遊戯王5D'sタッグフォース 満足の意志を継ぐ者 作:ゾネサー
ついにメンバーが揃ったチームネオサティスファクション。鬼柳は町長の仕事をセルジオへと任せ、サティスファクションタウンの宣伝と遊星達とのデュエルのためにネオドミノシティへと出てきていた。
そんな彼らは今、海野財閥の所有するガレージで彼らの持つDホイールをチューンアップし性能を上げようとしていたが…。
「よし…エンジンは安定してきたな」
「ああ、エンジンはな」
「現実逃避していないで拾うのを手伝ってくださいます?」
彼らの前に広がっている惨状、それは床に大量に落ちているカード。彼らはDホイールをパワーアップしようとモーメントの出力を上げてみたところ、デッキをカバーしている部分が外れてしまい3人のデッキがガレージに舞ってしまったのだ。
「おーい、コナミー!遊びに来たよー!」
「おー、龍亞達。今日も来たか」
ぞろぞろとガレージに入ってくる子供達。最近龍亞や龍可は放課後になるとデュエルアカデミアの友達を連れて遊星達かコナミ達のガレージに入り浸っているのだ。
「今日も大変なことになってるみたいね…」
「俺たちもカード拾うの手伝うぜ!」
彼らは協力して落ちているカードを拾い上げていく。龍可も手伝おうとしたが入り口にいる人物に気づき、腕を掴んで中に引き入れた。
「スライも来てたんだ。そんなとこに入ってないで中に入りなよ!」
「あっ…おい、引っ張るなって」
龍可に引っ張られたスライの目に1枚のカードが入ってくる。
(あれは…あの時のドラゴン。確かエンシェント・ホーリー・ワイバーン…)
丁度表になるように落ちていた白く長い胴体が特徴的なドラゴン。彼は以前のコナミとハイトマンとのデュエルであのドラゴンに魅入られていた。
「…?どうしたのスライ?」
「…俺も拾うのを手伝ってやるよ」
「本当?ありがとう!」
龍亞が渋い目で見ていたのを横目にスライは龍可と一緒にカードを拾い出した。
「コナミさん、ハネワタちゃん見つけたよ!」
「お、パティ。サンキューな」
子供達の協力もあってなんとか床に落ちていた全てのカードを回収し終えた。
「ふぅ…結構時間かかりましたわね。わたくしはこれから会議があるので本社の方に行ってきますわ」
「また後でなー」
海野財閥のガレージでDホイールの作業をしているのは他にガレージのアテがなかったのもあるが、幸子が急用が入った時に対処しやすいようにという理由もあった。
「おし、もう1度モーメントの出力を調整しなきゃな」
「エンジンの方ももう1度見直すか。この前みたいに爆発するかもしれねえしな」
「ま、待ってコナミ!」
「龍可?」
何かに気づいた龍可がコナミを呼び止めた。
「どうした?」
「エンシェント・フェアリーが言ってるの…。コナミのデッキからエンシェント・ホーリーの気配がしないって」
「…え?」
慌ててコナミは自分のエクストラデッキを確認する。驚くことにエンシェント・ホーリーはどこにもいなかった。
「拾い損ねたか?」
「いや、落ちてるのは全部集めたぜ」
床を見渡しても落ちているカードは1枚もない。
「エンシェント・フェアリーならどこにいるか分からない?…そう、分からないのね」
龍可がエンシェント・フェアリーに問いかけるも有意義な情報は得られなかった。そんな騒ぎを聞きつけた龍亞がスライを問い詰める。
「スライ!お前がコナミのカードを盗んだんだろ!」
「…なんで俺が」
「ちょっと龍亞!スライに失礼なこと言ってると思わないの!?」
「思わないね!スライが俺たちについてくるなんておかしいと思ったんだ。いつもなら寄り道せずに帰れとか言うのに」
「…気まぐれにお前らに付き合ってやっただけだ」
「どうしても口を割らないっていうなら…デュエルだ!俺が勝ったら白状してもらうよ!」
「デュエルしてやる義理はねえけど…まあいいか。お前とデュエルしてやるよ」
突っかかる龍亞を押しのけてスライはデュエルディスクを展開する。それに向かい合う龍亞もディスクを展開し準備は完了する。
「お、お前らここガレージ…」
「 「 デュエル! 」 」
コナミの制止も空しくディスクがランダムに先攻を決定し、デュエルが開始された。
「俺のターンからか。ドロー。俺は魔法カード、デビルズ・サンクチュアリを発動。こいつは俺のフィールドにメタルデビル・トークンを一体呼び出す」
フィールドに現れた魔方陣の中心から悪魔を模した鉄の像が降臨した。
メタルデビル・トークン 攻撃力0
「さらにこいつをリリースして
悪魔の像が消えたかと思うと天井に光と闇が混じり合った球体が浮いていた。
混沌球体 攻撃力1600
「へへん!アドバンス召喚でも攻撃力1600なんて大したことないね!」
「言ってろ。混沌球体はアドバンス召喚に成功しときデッキからレベル3のモンスターを手札に加えることが出来る。俺が加えるのはエキセントリック・ボーイ!」
球体が闇に包まれたかと思うと、スライに向かって一筋の光が差し込み1枚のカードが飛ばされてきた。
「さらに俺は魔法カード、封印の黄金櫃を発動。このカードの効果でデッキからカードを1枚除外し、2ターン後のスタンバイフェイズに手札に加える。俺はネクロフェイスを除外!」
赤ちゃンの顔のようなモンスターがけたけたと笑いながらスライと龍亞のデッキの上から5枚のカードを吹き飛ばした。
「お、俺のカードが!?」
「ネクロフェイスは除外された時、互いのデッキの上から5枚のカードを除外する。俺はこれでターンエンドだ」
スライ LP4000
フィールド 『混沌球体』(攻撃表示)
セット0
手札4
「俺のターン、ドロー!ジャッキーン!俺は
頭の部分がラジオになっているロボットが現れる。頭部にはアンテナが付いており常に電波を受信できるようだ。
D・ラジオン 攻撃力1000
「けっ…攻撃力1000かよ」
「ラジオンが攻撃表示の時に俺のディフォーマー達の攻撃力は800アップする!もちろんラジオンも攻撃力アップだ!ギャギャーン!」
右手に持っているイヤホンを振り回すと頭部のアンテナに磁気が集まって行き攻撃力が上昇していく。
D・ビデオン 攻撃力1000→1800
「バトルだ!ビデオンで混沌球体に攻撃!イヤホーン・シュート!ドカーン!」
勢いをつけたイヤホンで球体を絡め取り、そのまま地面へ叩きつけた。
「だが混沌球体は1ターンに1度戦闘では破壊されない!」
「だけどダメージは受けてもらうよ!」
「ちっ…」
スライ LP4000→3800
「見たか!俺はカードを1枚伏せてターンエンド!」
龍亞 LP4000
フィールド 『D・ビデオン』(攻撃表示)
セット1
手札4
「調子に乗るなよ…俺のターン。俺は手札からチューナーモンスター、エキセントリック・ボーイを召喚!」
「あれは…スライのお気に入りのモンスターね」
黄色の髪が下敷きで頭をこすって静電気を発生させた時のように逆立った風変わりな格好をした少年が現れる。
「フィールドにチューナーとチューナーじゃないモンスター…もうシンクロ!?」
「シンクロだ。だがこのモンスターはお前の想像の先を行く!このカードをシンクロ素材にする時、他のシンクロ素材は手札のモンスターを使ってシンクロする!」
「手札のモンスターとシンクロだって!?」
「俺は手札にあるレベル5の混沌球体とレベル3のエキセントリック・ボーイをチューニング!大いなる翼持ちし天使よ、現世と冥界を行き来せよ。シンクロ召喚!羽ばたけ、ゼラの天使!」
エキセントリック・ボーイが半透明になり手札のモンスターと1つになると屈強な肉体と2枚の立派な翼を持った天使がフィールドに舞い降りる。
ゼラの天使 攻撃力2800
「手札のモンスターとシンクロ…そんなのもあるのか」
珍しいものを見たとコナミと鬼柳は感心した。
「最もエキセントリック・ボーイの効果でシンクロしたモンスターの効果は無効になるが…別に問題はない。バトル。ゼラの天使でビデオンに攻撃」
ビデオンのイヤホンを翼を巧みに使ってかわし、左手の爪で切り裂いた。
「ううっ…!」
龍亞 LP4000→3000
「さらに混沌球体で龍亞にダイレクトアタック!」
「させるもんか!トラップ発動、D・スクランブル!俺のフィールドにモンスターがいない時に相手がダイレクトアタックしてきた場合、その攻撃を無効にして手札のディフォーマーを特殊召喚する!来てくれ!D・リモコン!」
龍亞のトラップからエマージェンジーが鳴り響き、リモコン型のロボットが緊急出動する。
D・リモコン 攻撃力300
「…ふん。俺はこれでターンエンド」
スライ LP3800
フィールド 『混沌球体』(攻撃表示) 『ゼラの天使』(攻撃表示)
セット0
手札3
「まだまだ!俺のターン、ドロー!ジャキーン!俺はリモコンの効果を発動!攻撃表示の時は墓地のディフォーマーモンスターを除外して同じレベルのモンスターをデッキから手札に加えられるんだ!俺はラジオンを除外してビデオンを手札に加えるよ!そしてそのまま召喚だ!ドドーン!」
手に持つタイプのビデオカメラが変形したいき、レンズの部分が顔となったロボットとなる。
D・ビデオン 攻撃力1000
「ち…シンクロか」
「俺はレベル4のビデオンにレベル3のリモコンをチューニング!世界の平和を守るため、勇気と力をドッキング!シンクロ召喚!愛と正義の使者、パワー・ツール・ドラゴン!」
右手にはスコップを、左手にはドライバーを持った黄色でコーティングされた機会龍が現れた。
パワー・ツール・ドラゴン 攻撃力2300
「いっくよー!パワー・ツールの効果発動、パワー・サーチ!デッキから3枚の装備魔法を選んで、相手がランダムに選んだカードを俺の手札に加える!」
3枚の装備魔法を手に持った龍亞がスライに向けて裏側の状態で見せる。
「…右だ」
「残りのカードはデッキに戻して…。俺は今加えた装備魔法、災いの装備品をゼラの天使に装備だ!」
「俺のモンスターに装備だと?」
ゼラの天使の手が1つの剣を握る。すると茶色かった翼が漆黒に染まっていき、その姿は堕天使のようになってしまう。
「装備したモンスターの攻撃力は俺のフィールドのモンスター1体につき600下がる!」
「…そういうことか」
ゼラの天使 攻撃力2800→2200
「バトルだ!パワー・ツールでゼラの天使に攻撃!クラフティ・ブレイク!」
左手に持っているドライバーを腕に内蔵しているドリルで回し、天使の翼を貫いた。
「くっ…。エキセントリック・ボーイによってシンクロしたモンスターはフィールドから離れる時、ゲームから除外される」
スライ LP3800→3700
「さらに災いの装備品のもう1つの効果発動!このカードがフィールドから墓地に送られた時、相手フィールドのモンスター1体に装備できる!混沌球体に装備だ!」
装備品の形状が変わってネックレスとなり、球体に引っかかるとその姿から光が消え、闇に染まっていく。
混沌球体 攻撃力1600→1000
「カードを1枚伏せてっと。ターンエンドだ!これが俺の実力さ!」
龍亞 LP3000
フィールド 『パワー・ツール・ドラゴン』(攻撃表示)
セット1
手札4
「俺のターン!スタンバイフェイズに封印の黄金櫃の効果でネクロフェイスが手札に加わる!」
空中に空いた穴から1枚のカードがスライの元に加わった。
(確かあのモンスターは授業で習ったぞ。確か…えーと。そうだ!召喚した時に除外されてるカードを全部デッキに戻してデッキに戻したカードの数×100攻撃力をアップするんだ!確か攻撃力は1200…もし召喚したら11枚のカードが戻るから2300!…だけど俺が今伏せたカードは落とし穴。こいつは相手が攻撃力1000以上のモンスターを召喚した時に発動できて、そのモンスターを破壊できる!これがあれば…)
「何を考えているかは知らねえが…俺はこの時を待っていた」
「な、なに!?」
「俺はゼラの天使の効果を発動!こいつは除外されたターンの次のスタンバイフェイズに特殊召喚される!」
「えー!?そんなー!」
亜空間にいたゼラの天使は空間を切り裂き、裂け目からこちらに帰還してきた。
ゼラの天使 攻撃力2800→3400
「しかも攻撃力が上がった!?」
「ゼラの天使は相手が除外してるカードの数×100の攻撃力をアップする。今お前が除外してるのは6枚、だから600アップした」
「ううっ…これじゃあパワー・ツールでも太刀打ちできない!」
「さらに俺は闇の誘惑を発動!デッキから2枚のカードをドローし、手札の闇属性のモンスターを1枚除外する。当然、俺はネクロフェイスを除外!」
再び異次元へ飛ばされる赤ちゃんの顔のようなモンスター、けたけたとという笑い声と共に互いのデッキの5枚のカードを道連れにした。
「ネクロフェイスが除外されたことで互いのデッキの上から5枚のカードを除外する。さらにお前の除外したカードが増えたことでゼラの天使の攻撃力がさらに500アップ!」
ゼラの天使 攻撃力3400→3900
「そ、そんな…」
「バトル。ゼラの天使でパワー・ツールへ攻撃!」
先ほど呪いの装備をつけられた恨みからか浄化された剣をパワー・ツールの頭部めがけて思いきり振り抜いた。
龍亞 LP3000→1400
「混沌球体の攻撃力はお前の場にモンスターがいなくなったことで元に戻る!」
「しまった!」
呪いのネックレスを振り落とし、球体は元の輝きを取り戻した。
混沌球体 攻撃力1000→1600
「そして混沌球体で龍亞にダイレクトアタック!」
「うわあああ!」
龍亞 LP1400→0
球体が転がっていき、龍亞に突撃を決めて勝敗は決した。
「うう…負けちゃった」
「ま、お前にしたら頑張ったほうだろ」
「なんだとー!?」
「まあ落ち着けって龍亞」
コナミはまたデュエルを始めてしまいそうな龍亞を落ち着かせ、スライへと向き合う。
「スライ、お前が盗んだわけじゃないんだな?」
「…勝ったんだから答える必要はないんだが。いいぜ、答えてやるよ。俺は何もしていない」
「…そうか。疑うようなことを言って悪かったな」
「いいの、コナミ!?」
「ああ。ちゃんと探せばすぐに見つかるさ。…多分」
「…それにしてもおかしいわね」
「何がだ?」
龍可が首を傾げているのを見て疑問に思ったコナミは素直に聞いてみた。
「ほら…私達大きな声では言えないけど精霊が見えるじゃない?」
「ああ、俺も精霊界に行った後は見えるようになったな」
「だけどこのガレージのどこからもエンシェント・ホーリーの力を感じないのよ」
「…確かに。でもここに持ってきたことは確かだぜ。Dホイールにセットした時確認したからな」
「でも今はいない…。こっそり泥棒に入られたとか?」
「いやいや、さすがに気づくって」
「そうよね…。なら誰かが持ち去った…とか?」
「持ち去った…」
「 「 あ 」 」
そんな中、1人の女性がガレージに入ってくる。
「会議終わりましたわよ。Dホイールの調整の続きを…」
「お前かー!」
「え?え?なんですの?」
コナミ達にはしっかり見えていた。幸子の後ろに佇む白きドラゴンの姿が。
「お前間違って持っていっただろ!俺のエンシェント・ホーリーを!」
そう言われ幸子はエクストラデッキのカードを確認する。
「あら…本当ですわ。会議があって急いでいたものですからあまり確認していませんでしたの」
このガレージにいる子供達の目線が幸子に突き刺さった。
「何だかすごく心が痛いですわ…」
コナミにカードを返しながら幸子は胸を押さえた。
「とりあえず…龍亞。スライに謝りなさい」
「えー!?なんで俺が!」
「なんでじゃないでしょ。盗んでないスライをあんなに疑ったんだから」
「うう…。悪かったなスライ」
「…ふん。元々気にしてない」
「さてと…幸子も戻ってきたしDホイールの調整続けるぞー!」
Dホイールにつないだパソコンからモーメントの出力を調整し、試運転を開始した。
「あ、コナミ。俺デュエル見てたからまだエンジンの調整が終わってない…」
「え?」
鬼柳が止めようとするも遅く、Dホイールの後方から小規模な爆発が起こり彼らは軽く吹き飛んでしまう。
「爆発オチなんて最低ですわー!」
こんな感じで彼らの日常は過ぎていった。