遊戯王5D'sタッグフォース 満足の意志を継ぐ者   作:ゾネサー

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新たな満足へ

ロットンやバーバラがいなくなり、グループ同士の抗争も収まったサティスファクションタウン。そんな町を復興させるためコナミは町長となった鬼柳の手伝いをしていた。復興活動を数日行った日の夜、寝どころを貸してもらっているニコやウエストの家で2人はこんな話をした。

 

「良かったのかコナミ?遊星達と帰らなくて」

 

「…実はここに残ったのは鬼柳に頼みがあるからなんだ」

 

「頼み?なんだよ改まって」

 

「鬼柳、WRGPって知ってるか?」

 

「知ってるもなにも…世界的な大会じゃねえか」

 

「単刀直入に言うぜ、一緒に大会に出ないか?」

 

「…嬉しいが無理だな。俺はこの町を発展させなきゃなんねえ」

 

「鬼柳、WRGPは世界的な大会だ」

 

「いや、さっきも言ったじゃねえか」

 

「つまりだ。俺達が出て成績を残せばサティスファクションタウンの知名度もアップする!」

 

「…!なるほどな。だが…」

 

「それに遊星達もこの大会に出る。つまり、俺たちチームサティスファクションのラスト…かは分からねえが大舞台でデュエル出来るかもしれないんだぜ!」

 

「な、なに…!悩ませてくれるじゃねえか!だがニコやウエストのこともあるしな…」

 

「鬼柳兄ちゃんWRGPに出るの!?」

 

話を聞きつけたウエストが勢いよくやってきた。

 

「だがお前らを置いていくわけには…」

 

「私達なら大丈夫ですよ、鬼柳さん」

 

「ニコ…」

 

台所で食器を洗っていたニコが声をかけてくる。

 

「まだこの町は貧しいけれど以前ように不自由ではありません。それに父、セルジオもいますから留守番くらい私達でも出来ます。どうかお自分のやりたい事をやって下さい」

 

「そうだよ!僕もテレビを見て鬼柳兄ちゃん達の活躍を応援してるからね!」

 

「ううっ…お前ら泣かせるじゃねえか!」

 

「鬼柳…相変わらず涙もろいな」

 

鬼柳は2人の優しさに思わず泣き崩れてしまった。

 

「鬼柳さん。どうか今度はWRGPで2人に生き様を見せてやって下さい」

 

「分かった!男、鬼柳京介。WRGPで満足させてやるぜ!」

 

「さすがはリーダー!」

 

鬼柳は力強くみんなに宣言した。

 

「そうと決まればDホイールのメンテナンスやグレードアップ、それにライディングデュエルの練習をしなくちゃな!」

 

宣言したことでやる気が出てきたのか落ち着いていられなくなる鬼柳、ここで1つのことに気づきコナミに問いかける。

 

「あれ?WRGPってメンバーが3人は必要じゃなかったか」

 

「安心してくれ、既にもう1人誘ってある!」

 

「用意がいいな、早速明日顔合わせといこうじゃねえか!」

 

「鬼柳さん、さすがに相手の予定もありますし明日は急すぎるのでは…」

 

「ところがどっこい。丁度明日ここに来るみたいなんだよな」

 

「…?明日の来客の予定はダインの交渉に来るやつだけだったはずなんだが…」

 

そんなこんなで夜は更けていき、コナミは昼頃に叩き起こされる。

 

「起きろよコナミ、もう昼だぞ」

 

「んん、悪い…もう2時間」

 

「ダメだ。ダインの交渉に行かなきゃなんねえ。ついてこい」

 

布団を引っぺがされ無理やり起こされる。眠気まなこを覚ますために顔を水で洗い、鬼柳とともに交渉主との約束の場所へと向かっていく。

 

「それで俺たちのメンバーはいつ来るんだ?」

 

「いま会いに行く所じゃねえか」

 

「え?」

 

彼らの前にダインの交渉に来た女性が見えてくる。彼女がこちらを見ると顔が驚愕の色に染まった。

 

「しょ、庶民!?なんでここにあなたがいますの!」

 

「よー、久しぶり…ってほど時間は経ってないけど久しぶりな感じがするな幸子」

 

「コナミ、こいつが?」

 

「ああ」

 

綺麗な青い髪にスラリとした体つきの長身の女性、海野幸子。コナミが呼びかけたWRGPのメンバーの1人である。

 

「幸子、こいつは鬼柳。俺が誘った3人目の俺たちのメンバーだ」

 

「あら、そうでしたの。大会中よろしくお願いいたしますわ」

 

「……」

 

「…?どうした鬼柳?」

 

鬼柳はまるで獲物を観察する獣のような眼で幸子を見定める。

 

「お前、強いのか?」

 

「…もし!ちょっと失礼じゃありませんこと!?」

 

幸子はいきなりの侮辱に交渉相手ということも忘れ怒った。それを聞いた鬼柳は腰につけているホルガーから取り出した銃をデュエルディスクに展開し、腕につけて幸子に布告する。

 

「俺はお前がどんな実力かは知らない。だから俺とデュエルだ!」

 

「ふん…望む所ですわ!わたくしがいくら強くてもメンバーが弱くては足を引っ張られるだけですからね!」

 

「お、おい…2人とも!」

 

「庶民は口を出さないでくださいまし!」

 

「コナミは口を挟まないでくれ!」

 

「ど、どうしてこんなことに…」

 

2人は互いに距離を取り、ディスクを構え向き合う。丁度この場所はロットンとコナミ達がデュエルをした場所で、周りの人たちもこのデュエルの行く末を見守っていた。

 

「 「 デュエル! 」 」

 

サティスファクションタウンでのデュエルは基本決闘銃の早抜きの順番で決定するが、幸子は当然そのディスクは所持していないためランダムに先攻が決定された。

 

「まずは俺からだな、ドロー!俺はインフェルニティ・ビーストを召喚!」

 

黄土色の毛が生えた獣が幸子を威嚇する。

 

インフェルニティ・ビースト 攻撃力1600

 

「インフェルニティ…聞いたことのないモンスターですわ」

 

「カードを3枚伏せてターンエンド!」

 

鬼柳 LP4000

 

フィールド 『インフェルニティ・ビースト』

 

セット3

 

手札2

 

「わたくしのターン、ドローですわ!」

 

ステップを踏みながら鮮やかにドローする。そんな幸子を横目に鬼柳は素早くトラップを発動させた。

 

「トラップ発動、インフェルニティ・インフェルノ!俺の手札を2枚墓地へ捨てることでデッキからインフェルニティモンスターを2体墓地に送らせてもらうぜ」

 

「鬼柳のやつ…いきなりハンドレスか」

 

「ふふ…こんな最序盤で手札が0になるなんてデュエルの基本を知らないようね」

 

「へっ…きっとお前は今の発言を後悔することになるだろうさ」

 

「楽しみにしておきますわ。わたくしはハリマンボウを召喚!」

 

体が針で囲まれ、外敵を近づかせなくしているマンボウがフィールドに浮遊した。

 

ハリマンボウ 攻撃力1500

 

「だけど鬼柳のインフェルニティ・ビーストの攻撃力は1600だぞー!」

 

「言われなくても分かっていますわ。わたくしは手札から魔法カード、大波小波を発動致します!」

 

「呼んだか?」

 

「呼んでませんわ!わたくしはこのカードの効果でわたくしのフィールドの水属性モンスターを全て破壊し、その数と同じ数の水属性モンスターを手札から特殊召喚しますわ!ハリマンボウを破壊し現れなさい、超古深海王シーラカンス!」

 

ハリマンボウが小さな波に流されていったかと思うと、大きな波に流され巨大なシーラカンスが姿を現す。

 

超古深海王シーラカンス 攻撃力2800

 

「幸子も1ターン目からシーラカンスを…!」

 

「少しはやるじゃねえか」

 

「今更機嫌をとっても遅いですわよ。ハリマンボウは墓地に送られた時、相手フィールドのモンスター1体の攻撃力を500下げます!」

 

ハリマンボウの体の周りにくっついていた針がインフェルニティ・ビーストに放たれる。

 

インフェルニティ・ビースト 攻撃力1600→1100

 

「ですがここからがわたくしの本領発揮!手札を1枚墓地へと送りシーラカンスの効果を発動!デッキより可能な限りレベル4以下の魚族モンスターを特殊召喚しますわ!」

 

「いつ見てもインチキな展開力だぜ!」

 

シーラカンスの周りに4つの渦が発生しそこから4匹の魚が出てくる。

 

「…甘いな!カウンタートラップ発動、インフェルニティ・バリア!俺のフィールドにインフェルニティモンスターが攻撃表示で存在し俺の手札が0枚の時、相手が発動したカードの効果を無効にし破壊する!」

 

「手札が0枚の時に発動出来るカードですって!?なんてトリッキーな…!」

 

はずだったのだが鬼柳の発動したトラップによって渦は止み、シーラカンスも海の底へと沈んでいってしまう。

 

「さすがは鬼柳…シーラカンスを撃ち抜いちまった」

 

「くぅ…わたくしとしたことが失態を。ターンエンドですわ!」

 

「マジか!やばいぞ幸子!」

 

シーラカンスを破壊された痛手は大きく、幸子は身を守る術もなくターンを終えてしまう。

 

幸子 LP4000

 

フィールド 無し

 

セット0

 

手札2

 

「容赦はしねえ、俺のターン!俺は終末の騎士を召喚!こいつは召喚に成功した時、墓地に闇属性モンスターを墓地に送ることができる。俺はインフェルニティ・リベンジャーを墓地へ!」

 

ぼろぼろの装甲に身を包んだ騎士が剣を振りかざす。

 

終末の騎士 攻撃力1400

 

「う…」

 

「バトルだ。ビーストと終末の騎士でお前にダイレクトアタック!」

 

ビーストは口から発射した火の玉で、騎士は手に持った剣で幸子を攻撃した。

 

幸子 LP4000→1500

 

「このまま終わるなよ。もっと俺を満足させてみろ!ターンエンド!」

 

鬼柳 LP4000

 

フィールド 『インフェルニティ・ビースト』(攻撃表示) 『終末の騎士』(攻撃表示)

 

セット2

 

手札0

 

「わたくしのターン、ドロー!わたくしはディープ・スイーパーを召喚しますわ!」

 

深海の掃除屋と異名を持つダイオウグソクムシが敵の気配を察知し、水面へと浮上した。

 

ディープ・スイーパー 攻撃力1600

 

「バトル。ディープ・スイーパーでインフェルニティ・ビーストに攻撃!」

 

ディープ・スイーパーは体を跳ねさせインフェル二ティ・ビーストの後方へと回りこみ尻尾を突き立てることで毒を注入した。

 

鬼柳 LP4000→3500

 

「だが、俺の手札が0枚の時に相手との戦闘で俺のモンスターが破壊された時、墓地のインフェルニティ・リベンジャーは破壊されたビーストと同じレベルとして特殊召喚出来る!」

 

カウボーイハットを被った小さなモンスターが2丁の拳銃を構えながら地面に空いた亜空間から出てきた。

 

インフェルニティ・リベンジャー 守備力0

 

「厄介な効果ですわね…ターンエンドですわ!」

 

幸子 LP1500

 

フィールド 『ディープ・スイーパー』

 

セット0

 

手札2

 

「俺のターン、ドロー。インフェルニティ・リベンジャーをリリースしてインフェル二ティ・デストロイヤーをアドバンス召喚!」

 

筋骨隆々な体をした悪魔が地面を拳で叩き割りながら現れた。

 

インフェルニティ・デストロイヤー 攻撃力2300

 

「デストロイヤーでディープ・スイーパーに攻撃だ!そしてこいつは俺の手札が0枚の時に相手モンスターを戦闘で破壊すれば相手に1600のダメージを与える。終わりだ!」

 

「させませんわ!魚族モンスターが攻撃の対象となったことで墓地のキラー・ラブカを除外し効果を発動いたします。その攻撃を無効にし、攻撃してきたモンスターの攻撃力をわたくしのターンのエンドフェイズまで500下げますわ!」

 

「なにっ!?…シーラカンスのコストか!」

 

ここで鬼柳が初めて動揺を見せる。

 

インフェルニティ・デストロイヤー 攻撃力2300→1800

 

「ふふ…あまりわたくしを舐めないほうがよろしいんじゃなくて?」

 

「ああ…そうかもな。終末の騎士を守備に変えてターンエンドだ!」

 

終末の騎士 守備力1200

 

鬼柳 LP3500

 

フィールド 『終末の騎士』(守備表示) 『インフェルニティ・デストロイヤー』(攻撃表示)

 

セット2

 

手札0

 

「わたくしのターン、ドロー!…!いい引きですわ。わたくしは永続魔法、異次元海溝を発動!このカードの効果で墓地の水属性モンスターのシーラカンスを除外致します!」

 

「…何をする気だ」

 

「わたくしのエースモンスターを呼び戻すのですわ。ディープ・スイーパーはリリースすることでフィールドの魔法・罠カードを1枚破壊出来ます。この効果でわたくしは異次元海溝を破壊!」

 

「ええっ…自分のカードを破壊!?大丈夫なのか?」

 

「安心なさい庶民。異次元海溝は破壊された時、このカードの効果で除外したモンスターを呼び戻すのですわ。もう1度戻りなさい、シーラカンス!」

 

海溝から再び巨大なシーラカンスが舞い戻ってきた。

 

超古深海王シーラカンス 攻撃力2800

 

「またそいつを呼んできたってことは…」

 

「当然効果を発動致しますわ!手札を1枚墓地へと送り、デッキよりレベル4以下の魚族モンスターを任意の数まで特殊召喚します!わたくしが呼ぶのは2体の竜宮の白タウナギ、オイスターマイスター、キラー・ラブカ!」

 

シーラカンスが生み出した4つの渦から4匹の魚が現れた。

 

竜宮の白タウナギ×2 攻撃力1700

オイスターマイスター 攻撃力1500

キラー・ラブカ 攻撃力700

 

「くっ…さすがにまずいかもな」

 

「その効果で呼んだモンスターは攻撃できねえし効果も無効にされている…だけど竜宮の白タウナギはチューナー…!」

 

「当然、シンクロ召喚ですわ!わたくしはレベル3のオイスターマイスターにレベル4の竜宮の白タウナギを、レベル3のキラー・ラブカにレベル4の竜宮の白タウナギをそれぞれチューニング!氷の槍を身に宿す龍よ、その凍える吐息で幾千の敵を凍らせよ!シンクロ召喚!全てを貫け、氷結界の龍 グングニール!」

 

シーラカンスの隣に身体が氷で出来たドラゴンが2体ともゆっくりと降りてくる。

 

氷結界の龍 グングニール×2 攻撃力2500

 

「この状況…初めて幸子とデュエルした時を思い出すな」

 

「…そうですわね。ですがあの時よりわたくしの戦術は進化していますわ!オイスターマイスターは戦闘以外の方法で墓地へと送られた時、場にオイスタートークンを1体場に残しますわ!」

 

オイスターマイスターの子供が巨大な3体のモンスターに隠れて場に残っていた。

 

オイスタートークン 守備力0

 

「そしてグングニールの効果を発動!手札のカードを2枚まで墓地へ送ることでその数だけあなたのフィールドのカードを破壊しますわ。わたくしは手札に残った最後の1枚を墓地へと送り、こちらから見て左側の伏せカードを破壊!」

 

「くっ…伏せカードを狙ってきたか」

 

グングニールの咆哮とともに天より氷の槍が降り注ぎ、鬼柳の伏せカードを1枚破壊した。

 

「さらにコストとして墓地に送られた素早いアンコウの効果を発動!このカードが手札かデッキより墓地へと送られた場合、デッキより2体まで素早いと名のつくモンスターを特殊召喚致します。わたくしは1体の素早いマンタを特殊召喚!」

 

猛スピードで1匹のマンタがオイスタートークンを囲うように泳いできた。

 

素早いマンタ 攻撃力800

 

「またフィールドが埋まった…!すげえな幸子!」

 

「わたくしの力に震撼なさい。バトル!わたくしはシーラカンスでインフェルテニィ・デストロイヤーに攻撃!」

 

巨大なシーラカンスが動くたびにどこかに渦が巻いていく。それほどの巨体でデストロイヤーを潰そうとした。

 

「かかったな!悪魔族モンスターのインフェルニティ・デストロイヤーが攻撃の対象になったことでデストロイヤーとシーラカンスを対象にトラップカード、ヘイト・バスターを発動!対象にした2体のモンスターを破壊し、シーラカンスの攻撃力分のダメージをお前に与える!」

 

「ゲッ…鬼柳はそんなカードを伏せてたのか!」

 

デストロイヤーに爆弾がセットされ、それごとシーラカンスは押しつぶそうとする。

 

「甘いですわね。シーラカンスのもう1つの効果を発動!このモンスターが効果の対象になった時、フィールドの魚族モンスターをリリースすることでその効果を無効にして破壊しますわ!わたくしはオイスタートークンをリリースしてヘイト・バスターを破壊!」

 

「何だと!?」

 

デストロイヤーにセットされた爆弾はシーラカンスが発生させた渦でどこかへと飛ばされてしまう。

 

「お、おお!そんな効果もあったのか!」

 

「ヘイト・バスターは無効!攻撃は続行していますわ!」

 

再び無防備な姿となったデストロイヤーをシーラカンスが押しつぶした。

 

鬼柳 LP3500→2500

 

「ぐっ…」

 

「よし!インフェルニティ・リベンジャーを特殊召喚されてもマンタで潰せる!このまま総攻撃が決まれば幸子の勝ちだ…!」

 

「…そうはさせねえ!墓地のインフェルニティ・ビショップの効果を発動!俺の手札が0枚の時にインフェルニティモンスターが破壊される場合、こいつを除外することで身代わりにすることができる!」

 

「なっ…」

 

押しつぶしたのはデストロイヤーではなく身代わりとなったビショップだった。

 

「…このターンでは仕留めきれないですわね。ですがモンスターは倒させてもらいますわ!行きなさいグングニール、今度こそデストロイヤーを破壊するのです!」

 

グングニールが吐いた息がデストロイヤーにあたり、彼の身体は凍ってそのまま砕け散ってしまう。

 

「ぐうっ…!俺のモンスターが破壊されたことでインフェルニティ・リベンジャーを特殊召喚!」

 

鬼柳 LP2500→1800

 

インフェルテニィ・リベンジャー 守備力0

 

「わたくしはもう1体のグングニールで終末の騎士へ、さらに素早いマンタでインフェルニティ・リベンジャーへ攻撃!」

 

グングニールが身も凍てつくような吐息でで立ちふさがる騎士を封じると拳銃を交わしながら1体のマンタがリベンジャーにビンタを決めた。

 

「うおおっ…。正直、お前がここまでやるとは思ってなかった。悪かったな…!」

 

「ふっ…まだわたくしはあなたに勝利していませんわ。褒め言葉ならその後でお願いします。わたくしはこれでターンエンド!」

 

「だが…俺も勝ちを譲る気はない」

 

「いくらあなたのデッキが手札0で効果を発動するカードが多いとはいえ、フィールドに何もなしでは流石に辛いでしょう」

 

「いや…俺のフィールドにはモンスターがいる!」

 

「な!?いつの間に!」

 

ステッキを持った小さな魔術師がいつの間にかフィールドに現れていた。

 

トイ・マジシャン 攻撃力1600

 

「こいつはお前がグングニールの効果で破壊した伏せカードさ」

 

「鬼柳…いくらハンドレスにしたいからってモンスターを魔法・罠ゾーンに伏せるのはどうかと思うぞ!」

 

「…トイ・マジシャンは魔法カード扱いとして手札から魔法・罠ゾーンに伏せることが出来るモンスターだ」

 

「そんなモンスターがいるなんて…」

 

「手札を0にしたい俺としては好都合なカードってわけさ。そしてこいつは相手のカード効果で破壊されて墓地に送られたターンのエンドフェイズに特殊召喚できる!」

 

「やりますわね…ですが攻撃力の低い素早いマンタを攻撃しようにも先ほどわたくしはキラー・ラブカをシンクロ素材として墓地に送っています。モンスターが1体増えてもどうにもならないですわ!」

 

「どうかな…満足できる答えを提供してやるぜ」

 

幸子 LP1500

 

フィールド 『氷結界の龍 グングニール』×2(攻撃表示) 『素早いマンタ』(攻撃表示) 『超古深海王シーラカンス』(攻撃表示)

 

セット0

 

手札0

 

「イッツ…ショータイム!…ドロー!」

 

鬼柳がこのデュエル負けるにしても勝つにしても最後と思われるドローをする。デッキが鬼柳に示した答え、それを鬼柳は場に出した。

 

「ふっ…満足させてくれるぜ。俺はトイ・マジシャンをリリースしてインフェルニティ・アーチャーをアドバンス召喚!」

 

自身の身体と同じくらいの大きさはあろう弓矢を持った弓兵がマジシャンと交代でフィールドに現れた。

 

インフェルニティ・アーチャー 攻撃力2000

 

「そのモンスターで何を…?」

 

「教えてやるよ、こいつの効果を!インフェルニティ・アーチャーは俺の手札が0枚の時、相手プレイヤーにダイレクトアタック出来る!」

 

「な…え?嘘でしょう…。この土壇場でそんなカードを!」

 

「行くぜ、インフェルニティ・アーチャーでダイレクトアタック!」

 

アーチャーが自分の体をめいいっぱい使い、弓をモンスター達の頭上を超えるようにセットし、矢を放った。その放物線は綺麗にグングニール達を超えていき、幸子へと突き刺さった。

 

「そんな馬鹿なですわー!?」

 

幸子 LP1500→0

 

こうして勝敗は決した。これを見ていた住人達から拍手が起こる中、鬼柳が幸子に近づいていく。

 

「いいデュエルだったぜ、えーと…幸子か」

 

「ぐぬぬ…次は負けませんわよ」

 

デュエルを通して互いを認め合った2人は握手で先ほどの互いの非礼を取り消した。

 

「おーい2人ともー、大丈夫か?また喧嘩したりしない?」

 

「しねえよ」

 

「そもそも喧嘩なんかしてませんわ」

 

「そ、そうか…」

 

2人とも聞いた瞬間即答で否定したのでコナミは戸惑ってしまう。

 

(こいつら結構息あってるんじゃないか…?)

 

「さて…コナミ。こうしてメンバーが揃った以上決めるべきことがあるよな」

 

「え?何を?」

 

「決まってますわ、このチームのリーダーが誰かですわ。まあ語るまでもなくわたくし…」

 

「いや、リーダーは俺だ」

 

「何ですって…!」

 

再び見えない火花を散らす2人。

 

「どーどー。落ち着いてくれ…」

 

「ふー!」

 

何だか野生化している幸子は置いておき、鬼柳は提案を続ける。

 

「もちろん決めるべきはチーム名だ!」

 

「ふ…任せな。俺が今考えたのがある!」

 

「今かよ」

 

「ほら…結構時間かかったから夕日が射してきてるだろ。それで思いついた」

 

「む…庶民のくせになんだか期待できそうですわね」

 

一呼吸おいてコナミは自信ありげに言い放った。

 

「ずばり、『夕焼け広場仲良し連合』だ!」

 

「ねえよ」

 

「論外ですわ」

 

「お前ら仲良いな!?」

 

バッサリと2人切り捨てられる。体育座りしだしたコナミを横目に次の出番はもらったと言わんばかりに幸子が言い出す。

 

「これだから庶民は…わたくしのエレガントなチーム名におののきなさい!」

 

「満足できるチーム名で頼むぜ」

 

これまた一呼吸置いて自信ありげに言い放たれた。

 

「ふっ…『海野幸子と愉快な仲間たち』でどうでしょうか」

 

「俺はお前が愉快な仲間だと思う」

 

「確かに」

 

「なっ…トップスで築き上げたわたくしのセンスを一蹴ですって!」

 

あまりのショックに幸子自身がおののいてしまった。

 

「お前ら…このチームで何を成し遂げたいかちゃんと考えたか?」

 

「むぅ…」

 

「ぐきぎ…ならあなたの考えたチーム名を聞かせなさい!」

 

「ふっ…俺の答えは初めから1つだ!」

 

夕焼けへと人差し指を掲げ、その名前は言い放たれた。

 

「俺はこのチームでもっと満足したい。以前みたいな独りよがりじゃなくチーム全員での満足を俺は求めたい。そんな俺の思いを込めた…チーム『ネオサティスファクション』!」

 

「よし、それだ!」

 

「だろ?」

 

「待ちなさい、庶民達!」

 

「なんだよ。この名前で満足出来ないのか?」

 

「さっきから満足、満足と言ってますが正直意味が分かりませんわ」

 

「なら分かりやすく多数決で決めようぜ」

 

「卑怯ですわよ!?」

 

彼らの言い合いはダインの交渉を忘れ去りながらここから2時間ほど続いたが結局は鬼柳の提案が通った。こうしてチームネオサティスファクションは結成された。

 




ちなみにネオはギリシャ語で新しいを意味しますが英語では復活という意味を持ち、単に新しいを意味するニューとは違い古くからあるものの新しい形という意味で用いられるらしいです。
ネオサティスファクションは鬼柳さんにとって相応しいチーム名かもしれませんね。

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