクロモンスターなどいない!」
「確かにあいつを超えるのは骨が折れそうだぜ…。だけど勝負に絶対なんてねえ…挑ませてもらおうか!俺はレベル4になっているインフェルニティ・リベンジャーにレベル4のインフェルニティ・ガーディアンをチューニング!死者と生者の狭間、その虚ろな魂が混じるとき冥府の闇が舞い降りる!シンクロ召喚、いでよ…ワンハンドレッド・アイ・ドラゴン!」
体中に目が張り付いた奇妙なドラゴンがスカーレッド・ノヴァ・ドラゴンと向かい合った。
ワンハンドレッド・アイ・ドラゴン 攻撃力3000
「ほう…攻撃力3000か。中々の攻撃力だが…我がスカーレッド・ノヴァ・ドラゴンには遠く及ばない!」
スカーレッド・ノヴァ・ドラゴンがワンハンドレッド・アイ・ドラゴンを見下ろし、雄叫びを上げた。
「こいつだけじゃ確かに敵わねえが…このカードと合わせたらどうだ!手札から
「何…!?」
スカーレッド・ノヴァ・ドラゴンからエネルギーが吸収され、鬼柳の命の源へと変換されていく。力を吸収されたスカーレッド・ノヴァ・ドラゴンの大きさはワンハンドレッド・アイ・ドラゴンと同程度となってしまう。
スカーレッド・ノヴァ・ドラゴン 攻撃力5500→2750
鬼柳 LP500→3250
「これで上下関係は逆転した!バトルだ!ワンハンドレッド・アイ・ドラゴンでスカーレッド・ノヴァ・ドラゴンへ攻撃!インフィニティ・サイト・ストリーム!」
ワンハンドレッド・アイ・ドラゴンが闇のオーラを纏ったエネルギー弾を狙いをスカーレッド・ノヴァ・ドラゴンに定めて放った。
「そうはさせん!スカーレッド・ノヴァ・ドラゴンの効果を発動!このカードをエンドフェイズまで除外する事で相手モンスターの攻撃を無効にする!」
「…!」
スカーレッド・ノヴァ・ドラゴンは空中に次元の裂け目をこじ開け、一時的に攻撃を逃れようとした。
「いくら攻撃力で上回っていようと攻撃が通らなければ意味はない!」
「ならば意味を持たせてやるぜ…!」
「…!?何故だ…スカーレッド・ノヴァ・ドラゴンが動かないだと!」
ジャックがスカーレッド・ノヴァ・ドラゴンを見上げると異次元へと逃れようとするスカーレッド・ノヴァ・ドラゴンの翼を押え込み、動きを封じていた者がいた。
「カオスハンターの効果だ!こいつがいる限り、相手はモンスターを除外することが出来ねえ!」
「ぐっ…!これでは攻撃を無効にする事は出来ない…!」
動きを封じられたスカーレッド・ノヴァ・ドラゴンはエネルギー弾をまともに受け、戦闘不能になってしまった。
「やってくれたな…!」
ジャック LP3800→3550
「っし…!スカーレッド・ノヴァ・ドラゴンを倒したぜ!俺はこれでターンエンドだ!」
鬼柳 LP3250
フィールド 『ワンハンドレッド・アイ・ドラゴン』(攻撃表示) 『カオスハンター』(守備表示)
セット2
手札0
sc4
「おのれ…この屈辱、倍にして返してくれる!俺のターン!」
鬼柳 sc4→5 ジャック sc4→5
「ライフを500払い、トラップ発動!デーモンの雄叫び!俺の墓地からデーモンと名のつくモンスターを呼び戻す!」
ジャック LP3550→3050
「ジャックの墓地にいるデーモンと名のついたモンスターだと?…まさか!」
「蘇れ!レッド・デーモンズ・ドラゴン!」
墓地からも響く雄叫びと共に再び紅蓮の翼をはためかせ、フィールドに飛翔した。
レッド・デーモンズ・ドラゴン 攻撃力3000
「ただしこの効果で呼び出したモンスターはいかなる場合にもリリースできず、エンドフェイズには破壊される」
「ってことは…相打ち狙いか!?」
「俺が自らの魂を放棄することなどありえん!バトルだ!レッド・デーモンズ・ドラゴンでカオスハンターへ攻撃する!森羅万象…全てを貫け!アブソリュート・パワーフォース!」
レッド・デーモンズ・ドラゴンは無防備なカオスハンターに向かって拳を押し出すように突き出し、掌底打ちによって自らのパワーを余すところなく伝えた。
「カオスハンターがやられたか…!だが、手札0の時に俺のモンスターが戦闘で破壊されたことで墓地のインフェルニティ・リベンジャーを……」
「2度も同じ手を通すほど俺は甘くないぞ!レッド・デーモンズ・ドラゴンは守備モンスターを攻撃した時、相手の守備モンスターを全て破壊する!デモン・メテオ!」
レッド・デーモンズ・ドラゴンは地面から這い出ようとしていたインフェルニティ・リベンジャーに向かってカオスハンターを突き飛ばし、2人もろとも墓地へと落としてしまった。
「インフェルニティ・リベンジャーが効果を使えるのはあくまで戦闘で破壊された時!レッド・デーモンズ・ドラゴンの効果によってカオスハンターが破壊されたことでその効果を使うことは出来ない!」
「くっ!隙がねえな…。だが、デーモンの雄叫びによってレッド・デーモンズ・ドラゴンはエンドフェイズに破壊される!」
「それはどうかな?俺はもう1枚のトラップを発動する!亜空間物質転送装置!このカードによってレッド・デーモンズ・ドラゴンはエンドフェイズまで除外される!」
「何だと…!」
レッド・デーモンズ・ドラゴンはスカーレッド・ノヴァ・ドラゴンが作っていた次元の裂け目に一時的に避難した。
「カードを1枚伏せてターンを終了する!戻ってこい、レッド・デーモンズ・ドラゴン!」
レッド・デーモンズ・ドラゴンは裂け目を突き破るようにフィールドに帰還した。
「レッド・デーモンズ・ドラゴンは一度場を離れたことでデーモンの雄叫びとの関係を消し去った!よってデーモンの雄叫びによって課せられた契約は破棄されている!」
「強い意志を感じるぜ!何としても自分のエースで勝利を掴もうとするジャックの決意を…!こういう奴は強え…。だけどそれを超えてこそ、俺は満足することが出来る!」
ジャック LP3050
フィールド 『レッド・デーモンズ・ドラゴン』(攻撃表示)
セット1
手札0
sc5
「俺のターン…ドロー!」
鬼柳 sc5→6 ジャック sc5→6
「まず俺は場にカードを伏せる!」
「セット…これで奴の手札は再び0か」
「そして俺はワンハンドレッド・アイ・ドラゴンの効果を発動する!エンドフェイズまで墓地の闇属性・レベル6以下のモンスターを除外し、その効果を得るぜ!俺が除外するのは…インフェルニティ・ガーディアン!」
ワンハンドレッド・アイ・ドラゴンの目が1つ大きく見開かれ、インフェルニティ・ガーディアンのデータが読み込まれていった。
「そして…バトルだ!ワンハンドレッド・アイ・ドラゴンでレッド・デーモンズ・ドラゴンに攻撃!インフィニティ・サイト・ストリーム!」
「何…?相打ち狙い…ではないな」
「当然だ!ワンハンドレッド・アイ・ドラゴンにコピーされたインフェルニティ・ガーディアンの効果によって俺の手札が0枚の時、こいつは破壊されない!」
「…!」
ワンハンドレッド・アイ・ドラゴンから再び闇のオーラを纏ったエネルギー弾が放たれ、レッド・デーモンズ・ドラゴンを襲った。着弾による煙がジャックのフィールドを包み込む。
「よし……やったか!」
煙が次第に晴れていく。そこにいたレッド・デーモンズ・ドラゴンの姿は禍々しさを増しており、紅蓮の翼は完全に漆黒に染まっていた。
「何だと…!」
「惜しかったな鬼柳。俺は貴様が攻撃してきた時、このカードを発動していた!トラップカード…バスター・モードをな!」
「バスター・モードだと…!」
「バスター・モードはシンクロモンスターをリリースし、その進化体をデッキから呼び出すカード!俺はこのカードを使い、レッド・デーモンズ・ドラゴンを進化させていた!」
レッド・デーモンズ・ドラゴン/バスター 攻撃力3500
「ここに来て攻撃力3500だと!?くっ、攻撃を中断してターンエンドだ!エンドフェイズにワンハンドレッド・アイ・ドラゴンが得た効果は消滅する……!」
鬼柳 LP3250
フィールド 『ワンハンドレッド・アイ・ドラゴン』(攻撃表示)
セット3
手札0
sc6
「俺のターン!」
鬼柳 sc6→7 ジャック sc6→7
「バトルだ!レッド・デーモンズ・ドラゴン/バスターでワンハンドレッド・アイ・ドラゴンへ攻撃する!エクストリーム・クリムゾン・フォース!」
レッド・デーモンズ・ドラゴン/バスターは息を大きく吸い込むと、勢いよく灼熱のブレスを放ち、ワンハンドレッド・アイ・ドラゴンを燃やし尽くした。
鬼柳 LP3250→2750
「ぐおおっ!墓地のインフェルニティ・リベンジャーの効果を……!」
「懲りないな!レッド・デーモンズ・ドラゴン/バスターの効果発動!このモンスターは攻撃後、フィールドのこのモンスター以外のモンスターを全て破壊する!クリムゾン・ジ・エンド!」
高熱のブレスによってワンハンドレッド・アイ・ドラゴンは跡形もなく焼却されてしまった。
「やっぱりジャックには通じねえか…!なら俺はワンハンドレッド・アイ・ドラゴンの効果を発動するぜ!こいつは破壊された時、デッキからあるカードを俺の手札に加えさせる!」
「…!まさか…」
「来い!地縛神 Ccapac Apu!」
「地縛神…!遊星から聞いた通り、お前も地縛神の力を自分の力として取り込んでいたか……!ならば俺はスピード・ワールド2の効果を発動する!scを7つ取り除き、カードを1枚ドローする!」
ジャック sc7→0
「場に2枚のカードを伏せ…ターンエンドだ!」
ジャック LP3050
フィールド 『レッド・デーモンズ・ドラゴン/バスター』(攻撃表示)
セット2
手札0
sc0
「行くぜ…Ccapac Apu!俺のターン!」
鬼柳 sc7→8 ジャック sc0→1
「リバースカードオープン!sp—エンジェル・バトン!scが2以上ある時に発動でき、俺は2枚のカードをドローしその後1枚のカードを墓地へ送る!」
天使から渡された2枚の羽がカードに変わり、鬼柳に新たな可能性をもたらした。
「そしてトラップ発動!極限への衝動!俺の手札を2枚墓地へ送り、俺の場に2体のソウルトークンを呼び出す!」
鬼柳が墓地へ送ったカードの魂がフィールドで浮遊しだした。
ソウルトークン×2 守備力0
「来るか…!」
「俺は2体のソウルトークンをリリースする!現れやがれ!地縛神 Ccapac Apu!」
闇に染まった巨人がレッド・デーモンズ・ドラゴン/バスターと対峙した。
地縛神 Ccapac Apu 攻撃力3000
「遠慮はしねえ!バトルだ!地縛神は相手にダイレクトアタックが出来る!Ccapac Apuでジャックに攻撃だ!」
巨人がレッド・デーモンズ・ドラゴン/バスターを無視して、ジャックに向けて拳を振り下ろした。
「貴様が地縛神を使用することは想定していた!その攻撃は通さん!トラップ発動、チェンジ・デステニー!その攻撃を無効にし、攻撃モンスターを守備表示にする!」
振り下ろされた拳はレッド・デーモンズ・ドラゴン/バスターによって受け止められ、拳ごと地縛神は投げられてしまった。
「ぐ…!一筋縄じゃいかねえか!だけど地縛神は攻撃の対象にはならねえ。次のターンにもう1度…!」
「無理だな。チェンジ・デステニーによって以降地縛神の表示形式を変えることは出来ない!」
「何だと!?」
「だがチェンジ・デステニーにはリスクもある。貴様はチェンジ・デステニーによって無効にされたモンスターの攻撃力の半分の数値分自分のライフを回復、またはその分のダメージを相手に与えることが出来る!さあ、選べ!」
「俺のデュエルはいつだって攻めて攻めて攻めまくるデュエルだ!ここで回復なんて選択肢はねえ!食らいやがれ、ジャック!」
「だろうな…!お前はそういうやつだ!」
ジャック LP3050→1550
「俺はスピード・ワールド2の効果を発動し、scを7つ取り除くことで1枚ドローする!…カードを1枚伏せてターンエンドだ!」
鬼柳 sc8→1
鬼柳 LP2750
フィールド 『地縛神 Ccapac Apu』(守備表示)
セット2
手札0
sc1
「俺のターン!」
鬼柳 sc1→2 ジャック sc1→2
「ジャック!さっき言った通り地縛神は攻撃の対象にはならねえ!いくらレッド・デーモンズ・ドラゴン/バスターが強力な効果を持っていようと、攻撃が出来なければ意味はねえぜ!」
「ふっ…ならば意味を持たせれば良いのだろう?」
「何!?」
「トラップ発動、リバイバル・ギフト!俺の墓地からチューナーモンスターを効果を無効にして呼び出す!戻れ!クロック・リゾネーター!」
フィールドに3つの宝箱が出現し、その箱のうち1つには青色のローブを纏った悪魔が入っていた。
クロック・リゾネーター 守備力600
「そしてリバイバル・ギフトのもう1つの効果によって貴様の場に2体のギフト・デモン・トークンを特殊召喚する!」
「…!そういうことか!」
2つの宝箱からは小さな黒い悪魔が現れ、鬼柳の場に降り立った。
ギフト・デモン・トークン×2 攻撃力1500
「バトルだ!レッド・デーモンズ・ドラゴン/バスターでギフト・デモン・トークンへと攻撃する!エクストリーム・クリムゾン・フォース!」
「レッド・デーモンズ・ドラゴン/バスターは攻撃後、自身以外の全てのモンスターを破壊する…!」
「そうだ!たとえ地縛神が攻撃の対象にならなくとも、その効果で消し去ることは出来る!」
灼熱のブレスが地縛神と2体の小悪魔を包み込んでいく。しかし包んだはいいものの、一向に炎が地縛神に寄る様子はなかった。
「何…?レッド・デーモンズ・ドラゴン/バスターの炎が弾かれているだと!」
「危なかったぜ…。俺はさっきエンジェル・バトンによって墓地へ送っていた超電磁タートルの効果を発動していた!こいつは墓地から除外することでデュエル中1度に限り、バトルフェイズを強制終了させることが出来る!」
「そんなカードを墓地へ送っていたのか…!」
地縛神と炎に同極の電極が植え付けられたことで反発しあい、やがて炎は消滅していった。
「カードを1枚伏せてターンエンドだ!」
ジャック LP1550
フィールド 『レッド・デーモンズ・ドラゴン/バスター』(攻撃表示) 『クロック・リゾネーター』(守備表示)
セット1
手札0
sc2
「俺のターン、ドロー!……!」
鬼柳 sc2→3 ジャック sc2→3
「このターンで勝負をつけさせてもらうぜ…ジャック!」
「…!地縛神が封じられた状態で仕掛けてくる気か…!」
「俺はsp—ヴィジョンウィンドを発動する!scが2以上ある時、墓地のレベル2以下のモンスターを効果を無効にして特殊召喚することが出来る!俺が呼び出すのは…チューナーモンスター、インフェルニティ・ビートルだ!」
体が黒く染まっているはずのヘラクレスオオカブトが灰色の状態で帰還した。
インフェルニティ・ビートル 攻撃力1200
「チューナー…しまった!」
「ありがたく使わせてもらうぜ…お前のプレゼントをな!俺はレベル3のギフト・デモン・トークン2体にレベル2のインフェルニティ・ビートルをチューニング!死者と生者、ゼロにて交わりしとき、永劫の檻より魔の竜は放たれる!シンクロ召喚!いでよ、インフェルニティ・デス・ドラゴン!」
体が漆黒に染まったドラゴンがフィールドに飛翔した。
インフェルニティ・デス・ドラゴン 攻撃力3000
「俺が呼び出したモンスターすらも利用するとはな…!」
「インフェルニティ・デス・ドラゴンの効果発動!こいつの攻撃を放棄することで相手モンスター1体を破壊し、その攻撃力の半分の数値分のダメージを相手に与える!当然狙いは…レッド・デーモンズ・ドラゴン/バスター!」
「…!」
「これで終わりだ…ジャック!インフェルニティ・デス・ブレス!」
インフェルニティ・デス・ドラゴンから黒炎が放たれようとしていた。
「まだだ!永続トラップ発動、デモンズ・チェーン!俺はインフェルニティ・デス・ドラゴンの攻撃と効果をこのカードによって封じる!」
「……!」
インフェルニティ・デス・ドラゴンの口を鎖が縛り、黒炎が放てない状態にしてしまう。
「これで次のターンのレッド・デーモンズ・ドラゴン/バスターの攻撃でお前の場のモンスターは全滅となる!」
ピシャリ。ヒビが入るような音がかすかに聞こえてくる。
「…何?」
そして鎖に入ったヒビはさらに大きくなっていき、やがて鎖は完全に外れてしまった。
「…カウンタートラップ、インフェルニティ・バリア!俺の場にインフェルニティが攻撃表示で存在する時、相手が発動した効果の発動を無効にして…破壊する!」
鎖から解放されたインフェルニティ・デス・ドラゴンは黒炎を放ち、レッド・デーモンズ・ドラゴン/バスターの漆黒の翼を燃やし尽くすことで破壊した。
「俺よりお前の方が一手先を読んでいたか…!」
ジャック LP1550→0
「ジャックに…勝った…!」
鬼柳は喜びを噛みしめる。しかし、まだ勝負は終わってはいなかった。
「たとえ俺が敗れようと我が魂は何度でもフィールドに蘇る!レッド・デーモンズ・ドラゴン/バスターの効果発動!破壊された時、墓地のレッド・デーモンズ・ドラゴンを復活させることが出来る!」
レッド・デーモンズ・ドラゴンは地面を突き破り、その紅蓮の翼を
レッド・デーモンズ・ドラゴン 攻撃力3000
「そうだ…これはチーム戦!満足するのはまだはやかったぜ…!」
こうして鬼柳とジャックの勝負は決した。しかし、まだ勝負は始まったばかり。彼らの戦いはまだまだ続く……。