遊戯王5D'sタッグフォース 満足の意志を継ぐ者   作:ゾネサー

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自分が信じられるもの

コナミの(ライフ)を絶とうとハイパーサイコガンナー(スラッシュ)バスターの持つサイコガンから光線が放たれていた。

 

「コナミ…!?」

 

アキが声をあげる間にも光線はコナミへと向かっていく。光線は着弾し、コナミをDホイールごと爆風で包み込んだ。

 

「勝った…!」

 

「そんな……」

 

爆風からDホイールが抜け出し、地面に向かって落ちていく。そしてDホイールが地面に接触し……そのまま地面を駆け出した。

 

「何だと!?」

 

「けほっ、けほっ!…助かったぜクリアクリボー」

 

コナミは上を見上げ、光線から自分を守ってくれた精霊に礼を言った。礼を受け取ったクリアクリボーは笑顔を見せ、分裂させていた体を一つに戻してどこかへと消えていった。

 

「馬鹿な…!貴様はハイパーサイコガンナー/バスターのモンスター効果によってクロキシアンの守備力2000分のダメージをくらい、ライフを失ったはずだ!」

 

「俺はそいつに対して手札のクリアクリボーの効果を発動していたのさ!クリアクリボーは相手がダメージを与えるモンスター効果を発動した時、手札から捨てることでそのモンスター効果の発動を無効に出来る!」

 

「上手い!発動が無効になったことでハイパーサイコガンナー/バスターのライフ回復効果も封じたわ!」

 

「ちっ…。無駄な足掻きを!」

 

「だけど俺はその足掻きのおかげで生き延びたぜ!ディヴァイン…お前は足掻いてるか!?」

 

「何を言っている?私が足掻く必要などあるまい」

 

「あるさ…。お前達サイコデュエリストは“化け物”として認識されている。だからこそそんな認識をひっくり返すためには歴史改変なんかよりも足掻いてでも誰かに自分のことを認めてもらう必要があるだろ!」

 

「そんな必要などない!それこそ無駄な足掻きだ。私を受け止められるものなどいない!」

 

「…そんなことはないわ!ディヴァイン……」

 

「アキ?」

 

アキの声は震えていた。彼女の耳には自分の歯がガクガクと鳴っているのが聞こえていた。

 

「ふふ…アキ。まさか君が私に反論するなんてね」

 

ディヴァインはアキに近づいていく。そして彼女の(あご)にゆっくりと触れた。

 

「いけない子だ。このデュエルが終わったらあの頃のアキに戻してあげよう」

 

(ディヴァイン。昔あなたは私を騙し、道具としてアルカディア・ムーブメントを成長させるために使った。けれど…それでもあなたは受け止めてくれた。父親に“化け物”と恐れられ、傷ついた私を受け止めてくれた。確かに利用するためだったのかもしれない。それでも……)

 

「アキ!?危ねえ!」

 

ディヴァインがアキに危害を加えると思ったコナミはとっさにディヴァインに近付こうとした。しかし、彼女の一言で思わずDホイールを止めてしまった。

 

「ディヴァイン。私は…あなたを受け止められるわ」

 

「…何?」

 

ディヴァインはまるで信じられないものを見たかのように大きく目を見開いた。

 

「何を言っているんだアキ?私が君のことを騙していたことを今更知らないわけではないだろう?」

 

「ええ、知っているわ。だけどあなたに考えを委ね何も考えなかった昔じゃなく、今だからこそ分かるの。あの時あなたが私を受け止めてくれたのは…あなたの本心だったことを」

 

「な…!」

 

アキの震えが収まっていく。彼女はかつて遊星が自分のことを受け止めてくれたようにディヴァインを受け止めようと決意を固めていた。

 

「あなたは確かに非道な人だった。使えないと判断した人には容赦の無い人だった。けれど…あなたは私のように“化け物”と言われ、行くあてもなかった多数のサイコデュエリストをアルカディア・ムーブメントに迎えていた」

 

「…当然だ。イリアステルの力を得るためにサイコデュエリストを兵器として育てていたのだからな。その計画はそこの小娘に潰されてしまったが…」

 

頑なにディヴァインはアキの言葉を否定する。しかしアキは首を横に振り、それをさらに否定した。

 

「あの時は分からなかった。この不思議なつながりを表す言葉を私は知らなかった。…でも今なら分かるわ」

 

「やめろ…」

 

ディヴァインはアキから手を離し、後ずさっていく。まるで何かに怯えているかのように。

 

「私達の間にもあったのよ。——絆。あなたの中にも他人を思いやる気持ちが……」

 

「やめろと言っているだろう!私は…私は認めないぞ!“化け物”として扱われたあの日から…私は誰も信じないと誓った!信じられるのは自分の力だけだ。ましてや私が人を思いやるだと?そんなことあるはずが…」

 

「恐れないで…ディヴァイン!」

 

「…!?」

 

「恐れず諦めなければ途中でどれだけ困難が立ち塞がってもいつかは分かり合うことが出来る。私を…信じて!」

 

アキの言葉にディヴァインは一瞬固まる。だが彼はすぐに結論にたどり着いた。

 

「…私が信じられるのは私だけだ!アキ…君にも私を受け止められはしない!」

 

「そんな……!」

 

(ディヴァインに私の思いを届けることが出来なかった…。遊星…私はあなたのようにはなれないの?)

 

アキが失意に沈みそうになる。しかし、その前に声を張り上げたものがいた。

 

「ディヴァイン!デュエルで…俺に気持ちをぶつけてこい」

 

「何だと?」

 

「デュエルで…」

 

コナミの言葉でアキは遊星が自分のことを受け止めてくれた時のことを思い出した。

 

(そうだったわ…。遊星はデュエルで私の心の叫びを受け止めてくれた!自分でも制御出来なかった気持ちの暴走に立ち向かってくれた。なら今のディヴァインを受け止めるには…!)

 

「ふん。貴様に指図される謂れなどない。私は永続トラップ、安全地帯をハイパーサイコガンナー/バスターを対象に発動する!このカードによってハイパーサイコガンナー/バスターはあらゆる破壊を受け付けず、相手の効果の対象にもならない!」

 

「何ぃ!?」

 

ハイパーサイコガンナー/バスターが出現した電子空間に閉じ込められてしまった。

 

(シンクロモンスターを対象に吸収する機皇帝の対策として入れていたこのカードだが…安全地帯か。安全なところに避難し、サイコデュエリストを差別する一般人のようで実に不愉快なカードだ。ならば…壊してやろう)

 

「さらに私は手札から速攻魔法、サイクロンを発動する!このカードは場の魔法または罠カードを1枚破壊する!」

 

(俺の伏せてるトラップカード、リボーン・パズルは破壊されるか…)

 

「私は安全地帯を破壊する!」

 

「何だと!?」

 

電子空間を包み込むほどの台風が発生し、その強風に電子空間は存在を保ち続けることが出来ず消滅してしまう。そして電子空間に取り込まれていたハイパーサイコガンナー/バスターも共に消滅してしまい、フィールドに残ったのは身につけていた白い装備だけだった。

 

「安全地帯が場を離れた時、その対象となったモンスターは破壊される」

 

「一体何をする気だよ…!?」

 

「破壊するのだ…私が信じられないものは全てな!ハイパーサイコガンナー/バスターのもう一つの効果を発動!このカードが破壊された時、墓地のハイパーサイコガンナーを呼び戻す!」

 

「…!?」

 

フィールドに散らばっていた装備が空中のある一点に浮き、そこを中心に光の粒子が集まっていった。そして光の粒子が時間と共にあるべき姿へと変化していった。

 

ハイパーサイコガンナー 攻撃力3000

 

「嘘だろ…」

 

「そして今はまだ私のバトルフェイズだ。貴様の足掻きは無駄だったということを嫌でも身に染み込ませてやろう。ハイパーサイコガンナーで貴様にダイレクトアタックをする!」

 

ハイパーサイコガンナーは2丁のサイコガンを融合させ電磁を帯びた剣へと変え、コナミにその剣を振り下ろすべく向かっていった。

 

「まだだ…!まだ俺は足掻けるぜ!相手がダイレクトアタックしてきた時、墓地のクリアクリボーを除外することで俺はカードを1枚ドロー出来る。ドローしたのがモンスターカードならそいつを特殊召喚して攻撃対象をそのモンスターに変更するぜ!」

 

「小賢しい真似を!」

 

「行くぜ…ドロー!…ふぅ。ドローしたのは人造木人18(いんぱち)!モンスターだ!こいつを守備表示で呼ぶぜ!」

 

頑丈な装甲を身につけたロボットがハイパーサイコガンナーからコナミを守るように立ち塞がった。

 

人造木人18 守備力2500

 

「ちっ…悪運の強いやつめ。だが逃しはしないぞ!ハイパーサイコガンナーの効果により攻撃力が守備力を超えていればその分だけ貴様に貫通ダメージを与え、私はその数値分のライフを回復する!」

 

「やべえ…!」

 

ハイパーサイコガンナーの振るった剣は頑丈な装甲を容易く切り裂き、その衝撃はコナミにも及んだ。

 

「ぐうっ!?」

 

コナミ LP1200→700

 

コナミはサイコデュエルによるダメージを受けさらに体に毒が回ったのに対し、

 

「ふははは!」

 

ディヴァイン LP1500→2000

 

ディヴァインはライフを回復し、コナミとの差を確実に広げていた。

 

「私は場にカードを1枚伏せ、ターンを終了する。ふふ…顔色が悪いぞ?」

 

(これ以上は…やべえ。ただでさえ、恵とのデュエルでのダメージが抜けきってねえのに…!くそっ、持ってくれよ俺の身体…!)

 

ディヴァイン LP2000

 

フィールド 『ハイパーサイコガンナー』(攻撃表示)

 

セット1

 

手札0

 

「俺のターン、ドロー!俺は…チューナーモンスター、デブリ・ドラゴンを召喚する!」

 

激しい突風を巻き起こしながら翼も胴体も白く染まったドラゴンがコナミの場に飛翔した。

 

デブリ・ドラゴン 攻撃力1000

 

「デブリ・ドラゴンが召喚に成功した時、墓地の攻撃力500以下のモンスターを攻撃表示で特殊召喚出来る!戻ってこい、人造木人18!」

 

ドラゴンがさらに翼を羽ばたかせ、突風で地面に穴を空けると風に押し出されて頑丈な装甲を身につけたロボットがフィールドに押し戻された。

 

人造木人18 攻撃力500

 

「シンクロ召喚に必要なモンスターを揃えたか…」

 

「俺はレベル5の人造木人18にレベル4のデブリ・ドラゴンをチューニング!白銀の翼はためかせ敵を魅了しろ!シンクロ召喚!降臨せよ、蒼眼の銀龍!」

 

青く澄んだ瞳を持った白きドラゴンが突風を突き抜け、咆哮をあげた。

 

蒼眼の銀龍 守備力3000

 

「ち…あの時の忌々しいドラゴンか」

 

「銀龍が特殊召喚に成功したことで効果が発動するぜ!次のターンの終わりまで銀龍はカード効果では破壊されず、効果の対象にもならない!」

 

「そのモンスターで時間を稼ぐ気か。随分と消極的だな」

 

(恵に残ってる時間は少ない。…だけどここで焦ればあいつには勝てねえ!頼むぜ…銀龍!)

 

「俺はカードを1枚伏せてターンエンドだ!」

 

コナミ LP700

 

フィールド 『蒼眼の銀龍』(守備表示)

 

セット2

 

手札2

 

「私のターン!…パワー・インジェクターを召喚する!」

 

腕に取り付けた機械から伸びたコードが直接体に突き刺さったサイボーグが現れる。

 

パワー・インジェクター 攻撃力1300

 

「よし…。銀龍の守備力を超えるモンスターは出なかったか」

 

「馬鹿め。私は600のライフを払い…!パワー・インジェクターの効果を発動する!」

 

ディヴァイン LP2000→1400

 

ディヴァインが注入される毒に苦しみながらも、パワー・インジェクターのサイコパワーを解放させた。

 

「パワー・インジェクターの効果によりこのターン私の場の全てのサイキック族モンスターの攻撃力は500上昇する!」

 

「…!」

 

パワー・インジェクターが声にならない叫びをあげながら、ディヴァインの場を自らのサイコパワーによって満たしていった。

 

ハイパーサイコガンナー 攻撃力3000→3500

パワー・インジェクター 攻撃力1300→1800

 

「そんな…。これじゃあコナミの呼び出したドラゴンでも防ぐことは出来ない!」

 

「バトルだ!ハイパーサイコガンナーで貴様のドラゴンを粉砕する!」

 

ハイパーサイコガンナーは満ちていくサイコパワーを取り込み、力を増幅させた剣を銀龍の翼めがけて振り下ろした。

 

「まずはハイパーサイコガンナーの効果で貫通ダメージをくらえ…!」

 

「くらうわけにはいかねえ!速攻魔法、ピラミッドパワーを発動!このターン俺のフィールドにいるモンスターは守備力が500アップする!」

 

「何!?」

 

コナミのフィールドに光で形成されたピラミッドが完成し、白銀の翼がピラミッドに宿る力を受け巨大化していった。

 

蒼眼の銀龍 守備力3000→3500

 

「受け止めろ銀龍!」

 

振り下ろされた剣は巨大化した銀龍の翼に挟み込まれ、白刃どりによって防いだ形となった。

 

「ちぃ…!」

 

「どうだディヴァイン!俺にだってお前のことを受け止めることは出来るんだぜ!」

 

「…ふん。かろうじて防いだくらいで何を言う。私はこれでターンを終了する!この瞬間パワー・インジェクターの効果が切れ、攻撃力は元に戻る」

 

「こっちもピラミッドパワーの効果が切れて守備力は元に戻る…」

 

ハイパーサイコガンナー 攻撃力3500→3000

パワー・インジェクター 攻撃力1800→1300

 

蒼眼の銀龍 守備力3500→3000

 

ディヴァイン LP1400

 

フィールド 『ハイパーサイコガンナー』(攻撃表示) 『パワー・インジェクター』(攻撃表示)

 

セット1

 

手札0

 

「俺のターン、ドロー!この瞬間、銀龍の効果が発動するぜ!墓地の通常モンスター、ジェネクス・コントローラーを復活させる!」

 

頭の左右にアンテナがついたロボットが銀龍の羽ばたきに押し出されフィールドに帰還した。

 

ジェネクス・コントローラー 攻撃力1400

 

(…後ろに乗ってる恵のモーメントがさらに弱まってやがる。もうほとんど時間は残ってねえ。…やるしかねえのか!)

 

「俺は手札からギガテック・ウルフを召喚する!」

 

鉄屑で作られたオオカミが金属音と共に場に降り立った。

 

ギガテック・ウルフ 攻撃力1200

 

「そしてレベル4のギガテック・ウルフにレベル3のジェネクス・コントローラーをチューニング!」

 

「これは……」

 

ジェネクス・コントローラーが特殊な電波を飛ばし、ギガテック・ウルフの姿を変えていく。

 

「3つのエレメントを司るものよ、炎の力を拳に宿しあらゆる敵を焼却せよ!シンクロ召喚!燃やし尽くせA・ジェネクス・トライフォース!」

 

ジェネクス・コントローラーが変貌したギガテック・ウルフの胸部にあるコアに装填される。突き出した右腕にある3つの装置のうち、オレンジのものが点灯した。

 

A・ジェネクス・トライフォース 攻撃力2500

 

「だがそんなモンスターではパイパーサイコガンナーを倒すことは出来ないぞ」

 

「パイパーサイコガンナーは倒せなくてもお前の場にはもう1体モンスターがいるだろ!バトルだ!トライフォースでパワー・インジェクターに攻撃するぜ!」

 

トライフォースは右手を突き出し、火炎放射を放った。パワー・インジェクターはなすすべなく炎によって燃え尽きてしまう。

 

ディヴァイン LP1400→200

 

「ぐっ…!」

 

「そして炎属性をシンクロ素材にしたトライフォースの効果を発動だ!相手モンスターを戦闘で破壊した時、その攻撃力分のダメージを相手に与える!」

 

「…!」

 

「パワー・インジェクターの攻撃力は1300。これが通ればディヴァインは……」

 

トライフォースがさらに火炎放射をディヴァインに向かって放つ。

 

「ディヴァイン……」

 

思わずアキがディヴァインの名を呼ぶも既に火炎放射はディヴァインの至近距離まで近づいており、彼に避ける術はなかった。

 


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