遊戯王5D'sタッグフォース 満足の意志を継ぐ者   作:ゾネサー

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それぞれの一歩

「ゾーン…」

 

恵は消滅していくアーククレイドルを振り返りながら小さく呟いた。

 

「あなたの生命反応が消滅した。きっと彼らに未来を託してあなたは…。あなたが見届けられなかった彼らの作り上げる未来は私が見届ける。それが私の…新しい使命」

 

恵は視線を元に戻し、Dホイールをコントロールしているコナミを見つめた。

 

「…大丈夫。彼らならきっと未来を変えられる。私は…そう信じている」

 

絶望から作られたロボットとしてではなく、感情を持つ人間として彼女はそう思った。そんな彼女の乗るDホイールはディヴァインの要望により、あるところへ向かっていた。

 

「…ここでいい」

 

空中に浮いていたDホイールが地面につき、ディヴァインの目的地の前で止まった。

 

「収容所?」

 

「私は過去にサイコデュエリストに覚醒しない者は使えないと考え、優秀でない者を無理やりにでも覚醒させようと過剰な刺激を与えていたことがあった。そして…その実験で一人死者を出してしまった」

 

「あ…。ミスティの弟、トビーか!」

 

「そうだ。それも私の他人を否定する心が生み出したことだ…。こんなことで罪が消えるとは思わないが、アキや貴様に突きつけられた過ちは私なりに償うつもりだ」

 

ディヴァインはDホイールからゆっくりと降り、無人の収容所へ向かっていく。

 

「だが、私はサイコデュエリストが“化け物”として扱われることをよしとしたわけではない。いつか必ず…その認識をひっくり返してやろう」

 

「ディヴァイン…。ああ!お前なら出来るさ!」

 

ディヴァインの決意を聞いたコナミは安心してその場を離れていった。そしてコナミは懸命にDホイールを走らせていく。目的地は必ず帰ると約束をした場所。

 

「恵…。お前が無事で本当に良かったぜ」

 

「コナミ…。どうして私を助けたの…?」

 

「どうしてって言われてもな。…俺がお前を救いたいって思ったからだよ」

 

「でも…ネオ童実野シティを守るためにはゾーンを倒さなくてはならなかった。なのにあなたは私を……」

 

「遊星や鬼柳達を信じたのさ。あいつらなら絶対にネオ童実野シティを守ってくれると思ったぜ」

 

「仲間を信じた…ということ?」

 

「そうだぜ。言っただろ?俺達には仲間がいるから絶望せずに未来に立ち向かえるって。だから今回も絶望せずに俺がやるべきことをやれたのさ」

 

「……」

 

話しているうちに目的の場所にたどり着いていた。コナミがその場所の前にDホイールを止めると、後ろから機械音が響いた。振り返ったコナミが見たのはDホイールと分離した、とてもロボットには見えない普段コナミが見ていた人間の恵の姿だった。

 

「私はあなた達が作り上げる未来を見届ける。けれど…私もこれからは一人の人間としてあなた達と一緒に未来に立ち向かっていこうと思う」

 

「恵…!」

 

「そしてまたいつかあなたと…楽しいデュエルをしたい」

 

恵はコナミを見てはっきりと顔に笑みを浮かべた。

 

「ああ!約束だ!」

 

約束を交わした恵は自分のやるべきことを探しにどこかへと行ってしまった。それを見届けたコナミは目的の場所、海野財閥のガレージの中へと入っていった。

 

「おーい、幸子!」

 

「…!?庶民!」

 

「へへっ、約束通り帰ってきたぜ」

 

ガレージの中で帰りを待っていた幸子は突然かけられた声に驚きながら、同時に安堵感を覚えていた。

 

「良かった…。心配させないで下さいな。本社の一部がアーククレイドルに接触し、崩壊した時は駄目かとも思いましたわ」

 

「げっ…。結構ギリギリだったんだな」

 

「不動遊星がゾーンと名乗る者と対決している様子が中継されているのがここからも見えましたが…。あなたは何をしていたのですか?」

 

「遊星がやったのか…。うーん、俺は俺のやるべきことをやってたぜ」

 

「よく分かりませんが…まあいいでしょう。約束通り無事に帰ってきたのですから」

 

「幸子…ありがとうな」

 

「礼などいりません。仲間として心配くらいしますわ」

 

「それもだけど…俺が言いたいのはあの時、俺とお前が初めて会った時に荒れながらも俺の考えを受け止めてくれたことだぜ」

 

「えっ!?な、なんで今になってそのことを…?」

 

「お前があの時受け止めてくれたおかげで俺はあいつのことを受け止められたんだ…。だから…その、ありがとな」

 

「は、はあ…。まああの時はわたくしもあなたから教えてもらったことがありますし…お互い様ですわ」

 

「そっか」

 

外から段々と雑音が聞こえるようになってくる。その理由はアーククレイドルの墜落が阻止されたことでネオ童実野シティの住民が次第に避難場所から帰ってきたからだった。しかし、彼らの顔つきはどこか重々しいものだった。

 

「ネオ童実野シティが救われたっていうのにみんな暗いな…」

 

「…遊星とゾーンのデュエルが中継されたことで彼らにも破滅の未来に対する警告が為され、その事実が彼らの重荷となっているのでしょう」

 

「そうなのか…」

 

「恐らくアーククレイドルによってここ以外にもネオ童実野シティの一部が崩れ、復興活動を行わなくてはならないというのにこの様子では心配ですわね…」

 

「なら、俺達がまずやるべきことは一つだ!」

 

「「鬼柳!?」」

 

赤き竜によってアーククレイドルの消滅から逃れ、5D'sのメンバーとネオ童実野シティを守ったことの喜びを分かち合った後、彼らとあることを話してきた鬼柳がガレージに帰ってきていた。

 

「だけどとりあえず…お前らも無事で何よりだぜ」

 

「良かった…鬼柳もアーククレイドルの消滅に巻き込まれなかったんだな」

 

「俺だけじゃないぜ。遊星達5D'sも無事だ!」

 

「本当に良かったですわね…」

 

ネオサティスファクションのメンバーは皆で無事を喜び会った。そして話題は鬼柳の発言へと戻っていった。

 

「ところで先程やるべきことは一つ…と言ってましたが」

 

「ああ。遊星達とも話し合ったんだ。最終的には破滅の未来を回避するための一手を打たなきゃならねえんだろうが…まずは住民の活気を取り戻した方がいいってことになったんだ」

 

「そうは言ってもそんな簡単に戻るようなものじゃないぜ…?」

 

「いいや、一つだけあるぜ。俺達が住民の活気を取り戻せる方法が!」

 

「それは一体…?」

 

「忘れたのか?俺達が何のためにチームを結成したのか!」

 

「あっ!」

 

「まさか…」

 

「そうだ!今度のWRGP決勝、チーム5D's対チームネオサティスファクション!俺達のデュエルでみんなを…満足させてやろうぜ!」

 




やや短いですがここで区切らせてもらいます。次回からはWRGP決勝、チーム5D's対チームネオサティスファクション。鬼柳待望のサティスファクションのメンバーでのデュエルとなります。乞うご期待!

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