遊戯王5D'sタッグフォース 満足の意志を継ぐ者 作:ゾネサー
3対3のチーム戦でどちらかのプレイヤーが負けた場合はエンドフェイズへと移行され、負けたチームの次のプレイヤーのターンから始められる。
この時、エンドフェイズまでに発動出来るカードがあれば発動しても良い。
もちろん先に3人を倒した方が勝利だが、クラッシュなどの理由により次のプレイヤーに引き継げない場合はその時点で引き継げないチームの敗北となる。
次のプレイヤーに引き継がれるのはフィールドのカードとscのみ。
ライフや墓地、除外ゾーンのカードは引き継ぐことができない。
仮に相打ちとなった場合はプレイヤーが交代した後、相打ちの原因となったカードを発動したプレイヤーの相手のターンから再開される。
すでにバトルは始まっているがね
アンドレとコナミのデュエルから数日経ち、ついにWRGPが開幕した。フォーチュンカップ以来の大きな大会ということもありスタンドはほとんど満席で、WRGPにかかっている期待がどれほどのものかを如実に表している。
Aブロックの第一試合が終わり興奮冷め止まぬ中、続いてBブロックの第一試合が開始される。チームネオサティスファクションvsチームユニコーン。彼らは既にピットへと入っており、後は
下馬評では当然優勝候補と名高いユニコーンが上だったが、ネオサティスファクションのスタンドの応援の大きさはそれほど負けていなかった。
「幸子お嬢様、ご武運を祈っておりますぞー!」
「我らが海野応援団がついております!」
「フレー!フレー!幸子様!」
スタンドに響く和太鼓の音と共に海野財閥が幸子のために特別に編成した海野応援団の声援が届き、幸子は軽くスタンドへ手を振った。
「ってほとんど幸子の応援じゃねえか!」
「仕方ないじゃありませんか。わたくしたちのチームはまだ無名なのですから」
「大丈夫だ。これからサティスファクションタウンと共にこのチームは有名になる。この鬼柳京介の手でな!」
緊張もなくいつも通りの雰囲気で話す彼らの前に逆側のピットからジャンが近づいてくる。
「なんか用か?」
「勘違いするな。試合前の挨拶に来ただけだ」
「今日はお互い全力を尽くしましょう。勝つのはわたくしたちのチームですけどね」
「もちろんだ。すでにバトルは始まっているがね」
(…?こいつこんな口調だったか?もっと荒っぽい感じだったような…)
挨拶をすませたジャンは自分のピットへと戻っていく。するとスタジアム中にMCの実況が聞こえてきた。
「さあ!両チームの挨拶が終わったところでいよいよ本日の2試合目、チームユニコーン対チームネオサティスファクションの試合が始まるぞ!アトランティス大会で優勝し、ノリに乗っているユニコーンにネオサティスファクションはどれだけ食らいつけるのか?今から楽しみになってきたぞ!早速両チームともファーストホイーラーを出してくれ!」
どちらのファーストホイーラーが先に相手を倒すか、WRGPではこれが大事となってくる。何故なら先にやられてしまえばセカンドホイーラーかラストホイーラーのどちらかは少なくとも2人抜きをしなければ勝利はないからだ。だからこそファーストホイーラーの選択はそのままチームの勝利に関わってくると言っても過言ではない。そんな中、彼らがファーストホイーラーとして選んだのは…。
「では…作戦通り。わたくしがファーストホイーラーとして行ってきますわ」
「ああ。相手は絶対アンドレがファーストホイーラーだ。あのパワーデッキに立ち向かえるのはお前しかいねえ!」
「頼んだぜ幸子!」
ユニコーンの実績を調べたところ、これまでの100戦全てをアンドレがファーストホイーラーとして3人抜きで勝ち抜いてきていることが分かっていた。ならば同じくパワーデッキを扱う幸子をファーストホイーラーとして出すことでアンドレに圧倒されないようにするというのが今回のネオサティスファクションの作戦だった。
「ネオサティスファクションのファーストホイーラーは海野幸子!なんと彼女はデュエルアカデミアの学生!どんなデュエルを見せてくれるか楽しみだ!それに対してユニコーンのファーストホイーラーはもちろんアンドレだ!またしても3人抜きでユニコーンを勝利へ導いてしまうのか!?」
既に2人はスタート地点へと並び、開始のカウントダウンを待っている。
「やっぱりあいつら海野をファーストホイーラーにしてきたな」
「ああ…これでこの勝負の半分は決したようなものだ」
「2人の準備が出来たところでフィールドにはスピード・ワールド2が発動されるぞ!これによりデュエルはスピードによって支配される!発動出来る魔法カードは
MCの観客へ向けた解説が終わると2人の前に出てきたスクリーンが10秒のカウントダウンを行う。そして最後のカウントダウンが点滅した瞬間、2つのDホイールがほぼ同時に走り出した。
「この第一コーナーをとった方が先攻だ!どうやらここから見る限りではほぼ互角のようだ!果たしてどちらが先攻になるのかー!?」
「海野財閥のエンジンを舐めないことね!」
幸子のDホイールが加速していき、アンドレのDホイールより前に出る。
(確かにいいエンジンだ…。だがジャンのシナリオで俺が取るべきなのは…先攻じゃない)
「先攻をとったのは海野選手!」
「 「 デュエル! 」 」
互いに5枚のカードを引き、Dホイールについているホルダーへとカードを置いた。
「わたくしのターン、ドローですわ!わたくしは手札からグリズリーマザーを召喚します!」
青色の毛皮に身を包んだヒグマが獲物を探すようにフィールドを見渡した。
グリズリマザー 攻撃力1400
「カードを1枚伏せて…これでターンエンドしますわ!」
幸子 LP4000
フィールド 『グリズリマザー』(攻撃表示)
セット1
手札4
「さてと…作戦通りに行くとしよう。俺のターン!」
幸子 sc0→1 アンドレsc0→1
「手札のモノケロースは俺の手札の魔法カードを除外することで特殊召喚できる!俺はsp—ジ・エンド・オブ・ストームを除外することでこのモンスターを特殊召喚する!」
頭に黄色いツノを1本生やした獣がフィールドに降り立つ。
モノケロース 攻撃力1000
「さらに手札からチューナーモンスター、一角獣の使い魔を召喚させてもらうよ」
ヤギのような耳と一本のツノを生やした悪魔がフィールドに並び立った。
一角獣の使い魔 攻撃力0
「いきなりシンクロ召喚で攻めてきますか…。やはりあの速攻パワーデッキは厄介ですわね」
「俺はレベル3のモノケロースにレベル2の一角獣の使い魔をチューニング!天駆ける雷よ、猛き烈風と交わりて、幻想の世界より姿を現せ!シンクロ召喚!いななけ、サンダー・ユニコーン!」
現れたのは馬のようなモンスター。青い胴体にすらりと伸びた4本足、黄色いたてがみとジグザグと雷を連想させるようなツノが目に入ってくる。
サンダー・ユニコーン 攻撃力2200
「さらにモノケロースの効果を発動!このカードと共にシンクロ素材となった獣族チューナーを呼び戻すことができる!俺の場に戻ってこい、一角獣の使い魔!」
ユニコーンのたてがみに隠れていた悪魔が小走りでユニコーンの隣に立つ。
一角獣の使い魔 守備力1000
「さらにサンダー・ユニコーンの効果を発動!このカード以外のモンスターの攻撃をこのターン放棄し、相手フィールドのモンスター1体の攻撃力をエンドフェイズまで俺のフィールド上のモンスターの数×500ポイントダウンする!サンダー・スクレイプ!」
「何ですって…!」
ユニコーンのツノから放たれた電撃がグリズリーマザーを弱体化させていく。
グリズリマザー 攻撃力1400→400
「バトルだ!サンダー・ユニコーンでグリズリマザーに攻撃!サンダー・スピアー!」
4本の足を器用に動かし敵へ近づいていくと、そのツノで敵を貫いた。
幸子 LP4000→2200
「攻撃が通ったぞー!先制はアンドレだー!」
「くうっ…!ですが戦闘破壊されたグリズリマザーの効果を発動!このカードが戦闘によって破壊された時、デッキから攻撃力1500以下の水属性モンスターを特殊召喚できますわ!来なさい、ヒゲアンコウ!」
魚を誘うためのランプがヒゲのようになっている魚がフィールドで跳ねる。
ヒゲアンコウ 攻撃力1500
「俺はカードを2枚伏せてターンエンドだ」
アンドレ LP4000
フィールド 『サンダー・ユニコーン』(攻撃表示) 『一角獣の使い魔』(守備表示)
セット2
手札1
sc1
「わたくしのターン!」
幸子 sc1→2 アンドレsc1→2
「痛手を貰いましたが…ここからが本番ですわ!ヒゲアンコウは水属性モンスターをアドバンス召喚する時に2体分のリリース素材となりますわ。ヒゲアンコウをリリースして超古深海王シーラカンスをアドバンス召喚!」
ヒゲアンコウの養分を食らいながら現れたのはサンダー・ユニコーンの大きさをゆうに超える巨大なシーラカンス。シーラカンスが現れた影響か幸子のフィールドが水蒸気によって包まれる。
超古深海王シーラカンス 攻撃力2800
「おおっとー!ここで海野選手がアンドレのモンスターを上回る強力なモンスターの召喚に成功したぞー!」
「ですがこのモンスターの真価はここから発揮されますわ!手札1枚をコストにシーラカンスの効果を発動!デッキから任意の数までレベル4以下の魚族モンスターを特殊召喚できますわ。来なさい、キラー・ラブカ、オイスターマイスター、2体の竜宮の白タウナギ!」
シーラカンスが発生させた水の渦から4匹の魚が姿を現した。
キラー・ラブカ 攻撃力700
オイスターマイスター 攻撃力1600
竜宮の白タウナギ×2 攻撃力1700
「よし…幸子のお得意パターンだ!」
「このまま押し切ってやれ!」
だがこの展開を見てアンドレ達チームユニコーンは…笑っていた。
「海野幸子」
「はい?」
「…君の負けだ」
するとフィールドの水蒸気が突然昇華していき、大量の氷の結晶が浮かび上がった。そしてその結晶が次第にシーラカンス達へと落ちていき、5匹の魚へと直撃した。
「一体何が…!?」
「俺はシーラカンスによって5体の水属性モンスターが君のフィールドに呼ばれた時、このトラップカードを発動していたのさ」
「それは…ダイヤモンド・ダスト!?」
「そう…このカードの効果は単純明快。フィールドにいる全ての水属性モンスターを破壊する」
「…確かその効果には続きがあったはず」
「さらにこの効果で破壊され、墓地へと送られた水属性モンスター1体につき相手プレイヤーに500ポイントのダメージを与える!」
「わたくしの破壊されたモンスターは5体…あっ!」
「気付いたようだね。君は2500のダメージを食らう!」
太陽に照らされた氷の結晶が光り輝き、その光が幸子のライフを焼き尽くした。
「きゃあああ!」
幸子 LP2200→0
一瞬の出来事に静まってしまう観客。しかしすぐに起こった事態を理解すると歓声がわき起こった。
「な、なんと!チームユニコーンのアンドレ!相手ターンに5体のモンスターを破壊し、2500のダメージを与える離れ技で海野選手をシャットアウトだー!」
「くっ…オイスターマイスターが戦闘以外でフィールドから墓地へと送られた時、オイスタートークンが場に特殊召喚されますわ!」
幸子は最後のあがきでフィールドに小さな魚を一体残した。
オイスタートークン 守備力0
ライフが0になった幸子は悔しそうにピットへと戻ってくる。
「ドンマイ!後は俺たちに任せとけ!」
「ああ!あいつは俺が倒してやる!」
幸子は腕につけていたネオサティスファクションのシールをセカンドホイーラーの鬼柳に渡す。これはWRGPによって走者が変わる時に交代したことが分かりやすいようにするためのシステムである。さらにコナミがフィールドのカードを移していき、鬼柳の準備が完了した。
「気をつけなさい鬼柳。わたくしの水属性モンスターを対策していた…ということは恐らくわたくし達は敵の作戦にはまっていますわ」
「…そうかもな。だがそんなもの俺の満足で超えてきてやる!」
「ええ、やってしまいなさい!」
鬼柳のDホイールがピットから出て行きアンドレに追いつく。
「次は君か。お手柔らかに頼むよ」
「へっ…仲間がやられたんだ。お手柔らかにはいかねえかもな」
「 「 デュエル! 」 」
「俺のターン、ドロー!」
鬼柳 sc2→3 アンドレ sc2→3
「セカンドホイーラーの鬼柳選手、海野選手の雪辱を果たすことができるかー!?」
「当たり前だ!俺はオイスタートークンをリリースし、インフェルニティ・アーチャーをアドバンス召喚!」
自身の体と同じくらいの大きさの弓矢を持った弓兵が現れた。
インフェルニティ・アーチャー 攻撃力2000
「ジャンの予想通り、セカンドホイーラーは鬼柳だったな。アンドレにはどんな作戦を指示したんだ?」
「鬼柳のハンドレスコンボは手札を0枚にすることから始まる…が、そうなるには少しラグがある。だが鬼柳はパワーで押し切るタイプのプレイングをしてくるはずだ」
「そうだな。過去のデータから言ってもパワーと度胸で押し切るのが得意のようだぜ」
「だから俺がアンドレに命じた戦術は…手札が0枚になる前に決めることだ。鬼柳のパワーを利用してな」
「なるほど。手札が0枚になる前に決めればあいつは本領を発揮できないからな」
「バトルだ!サンダー・ユニコーンは倒せねえがそっちのチューナーは潰せる!インフェルニティ・アーチャーで一角獣の使い魔に攻撃!」
アーチャーが放った弓はまっすぐ使い魔へと向かっていった。
「俺は一角獣の使い魔の効果を発動!表側守備表示のこのカードが攻撃対象に選択された時、このカードと俺のフィールドのもう1体のモンスターを除外することが出来る!そして相手は攻撃を続行しなくてはならない!」
「馬鹿な!?そんなことしたら…」
使い魔がユニコーンを連れて異次元へと消えていくと、アーチャーが放った弓がアンドレへ向かう。
「そして鬼柳…君のパワーを君自身が受けるといい!トラップ発動、異次元のバリア—ロスト・フォース—!戦闘以外で俺のモンスターがフィールドから離れた場合、相手の攻撃を無効にしてその攻撃力分のダメージを相手に与える!」
「しまった…!」
放たれた弓が異次元の穴へ吸い込まれたかと思うと鬼柳の後ろにもう1つの穴が生まれた。その穴から弓が出てきて鬼柳の背中に突き刺さってしまう。
「あぐっ…!?」
鬼柳 LP4000→2000
「くそ…。カードを2枚セットしてターンエンドだ」
鬼柳 LP2000
フィールド 『インフェルニティ・アーチャー』(攻撃表示)
セット3
手札3
sc3
「ふふ…俺のターン!このスタンバイフェイズに一角獣の使い魔の効果で除外されたモンスターはフィールドに戻ってくる!」
サンダー・ユニコーン 攻撃力2200
一角獣の使い魔 守備力1000
鬼柳 sc3→4 アンドレ sc3→4
「行かせてもらうよ…鬼柳京介!俺はモンスターを1体セットし、サンダー・ユニコーンの効果を発動!インフェルニティ・アーチャーの攻撃力はエンドフェイズまで1500ポイントダウンする!」
「くそっ…厄介な効果だぜ!」
インフェルニティ・アーチャー 攻撃力2000→500
「バトル!サンダー・ユニコーンでインフェルニティ・アーチャーへ攻撃!」
「くっ、伏せているカードを使いたいが…」
鬼柳の手札は3枚。インフェルニティを生かす条件は整いきれておらず、伏せカードを使うことが叶わない。
鬼柳 LP2000→300
「2ターンで鬼柳のライフが300に…!?なんてやつだ!」
「というか…まずいかもしないですわ。アンドレのscは4…!」
「あ…!あいつの手札のカードがspだったら…!」
アンドレは手札のカードを確認する。そして…スピード・ワールド2の効果を発動した。
「君をここで倒せないと厄介なことになりそうだからね。使わせてもらうよ!スピード・ワールド2の効果を発動!scを4つ取り除くことで手札のsp1枚につき800ポイントのダメージを与える!俺の手札には1枚!」
アンドレのDホイールにつけられているツノから衝撃波が鬼柳に向かって放たれた。
アンドレ sc4→0
「うおおおおっ!?」
鬼柳 LP300→0
「な、なんと!さすがは全てのデュエルを3人抜きで制覇してきたアンドレと言うべきなのか!ネオサティスファクションのセカンドホイーラー、鬼柳選手すらもわずか2ターンで倒してしまったー!」
「ふっ…」
アンドレは観客席へと手を振り、ユニコーンを応援してくれているファンへとサービスをする。
「くぅ…厳しい状況ですが頼みましたわよ庶民!」
「…あいつらは多分俺たちのことを相当調べてきたんだろうな」
「え?ええ…まあそうでしょうね。このわたくしと鬼柳という実力者にこうもあっさりと勝ってしまったのですから…」
「だけどいくらあいつらでも調べられないことがあったみたいだな」
「…?なんのことですの?」
ざわつく観客席、その原因は鬼柳のDホイールにあった。ライフが0なのに…彼のDホイールのデュエルモードが切れておらず、走行が続けられていたのである。
「おっと!何が起こっているんだ!コンピュータートラブルかー!?」
「…!なんだあのモンスターは…!」
そして鬼柳の傍らには奇妙な木像のモンスターが現れていた。
インフェルニティ・ゼロ 守備力0
「あいつは…1度地獄を見てきた死神ってことさ」
鬼柳は不敵に笑い、アンドレに宣言する。
「今からたっぷり見せてやるぜ…。チームネオサティスファクションの死神、鬼柳京介の生き様をな!」
彼のデュエルは…まだ続くようだ。
満足劇場開幕。