遊戯王5D'sタッグフォース 満足の意志を継ぐ者 作:ゾネサー
銀龍の攻撃が決まったことでゼーマンは消滅し、地縛神を倒したことで生命エネルギーが解放される。エンシェント・ホーリー・ワイバーンは自分を囲むようにエネルギーを光として吸収し、それを精霊の元に拡散させた。かくして生贄にされた精霊たちは元に戻り、先ほどまで邪悪な牢しかなかった大地にも精霊たちが戻った影響なのか花が咲き誇り見るも美しい花園となる。
「これがここ本来の精霊界の雰囲気か…」
「ええ。ダークシグナーの使いで現れたゼーマンに不覚を取り私が封印されてしまったことで精霊たちは自由を失い、やがて地縛神の生贄とされるのを避けるために細々と生活するほかなかったのです。あなたには感謝してもしきれません」
エンシェント・ホーリーが元に戻った精霊界の活気を見て改めてコナミに礼を言う。
「まあ礼ならカイバーマンに言ってくれ。俺がお前らを助けられたのはあいつのおかげだ」
「ふふ…謙虚なのですね」
「エンシェント・ホーリー、龍可達はどうなったか分かるか?」
「エンシェント・フェアリーから伝わってきた限りではデュエルに勝利し、相手のダークシグナーも消滅したとのことです」
「そっか。良かった」
肩に乗っているジェネクス・コントローラーと膝に寄りかかっているギガテック・ウルフを労いながら次にどうするべきかを考える。
「思えば俺は遊星を助けるために来たのに龍可達について行ったのは…怖かったからかもな。遊星が話してくれた…遊星が戦うべきダークシグナーはあの鬼柳だと」
「お知り合いの方なのですか…」
「ああ、俺たちの恩人なんだ。あいつがいなかったら俺はずっとサテライトで腑抜けてたかもしれない。あいつがダークシグナーになった理由は分からねえ…だけどあいつが苦しんでいるなら助けたい。俺もそいつに向き合いたいんだ」
「…あなたは知っていますか?ダークシグナーとは1度死んだ存在なのです。1度冥界へと送られる魂がこの世に強い未練がある場合、ダークシグナーとしての生を与えられるのです」
エンシェント・ホーリーから告げられた事実、それはコナミにとってあまりに衝撃的だった。
「…!?嘘だろ…。確かに鬼柳があの事件で捕まった後俺たちは何回も面会に行った。だけど会わせてもらえなかった…チクショウ!そういうことか!」
コナミは恩人の死に打ちひしがれ、拳を震わせる。拳が震えるのは恐怖か、それとも守れなかったことへの後悔か。
「遊星…多分あいつはゴドウィンに説明を受けて知っているはずだ。あいつは1人でそれに立ち向かおうっていうのか…馬鹿野郎!ゼロ・リバースのことといいあいつは何でもかんでも背負いこみすぎだ!エンシェント・フェアリー、俺を現実世界に戻してくれ!」
「分かりました。…どうか龍可達の支えになったようにそのシグナーの方の支えとなってあげて下さい」
「ああ…もちろんだ。とりあえず遊星に追いつくにはDホイールしかねぇ、マーサハウスの前に停めてある幸子のヘリの中に入ってるはずだ。マーサハウスの所まで戻してくれるか?」
エンシェント・ホーリーは頷くとコナミをその翼で包み込み、光と変えて現実世界へと飛ばす。コナミの目にあったのは恐怖ではなく2人を助けたいという純粋な思いだった。
コナミが精霊界から現実世界に帰ってくる頃、ダークシグナーのボマーとクロウとのデュエルが行われていた。そこに合流した遊星は2人のデュエルを見届けていた。ボマーは故郷の村を滅ぼされた恨みからダークシグナーとなりその復讐を果たすために蘇ったのだが、地縛神の召喚の際に要した生贄が故郷の村の人々だったことに気付き復讐すべきはシグナーではないと判断してサレンダーをしようとした。だが、冥界の王と名乗る者に体を奪われデュエルを強制的に続行させられてしまう。辛くもクロウが勝利するがそれによってボマーは消滅してしまう。ダークシグナーとの戦いの辛さを感じながら遊星は鬼柳の待つエリアへと向かうのであった。そして…。
「待ってたぜ遊星…今度こそ貴様に味わってもらうぜぇ?かつてこの俺が味わった辛酸の一雫までなぁ!」
「鬼柳…俺は!」
「へっ…言いたいことがあるならデュエルで言いな。このシグナーとダークシグナーとの闇のデュエルでなぁ!」
鬼柳がダークシグナーの痣をかざすと紫の炎で地上絵のようなコースが出来上がる。
(鬼柳…お前はこんなことをする奴じゃなかった。お前はもっと人を思いやっていた…!)
遊星が思い出したのはかつてチームサティスファクションと他グループとの抗争でビルの上から突き落とされそうになった遊星を鬼柳が危険を顧みずに助けてくれたこと。彼の心を取り戻すため遊星は戦う。
「さあ…始めようか?…ん?」
そこに横の高台からDホイールをジャンプさせ炎の中に入り込む者がいた。
「コナミ…どうしてここに!」
「コナミ…!?こりゃいい!チームサティスファクションのラストデュエルには丁度いいじゃねえか!お前がデュエルできるようになったのは知ってるんだよぉ!」
コナミはDホイールを走らせデュエルが始まる前に何とか遊星と鬼柳の下にたどり着くことが出来た。
「鬼柳…お前は勘違いしてる!遊星のことを!」
「勘違いだぁ…?ああ、してたさ。まさかこの俺を裏切るとはなぁ!」
コナミが必死に説得するも鬼柳は聞く耳を持たない。それどころか、臨戦態勢に入っている。
「2人で来いよ…最高のラストデュエルにしようじゃねぇか!ひゃははは!」
彼の遊星へのある恨み、それは口でどうにかできるほど生半可なものではなかった。
「コナミ…このデュエルは危険だ!早く外に…!」
「いや、俺は出ねぇぜ!お前1人に背負わせるわけにはいかねぇ!」
遊星が外に出るように指示するもコナミは遊星を支えるために来たため引く道理もなかった。
「コナミ…。分かった。俺と一緒に戦ってくれ」
「話はまとまったかぁ?だけどそのまま2対1ってのはさすがに都合がいいよなぁ?1つハンデをもらうぜ!」
「ハンデ…手札を倍にでもするのか?」
「手札ぁ?いらねぇよ!ルールはタッグフォースルール、そして俺のターンはお前らのターンが終わるたびにもらうぜ。それならいいだろ?」
鬼柳の提案したのは変則のタッグデュエル、遊星がターンを終えれば鬼柳のターン。それが終わればコナミ、そして鬼柳とターンを交代していくものである。
「さあ行くぜ遊星、コナミ!俺たちチームサティスファクションのラストデュエル!華麗に踊るんだな、死のワルツをよぉ!」
3人はスピードワールドを起動し、Dホイールを走らせる準備に入る。こうして3人の戦いが始まるのであった。
ワルツは2人で踊る4分の3拍子の舞曲のことです。正確には男女2人ですが…。