遊戯王5D'sタッグフォース 満足の意志を継ぐ者   作:ゾネサー

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最高のsatisfactionを貴方に

ロットンが投げたダイナマイトの爆発で吹き飛ばされたコナミと鬼柳は体をさすりながらある場所で目を覚ました。

 

「いてて…大丈夫か鬼柳」

 

「ああ…なんとかな。…遊星はどこだ?」

 

2人は周りを見渡すも他に人は見当たらなかった。その代わりにコナミと遊星のDホイールが転がっていた。

 

「俺たちとは別方向に飛ばされたか…。ロットンも見当たらねえ、奴もか」

 

「まずいな、遊星が奴に捕まったかもしれねえ…」

 

「ちくしょう…俺はあいつに守られてばかりなのに、俺はあいつを守ることもできねえのか…」

 

「そんなことはねえだろ、俺を守るためにロットンに体当たりとかしてくれたじゃねえか」

 

「だが俺は結局何も出来てねえ。ニコやウエストもあの父親が守った…。なのに俺はお前達に守られてばかりで…」

 

「ならここから頑張ればいいだろ!途中で諦めるなんて鬼柳らしくないぜ、最後まで全力を尽くさないでお前は満足できるのかよ!」

 

「…いや、まだだ!まだ俺は満足していない!」

 

「よく言った!」

 

鬼柳の言葉が響くのと同時に地面に突き立てられていたデュエルディスクが動き出す。そう、彼らが飛ばされたのは鉱山へと送られた人達の墓場だった。

 

「このディスク…まだ生きてるぜ鬼柳」

 

「ふっ…どうやらこいつらはここを俺の死に場所にはさせてくれないみたいだ」

 

鬼柳がディスクを地面から抜き取り、腕に装着する。

 

「満足しようぜ、コナミ」

 

「ああ」

 

「あいつらに見せてやる…死神の生き様ってやつをな!」

 

彼らが山から見下ろす先にはクラッシュタウンから名前を変えられたロットンタウンが見えていた。

 

そのロットンタウンではラモングループとマルコムグループの抗争が止んだため、とても平和になる…わけもなく争いが続いていた。なぜなら鉱山へと送る作業員を出さなくてはいけないため、誰が送られるかという話でもめていたからだ。だがロットンやバーバラの宣言によりマルコムグループの味方同士でデュエルを行い、1日ずつ犠牲者を出していくという悪夢のような状態となっていた。

 

「やめろ…。やめるんだロットン!」

 

「不動遊星…てめえはそこで大人しくこの愉快な惨状を見物してるんだな!」

 

「愉快だと…?この状況のどこが愉快だと言うんだ!答えてみろロットン!」

 

「笑わせる。俺より格下の雑魚どもが1日でも長く生きるためにもがき苦しむ…最高のショーじゃねえか!」

 

「ロットン…貴様だけは許さない!」

 

「あんたは黙ってな!」

 

突き立てられた太い木の棒に縄でぎっちりと縛られて身動きの取れない遊星にバーバラが鞭を振るった。

 

「ゆっくり見てるんだね。この町の本当の姿を…」

 

「くっ…」

 

そんな遊星に聞こえてきたのは醜くもデュエルで生き残ろうとするデュエリスト達の苦しそうな声をかき消す2台のDホイールの走行音だった。

 

「これは…」

 

そしてそのDホイールからは2つのハーモニカの音が走行音に重なり響いてきた。

 

「コナミ、お前ハーモニカうめえじゃねえか」

 

「そうか?」

 

「ちっ…お前ら生きてやがったのか!」

 

「よおロットン。地獄の底から舞い戻ってきたぜ、まあ今じゃここも地獄みたいなもんだけどな」

 

Dホイールを降りて2人はロットンと向き合った。

 

「いいのかよ、亡者ども。ここでただ生贄の順番を待つだけでよ」

 

「そうだ…何もあいつに従う必要なんて!」

 

ロットンの実力に恐れをなして従っていた部下達も鬼柳に触発され、反抗の意思を示し出す。

 

「馬鹿なことを考えるなよ、お前らの命は俺が預かってるんだぜ?」

 

「なら、お前を倒せば問題はないな?」

 

「調子に乗るんじゃないよ!こっちには人質がいるんだよ!」

 

そう言ってバーバラは再び遊星に鞭を振るう。

 

「俺に構うな!鬼柳、コナミ!」

 

「はっ…別にいいぜバーバラ。丁度いい余興だ、俺が2人まとめてやっつけてやるよ」

 

「ちょっとロットン!そんなことしなくても人質を使えば…!」

 

「俺にいい考えがある。任せておけ」

 

そう言ってロットンも2人へと向き合った。

 

「俺たち2人と一気にデュエルか…なら俺たちはタッグフォースルールでお前と!」

 

「いや、お前らは別々でいい。バトルロイヤルルールでライフも4000ずつもらって構わねえ」

 

「なんだと!?」

 

「…何を考えている、ロットン?」

 

「その代わりにちょっとばかしハンデを貰うだけさ。そう、お前らは手札が合計10枚で始まるんだ…俺も手札10枚で始めさせてもらうぜ」

 

「そういうことか…!鬼柳、奴の狙いはガトリング・オーガで俺たちを先攻ワンターンキルで…!」

 

「…異存ねえよ」

 

「決まりだな!なら始めようか、丁度夕日も地平線へとつく。デュエルタイムだ…!」

 

夕日が少しずつ沈んでいき地平線に触れる。3人とも抜いた決闘銃をディスクとして展開し、カードを初期手札の枚数となるように引いた。コナミでは鬼柳より早く銃を抜くことは出来ない。実質的に鬼柳とロットンのスピード勝負となった。結果、早かったのは…ロットン。

 

「早え…!あいつ手札10枚も引いてやがんのに!」

 

「…やるな」

 

「鬼柳、所詮お前も流れ者よ。この町出身の俺にかなうとでも思ったか?さあ、始めるぜ?」

 

「 「 「 デュエル! 」 」 」

 

「気をつけろよ、鬼柳!」

 

「ふっ…さて、満足させてもらおうか!」

 

「俺のターン、ドロー!俺はガトリング・オーガを召喚!」

 

「…!」

 

藍色のコートを着た悪魔が砂風と共に現れた。腹部の銃口は今か今かと獲物を狙っている。

 

ガトリング・オーガ 攻撃力800

 

「そして俺は5発分の弾を装填する!」

 

ロットンが場に5枚の伏せカードを伏せると、肩の装填口から5発分の弾が装填された。

 

「あれはラモンを倒した強力なモンスター…、セットした魔法・罠カードを墓地に送ることで相手プレイヤーに800のダメージを与えることが出来る。このままでは鬼柳かコナミのどちらかがこのターンでやられてしまう!」

 

(へっ…そうはいかないぜ遊星。俺の手札にあるハネワタは手札から墓地に捨てることでこのターン俺が受けるダメージを0にすることが出来る。…ん?俺が受けるダメージ?あっ!)

 

ここでコナミはロットンの真の狙いに気づく。コナミの使うハネワタはターンが回っていなくても効果ダメージを防ぐことができるので先攻ワンターンキルを狙うガトリング・オーガにとっては厄介な存在。だがバトルロイヤルルールならばコナミへの弾丸は凌がれても鬼柳という標的が残っている。ロットンはわずか一戦でその弱点に気づいていたのだ。

 

「…手を出すなよコナミ」

 

「えっ…?」

 

そんなコナミに小声でささやく鬼柳。

 

(何か策があるのか…?)

 

「来いよ、ロットン!」

 

「へっ…お前はやっぱり死神だな。自ら死を望むとはよ。いいぜ、まずはお前からだ!ガトリング・オーガの効果を5回発動、ガトリング・ファイア!」

 

ガトリング・オーガが発射口の横に設置されたハンドルを勢いよく回すとガトリング砲が何発も鬼柳を襲った。

 

「ぐあっ…!」

 

鬼柳 LP4000→0

 

「鬼柳…!?」

 

「鬼柳ーー!」

 

弾丸をもろに食らった鬼柳はその場で横たわってしまう。

 

「ふふ…ついに死神を倒した。…なにっ!?」

 

だが鬼柳は立ち上がり、デュエルを続行していた。

 

鬼柳 LP0

 

「馬鹿な…何故ライフが0なのに立っていられる!」

 

「…俺は手札からインフェルニティ・ゼロの効果を発動していた。俺のライフが効果ダメージによって0になる時、こいつ以外の手札を全て捨て、こいつを特殊召喚することができる。そしてこいつがいる限り俺はライフ0でも敗北にならない」

 

「そんなモンスターが…!」

 

インフェルニティ・ゼロ 守備力0

 

「そしてこいつは戦闘では破壊されない。だがこれから俺に500のダメージが入るごとにこいつにデスカウンターが1つ乗っていく。そして3つのデスカウンターが乗った時こいつは破壊される」

 

「なら今度こそお前を葬ってやる!俺はカードを5枚セット、そしてガトリング・オーガの効果を発動!」

 

ガトリング・オーガが銃口を鬼柳へと向けた瞬間、ロットンの頭に銃を突きつけたものがいた。

 

「なんだこいつは…!」

 

「俺の手札が0で効果ダメージが発生した時、墓地のインフェルニティ・デス・ガンマンを除外することでそのダメージを無効にすることが出来る。そしてお前は2つの選択肢から1つを選んでもらう」

 

「なんだと?」

 

「1つは俺がカードを1枚ドローした時、それがモンスターならば俺がこのターン受けたダメージと無効にしたダメージをお前に与える効果。逆に魔法か罠なら俺はこのターン受けたダメージと同じダメージを受ける。もう1つはこのターンお前は相手にダメージを与えることが出来ない効果。さあ、どうする?正直俺もデッキにどれくらいモンスターが入ってるか忘れちまった」

 

(鬼柳…勝負をまた運に任せる気か?)

 

鬼の仮面をつけたがたいのいい人型モンスターがロットンに突きつけた拳銃のトリガーに手をかける。

 

「…落ち着け。バトルロイヤルルールでは互いに1ターン目は攻撃ができない。ここはギャンブルをする場面じゃねえ、俺は2つ目の効果を選択!」

 

ロットンに突きつけた銃は消え、デス・ガンマンも姿を消した。

 

「ふっ…そんなに死神が怖いのか?」

 

「うるせえ、俺は俺のフィールドで戦う。これでターンエンドだ」

 

ロットン LP4000

 

フィールド 『ガトリング・オーガ』(攻撃表示)

 

セット4

 

手札0

 

「俺のターン、ドロー」

 

鬼柳がカードを引く、そしてそのカードはそのまま魔法・罠ゾーンに伏せられた。

 

「残念だったな。俺はカードを1枚伏せてターンエンド」

 

「ちっ…もう1つの方を選択していればやつはお陀仏だった…」

 

鬼柳 LP0

 

フィールド 『インフェルニティ・ゼロ』(守備表示)

 

セット1

 

手札0

 

「俺のターン!」

 

「コナミ、お前の手札にハネワタがいるのは分かってるんだよ!トラップ発動、ピンポイント・シュート!」

 

コナミの手札の1枚がロットンの発動したトラップによって撃ち抜かれる。

 

「俺が宣言したカードが相手の手札にあった時そのカードを墓地に送らせる!」

 

「くっ…やっぱあいつは強えな!相手フィールドにのみモンスターがいる時、レベル・ウォリアーはレベル4として特殊召喚することが出来る!さらにこいつをリリースしてサイバネティック・マジシャンをアドバンス召喚する!カードを2枚伏せて…ターンエンド!」

 

白いローブをまとった魔術師がフィールドに現れた。左手には白い杖を握っている。

 

サイバネティック・マジシャン 攻撃力2400

 

コナミ LP4000

 

フィールド 『サイバネティック・マジシャン』(攻撃表示)

 

セット2

 

手札1

 

「俺のターン。手札から装備魔法、ダブル・アームズをガトリング・オーガに装備!ガトリング・オーガの効果によって相手に与えるダメージは2倍になる!」

 

「つまり…1600かよ!?」

 

「俺を1発で仕留めようというのか…面白い。やってみろよ」

 

「言われなくてもやってやるよ!このダメージで貴様のインフェルニティ・ゼロにデスカウンターは3つ乗る!ガトリング・オーガの効果発動、死神野郎を葬れ!」

 

ガトリング・オーガから放たれた弾丸が鬼柳を襲う。

 

「トラップ発動、ピケルの魔方陣!俺がこのターン受ける効果ダメージを0にする!」

 

「なにっ!?」

 

鬼柳の周囲を魔法壁が囲い、弾丸を全て弾き飛ばす。

 

「お前の話はここに来るまでコナミに聞いている。効果ダメージの対策をしていないとでも思ったか?」

 

「くっ…なら狙いを変えるだけだ!今度はコナミを対象にガトリング・オーガの効果を発動!」

 

ガトリング・オーガが再びハンドルを回すとに先ほどより倍くらいの大きさの弾丸となった弾がコナミを襲った。

 

「うおっ…!」

 

コナミ LP4000→2400

 

「どうだ…!」

 

「へっ…だがお前の伏せカードを見な」

 

「はっ…!」

 

このターンの開始時にロットンのフィールドに伏せられていたカードは3枚。ガトリング・オーガが効果を発動するためには伏せカードを1枚ずつ弾丸にしていく。つまり彼に残った伏せカードは1枚のみ。

 

「そうか…鬼柳は運に任せたデュエルをしたんじゃない。ロットンを挑発して弾切れを狙っていたんだ!」

 

「ふっ…これが俺の生き様だ。さあロットン、残りも撃つか?」

 

「この弾を使っても仕留めきれねえ…。俺はガトリング・オーガを守備表示に変更しターンエンド!」

 

ガトリング・オーガ 守備力800

 

「俺はエンドフェイズに速攻魔法、スケープ・ゴートを発動!羊トークンを4体俺の場に守備表示で特殊召喚する!」

 

コナミの場に4体の子羊がふわふわと浮いてきた。

 

羊トークン×4 守備力0

 

ロットン LP4000

 

フィールド 『ガトリング・オーガ』(守備表示)

 

セット1

 

手札0

 

「俺のターン!俺はインフェルニティ・ビートルを召喚!」

 

体が全体的に黒く染まったヘラクレスオオカブトがフィールドを飛ぶ。

 

インフェルニティ・ビートル 攻撃力1200

 

「インフェルニティ・ビートルは手札が0枚の時、このカードをリリースすることでデッキから2体のインフェルニティ・ビートルを特殊召喚出来る!」

 

フィールドからビートルの姿が消えたかと思うと空から2匹のビートルが飛んできた。

 

インフェルニティ・ビートル×2 攻撃力1200

 

「さらに墓地のインフェルニティ・ジェネラルの効果発動!手札が0枚の時、墓地のこのカードを除外することで墓地のレベル3以下のインフェルニティモンスターを効果を無効にして特殊召喚出来る!来い、インフェルニティ・ビースト、インフェルニティ・ナイト!」

 

凶暴な顔をした犬とチェスのナイトのような剣を持った騎士がフィールドに現れた。

 

インフェルニティ・ビースト 攻撃力1600

インフェルニティ・ナイト 攻撃力1400

 

「1ターンでフィールドを埋め尽くした…!」

 

「これが死神野郎の生き様…」

 

「よし…総攻撃でロットンのライフは0だ!」

 

「バトル!インフェルニティ・ビートルでガトリング・オーガに攻撃!ビートル・シュート!」

 

小さな羽をひたすらに使い、ビートルがガトリング・オーガへ近づいていく。

 

「…馬鹿め!トラップ発動、バックアタック・アンブッシュ!相手モンスターが攻撃してきた時バトルフェイズを終了し、相手フィールドの攻撃表示モンスターの数までアンブッシュ・トークンを特殊召喚する!死神野郎の場には4体!」

 

黒いモヤのようなものが4つロットンの場に現れる。

 

アンブッシュ・トークン 守備力100

 

「さらにアンブッシュ・トークンは特殊召喚に成功した時リリースすることで相手に500ダメージを与える!俺は3体をリリースする!これで終わりだ死神野郎!」

 

3つのモヤが鬼柳に近づいていき、それが赤くなっていくと途端に爆発した。

 

「これでデスカウンターは3つ乗った!インフェルニティ・ゼロは破壊される!」

 

「さっすがロットン!そうこなくっちゃ!」

 

「鬼柳…!?」

 

爆風が晴れていき鬼柳の姿が見えてくる。すると鬼柳は不思議そうな顔をしてその場に立っていた。そしてその側には無傷のインフェルニティ・ゼロの姿があった。

 

「なっ…何ぃ!何故だ…!もうお前に防ぐすべはないはずだ!」

 

「コナミ、お前か…?」

 

「なっ…!」

 

コナミの場には1枚のトラップカードが発動されていた。

 

「俺はトラップカード、高速詠唱を発動していた…!こいつは手札の通常魔法を墓地に送りそのカードの効果をこのトラップの効果として使用できる!俺が送ったのは命削りの宝札!こいつの効果で俺は手札が3枚になるようにカードを引く」

 

「それがなんだ!」

 

「そして命削りの宝札のさらなる効果で相手プレイヤーはこのターンダメージを受けない!」

 

「上手いぞコナミ!バトルロイヤルルールでは自分以外のプレイヤーは全て相手プレイヤーとして扱われる!」

 

「なん…だと…」

 

「お前がバトルロイヤルルールを提案してくれて助かったぜ、ありがとな!」

 

「貴様…!」

 

「…助かったぜコナミ。俺はレベル3のインフェルニティ・ナイトとレベル3のインフェルニティ・ビーストにレベル2のインフェルニティ・ビートルをチューニング!死者と生者、ゼロにて交わりしとき、永劫の檻より魔の竜は放たれる!シンクロ召喚!いでよ、インフェルニティ・デス・ドラゴン!」

 

黒に染まったドラゴンが猛々しく咆哮をあげた。

 

インフェルニティ・デス・ドラゴン 攻撃力3000

 

「インフェルニティ・デス・ドラゴンの効果発動!相手モンスター1体を破壊し、攻撃力の半分のダメージを与える。俺が狙うのはガトリング・オーガ!」

 

「だが命削りの宝札の効果でダメージはない!」

 

黒い波動がガトリング・オーガを飲み込んだ。

 

「俺にできるのはここまでか…ターンエンドだ。あとは頼んだぜコナミ」

 

「ああ、任せとけ。命削りの宝札のもう1つの効果でエンドフェイズに手札を全て墓地へ送るぜ」

 

鬼柳 LP0

 

フィールド 『インフェルニティ・ゼロ』(守備表示) 『インフェルニティ・ビートル』(攻撃表示) 『インフェルニティ・デス・ドラゴン』(攻撃表示)

 

セット0

 

手札0

 

「俺のターン、ドロー!スタンバイフェイズに命削りの宝札の効果で墓地に送られたキラー・スネークの効果発動!墓地のこのカードを手札に戻すことが出来る!」

 

コナミの手に1枚のカードが地面に空いた穴から勢いよく渡る。

 

「行くぜ、ロットン!このターンでお前を倒す!」

 

「だがお前の場にはサイバネティック・マジシャンが1体と攻撃力が0の羊トークンが4体!せいぜいお前に出来るのは俺の場のアンブッシュ・トークンを倒すことくらいだろうが!スケープ・ゴート…いいねえ、つまり生贄だ。お前の場にいるそいつらは言わば俺の部下…いや、元部下達と同じだ。羊トークンの攻撃力が0のようにこいつらに力はねえから俺には歯向かえねえ、ただ鉱山に送られるための生贄でしかない。ははは!中々気のきいたジョークだな!」

 

「…そうだな、お前にとってこれ程皮肉なジョークはねえ!」

 

「あん?」

 

「2体の羊トークンを攻撃表示にしてサイバネティック・マジシャンの効果を2回発動!手札を1枚捨てることでフィールドに存在するモンスター1体の攻撃力はエンドフェイズまで2000になる。俺は攻撃表示にした2体の羊トークンを選択!」

 

「なんだと…?」

 

サイバネティック・マジシャンか杖を振るい、魔法を振りかける。すると2体の羊が風船のように体が巨大化していき、アドバルーンのように宙に浮いた。

 

羊トークン×2 攻撃力2000

 

「馬鹿な…!」

 

「覚悟は出来たかロットン!俺はサイバネティック・マジシャンでアンブッシュ・トークンに攻撃!」

 

サイバネティック・マジシャンが素早く近づくと杖で黒いモヤを振り払う。

 

「くっ…」

 

「そして俺は2体の羊トークンで…!」

 

「待ちな!デュエルごっこはここでしまいさ!」

 

「ぐっ…!」

 

バーバラの方を見ると遊星がバーバラの持っていた鞭で首を絞められていた。

 

「お仲間の命が惜しかったらとっととサレンダーするんだね!」

 

「き、汚ねえぞ!」

 

「勝負に綺麗も汚いもないさ。あるのは勝利と敗北。そうだろ、ロットン?」

 

「…ああ、そうだな」

 

そう言うとロットンは懐から本物の銃を取り出し、コナミへと向ける。

 

「なっ…!」

 

「おいロットン!お前までこんな真似をするのか…それでもデュエリストか!」

 

「リアリストだ。俺は勝負に勝てれば手段なんてどうでもいい、ほらサレンダーしな。サレンダーすればあいつの命だけは見逃してやってもいいぜ?」

 

「ぐぅ…だ、ダメだ。俺に構うなコナミ…攻撃するんだ…」

 

「あんた、死にたいかい!?」

 

するとバーバラがさらにきつく首を締め、遊星の意識が飛びかける。だがロットンの部下の1人が銃で鞭を弾いた。

 

「なっ…!」

 

「お、俺たちも戦うんだ!このまま眺めてるだけじゃなくあいつらのように立ち向かうんだ!じゃなきゃ何も変わらない!」

 

彼の行動に触発されたのか周りの部下達も次々と銃をロットンとバーバラに向け始める。

 

「テメエら…!タダで済むと思うなよ!」

 

「へっ…そんなやり方だから人望がねえんだよ!」

 

「うるせえ!まずはテメエからこの銃で…なにっ!?」

 

ロットンがコナミに銃を向けるもどこからか飛んできたカードによって弾き飛ばされてしまう。

 

「鉄砲玉のクロウ様、ただいま参上!」

 

「クロウ!」

 

「あんたらこっちには人質が…!ひゃっ…!」

 

「キングはレディといえども非道な真似は許さない!」

 

慌てて遊星を痛め付けようとするバーバラだったがジャックによって張り手で倒されてしまう。

 

「…ジャック」

 

「遊星よ。鬼柳のような厄病神に会いに行くからこんなことになるのだ」

 

そう言いながらジャックは遊星を縄から解放した。

 

「最高だぜ!チームサティスファクション復活だ!」

 

「テメエら…俺をコケにしてくれたな。なら俺も手段は選ばねえ!食らいやがれ!」

 

ロットンが何かのスイッチを取り出し、それを押した。…だが、何も起こらない。

 

「何…この町中に仕掛けた爆弾が爆発しない!?」

 

「ああ…このガラクタのことかい?」

 

クロウがロットンに見せたもの、それは紛れもなくロットンが最終兵器として仕掛けていた爆弾だった。

 

「何故…?」

 

「コナミから連絡があったんだよ。ダイナマイトとか町中に仕掛けられててもおかしくないから調べてから来てくれって」

 

「デュエル中にダイナマイト投げてくるんだ。それくらいしてると思ってな」

 

クロウとコナミは拳を合わせ、ロットンの作戦を防いだ喜びを分かち合った。

 

「馬鹿な…。そう容易く解除できるものでは…」

 

「ふん、念のためにブルーノも連れてきて正解だったな。一瞬で外してくれたぞ」

 

「ブルーノが…」

 

彼らの新しいメンバーブルーノは機械に滅法強く、Dホイールの知識も遊星並にある天才メカニックである。幸いにも遊星がガレージに置いたメモを一緒に見ていたため、連れてきていた。

 

「さあ、よそ見は終わりだぜ!」

 

「や、やめろ…!」

 

「攻撃力2000になった羊トークン2体で攻撃!」

 

2体の巨大な羊がロットンを挟み撃ちにし、ライフを削り取った。

 

ロットン LP4000→0

 

「くそっ…まだだ!」

 

デュエルに負けるや否や、ロットンは自らのDホイールに走り出す。

 

「逃げる気か!?」

 

「ロットン、私は…?」

 

「どけ!」

 

バーバラがロットンに助けを求めるもわき目も振らずに突き飛ばされてしまう。そしてロットンかDホイールに乗ってここから逃げようとする。

 

「させません!」

 

「あれは…ウエスト達の父親!」

 

バーバラの花屋の屋根の上からロットンのDホイールへと飛び込み、ロットンを引きずり下ろした。

 

「離せ…!くそっ…離しやがれ!」

 

さらに彼の元部下達も地面に伏せられたロットンを抑え、セキュリティが到着するまで一切の身動きを封じた。スケープゴートであった彼らの働きによって彼の天下は終了したのだ。

 

「これで…満足したぜ」

 

こうしてクラッシュタウンで起きた事件は幕を閉じた。

 

到着したセキュリティによって騒動の中心となったロットンやバーバラが逮捕されていく。ロットン達に利用されていた部下達は少なからず罪を犯していたが牛尾の判断によってこの町を発展させると約束した上で見逃されていた。

 

遊星達はWRGPに向けての準備を進めなくてはならないため、すぐに鬼柳との別れの時が来た。

 

「ありがとうな。お前らが俺を助けてくれなかったら今も俺は…。本当にありがとう」

 

「礼には及ばないさ。…やっぱりこの町に残るのか?」

 

「ああ。ニコ、ウエスト。こいつらにこの町を発展させて俺の生き様を見せるまではやっぱり満足出来そうにない」

 

2人の頭を撫で、鬼柳は微笑を浮かべながら遊星に伝えた。

 

「久しぶりにチームサティスファクションで復活しても悪くねえと思ったけどな」

 

「馬鹿を言え、あんなハチャメチャな日々はもうこりごりだ。だが、久しぶりに会えて楽しかったぞ」

 

「暇があったら遊びに来いよ、最高のもてなしで満足させてやるぜ。ロットンタウン改め…新生、サティスファクションタウンでな!」

 

彼らはまた会える時を信じて笑顔で去っていく。Dホイールより遅いガソリンで動くバイクに乗ったブルーノを連れながら遊星、ジャック、クロウは自分たちへの舞台へと帰っていく。

 

だがコナミはやるべき事を果たすため、まだサティスファクションタウンに残っていた。

 




サティスファクションタウンでの話はもうちょっとだけ続くんじゃ。

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