遊戯王5D'sタッグフォース 満足の意志を継ぐ者 作:ゾネサー
あげはと幸子のライフが0になると周りを囲っていた紫色の炎も消え、浮かんでいたクモの痣も消えた。あげはと幸子は痣が消えると同時に意識を失って倒れてしまう。コナミは先ほどのデュエルのダメージが抜けきっていないため、ゆまが様子を確認した。
「幸子達はどんな感じだ?」
「えーと…とりあえず意識を失ってるだけみたいです。ただ幸子さんは外傷が…うう、私のせいで」
「まああの状況じゃ仕方ないだろ。とりあえずこっから近いスタジアムの医務室にでも運ぶか」
そう言ってコナミはよろけながらも立ち上がり幸子に近づいていく。
「コナミさんは大丈夫なんですか?」
「すげえ痛いけどなんとかな…。サテライトで鍛えた賜物だぜ」
そんなことを話しているとあげはが意識を取り戻す。
「うーん…あれ?ここ、どこ?」
「あげはちゃん!目が覚めたんだね!」
「ここはスタジアムの近くの廃ビルだが…何も覚えてないのか?」
「うん…なんで僕はこんなところにいるんだろう?」
周りをキョロキョロと不思議そうに見回すあげは。どうやら先ほどまでの事は記憶に残っていないらしい。
「何も覚えてないみたいだな…、ならその方がいいか。ゆま、さっきのことは2人には内緒にしておこうぜ」
「はい。私もそうしようと思っていました」
先ほどは明らかに正気ではなかった2人にわざわざさっきのことを伝えるのは賢明ではないと判断し、秘密にすることを決めたコナミ達。そんな2人に意識を取り戻したもう1人の声が聞こえてくる。
「体が重いですわね…って痛い!痛いですわー!」
その声を上げる者は悲痛な叫びをあげ、地面にうずくまっている。
「おーい。大丈夫かー?」
「大丈夫じゃないですわ…って庶民!?一体このわたくしに何をしたのです!」
「いや…俺が何かしたっていうよりされたんだが…。それよりお前あんま大声あげない方がいいぞ。痛いだろ?」
「っう…!い、痛い…」
「言わんこっちゃねえ…しゃーないな。ちょっと我慢しろよ」
そう言ってコナミは幸子を仰向けにし、背中から腕を回して胴体を支えると共にヒザの下に差し入れた腕で足を支え、やや重心を後ろにかけながら立つ。
「よっと。なんだ結構軽いな」
「な…!?」
「うわー!コナミさん力持ちですね!」
「お姫様抱っこだ…!う、羨まし…くなんかないけど」
幸子は顔を赤く染め、ゆまは楽しそうにはしゃぎ、あげははじっと見つめた後、顔を物凄い勢いで横に振る。
「しょ、庶民ごときがこのわたくしに易々と触れていいとでも思って…痛っ!っう…仕方ないですわね。さっさと救護施設に運びなさい!」
「はいよー。行くぞゆま!それに…あげはも!」
「はい!」
「あ、あげは…!?男の人に名前で呼ばれるなんて初めて…!」
幸子の痛みを和らげるためスタジアムに移動するコナミ達、途中あげはが前方不注意で鉄パイプで転んでゆまに手を貸してもらう以外は何もなく着くことができた。
「さて…一応治療を受けたわけだが大丈夫か幸子?」
「大丈夫な訳ないですわ。先ほどのような痛みは無くなりましたがまだ身体が全体的に痛いのです。一体何があったのやら…」
「そういえばあげはちゃんは大丈夫ですか?」
「うん。ちょっと痛いけど…まあそんなには痛くないよ」
「とりあえず…爺やに迎えに来るように言いました。これ以上は大丈夫ですわ」
「そうですか…。幸子さんお大事に!」
「お、お大事にー!」
「じゃあなー」
「庶民は待ちなさい」
2人に続いてさりげなく出て行こうとするコナミを呼び止める。
「さっき何があったのかは…まあいいでしょう。あなたが今更わたくしに何かしたなど思いませんわ。それより…お父様にわたくしの考えを話しましたの」
「!…どうだった?」
「やれやれ…お父様にぶたれる日が来るとは思いませんでしたわ。とはいえお父様もサテライトの現状は知らなかったようで庶民から聞いた様子を伝えると納得させることが出来ましたの」
「ってことは…?」
「ええ。後日サテライトに海野財閥からの支援が出ることが来まりましたわ」
「マジか!ありがとう幸子!」
「ふん…庶民にも手伝って貰いますわよ。わたくし達はサテライトの細かい様子は知りませんからね」
「もちろんだ、全力で手伝うぜ」
こうしてサテライトへの支援を取り付けることが出来たコナミ。そんな中医務室に取り付けられていたモニターからMCの声が聞こえてくる。
「決まったー!ジャックを倒したのはサテライトからの挑戦者、不動遊星!彼こそがニューキングだ!」
「何…!?遊星が勝ったのか!」
モニターには遊星がジャックに勝った様子が映っている。だが観衆の様子がおかしい。
「サテライト野郎め!どんなインチキ使いやがった!」
「イカサマしやがって!」
「…なるほど。確かにこうして見るとサテライトとの格差は酷いものがありますね」
「幸子!俺は遊星のところ行ってくる、このままだと遊星が危なさそうだ!」
「分かりましたわ。そうですね…2日後にあのホテルにあなたを迎えに行きます。それでよろしくて?」
「分かった!」
コナミは返事をすると遊星のもとへ向かい、暴れそうな観衆から遊星を助け出してDホイールでスタジアムから抜け出した。彼らはひとまず弥生のホテルで一息つくことにした。
「ラリー達は大丈夫かな?」
「ああ、直接ゴドウィンと話をしてきた。ラリー達はもう安全らしい、俺がジャックと戦えばそれで良かったみたいだ」
「そうか…それは良かったな」
「ところでコナミ…。シグナー、またはダークシグナーのことを知っているか?」
「ダークシグナー…!?ああ、さっきそんな奴とデュエルをした。危険なデュエルだったぜ。なんかダメージが実体化するし相手はなんか正気じゃないし…」
「…!既に戦っていたのか。ゴドウィンによるとそれは操られた兵らしい。そして…この痣を見てくれコナミ」
遊星が袖をまくり、腕にある特徴的な痣を見せる。
「うわ!遊星、腕が腫れてるぞ!大丈夫か!」
「…これはどうやらシグナーの証らしい。そしてダークシグナーによる大規模な戦いがサテライトで始まる、それを止めるためには俺たちシグナーが戦わなくてはならないんだ」
「俺たち?シグナーは他にもいるのか?」
「ああ、全部で5人いる。今分かってるのは俺とジャック、それとアキと龍可の4人だ」
「龍可…あいつはデュエルするだけで疲れるって言ってたのに。それに1人足りないじゃないか、龍亜は?」
「龍亜には痣がなかった…。俺は1度サテライトに戻ろうと思う、もしあそこで戦いが起こるなら心配だからな」
「そうか…。俺はまだここにいなきゃならねぇ。と言ってもすぐにサテライトには向かう、そこで俺も協力するぜ」
「ああ、後でマーサハウスで落ち合おう」
その日の夜、遊星はダークシグナーに操られた者とデュエルを行い、ダークシグナーとの戦うことの現実味を感じた。次の日遊星は再びサテライトにサテライトに帰り、ラリー達の無事を確認する。その夜にBADエリアでダークシグナーとなっていた鬼柳と再会した。彼はチームサティスファクション時代に遊星が自分をセキュリティに売って裏切ったと勘違いしており遊星とデュエルを行う。そのデュエルで遊星はダークシグナーの力、地縛神によってデュエルに敗れ、地縛神に恐怖を抱くようになってしまう。同時刻にアキというシグナーの少女も地縛神によってデュエルを仕掛けられ、ディヴァインという心の拠り所を失ってしまった。
さらに次の日、彼女の父親にアキのことを相談された遊星は彼女の心を取り戻すため自分たちが仲間だと証明するためにデュエルを行い、シグナーの痣は忌むべき印ではなく絆の証だと証明した。その後4人のシグナーはレクス・ゴドウィンのもとへと向かい、シグナーとしての使命を聞きサテライトへヘリで向かう。
一方、コナミはある少年と再会していた。
「龍亜!こんなところで何をしてるんだ?」
「あ…コナミ。俺はみんなに置いていかれちゃったんだ。みんなはダークシグナーと戦うためにサテライトに行ったみたい…俺もついて行こうと思ったんだけどゴドウィンっておっさんが許してくれなくてさ」
「なんで龍亜だけ?」
「俺はシグナーじゃないからダメなんだって。龍可がかばってくれたけど…やっぱり俺は龍可の力にはなれないんだ」
「…龍可の力になりたくないのか?」
「なりたいよ!でも俺はシグナーじゃないし…それに龍可は強いから。1人でも大丈夫だよ」
「そんなわけないだろ。危ないデュエルをするんだ、怖くないわけはない…龍可は体も弱いみたいだしな。龍亜…俺は今からサテライトに行く。俺もシグナーとやらじゃねえけど遊星の力になるためにな。お前も来るか?」
「…行く!行くよ!龍可は俺が守るんだ!」
「よし…行くか」
コナミと龍亜は弥生のホテルで待っている幸子に会う。コナミは幸子に事情を話しサテライトで戦いが起こるかもしれないと告げる。幸子はなおさら放ってはおけないとついて行き、3人はヘリに乗ってサテライトのマーサハウスへと向かった。そこにいるシグナー達に再会すると既にダークシグナーの1人がラリーを操って遊星と戦わせる非道な真似をしたあとで、彼らはそれぞれのダークシグナーを手分けして倒そうとしていた。
「龍可!俺が龍可を守るからね!」
「俺も龍可について行くぜ」
「わたくしもついて行きましょう」
それぞれの行き先が決まり、龍可達は牛尾の車で目的の地に向かうのであった。
「っていうかなんでお前がここに…?」
「治安維持局の命令でついてきたんだよ。それと…あんたらサテライトのことをクズ呼ばわりして悪かったな。」
「…!?雨でも降るのか…?」
「うるせえ!俺も実際にどういう風に過ごしているか見て考えを変えたんだ!」
「へー…なら別にいいか」
「やはりサテライトの人々は厳しい生活を…」
コナミと牛尾が話していると龍可が不安そうに自分の手元あたりを見つめる。
「クリボンが震えてる…大丈夫クリボン?」
「クリボン?」
「この前も言ったけど龍可はカードの精霊が見えるんだぜ!」
「精霊ぃ?これだから子供は…」
「ダメージが実体化することもあるんだしもう精霊がいても不思議じゃないな…」
「コナミ…やっぱり見えてないの?」
「んー、見えないな」
「そう…あなたに精霊がついているからもしかしたらと思ったけど」
そう言ってコナミの近くを見る龍可。
「え?俺、精霊いるのか!?」
「ええ…あなたの肩にアンテナがついたロボットが。それにこの車に並走して走ってる金属で出来たオオカミが…」
「マジかー。見えたら良かったんだけどな」
「いいなー。俺も精霊欲しいなー」
そう話していると目的の地が近づいてきた。だがもう少しで着くというところで突然龍可に精霊の声が聞こえてくる。
「エンシェント・フェアリー・ドラゴンを解放して欲しい…?でもどうやって?」
龍可が精霊と会話していると突然龍可が車から姿を消してしまう。
「あ、あれ!龍可!どこいったの!?」
「なっ…まさかどこかに落ちやがったか!?」
そうして周りを見渡す3人、すぐにもう1人足りない人物に気づく。
「あの少女だけでなく、庶民もいませんわ!」
そう、コナミも姿を消していたのだ。彼らはどこに消えだのだろうか…?