八九寺真宵との邂逅の後の話だ
「小学生になったら本格的に野球を教えて欲しい?」
「はい」
卒園式が間近になってきた今日、翼ちゃんから言われた事である
「それは別にいいけど…野球チームに入りたいって事かな?」
「それもですけど、隼さんに教えて欲しいかな。」
野球チームに入りたい…
けど俺にも指導して欲しいって事か…
「それは別にいいけど…俺も仕事があるから頻繁には出来ないよ?」
「それで大丈夫です。」
あ、そうなんだ…
「しかし、嬉しいものだな…翼ちゃんが野球を本格的にやってみたいなんて」
「嬉しい…ですか?」
翼ちゃんは首を傾げながら疑問を浮かべる
「あぁ、自分の娘が自分のやってる野球をやりたいってのは親として光栄だし、嬉しいよ。特に翼ちゃんは色々あったのに前向きに行動してくれている。素直に感心するし嬉しいとも思う。」
「あぅ…」
褒められて顔を俯かせて赤くなっている…褒められ慣れていないから、そういう言葉に弱い翼ちゃんが可愛い過ぎてヤバイ。
「なら暫くは俺と一緒に野球しようか」
俺も春から社会人だし、時間ある時は翼ちゃんに使ってあげたい。
「それじゃ、えっと…ご指導宜しくお願いします。隼さん」
「うん、任せてよ翼ちゃん。」
そのあと、翼ちゃんとキャッチボールをしたり、素振りのフォームチェックをしたり、翼ちゃんの素質が良いのか、乾いたスポンジの様に技術を吸収していった。
真宵ちゃんもそうだが、最近の女の子は才能豊かだよ全く…軽く嫉妬しそうである。
この調子で行けば早川に次いで、女性プロ野球選手か増えるかも知れない、そんな期待をしている俺だったが…
しかし、この時の俺はまだ知らなかった…
これからも先、真宵ちゃんと二度と野球が出来ないと言う事を…
帰宅後…
「なぁ、翼ちゃん」
俺が帰宅してからも素振りを続けていた翼ちゃん
「ふぅ…どうしました?」
だいぶ振り込んだのか、汗を拭いながら素振りを中断してこっちに振り向く翼ちゃん
「いや、翼ちゃんポジション何をしたいのかなって…」
「バッターです‼」
胸張って答える翼ちゃんが可愛すぎてツラい
「いや、ポジション…」
「指名打者です‼DHです‼」
昨日のプロ野球を見ていたからだろう…だが…
「翼ちゃん…DHはポジションじゃないよ?」
「そうなんですか?」
「あれは投手の代わりに他の選手が打つって言うのであってポジションではないね…」
「そうなんですか…」
「付け加えるなら少年野球にDHはないね」
「あ」
少年野球チームに入る前にポジションを決めとかないとな…
そう考える俺だった…