遊戯王5D'sタッグフォース 満足の意志を継ぐ者   作:ゾネサー

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たった一人で

鬼柳のシンクロモンスターの力を合わせた一撃にパラドックスのライフは0となり、パラドックスのライフと直結していた遊星ギアが破壊された。

 

「希望…か。私がその感情を未だ胸に秘めていたとはな。最後にそのことを知ることが出来て良かった」

 

「最後だと?……お、おい!?」

 

糸が切れたマリオネットのようにパラドックスの身体は崩れていった。

 

「ふ…やはり限界か」

 

「どういうことだよ…!?」

 

「元よりこの機械の身体は歴戦のデュエリスト達に敗れた時点で機能が停止していた。ゾーンによってお前達との戦いのため一時的に復活していただけのこと。私はゾーンのため警戒対象の一人である貴様を抹殺し、共に尽き果てる覚悟だったのだがな…」

 

「ふざけんなよ!デュエルで人が死ぬなんてのはもうこりごりだぜ!何か…何かねえのかよ!」

 

「安心しろ…私は既に遥か未来に死を迎えている。私は所詮あの時の私の絶望の記憶から生み出された機械だ。それにこの身体は未来のモーメントによって動かされている。この時代のモーメントではどうすることも出来ない」

 

「ならどうやってゾーンはお前を復活させたんだよ!ゾーンならお前の身体に未来のモーメントを移す方法があるんじゃねえのか!」

 

「ふ…貴様は希望を捨てないのだな。だがこのモーメントは別のロボットから移されただけのこと。本来モーメントは永久機関だが…一定以上の量があることが条件だ。しかし、互いに動くためにはこの微量なモーメントを引き継ぐしかなかったのだ」

 

パラドックスが口を動かすたびに彼の身体に無理が生じ、傷ついた身体の節々から火花が散っていた。

 

「もういい!喋るな…」

 

「おかしな話だ。何故貴様は私を心配する?先ほどまで私たちは命のやり取りをしていたのだぞ」

 

「……俺は一度ダークシグナーになり、たくさんの人々を地縛神の生贄にした。それでも…命のやり取りをしたっていうのに手を差し伸べてくれた奴らがいた!それで分かったんだよ。誰かを助けようという気持ちに理由なんていらねえ!ただ助けたいって気持ちがあれば手を伸ばす。それが当たり前じゃなきゃならねえんだってな」

 

彼は今でも鮮明に思い出すことが出来た。あの時彼らが伸ばしてくれた手を。そしてその時に抱いた気持ちを。

 

「お前らだってそうだろうよ…。アポリアが言っていたぜ。俺たちの未来はいずれ破滅する。だから未来の人々を助けるためにお前らは俺たちを全力で倒そうとしたんだ」

 

「…そうだ。私達は失った両親や友、共に生きていた大勢の人々を救わねばならない。それが生き残った者の使命なのだから」

 

「だけどお前らはそのためにこの時代の人々を犠牲にしようとしている。それじゃダメなんだ!絶対どこかにあるはずなんだ…!過去も未来も救える道が!」

 

「ふふ…子供のような理想ばかりを追い求めた考えだ。現実はそう上手くは行かない。だが……」

 

パラドックスの声がどんどん小さくなっていく。彼は力を振り絞って…呟いた。

 

「その考えを本当に切り捨てても良かったのだろうか?我が友、ゾーンよ……」

 

その言葉を最後に彼は口を閉ざしてしまった。

 

「……まさか」

 

鬼柳はパラドックスの肩を掴み、揺らした。しかし反応が返ってくることはなかった。

 

「くそっ!」

 

彼は床を全力で殴り、胸の中のもやもやした感情を晴らそうとした。

 

「…進むしかねえか。パラドックス…お前の想いは俺が受け取ったぜ」

 

彼はDホイールを太陽ギアへ繋がる道へと向ける。パラドックスを一度振り返った後、Dホイールを走らせていった。

 

時を同じくしてコナミのDホイールの改造が終了していた。

 

「よし…。これでやっとアーククレイドルに向かうことができるぜ」

 

「気をつけていきなさい。鬼柳が先に向かったことであちらも警戒しているでしょうから」

 

「そっか…。十分に気をつけるぜ。幸子も早く避難を…」

 

「もう遅いでしょう。今から避難をして間に合うと思いますか?」

 

彼らの窓から見えるアーククレイドルは鬼柳が向かう前より目に見えて近づいてきていた。

 

「でもこのまま何もしないよりは…」

 

「…庶民。あなた達がアーククレイドルを止めてきてくれるのでしょう?なら問題はないですわ」

 

「幸子…」

 

「早くお行きなさい。そしてここに返って来ること。約束ですわよ?」

 

「…ああ!約束だ!」

 

コナミはDホイールを宙に浮かせ、アーククレイドルに向けて走らせていった。彼は向かう途中、アーククレイドルに向かう虹の道が出現していたのを目にした。

 

「何だあれは…?…あそこを走っているのは遊星達か!?」

 

遊星達、チーム5D'sのメンバーはチームラグナロクに旧モーメントを利用して虹の架け橋をアーククレイドルに架けてもらい、アーククレイドルに渡ることに成功していた。

 

「俺も急がねえとな…!」

 

コナミはDホイールを走らせ、遊星達より後にアーククレイドルに到着した。

 

「ここがアーククレイドルか。遊星達や鬼柳はどこだ…?」

 

コナミは周りを見渡す。するとアーククレイドルに空いた大きな穴が目に入った。

 

「もしかして…」

 

彼は穴に近づき、下を覗いた。すると3つに分かれた道が穴の中にあることを確認することができた。

 

「他に空いている所はねえ。なら…」

 

コナミは着地させていたDホイールを浮かせ、その穴に突入しようとした。しかし背後から声を掛けられ、コナミは遊星達かと思い後ろを振り返った。だがコナミの予想は大きく外れていた。

 

「…あなたの相手は私」

 

「め、恵!?どうしてここに…?」

 

コナミに声を掛けたのは銀髪の少女、レイン恵だった。

 

「もしかしてイリアステルに連れ去られたのか!?」

 

「…聞こえなかったのならもう1度言う。あなたの相手は私」

 

「…本気で言ってるのか?」

 

「冗談でこんなことは…言わない」

 

恵はコナミをはっきり見つめて言い切った。

 

「嘘だと言ってくれよ…。またお前と戦いたいってのはこんな所で戦いたいって意味じゃないんだぜ?」

 

「…私もその時は違う意図を込めて言った。けど結果として私はあなたと戦わなくてはならない」

 

「何でだよ…。俺とお前が戦わなきゃならない理由なんてないだろ!」

 

「理由を知りたいのなら…付いてきて」

 

機械的な音と共にアーククレイドルの一部が開いていく。彼女はそこに入っていった。

 

「……」

 

コナミは一瞬そこに入るのをためらってしまう。入ればとんでもない事実を突きつけられてしまうような予感がしたからだ。しかしここで止まっていては何も解決しない。

 

「くそっ!」

 

コナミは恵が向かった場所へDホイールを走らせた。その道は近未来的で彼が見たことのない技術が使われていることを伺わせる。それがコナミの中に渦巻く不安を大きくさせていった。その道を走る時間は決して長くはなかったが、コナミにとっては長く感じられた。彼のDホイールはそんな経緯を経て、一つの部屋に突入した。

 

「…ここは?」

 

コナミは部屋を見回した。すると奥に金色に輝く巨大な歯車とそれに繋がっている何かを見つけた。

 

「…ここまで来れば私が何かあなたにも分かるはず」

 

「お前も…アポリアみたいにロボットなのか。アポリアは未来からやってきたと言ってた。ってことはお前の正体は…」

 

恵は背中からコードを出し、背後の歯車と繋がっていた。

 

「そう、私も彼と同じく未来からやってきた。破滅の未来から生み出された絶望によって」

 

「絶望…?」

 

「アポリアは愛してくれる者がいなくなった絶望、愛する者がいなくなった絶望、愛さえいらなくなった絶望の3つの絶望からロボットとして創造主ゾーンによって生まれ変わった」

 

「それであいつらはプラシド、ルチアーノ、ホセの3人に分かれていたのか…。だけどゾーンってのは誰だ?」

 

「ゾーンは破滅の未来に立ち向かっていた4人の生き残りの中で今も唯一生き残っている者。そして未来の運命を変えるために私たちを導く者」

 

「親玉ってわけか…」

 

「ゾーンのいる太陽ギアにたどり着くためには私と繋がっている遊星ギアを破壊しなくてはならない。そして遊星ギアを破壊するには私のライフを0にしなくてはいけない」

 

「だからお前と戦わなきゃいけないってことか?意味がわからないぜ!何で俺とお前がこんなことをしなきゃならねえ!」

 

「アポリアが3つの絶望によって生まれたように私もある絶望から生み出された。その絶望があなたと戦わなくてはいけない理由」

 

「どういうことだよ…!?」

 

「私を生み出した絶望。それは……」

 

恵は太陽ギアがある方向へと振り返る。数瞬の後、コナミへと向き直した。

 

「…世界で最後の一人になってしまった絶望」

 

「なっ…!?それって……」

 

「そう。私はゾーンの絶望から生まれた。だからこそあなたをゾーンの元に行かせるわけには行かない」

 

恵の身体から無数のコードが伸びていき、遊星ギアを覆い隠すように広がっていった。

 

「あなたは私に希望を抱かせていた。だけどゾーンには時間がなくなってしまった」

 

「最後の生き残り、そして時間がなくなった……って。もしかして…!?」

 

「あなたが想像している通り、彼の寿命も尽きかけている。だからこそあなた達が導き出す未来を見ている余裕はなくなった。だから過去のモーメントをアーククレイドルによって葬ることで未来の人々を確実に救わなくてはならない」

 

「そんな…。だけどアーククレイドルが落ちれば大勢の人達が犠牲になる!これじゃ未来の人々を救えても意味がないだろ!」

 

「それでも確実に犠牲者は減る。それで未来を救えるなら…必要な犠牲」

 

「…っ!ふざけるな!」

 

「…ならあなたはどうしろと言うの?」

 

「俺達が何とかして未来を変えれば…!」

 

「…確かにあなた達は大きく成長している。それは私もゾーンも分かっている。だけどさっきも言った通り、ゾーンには時間がない。あなた達が確実に未来を変えられる保証なんてない」

 

「くっ…」

 

「…それでもあなた達が未来を変えられるというのなら。示して、このデュエルで」

 

「…!」

 

恵がディスクを展開し、コナミに向かって構えた。

 

「…分かったよ。やるしかねえ!」

 

コナミも覚悟を決め、ディスクを展開して恵に向かい合う。

 

「あなたにはこのデュエルで私が味わった絶望を味わってもらう。もし乗り越えられなければ、未来を変えることは出来ないと判断する」

 

「…乗り越えてやるよ!」

 

「 「 デュエル! 」 」

 

コナミと恵のデュエルが始まる。先攻のランプがついたのはコナミ。

 

「俺のターン、ドロー!俺はギガテック・ウルフを召喚!」

 

鉄屑から作られたオオカミがフィールドに降り、遠吠えをあげた。

 

ギガテック・ウルフ 攻撃力1200

 

「カードを2枚伏せてターンエンドだ!」

 

コナミ LP4000

 

フィールド 『ギガテック・ウルフ』(攻撃表示)

 

セット2

 

手札3

 

「私のターン、ドロー。私はピラミッド・タートルを召喚」

 

黄金に輝くピラミッドを甲羅のように背負った亀がフィールドに現れた。

 

ピラミッド・タートル 攻撃力1200

 

「そのモンスターは…!」

 

「バトル。ピラミッド・タートルでギガテック・ウルフに攻撃」

 

オオカミとカメは互いに体当たりでぶつかりあい、その衝撃で発生した爆風と共に2体とも破壊されてしまう。

 

「ピラミッド・タートルが戦闘で破壊されたことでデッキから守備力2000以下のアンデット族モンスターを呼び出すことができる」

 

「確かこの前は攻撃力2400の龍骨鬼を…!」

 

「私が呼び出すのは…守備力1050のゴブリンゾンビ」

 

爆風が晴れるとそこには体が骨のみになってしまったゾンビが現れていた。

 

ゴブリンゾンビ 攻撃力1100

 

「攻撃力1100のゴブリンゾンビを…?」

 

「さらにバトル。ゴブリンゾンビで追撃」

 

ゾンビは短剣を取り出し、無防備なコナミに向かって斬りかかった。

 

「ぐっ…!?」

 

コナミ LP4000→2900

 

「さらにゴブリンゾンビの効果であなたのデッキトップのカードが墓地へ送られる」

 

ゾンビの呪いでコナミのカードが墓場へと埋葬されてしまう。

 

「カードを2枚伏せてターンエンド」

 

レイン恵 LP4000

 

フィールド 『ゴブリンゾンビ』(攻撃表示)

 

セット2

 

手札3

 

「先制ダメージを貰っちまったか。だけど、ここからだ!俺のターン、ドロー!俺はチューナーモンスター、ジェネクス・コントローラーを召喚するぜ!」

 

頭の左右にアンテナをつけたロボットがフィールドに降り立った。

 

ジェネクス・コントローラー 攻撃力1400

 

「チューナー…」

 

「そして手札から魔法カード、アイアンコールを発動!俺のフィールドに機械族モンスターがいる時、墓地からレベル4以下の機械族モンスターを特殊召喚出来る。戻ってこい、ギガテック・ウルフ!」

 

地面に空いた穴から金属音を響かせながら、オオカミがフィールドに帰還した。

 

ギガテック・ウルフ 攻撃力1200

 

(…来る。あなたを破滅へと導く絶望が)

 

「俺はレベル4のギガテック・ウルフにレベル3のジェネクス・コントローラーをチューニング!」

 

ジェネクス・コントローラーが特殊な電波を飛ばし、ギガテック・ウルフの姿を変貌させていく。

 

「3つのエレメントを司るものよ、炎の力を拳に宿しあらゆる敵を焼却せよ!シンクロ召喚!燃やし尽くせA(アーリー)・ジェネクス・トライフォース!」

 

ジェネクス・コントローラーが変貌したギガテック・ウルフの胸部にあるコアに装填される。突き出した右腕にある3つの装置のうち、オレンジのものが点灯した。

 

A・ジェネクス・トライフォース 攻撃力2500

 

「炎属性をシンクロ素材にしたトライフォースは相手モンスターを戦闘で破壊した時、その攻撃力分のダメージを相手に与える!これで一気に……」

 

「…そうはいかない。私は先ほどあなたに言ったはず。あなたには絶望を味わってもらうと。永続トラップ、調律師の陰謀を発動する!相手フィールドに特殊召喚されたシンクロモンスターのコントロールを得る!」

 

「な、何!?」

 

フィールドに鐘が響き渡る。その音を聞いてしまったトライフォースは恵の方に行ってしまった。

 

「パラドックス。アンチノミー。アポリア。私に手を貸してくれた彼らはもう生きてはいない。それでも一人で戦わなくてはいけない辛さ。あなたにも味わってもらう」

 

「く…まだだ!手札からオーバーロード・フュージョンを発動する!墓地のモンスターを除外して闇属性・機械族の融合モンスターを融合召喚するぜ!俺は墓地のキャノン・ソルジャーとギガテック・ウルフを除外!」

 

「キャノン・ソルジャー…ゴブリンゾンビの効果で墓地に」

 

「全てを発射する戦士よ、鉄屑のオオカミと一つとなり新たな力を手に入れろ!融合召喚!その射撃で敵を射ぬけ、迷宮の魔戦車!」

 

青くコーティングされた機体の先端に赤いドリルが付けられた戦車が出陣した。

 

迷宮の魔戦車 攻撃力2400

 

「…私も足掻いた。あなたのように融合召喚に救いを求めたこともあった」

 

「恵…」

 

「…私はトラップカード、ヘル・ポリマーを発動!私の場のモンスター、ゴブリンゾンビをリリースすることであなたの場に融合召喚されたモンスターのコントロールを得る」

 

「迷宮の魔戦車まで…!?」

 

ゴブリンゾンビが火葬されていくと、その火が縄のように戦車に伸びていき、強引に恵の場に引っ張っていった。

 

「私は融合召喚を極めた。それでも破滅からは逃れられなかった。そこからゾーンは英雄伝説に救いを求めた」

 

「英雄伝説?」

 

「私達のいる未来にも伝わってきた。不動遊星が英雄として人々を突き動かし、世界を救った伝説が」

 

「遊星が…!?」

 

「ゾーンは遊星のデータを集め、それを自らに移植した。元々あった人格や性別を消去し、完全に不動遊星として成り代わった。そして不動遊星として人々を救うために行った彼の活動は一時成功したかに見えた」

 

「…成功しなかったのか?」

 

「何もかもが遅すぎた。ゾーンが行った活動は人々を救うには至らなかった…。だからゾーンはこの時代に来た時、不動遊星に注目し希望を持っていた」

 

「ゾーンが遊星に希望を…」

 

「そして私達が来た影響からか鬼柳京介も進化を遂げた。ゾーンも希望を託しオーガ・ドラグーンを託した」

 

「あの石版はゾーンが降らせたのか…!?」

 

「そう。…だけどこれも遅すぎた。人間には寿命がある。ゾーンはあなた達の進化を認めてはいる。だけどあなた達が未来を変える確証が無ければ、ゾーンはこの計画を変える気はない」

 

「…デュエルで見せてやるよ。俺たちが絶望を乗り越えることで証明してやる!」

 

「…デュエルを続行する。フィールドから墓地へ送られたゴブリンゾンビの効果でデッキから守備力1200以下のアンデット族モンスター、馬頭鬼(めずき)を手札に加える」

 

ゾンビの呼び声に応じ、恵の手に新たなモンスターがもたらされた。

 

「俺はカードを1枚伏せてターンエンドだ!」

 

コナミ LP2900

 

フィールド 無し

 

セット3

 

手札0

 

「私のターン。私は馬頭鬼を召喚する」

 

斧を振り回しながら、馬の頭をした鬼がフィールドへと降りて来た。

 

馬頭鬼 攻撃力1700

 

「バトル。まずは馬頭鬼でダイレクトアタック」

 

鬼は斧を振りかぶり、コナミへ振り下ろそうとする。

 

「させるか!速攻魔法、スケープ・ゴート!俺のフィールドに4体の羊トークンを特殊召喚する!」

 

黄色、青、ピンク、オレンジの色をした羊がフィールドを浮遊しだした。

 

羊トークン×4 守備力0

 

振り下ろされた斧は青色の羊を切り裂いた。

 

「…とっさに壁モンスターを。だけどまだあなたのモンスターの攻撃が残っている。行って…!」

 

コナミの信頼する2体のモンスターが黄色とピンクの羊を突き飛ばしていった。

 

「くっ…!」

 

「私はこれでターンエンド」

 

レイン恵 LP4000

 

フィールド 『A・ジェネクス・トライフォース』(攻撃表示) 『迷宮の魔戦車』(攻撃表示) 『馬頭鬼』(攻撃表示)

 

セット0 『調律師の陰謀』

 

手札4

 

「俺のターン、ドロー!俺は手札から命削りの宝札を発動する!このカードによって手札が3枚になるようにドローする!」

 

コナミは上から向かってくるギロチンを躱し、3枚のカードを手に収めた。

 

「カード・ブロッカーを召喚!こいつは召喚に成功した時、守備表示になる!」

 

小さな戦士が場に現れ、オレンジ色の羊を守るように盾を構えた。

 

カード・ブロッカー 守備力400

 

「カードを2枚伏せて…ターンエンドだ!」

 

「防御を固めてきた…。でもそれでは乗り越えることは出来ない」

 

コナミ LP2900

 

フィールド 『羊トークン』(守備表示) 『カード・ブロッカー』(守備表示)

 

セット4

 

手札0

 

「私のターン!…私はフィールド魔法、アンデット・ワールドを発動する!」

 

「…!」

 

フィールドが闇に飲まれていき、フィールドのモンスターがアンデット化していった。

 

「このカードがある限り互いのフィールド、墓地のモンスターはアンデット族となり、手札からアンデット族モンスター以外のモンスターをアドバンス召喚することは出来ない」

 

「ますます不利に…」

 

「このままあなたを倒す。バトル。私はトライフォースでカード・ブロッカーを攻撃する」

 

トライフォースが右手を突き出し、火炎放射を戦士に向かって放った。

 

「カード・ブロッカーの効果発動!デッキの上から3枚のカードを墓地に送ることで守備力が1500アップする!」

 

「それでも…この攻撃は防げない」

 

戦士の盾が大きくなっていくも、火炎放射の威力に耐えきれず戦士はやられてしまった。

 

「そして…炎属性をシンクロ素材にしたトライフォースの効果発動」

 

「あっ…!?」

 

「戦闘で破壊したモンスターの攻撃力分のダメージを相手に与える…!カード・ブロッカーの攻撃力は400」

 

トライフォースの放った火炎放射がコナミを襲った。

 

「トライフォース…。お前の効果を俺が受けることになるなんて…!」

 

コナミ LP2900→2500

 

「まだ攻撃は残っている。馬頭鬼で最後の羊トークンへ攻撃」

 

鬼の斧によってオレンジ色の羊も切り裂かれてしまった。

 

「そして迷宮の魔戦車でコナミにダイレクトアタック」

 

ドリルが回転していき、そのままコナミへと突っ込んでくる。

 

「俺は……。くっ!」

 

コナミは腕をクロスさせ衝撃を抑えようとするも、そのまま大きく後ろに飛ばされてしまった。

 

コナミ LP2500→100

 

「今のあなたは信頼するモンスターに攻撃され肉体的にも精神的にも辛いはず……」

 

「まだ…だ!トラップ発動、運命の発掘!俺が戦闘ダメージを受けた時、カードを1枚ドロー出来る!」

 

コナミは傷ついた腕を伸ばし、カードを引き抜いた。

 

「だけどあなたのライフは残りわずか。次のターンで終わらせる。私はこれでターンエンド」

 

レイン恵 LP4000

 

フィールド 『A・ジェネクス・トライフォース』(攻撃表示) 『迷宮の魔戦車』 『馬頭鬼』(攻撃表示)

 

セット0 『調律師の陰謀』『アンデットワールド』

 

手札4

 

「俺の…ターン!カード・ブロッカーの効果で墓地へ送られたキラー・スネークの効果発動!このカードは墓地から手札に戻すことができる!」

 

ヘビが地面を突き破り、コナミの手札へと加わっていった。

 

「そして俺はチューナーモンスター、A・ジェネクス・ケミストリを召喚!」

 

背中にタンクを背負い、タンクと繋がっている鉄砲を持った機械兵が現れた。

 

A・ジェネクス・ケミストリ 攻撃力200

 

「チューナー…でもシンクロ出来る素材は揃っていない」

 

「…それはどうかな?俺はこのチャンスを待ってたんだ!トラップ発動、シンクロ・マテリアル!このターンのバトルフェイズを行えない代わりに相手のモンスター1体をシンクロ素材にすることができる!」

 

「私のフィールドのモンスターを…!」

 

「俺が選ぶのは迷宮の魔戦車だ!レベル7の迷宮の魔戦車にレベル2のA・ジェネクス・ケミストリをチューニング!闇のエレメントを司る者よ、欲を制御し力を希望に変えろ!シンクロ召喚!汽笛を鳴らせ、レアル・ジェネクス・クロキシアン!」

 

黒い蒸気機関車が姿を現し、蒸気を噴き上げた。

 

レアル・ジェネクス・クロキシアン 攻撃力2500

 

「そしてレアル・ジェネクス・クロキシアンがシンクロ召喚に成功した時、相手フィールドの1番レベルが高いモンスターのコントロールを得る!」

 

「なっ…。私のフィールドで最もレベルが高いのは…」

 

鐘によって操られていたトライフォースが蒸気をかけられて目を覚まし、コナミのフィールドへと戻っていく。

 

「トライフォースは奪い返させてもらったぜ!確かに一人で戦うのは辛すぎる。だけど俺たちは時間がある。そして仲間もいる。だから俺たちは絶望せずに未来を救ってみせる!」

 

「……!」

 

「俺はカードを1枚伏せてターンエンドだ!」

 

コナミ LP100

 

フィールド 『レアル・ジェネクス・クロキシアン』(攻撃表示) 『A・ジェネクス・トライフォース』(攻撃表示)

 

セット3

 

手札1

 

「私のターン、ドロー。……!」

 

恵がドローしたカードを見ると明らかに表情が険しいものへと変わっていった。

 

「コナミ。確かにあなたは絶望を乗り越えたように見える。だけどここからが本番、あなたはまだ乗り越えたわけではない。本当の絶望を…!」

 

「何だって…!」

 

「先ほど言ったように私は融合召喚を極めた。あなたのように融合召喚に救いを求めて。だけど、このカードでは解決することが出来なかった。でも私はこのカードで…あなたを倒す。手札のカードを1枚墓地に送り、私は手札から速攻魔法を発動する!」

 

突然フィールドに猛風が吹き荒れる。油断すれば簡単に飛ばされそうになるほどの風にコナミは必死に耐えていた。

 

「力を解き放て。——超融合!」

 

「超…融合だって?」

 

「このカードの効果でフィールドから任意のモンスターを選び、融合する!」

 

「フィールドのモンスターって…俺のモンスターも融合素材に出来るのか!?」

 

「そう。そしてあなたはこのカードの発動に対してあらゆるカードを発動することは出来ない!」

 

「なっ…それじゃあ防ぎようがねえじゃねえか!」

 

「その通り。本当の絶望は防ぐことが出来ないもの…!私はあなたのトライフォースとレアル・ジェネクス・クロキシアンを融合させる!あなたはこれをただ見ているしかない!」

 

「くっ。なんてカードだ……!」

 

コナミのモンスターを取り込み、現れたのは悪魔のようなツノが生えた邪悪なドラゴン。体がゾンビのように骨で形成され、翼は闇に染まっていた。

 

「…融合召喚。絶望をもたらせ、冥界龍 ドラゴネクロ!」

 

冥界龍 ドラゴネクロ 攻撃力3000

 

「何だこいつは…!?」

 

邪悪なドラゴンが低く唸るように咆哮をあげ、コナミを威圧した。この龍の力を前にコナミは立ち向かう事が出来るのだろうか……。

 

 


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