遊戯王5D'sタッグフォース 満足の意志を継ぐ者   作:ゾネサー

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本気を出さなくとも一瞬だ

 パイプラインを抜けてシティを訪れてから一晩経ち、コナミは2日目の朝…というには日が昇っている時間に目が覚めた。弥生に叩き起こされたコナミは渋々と体を起こす。

 

「相変わらずテメェは誰かに起こされるまでずっと寝てやがんのな」

 

「眠いもんは眠い!」

 

「胸張っていうことじゃねぇよ!」

 

 コナミは部屋から引っ張り出され、ロビーへと連れてこられる。

 

「…で?テメェはこれからどうするんだ。あの海野財閥の嬢ちゃんの様子でも見に行くのかい?」

 

「流石に1日で話がつくとも思えないしそれはあっちからの連絡を待つさ。それより俺は遊星を探しに行くぜ」

 

「遊星を?遊星もこっち来てんのか」

 

「ああ。シティに抜けた時にジャックと再会してスタジアムで遊星とジャックがデュエルすることになったんだが、俺だけ締め出されちまった上にセキュリティに追われちまってな。その後どうなったか分からないんだ」

 

「遊星がキングとデュエルを…。でもヤバくねぇか、お前が追われたってことは遊星も多分追われる。スタジアムでデュエルしてる遊星に逃げ場はねえぞ」

 

「そうなんだよな…」

 

 コナミは遊星をどう見つけるか考えた。遊星が捕まっているなら収容所を探して脱獄に協力することも考えられる。だが、まだ遊星が捕まったという確信はない。それに遊星ならば自分の力で脱獄してくる可能性もあり、その場合無駄足となってしまう。どちらにせよ情報が足りないのだ。

 

「それにテメェはセキュリティに追われてんだろ?遊星を探してテメェが捕まっちまったら本末転倒だぜ」

 

「そうか、セキュリティを避けた上で情報を探さないといけないのか…あ」

 

 コナミは思いついたと言わんばかりに手をポンと叩く。

 

「何か思いついたのか?」

 

「ああ、名付けて木の葉を隠すなら森の中…いや、グリグルを隠すなら世界樹の中作戦だ」

 

「ネーミングセンスねえな」

 

 そしてコナミはすぐさま行動に移す、グリグルを隠すなら世界樹の中作戦とやらを。

 時は少し経ち、場所はシティの繁華街。

 

「見つかったか!」

 

「いや、こちらにはいない」

 

「くそっ…とにかく探せ!」

 

 そこではセキュリティ達がせわしなく誰かを探している。

 

「多分、俺を探してるんだろうな…。もしかしたら遊星もか」

 

 セキュリティ達はお互い調べたところを教えあうと再び手分けして探し出す。セキュリティの1人が単独で裏路地に入った瞬間だった。コナミは首のあたりに手刀を食らわせ、セキュリティを気絶させる。

 

「悪いな、ちょっと借りるぜ」

 

 セキュリティの服を勝手に借り、コナミは変装をすませる。トレードマークの赤帽子を目立つと判断してセキュリティの被っていた青帽子を拝借し、出来るだけ顔を隠す。最後に気絶させたセキュリティを人目につかないところに隠し、準備完了だ。

 

「セキュリティの格好をしていればセキュリティに追われる心配もないし、情報収集も出来る。一石二鳥だぜ。…1岩石の巨兵2冠を抱く蒼き翼作戦の方が良かったかなあ」

 

 再びネーミングセンスのない作戦をぶつぶつと呟くとコナミは裏路地を抜け先ほどのセキュリティのDホイールにまたがり、遊星の情報を得るため治安維持局へ向かおうとする。幸いDホイールのマップ機能で場所はすぐ特定することができた…が、そううまくはいかない。

 

「おい、お前どこへ行くつもりだ?」

 

「…!じょ、情報を一旦整理するために本部に戻ろうと思ってな」

 

「気持ちはわかるが…無理なことはわかってるだろ。昨日赤帽子の奴を取り逃がしたから俺たちはイェーガー様からすごいお叱りを受けて、赤帽子を見つけるまでは本部に帰っても追い返されちまうんだぜ」

 

「な…!?…そ、そうだったな」

 

 とりあえず怪しまれる前にDホイールを降りるコナミ、だがとっさに1つのことを確認する。

 

「あれ?もう1人スタジアムに入っていった奴はどうなったんだっけ?」

 

「あいつは逮捕されただろ?といっても俺たちとは違う管轄の奴らだから俺らが赤帽子を取り逃がした言い訳には出来ないけどな」

 

「…!」

 

 遊星が捕まっていたことを知るコナミ、だが遊星が細かくどういった状況なのかを得るには至らない。これ以上情報を集めるには、赤帽子…即ちコナミが捕まらなくてはならない。だがコナミが捕まっては意味がない。そう思った矢先であった。

 

「ああ…だけど別件で追ってるあいつを捕まえればそいつの報告をするために一旦戻れるんだったな」

 

「…!その話、聞きそびれたみたいだ。悪いがその件の説明を頼めるか?」

 

「ああ…いいけど。あれって全員に通達されてなかったか…?まあいいか、あれは今日の朝…丁度キングが今日のチャレンジャーとデュエルし終わったあとくらいの時間だったか。通学中のアカデミア生徒が融合っていうレアカードを手に持っていたところ、そのカードを引ったくられてしまったんだとよ」

 

「そうか。…そいつの特徴は?」

 

「一瞬の出来事だから分からなかったんだとよ。これしか情報はない、正直目撃情報待ちなんだよな」

 

「分かった。俺はそいつを探してみる、お前らは引き続き赤帽子を探しといてくれ」

 

 そう言うと返事を聞く前にコナミは再びDホイールに乗り、とりあえずその場から離れる。

 

「…?わざわざ情報の少ない方から探すなんて変な奴だな」

 

 コナミとしてはこちらにかける他なかったのだが、このセキュリティがそれを知る由はなかった。

 

「ふぅ…あの堅っ苦しい喋り方はすげぇ疲れるぜ」

 

 コナミは額に滲む汗をぬぐう。

 

「だけどどうするか…、あんな少ない情報じゃ遊星を探すより難しいんじゃねぇか」

 

 治安維持局に行くのを諦め、収容所をしらみ潰しに探そうか…と考えるコナミに大きな声が響く。

 

「キングは1人この俺だ!」

 

「うわっ…なんだ!?」

 

 顔を上げるコナミの先には今日のキングのデュエルと銘打たれたスクリーンがあった。そこでは今日のジャックのデュエルが映っており、相手を圧倒する様子が伺える。

 

「相変わらずジャックは強えなあ…」

 

 まじまじとスクリーンを見るコナミ、しかしそこにはヒントが隠されていた。

 

「ワシはエーリアン・ソルジャーを攻撃表示で召喚じゃあ!これでターンエンド!さあ、かかってこんかい!」

 

 場に現れたのは奇妙な姿をした異邦人。一応人型の姿をしており手に握っている剣を一振りし、ジャックを挑発する。

 

「哀れなな道化め、その程度でキングに挑もうとはな。俺のターン、貴様には我がレッド・デーモンズ・ドラゴンを見せるのすら惜しい」

 

「なんじゃとお?」

 

「だが、キングのデュエルとはエンターテインメントでなくてはならない!俺はマジックカード融合を発動!俺は手札のビッグ・ピース・ゴーレムとミドル・ピース・ゴーレムを素材にして融合召喚を行う!岩で作られし番兵よ、巨大な岩の番兵と交わりて新たなる力を示せ!融合召喚、その力を余すところなく敵にぶつけよ、マルチ・ピース・ゴーレム!」

 

 2体の番兵が引力により1つとなり新たな姿へと生まれ変わる。その姿はまるで岩で作られた巨大なロボット。片手を振るうだけですさまじい風を呼び起こす。

 

「なっ…シンクロ召喚じゃなく融合召喚じゃとお!」

 

「キングが本気を出せば一瞬だ!だが貴様など俺が本気を出すまでもない。バトルだ!貧弱な兵を破壊しろ、我がゴーレムよ!」

 

 ゴーレムの鋭く重いパンチがエーリアン・ソルジャーをいとも容易く粉砕する。

 

「くっ…これがキングか。少しはやるのお」

 

「キングとはこの程度ではない、俺は手札から速攻魔法融合解除を発動する。この効果によりマルチ・ピース・ゴーレムは元の2体へと分離する!さらにミドル・ピース・ゴーレムの効果によりデッキからスモール・ピース・ゴーレムを効果を無効にし、特殊召喚する」

 

 巨大なゴーレムが分解されそれぞれのブロックが2体の番兵を作り出したかと思えば、さらに小さな兵が2体の間から生み出される。

 

「なん…じゃと」

 

「貴様ごとき、俺が本気を出さなくとも一瞬ということだ。やれ、ゴーレムよ。哀れなチャレンジャーを葬りされ!」

 

 3体のゴーレムのパンチが決まり、あっけなくチャレンジャーのライフはゼロになる。

 

「乾く…こんなデュエルでは満たされない」

 

「ワシが…負けた?ワシにもあの融合というカードがあれば…!こんなことには…!」

 

「あいつは…秀行か!あいつもサテライトから抜け出していたのか…しかもプロになっていたとはな。だけどあいつの最後の様子明らかにおかしかった…まさか!」

 

 コナミの脳裏に1つの言葉が思い出される、事件が起こったのはキングがチャレンジャーを倒したすぐ後だったと。コナミはDホイールを走らせる。行き先は…弥生のホテル。

 

「姉御!もしかしてここに秀行がいないか?」

 

「な、なんだよ急に。確かにここはサテライトから流れてきた奴をアタイが世話してやってるところだ。あいつもいるけどよ…。なんかあったのか?」

 

「あいつ…アカデミアの学生からカードを盗んだかもしれねえんだ」

 

「なんだと?ちっ…バカめ。待ってろ、呼んでくる」

 

 弥生は秀行を部屋から引っ張り出してコナミのいるロビーに連れ出してくる。

 

「久しぶりだな秀行、…学生から融合のカードを盗んだのはお前か?」

 

「そうじゃ…このカードさえあればワシはキングになれるんじゃあ!」

 

「バカが!テメェがプロデュエリストを目指したいっていうから泊めてやってんのに…学生からカードを奪うだと?恥を知りやがれ!」

 

 そう言い、弥生は秀行の首を持ち上げ訴えかける。コナミはそれを止めた。

 

「なぜ止める!?」

 

「秀行、俺とデュエルしろ」

 

「なんじゃと?」

 

「俺たちデュエリストは自分のカードに思い入れを持ってる。そいつを奪ったお前を許すわけにはいかねえ。俺が勝てばセキュリティに突き出させてもらう」

 

「ワシにデュエルじゃと?笑わせてくれる、ワシはプロデュエリストじゃぞ!お主、聞いたところによるとデュエリストになりたてじゃそうじゃな。ええぞ、そのデュエル受けちゃる。ワシが勝てばこのことは見逃してもらおうかいな!」

 

「ああ、いいぜ」

 

「ちょっとコナミ!こいつは腐ってもプロデュエリストだぜ!」

 

「姉御、ここは俺に任せてくれ。秀行はデュエルで倒さねえと自分がデュエリストとしてどれだけバカなことやってるか分かりはしねえ!」

 

「…分かったよ」

 

「話はまとまったかのお。ならいっちゃる!」

 

「 「 デュエル! 」 」




融合「融合じゃねぇユーゴだ!」
ジャック「ここはシンクロ次元ではない…(腹パン)」

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