遊戯王5D'sタッグフォース 満足の意志を継ぐ者 作:ゾネサー
ホセの操る3体目の機皇帝、グランエルが幸子の前に現れた。グランエルは鬼柳の力である煉獄龍 オーガ・ドラグーンを吸収し、無防備な幸子に向かって無慈悲な一撃を浴びせ、幸子をDホイールごと海上レーンの外へと飛ばしてしまったのだった。
「あの女は終わりだな。俺のワイゼルを葬った罰だ」
「ホセのグランエルは僕たちの機皇帝とは比べ物にならないパワーがあるからね。あの女じゃ衝撃に耐えられないのは当然だね!」
海へと放り出された彼女はDホイールから投げ出されそうになるも、ハンドルを強く握り体勢を持ち直した。だが、当然Dホイールはそのまま海面へと向かっていく。
「まずいぞコナミ!あんな高さから海へと叩きつけられたら…!」
「Dホイールが木っ端微塵に砕けて、幸子もタダじゃすまねえ…!くそっ!」
とっさにコナミはピットから出て行き、幸子の方へと走り出す。
「…ダメだ。この距離じゃどう足掻いても助けらんねえ!」
しかし、海上レーンは遥か先にありとても間に合いそうにない。コナミはその場で膝を折ってしまう。
「俺の馬鹿野郎…!幸子は精霊も何も持ってねえ。危険なことくらい少し考えれば分かったじゃねえか!なのに俺は機皇帝の対策ばかりに気を取られて…!」
コナミは拳を強く握りしめ、地面を思い切り叩いた。彼の手からは爪が皮膚に刺さったことで血が流れていたが、それを気にする様子はなかった。
「…おかしい。何故聞こえぬ」
一方ホセは違和感を感じていた。彼は落ちていく彼女を見てロボットであることを生かし、聴覚を研ぎ澄まさせた。しかし、彼にはある音が聞こえなかった。そう…彼女が水に落ちる音が。
「しかもこの音は…」
その代わりに彼に聞こえていたのは…モーメントのエネルギーが回転する音だった。
「力を持たないわたくしが何の策も無しに戦いに
「何!?」
どこからか聞こえて来た声にホセは後ろを見る。しかし、そこには誰もいない。左にも右にも、勿論前にもいない。
「…まさか」
ホセはモーメントの音を頼りに彼女を発見した。
「ふふ…わたくしは無事ですわ」
彼女はホセの上に陣取り、空飛ぶDホイールに跨っていた。
「何だと…!?」
「わたくしの財閥…海野財閥はDホイールを製造していますの。このDホイールにはわたくしの財閥が開発中の機能を施させていたのですわ。本来動力として用いるモーメントのエネルギーを下に向かって噴射することで空を飛ぶことを可能にする機能を…ね」
「…その機能を使うことで海面への衝突を避けていたということか」
「そういうことです。さて、バトンを庶民へと繋げるとしましょうか」
幸子はDホイールを操り、ピットへと戻っていく。しばらくすると地面にへたりこんでいるコナミの姿が見えた。
「幸子!良かった…。無事だったんだな!」
「当然ですわ。それより早くピットに戻りなさいな!まだ戦いは終わっていませんのよ!」
「…おう!」
コナミは立ち上がり、ピットへと戻っていった。
ホセ LP8000
フィールド 『グランエル
セット1 『無限牢』 『スカイ・コア』(セット状態) 『ワイズ・コア』(セット状態) 『煉獄龍 オーガ・ドラグーン』
手札4
コナミは鬼柳と幸子によって繋げられたバトンを受け取り、ピットから出ていき、ホセへと追いついた。
「行くぜ…!あいつらの思いは無駄にはしねえ!」
「お前達に教えてやろう…。希望とは絶望にしか繋がらないものだということを!」
「 「 デュエル! 」 」
デュエルのダメージを実体化させてしまう∞のマークが2人を囲い、互いのラストホイーラー同士の戦いが幕を開けた。
「俺のターン、ドロー!……こいつは」
コナミ sc5→6 ホセ sc4→5
「そうだ…。俺は一人で戦ってるんじゃねえ。俺を支えてくれた仲間と共に戦ってるんだ!行くぜ、ホセ!」
「来るがいい」
「俺はプロト・サイバー・ドラゴンを召喚する!」
部品の一つ一つが銅線によって結ばれた小型の機械龍が現れた。
プロト・サイバー・ドラゴン 攻撃力1100
「こいつはフィールドにいる限りサイバー・ドラゴンとして扱われるぜ!」
機械龍の後ろに出来た影が大きくなっていき、影だけならばサイバー・ドラゴンそのものとなった。
「そんなモンスターで何が出来る。私の場には攻撃力7000の機皇帝グランエル∞がいるのだぞ!」
「こいつは相川から譲り受けた魂のカードだ…。こいつでグランエルを倒してみせる!行くぜ!俺はサイバー・ドラゴンを使って融合召喚を行う!」
「何?」
フィールドに渦が発生し、サイバー・ドラゴンを取り込んでいった。
「融合召喚は2体以上のモンスターと融合のカードが必要な召喚方法のはずだが…?」
「ああ、そうだぜ。だけどサイバー・ドラゴンはフィールドの機械族モンスターを取り込み、融合カード無しで融合召喚を行うことが出来る!俺はサイバー・ドラゴンと…機皇帝グランエルの5体のパーツを融合する!」
「馬鹿な…!?」
「サイバー流融合召喚!来てくれ…キメラテック・フォートレス・ドラゴン!」
機皇帝が渦の吸引力に負けてオーガ・ドラグーンを解放し、吸い込まれていく。サイバー・ドラゴンと機皇帝が一つとなり、6つ首の機械龍が生まれ出でた。
キメラテック・フォートレス・ドラゴン 攻撃力0
「ワシの機皇帝を使った融合…だと?」
「そうだ!これが相川から受け取った力だ…!そしてキメラテック・フォートレス・ドラゴンの攻撃力は融合に使用したモンスターの数×1000になる!」
キメラテック・フォートレス・ドラゴン 攻撃力0→6000
「こんなことが…」
「バトルだ!キメラテック・フォートレス・ドラゴンでホセにダイレクトアタック!エヴォリューション・リザルト・アーティレリー!」
機械龍の6つの口からそれぞれエネルギー弾がホセに向かって放たれた。その威力は凄まじく、着弾すると爆風を引き起こした。
「…やったのか?」
次第に爆風が晴れていき、ホセの姿が見えるようになった。
「…だが、この程度か」
ホセの周りには障壁が張られており、傷が1つも付いていなかった。
ホセ LP8000→14000
「な…!?ライフを削るどころか回復しただと!?」
「ワシはお前が攻撃を宣言した時にトラップカード、ドレインシールドを発動していた。このカードの効果により、キメラテック・フォートレス・ドラゴンの攻撃を無効にし、その攻撃力分ライフを回復したのだ」
「キメラテック・フォートレス・ドラゴンの攻撃力が逆に吸収されちまったのか…!」
コナミは一万を超えたライフを見て僅かにたじろいだ。だが、グランエルを倒したことには違いないと思い直し、気を持ち直した。
「俺はカードを3枚伏せてターンエンドだ!」
コナミ LP4000
フィールド 『キメラテック・フォートレス・ドラゴン』(攻撃表示)
セット4
手札2
sc6
「ワシのターン、ドロー」
コナミ sc6→7 ホセ sc5→6
「何にせよ、グランエルは倒したぜ!それにキメラテック・フォートレス・ドラゴンの攻撃力なら3ターンあれば削りきることも出来る!」
「…コナミよ。お前はまだ知らない。真の絶望というのがどれ程のものなのかを!ワシは無限牢の効果を発動する!手札を1枚墓地へ送ることで墓地のレベル4以下のモンスター、グランド・コアを魔法扱いでセットする!」
墓地から茶色の球体が掴み出され、牢の中へと入れられた。
「一体何を…?」
「さらにワシは
「…あっ!まさか!」
「ワシが破壊するのはグランド・コアだ!」
グランド・コアが爆発し、コナミのフィールドに爆風が吹き荒れる。風に耐えきれなくなった機械龍は地に伏してしまった。
キメラテック・フォートレス・ドラゴン 守備力0
「キメラテック・フォートレス・ドラゴンが守備表示になっちまった!しかもグランド・コアが効果で破壊されたってことは…!」
「絶望は何度でも私たちの前に現れる!戻れ、機皇帝グランエル!」
5つのパーツが再びフィールドへと戻り、本体の機皇帝グランエル∞を中心として合体し一つのロボットとなった。
グランエルT 守備力500
グランエルA 守備力0
グランエルG 守備力1000
グランエルC 守備力700
機皇帝グランエル∞ 攻撃力0
「倒したと思ったのに戻って来やがった!」
「そして機皇帝グランエル∞の攻撃力はワシのライフの半分の数値分上昇する!ワシのライフは14000!よって…」
グランエルはホセから受け取ったエネルギーによって巨大化していき、力を高めていった。
機皇帝グランエル∞ 攻撃力0→7000
「さっきみたいにシンクロモンスターを吸収してない状態で攻撃力7000…!?」
「喰らうがいい!バトルだ。機皇帝グランエル∞でキメラテック・フォートレス・ドラゴンへと攻撃!グランド・スローター・キャノン!」
グランエルは蓄えたエネルギーを一点に集中させ、砲弾を撃つかのように機械龍へと放った。その衝撃は機械龍を貫いてコナミへと向かっていった。
「させません!」
「エンシェント・ホーリー!?」
精霊のドラゴンはコナミを自身の翼で覆うことで衝撃を最小限に抑えた。
「助かったぜ…。これでこのターンの攻撃は受け切った!」
「それはどうだろうな…?ワシはグランエルAの効果を発動する!∞モンスターが守備モンスターを戦闘で破壊した時、そのモンスターをもう1度攻撃させることが出来る!グランエルの力をその身に受けるがいい!」
「なにぃ!?」
再びグランエルが動き出す。今度はコナミに直接狙いを定めてエネルギー弾を放った。
「私と銀龍が力を合わせてもこの衝撃は防ぎきれません…!」
「トラップ発動、ガード・ブロック!この戦闘で発生するダメージを0にし、俺はカードを1枚ドローする!」
コナミを不可視の障壁が囲い、グランエルの砲弾を弾き、僅かにそらすことで被害を免れた。
「何とかこのターンは凌いだか。ワシはカードを1枚伏せてターンを終了する」
ホセ LP14000
フィールド 『グランエルT』(守備表示) 『グランエルA』(守備表示) 『グランエルG』(守備表示) 『グランエルC』(守備表示) 『機皇帝グランエル∞』(攻撃表示)
セット1 『無限牢』 『スカイ・コア』(セット状態) 『ワイズ・コア』(セット状態)
手札3
sc6
「俺のターン!」
コナミ sc7→8 ホセsc6→7
「この状況を突破するには…。頼むぜ」
コナミは先ほど自分を衝撃から守ってくれたドラゴンを見上げる。エンシェント・ホーリーはこちらを向くと無言で頷いた。
「相手フィールドにのみモンスターが存在する時、レベル・ウォリアーはレベル4として特殊召喚することが出来る!さらに俺はチューナーモンスター、トラスト・ガーディアンを召喚!」
星が描かれた仮面を被った戦士が参上し、その周りを背中に小さな羽を生やした天使が舞った。
レベル・ウォリアー 攻撃力300
トラスト・ガーディアン 攻撃力0
「…シンクロか」
「そうだ!俺はレベル4のレベル・ウォリアーにレベル3のトラスト・ガーディアンをチューニング!聖なる命の灯火、今ここに
白く長い胴体を持ったドラゴンが機皇帝と向かいあうように現れた。
エンシェント・ホーリー・ワイバーン 攻撃力2100
「融合召喚の次は精霊のモンスターか…」
「頼んだぜ、エンシェント・ホーリー!エンシェント・ホーリーは俺のライフが相手より下回っている時、その分攻撃力を下げる!」
「何…?」
長い胴体が見る見るうちに短くなっていき、トカゲのような姿になってしまう。
エンシェント・ホーリー・ワイバーン 攻撃力2100→0
「行くぜ、バトルだ!」
「何を企んでいるのかは知らぬが…。お前はグランエル∞に触れることは出来ない!グランエルのパーツは全てが特殊能力を持っている。グランエルGは自身への攻撃誘導、グランエルCは1ターンに1度だけ自身のモンスターの戦闘破壊を無効にすることが出来る!」
「そうだったのか…。だけどGモンスターの対策が役に立ってくれそうだぜ!トラップカード、ゴーゴンの眼を発動!」
コナミのトラップから出て来た目玉がグランエルを睨むと、本体を除く全てのパーツが石化してしまった。
「これは…」
「ゴーゴンの眼はこのターンだけ守備表示で存在するモンスター全ての効果を無効にすることが出来る!これで障害は無くなったぜ!エンシェント・ホーリーで機皇帝グランエル∞に攻撃!」
「だがそんなものは自殺行為だ!」
「そうでもないぜ…!トラップ発動、あまのじゃくの呪い!このターン攻撃力を下げる効果は上がる効果に、上がる効果は下げる効果へと変わる!」
「何だと!?」
時空が歪んでトカゲのように小さくなっていたエンシェント・ホーリーは巨大化していき、機皇帝グランエルはその巨大な体が石化したパーツごと崩れていった。
エンシェント・ホーリー・ワイバーン 攻撃力0→12100
機皇帝グランエル∞ 攻撃力7000→0
「グランエルの弱体化だけでなく攻撃力10000を超えるモンスターを生み出すとは…!」
「これでグランエルを倒すことが出来る!エンシェント・ホーリー、エターナル・ライフ!」
エンシェント・ホーリーが翼を広げると光がグランエルを包み込み、光が消えて行くと共にグランエルも消えていた。
「ぐおおっ!?」
光はホセにも伸び、Dホイールと一体化しているホセといえどもバランスを崩しかけてしまうほどの衝撃が走った。
ホセ LP14000→1900
「やったぜ!エンシェント・ホーリー!俺はカードを1枚伏せてターンエンドだ。ここであまのじゃくの呪いが消える!」
歪んでいた時空が消え、覆っていた概念も元へと戻った。
「そしてエンシェント・ホーリーの効果だ!相手よりライフが上回っている時、その差分の数値を攻撃力に加える!」
エンシェント・ホーリーの胴体がさらに伸びていき、ホセの前に巨大な壁のように立ちふさがった。
エンシェント・ホーリー・ワイバーン 攻撃力2100→4200
「これほどの力を持っていたとは…鬼柳に気を取られて見誤ったか」
コナミ LP4000
フィールド 『エンシェント・ホーリー・ワイバーン』(攻撃表示)
セット2
手札1
「ワシのターン!…やむを得ないか」
コナミ sc8→9 ホセ sc7→8
「ん?Dホイールから立ち上がった…一体何を?」
「コナミ、今こそ見せよう。我らの本当の姿を!」
「本当の…?Dホイールと合体するのが最終形態じゃないのかよ…!?」
プラシドが腰にさしていた剣を振るうと時空に裂け目が生まれた。その裂け目を通り、ルチアーノとプラシドはホセの元へとたどり着いた。
「おせーよ、ホセ。さっさとやるぞ!」
「僕も忘れないでよね!」
突然光が彼らの周りを包み込む。部品が組み込まれるような機械音が響き渡り、彼らのDホイールもそれに伴い変形していった。
「何だ…!?」
光が収まり、そこにいたのは僅か一人の人物。プラシドの面影がやや残っているが、ほぼ別人のようなロボットがドラゴンを模したDホイールと合体していた。
「…意外だな。私たちの見立てでは私が現れた時に前にいるのは不動遊星のはずだったが」
「お、お前は誰だ…?」
「私はアポリア。3つの絶望により生み出されし者。ルチアーノ、プラシド、ホセは私の記憶によって生み出された。私は未来を変えるために必ず貴様を倒す!」
「…!3人が合体してフルパワーで来るってことか!だけど俺にはエンシェント・ホーリーがいる。そしてフィールドにはもう機皇帝はいねえ!グランエルもそう簡単には呼び戻せねえだろ!」
「甘いな。私は無限牢の効果を発動し、グランド・コアを魔法カード扱いでセットする!」
再び牢の中に茶色の球体が放り込まれていった。
「まさかさっきみてえに…!」
「いいや、私は無限牢のさらなる効果を発動する!このカードを墓地に送ることでこのカードの効果でセットしたモンスターを手札へと戻す!」
3つの球体が牢から解放され、アポリアの手中へと収まった。
「コアモンスター3体を手札に加えただと…!」
「貴様に見せてやろう。私の真の切り札をな!トラップ発動、機皇創世!私の手札よりスカイ・コア、ワイズ・コア、グランド・コアの3体を墓地へ送る!これによりデッキから最強の機皇帝を呼び出すことができる!」
「何だと!?機皇帝は3人の持つ3体で全部じゃねえのかよ…!」
「三つの絶望よ、新たなる最強の力を降臨させよ!現れよ、機皇神マシニクル∞・キュービック!」
コアモンスターが集結していき、一つのコアを形成する。そのコアを中心に部品が形成されていき、エンシェント・ホーリーに並ぶほどの巨大なロボットが出来上がった。
機皇神マシニクル∞・キュービック 攻撃力4000
「これが…あいつらの切り札。グランエル以上の威圧感だ…!」
「新たな機皇帝…。後は頼みます、コナミ」
「…!エンシェント・ホーリー…」
「私はマシニクルの効果を発動する!このモンスターも当然シンクロキラー…精霊の力を取り込め!」
マシニクルから光の触手が伸びていき、エンシェント・ホーリーを絡め取った。マシニクルはエンシェント・ホーリーを内部に取り込むとその力を吸収した。
機皇神マシニクル∞・キュービック 攻撃力4000→6100
「やっぱりシンクロモンスターを吸収する効果は健在か…!」
「当然だ。そして貴様の場にはモンスターはいない。終わりだ!私はマシニクルでコナミへとダイレクトアタック!ザ・キューブ・オブ・ディスペアー!」
マシニクルは2つの足となるパーツを用いてコナミに急接近する。その勢いを殺さず、腕に当たるパーツをコナミに向けて思い切り振り下ろした。
「させるか!トラップ発動、カウンター・ゲート!俺へのダイレクトアタックを無効にし、カードを1枚ドローする!」
マシニクルの放った重いパンチはコナミの前に出現したゲートの中に入り込み、空振りに終わった。
「ちっ…小手先の策で凌いだか」
「まだだ!この効果でドローしたモンスターが通常召喚出来るならそいつを攻撃表示で召喚出来る!行くぜ、ドロー!」
コナミがカードを引くと、ゲートからまばゆき光が放たれた。
「俺が引いたのはレベル1のダーク・バグ!こいつを召喚だ!」
ゲートからは紫色に染まったブロックが出てきたかと思うと、ブロックから7本の虫の足が生えてきた。
ダーク・バグ 攻撃力100
「さらにダーク・バグは召喚に成功した時、墓地のレベル3のチューナーを特殊召喚する事ができる!戻ってこい、トラスト・ガーディアン!」
ダーク・バグが足を地面へと突き刺すと地面の一部に小さな穴が空く。その穴を通り、天使はフィールドへと舞い戻った。
トラスト・ガーディアン 守備力700
「足掻くか。だがそれもいつまで持つだろうな。私はこれでターンを終了する!ここでマシニクルの効果を発動する!コストとして装備していたエンシェント・ホーリー・ワイバーンを墓地へと送る!」
「何!?」
マシニクルは取り込んでいたエンシェント・ホーリーを解放する。しかし取り込んでいたエネルギーを失ったことで弱体化してしまった。
機皇神マシニクル∞・キュービック 攻撃力6100→4000
「わざわざ攻撃力を下げてまで何を…!?」
「マシニクルはエンドフェイズに装備していたシンクロモンスターを墓地へ送ることで相手にそのモンスターの元々の攻撃力分のダメージを与える!」
「…!」
解放されたエンシェント・ホーリーは弾丸のような速さでコナミへと放たれていた。
「エンシェント・ホーリーの攻撃力は2100。喰らうがいい!」
「コナミ…!」
コナミへと向かうエンシェント・ホーリーが苦悶の表情をする。自分の力がコナミに向かってしまう事が何よりも悔しく、苦しかったからだ。
「…エンシェント・ホーリーにそんなことはさせない!」
「何?」
コナミの前に無数の小さなモンスターが現れ、エンシェント・ホーリーを受け止めた。
「手札のクリアクリボーを墓地に捨てることで相手が発動した効果ダメージを与えるモンスター効果の発動を無効にする事ができる!」
「く…これも躱すだと!」
エンシェント・ホーリーはクリアクリボーに受け止められ、与えられていた勢いもなくなり地面へと沈んでいった。
「ありがとう…コナミ」
「いいってことよ!墓地で休んでな!」
「…だが、これで貴様の手札は0。ハンドレスを扱う鬼柳ならいざ知らず、貴様ではもはやどうすることもできまい。ターンエンド」
アポリア LP1900
フィールド 『機皇神マシニクル∞・キュービック』(攻撃表示)
セット0
手札3
sc8
「俺のターン、ドロー!これで俺のscは…」
コナミ sc9→10 アポリア sc8→9
「ふ…貴様の取ろうとする作戦など手に取るようにわかるぞ。大方スピード・ワールド2の効果でscを10個取り除き、フィールドのカードを1枚破壊する効果を使おうとしているのだろう」
「バレてたか…。だけどお前に伏せカードは無い!これは防げねえだろ!」
「甘いぞ!最強の機皇帝…その力を見くびるな!マシニクルは自身の破壊を墓地から1体、T・A・G・Cのいずれかのパーツを取り除くことで免れる事ができる!」
「何…!?お前の墓地のパーツモンスターは全部で8体もいるじゃねえか…!」
「そう、もはや貴様はこの絶望から逃れることは出来ないのだ!諦めるんだな!」
マシニクルが一つ足を踏み出すだけで地面を通して衝撃がコナミへと伝わってきた。
「鬼柳も幸子も言ってただろ…?俺たちは絶対に諦めねえ!俺はダーク・バグをリリースしてガジェット・ソルジャーをアドバンス召喚する!」
背中に重火器を背負ったロボットがダーク・バグと入れ替わるように出てきた。
ガジェット・ソルジャー 攻撃力1800
「足掻けば足掻くほど絶望の味は濃くなる…愚かな選択だ」
「それはどうかな?俺にはまだ希望があるぜ!俺はレベル6のガジェット・ソルジャーにレベル3のトラスト・ガーディアンをチューニング!白銀の翼はためかせ敵を魅了しろ!シンクロ召喚!降臨せよ、蒼眼の銀龍!」
「やはりシンクロか…」
澄んだ青い瞳を持つドラゴンが白く透き通った翼を羽ばたかせ、フィールドに飛翔した。
蒼眼の銀龍 守備力3000
「そのようなモンスター、次のターンで…!」
「銀龍が特殊召喚に成功したことで効果発動!次の相手のエンドフェイズまで銀龍は効果の対象にならず、効果では破壊されない!」
「マシニクルの効果を逃れたか…!」
銀龍の翼が半透明のヴェールによって覆われていき、天からの加護で敵から身を守る力を手に入れた。
「俺は…これでターンエンドだ!」
コナミ LP4000
フィールド 『蒼眼の銀龍』(守備表示)
セット1
手札0
sc10
「私のターン!」
コナミ sc10→11 アポリア sc9→10
「奴のモンスターはマシニクルの効果もスピード・ワールド2の効果も受け付けないか…。だが、私はマシニクルの最後の能力を解放する!」
「まだ効果があるのかよ…!」
「手札のT・A・G・Cと名のつくモンスターを墓地に送ることでマシニクルにその効果を与える事ができる!私は手札からグランエルA、ワイゼルA3の2体のパーツを墓地に送る!」
マシニクルがパーツを取り込み、さらに能力をチューンアップさせた。
「バトルだ!マシニクルで蒼眼の銀龍へと攻撃!ザ・キューブ・オブ・ディスペアー!」
マシニクルは空中へと逃れようとする銀龍に対して足部に取り付けられたジェットを噴射することで追いつき、右翼を狙って拳を振り下ろした。
「マシニクルに与えられたワイゼルA3の効果により∞モンスターが守備モンスターへと攻撃しその数値を上回っていた時、超過分のダメージを相手へと与える!」
「く…!トラスト・ガーディアンの効果を発動!このカードをシンクロ素材にしたモンスターは1ターンに1度戦闘では破壊されねえ!」
「だがダメージは免れない!」
右翼へと直撃した拳によって銀龍は痛みを覚え、バランスを崩し墜落する。
コナミ LP4000→3000
「くっ!トラスト・ガーディアンの効果で銀龍は破壊されねえ!この効果が適用されたことで銀龍の守備力は400ポイントダウンする…!」
銀龍は天使の助けによって体勢を持ち直し、再び羽ばたこうとする。
蒼眼の銀龍 守備力2600
「それで凌いだつもりか。私はマシニクルに与えられたグランエルAの効果を発動する!守備モンスターに攻撃した時、連続攻撃を可能とする!」
「しまった…!」
再び羽ばたこうとする銀龍に対してマシニクルは容赦のない一撃を浴びせ、銀龍を地面へと叩き落としてしまった。
「ぐああっ!?」
コナミ LP3000→1600
「これで貴様の希望とやらは消え去った。それでもまだやるというのか?」
「当たり…前だ。俺のライフはまだ0になってねえ…!」
衝撃をまともに受けたことでコナミの頭部からは血が流れ、身体もボロボロになっていた。
「そうか。だが私のscは10。私の手札にspがあればスピード・ワールド2の効果によって貴様は終わりだな」
「く…!いや、鬼柳や幸子がオーガ・ドラグーンを使ったことでお前はspを多く使っちまった…!手札にspは無い…はずだ!」
「…忌々しいがその通りだ。私の手札にspは無い。だが、次のターンに引けばその時点で貴様の敗北だ」
「く…!」
「最もマシニクルにはグランエルAやワイゼルA3の効果が適用されている。仮にspを引けなかったとしても守備固めは通用しない」
「絶体絶命ってわけか…!」
「この状況に希望などあるまい。サレンダーでもして楽になれ…!」
「希望は…ある!鬼柳や幸子たちが必死になってバトンを繋いだ!俺がそのバトンをここで手放すわけにはいかねえ…!」
「貴様らは何故それほどまでに希望に縋るのか…理解に苦しむな。私はカードを1枚伏せてターンエンドだ」
アポリア LP1900
フィールド 『機皇神マシニクル∞・キュービック』(攻撃表示)
セット1
手札1
sc10
「アポリアの言う通り俺に残された猶予はもうねえ…。ここで勝負を仕掛けるしかねえ!俺のターン…ドロー!」
コナミ sc11→12 アポリア sc10→11
「俺はスピード・ワールド2の効果を発動する!scを4つ取り除くことで手札のsp1枚につき、800のダメージを与える!俺の手札には1枚だ!」
コナミのDホイールからアポリアへ衝撃波が放たれた。
コナミ sc12→8
「成る程。その効果を3回使用すればライフを0にすることができるわけか。だがその程度の策を読んでいないと思ったか?トラップ発動、エネルギー吸収板!相手が私にダメージを与える効果を発動した時、私はダメージを受ける代わりにその数値分のライフを回復する!」
「…!」
衝撃波はアポリアの前に出現した板に吸収され、衝撃はエネルギーに変換されアポリアに命の源をもたらした。
アポリア LP1900→2700
「最後の足掻きも無駄だったな」
「へっ、これで終わるわけはねえとは思っていたさ」
「何だと?」
「俺には幸子が残してくれたカードが1枚残ってる…。俺はこのカードに全てをかける!」
「ハッタリを…!」
「ハッタリかどうか…その目で確かめな!トラップ発動、貪欲な瓶!墓地のカードを5枚デッキに戻すことで俺はカードを1枚ドローする!俺が戻すのはプロト・サイバー・ドラゴン、キメラテック・フォートレス・ドラゴン、エンシェント・ホーリー・ワイバーン、蒼眼の銀龍。そして…煉獄龍 オーガ・ドラグーン!」
「3体のシンクロモンスターを戻したか…。同じだな。シンクロモンスターの力ばかりを求め、貴様らは破滅する!」
「いや、違うぜ。このドローでシンクロモンスターだけの力だけで満足しない、さらなる高みを目指してみせる!」
「ほう?面白い冗談だな!良いだろう。見届けてやろう」
コナミはデッキとエクストラデッキにそれぞれのカードを戻し、デッキトップに指をかけた。
「…ドロー!」
コナミは引き抜いたカードを横目で見る。それはまさしく彼が求めていたカードだった。
「…行くぜ、アポリア!俺は手札からsp—シンクロ・パニックを発動する!このカードは俺のscが7以上ある時に発動出来る。効果で俺たちがこのデュエル中に呼び出したシンクロモンスターと同名のモンスターをエクストラデッキから可能な限り特殊召喚する事ができる!」
「何だと…!?」
「来てくれ、エンシェント・ホーリー!蒼眼の銀龍!」
空中に裂け目が現れ、光に包まれた2体のドラゴンが飛び出して来た。
「そして…!」
「…!この力は…!?」
「天国と地獄の間…煉獄よりその姿を現せ、煉獄龍 オーガ・ドラグーン!」
その2体のドラゴンについて行くように赤黒い体をしたドラゴンが姿を見せた。
「馬鹿な…ファーストホイーラーの鬼柳が呼び出したシンクロモンスターをラストホイーラーである貴様が呼び出しただと!?」
3体のドラゴンがコナミの周りに飛翔し、咆哮を上げた。
「これが鬼柳、そして幸子が俺に繋いでくれた絆のバトンだ!」
「くっ…黙れ!こんなものはまやかしだ!シンクロ・パニックにはもう1つ効果がある!この効果で呼び出したモンスターの攻撃力は0になり、効果も無効となる!」
ドラゴン達は戦いの疲れにより、羽ばたきをやめて地面へと着陸した。
エンシェント・ホーリー・ワイバーン 攻撃力0
蒼眼の銀龍 攻撃力0
煉獄龍 オーガ・ドラグーン 攻撃力0
「むしろこれは成れの果てではないか…!力ばかりを求めた欲深き人々がたどり着いた末路!シンクロモンスターがもたらす破滅の象徴だ!」
「確かに今は3体とも力を失っちまっている。だが、何もシンクロモンスターが1体1体で戦う必要なんてねえ。俺は…3体の力を一つに束ねる!今まで俺たち3人が力を合わせて戦ってきたように!」
「な…!?」
ドラゴン達のエネルギーが一点に集まっていく。その中心には小さなモンスターが1体。しかしエネルギーを吸収していき、少しずつ大きくなっていった。
「俺はフィールドの3体のシンクロモンスターをリリースし、このモンスターにその力を託す!古より封印されし悪魔よ、3体を合わせた力をその身で具現せよ!来てくれ…真魔獣ガーゼット!」
蒼眼の銀龍の白銀の翼、エンシェント・ホーリー・ワイバーンの長き胴体、煉獄龍 オーガ・ドラグーンの鋭き爪。3つの特徴をその身で引き継いだ新たな生命が誕生した。
真魔獣ガーゼット 攻撃力0
「何だこれは!こんな過去は存在しなかった…!」
「こいつはお前達の機皇帝と向き合うことで俺が出した新しい答えだ。もしお前達が来なかったら…俺はこいつに出会わずに満足しちまってたんだろうな」
「く…だがマシニクルは最強の機皇帝!貴様らに超えることなど…!」
「確かにマシニクルは強え!俺のモンスターのほとんどが歯が立たなかった…。だけどデュエルをしている以上、必ずそいつを超える手段はある!最強なんてものはねえんだ!」
「貴様に…超えられるというのか?」
「超える!真魔獣ガーゼットは変幻自在のモンスター…映し出されるのは今の俺たちの全力!そしてこのモンスターは俺たちが強くなる度に強くなれる!真魔獣ガーゼットの効果!こいつの攻撃力はリリースに使用したモンスター全ての元々の攻撃力の合計となる!」
「馬鹿…な…!?」
ガーゼットの身体は3体のエネルギーを受けてマシニクルを超え、さらに巨大になっていった。
真魔獣ガーゼット 攻撃力0→7600
「これが今俺たちが出せる全力だ!バトル!真魔獣ガーゼットでマシニクルへと攻撃!ユニティ…フォース!」
真魔獣ガーゼットは翼を用いて空を飛び、長き胴体を揺らしながら、鋭き爪でマシニクルを切り裂いた。
「私が負けた…だと!?」
アポリア LP2700→0
こうしてニューワールドとネオサティスファクションの長き死闘は終わりを告げたのだった。