サードライフ=インフィニット・ストラトス   作:神倉棐

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メリークリスマス

〈9〉

 

クリスマスとは12月25日のイエス・キリストの降誕を祝う祭のことであり、日本においてはクリスマス・イブからクリスマスにかけての夜に子供にプレゼントを贈る日の事である。

 

そして今日はその聖夜の前日クリスマス・イブ、クリスマス一色に染まった街の一角に翼達()3人組はいた。

 

「ふぅ、寒いね」

「ああ、今は冬で12月だからな」

「今年もあとちょっとだねぇ〜」

 

黒いコートに赤いマフラーを巻いた翼を挟むように白いコートを着た千冬と薄い青のコートと同じく青い毛糸で編まれた帽子を被る束が歩く。3人のコートは色は違うものの型が同じのお揃いである。

 

「さて、じゃあ早いとこ『買い物』を済ませて家に帰ろうか。一夏達が待ってるし今夜の夕食の準備もしないといけないし」

 

そう、今日3人がわざわざ街の商店街にやって来た理由は一夏達弟や妹達のクリスマスプレゼントを買う為である。

 

「えっと……、確か一夏が欲しがってたのは『超便利、手入れ簡単調理セット』で、箒ちゃんは『新しい竹刀』、栞は『大きなクマの人形』だったっけ?」

「ああ、一夏のは通販で売っていたのを買っておいた。梱包もしてあるからあとは箒と栞のを買えば問題ないぞ」

「了解、じゃデパートにでも行くか。あそこなら大体揃うし」

「レッツゴ〜」

 

3人はデパートに向かった。

 

 

◆◇◆

 

 

デパートにて

 

「う〜ん、クマのぬいぐるみってこんなのが良いのかな?」

「わ、私に聞くなよ……。束はどう思う?」

「ちーちゃんにつーくん、私はこれが良いと思うよ‼︎」

「「いや、それクマじゃなくてウサギじゃん」」

「ええ〜、確かにそうだけど手触り良いんだよ?触ってみる?」

「へー、確かに……」

「おい、翼……目的がずれてるぞ……。ハァ……翼、コレにしておくぞ」

「モフモフ……ん、分かった。値段は……1万6,500円+税……」

「高っ」

「高いね」

「ま、良いか」

「「良いのかよ⁉︎」」

 

と、いう感じに3人組のプレゼント選びは順調(?)に進む。最後に箒の新しい竹刀を買う為にスポーツ用品店に入り千冬チョイスの女の子らしく実用性の高い小物や竹刀の手元に桜が彫ってある竹刀を購入し、3人はフードコートでジュースを飲みつつひと息休憩を取っていた。

 

「結構買ったね」

「箒と栞のプレゼントに今夜の夕食用の食材、3人でも袋で両手がふさがる量だな」

「多いね、ねー、ちーちゃん。私力弱い子だからさー、持ってくれない?」

「さて、アイアンクローが良いか絞め技が良いか……」

「カルイナカルイナ、ウフフ、ワタシ、チカラモチダカラダイジョウブダヨ、ホントダヨ?じゃっ‼︎」

「あ、先帰っちゃった……」

「全く……仕方ない奴だ。まあ荷物だけは持って行ったから許すが」

 

ふぅ、と千冬はため息を吐きならがそう言う。それでも持つ物をちゃっかり1番重くないプレゼントを選ぶあたり彼女もまた重いのは嫌なのだろう。

 

2人並んで商店街を歩く。

 

ふと翼が千冬に目線を向けてみると彼女の視線はとある店のショーウィンドウに向けられていた。

 

「どうしたの?」

「あっ、いや、何でもない。さ、行くぞ」

「……うん」

 

声を掛けると千冬は何かを誤魔化す様に焦った声で翼を促す。翼も再び前を向いて歩くがその寸前、彼女が『何』を見ていたのかを翼はしっかりと見たのだった。

 

 

◆◇◆

 

 

夕食、若宮宅のリビングにある机の上には沢山の料理が所狭しと並んでいた。七面鳥の丸焼きにドイツ風ソーセージ、フライドポテト、ピザ、ローストビーフなど買った物も多いが大半は翼が腕によりを掛けて作った傑作である。

 

「美味しい?」

「「「「「美味しい‼︎」」」」」

「お、おう、なら良かった」

 

山程用意してあった筈の料理があっと言う間に皿だけになる。

 

あれ?いつの間にか七面鳥の丸焼きが骨だけになってるけどいつ食べたんだ?ピザも既に4皿くらい無くなってるし……目、疲れてんのかな?

 

そんな細くて小さい身体の何処に食べた物が入ってるんだ?と本気で考えてしまう位5人はよく食べる。

 

「……さて、ケーキの準備しとくか……」

 

思ったより1時間程早く出番が来そうなケーキの準備に翼は席を立つのだった……。

 

 

◆◇◆

 

 

午前3時29分

 

「……ようやく寝たか」

 

むくりと自分用のベッドから起きた翼が着ていたのは真っ赤のサンタ服、千冬や束、一夏、箒はクリスマスツリーのある1階の客間で寝ておりそこの扉を少し開けて全員が寝た事を確認する。

 

栞のは先に置いてきたけど、一夏は「サンタさんが来るまで絶対寝ない‼︎」とか箒は「サンタさんが本当にいるか見る」とか言って2時位まで粘ったからな……、見張りの千冬や束が先に寝ちゃったし。

 

身体強化魔法と風魔法を併用、足音が鳴らないよう、もし鳴っても気付かれないよう細心の注意を払って4人の枕元まで歩く。白い袋から一夏と箒のプレゼントを取り出しツリーの下に置いた。

 

「さて……」

 

次は……

 

 

◆◇◆

 

 

12月25日朝、クリスマス

 

私は隣で寝ていた一夏達の声で目を覚ます。しっかり欲しかった物が貰えたやらなんやら朝から元気で騒がしいが今日くらいはいいだろう、なんたって今日はクリスマスなのだから。

 

「……朝か」

「あ、千冬姉。おはよう‼︎」

「おはよちーちゃん」

「おはようございます千冬さん」

「おはよう、それはサンタさんからのプレゼントか?」

 

仕掛け人の1人である自分がわざとらしいかもしれないが一夏に向けてそう言う。一夏は嬉しそうに掲げるようにしてプレゼント(調理セット)を見せた。

 

「うん!これでつー兄と一緒に料理ができるよ‼︎」

「良かったな」

「私は新しい竹刀と面タオルでした」

 

桜模様の入った竹刀と面タオルを抱き締めて嬉しそうに報告してくれる箒の姿を見て少し恥ずかしくなる。選んだ物を気に入ってくれたので良かった。

 

「そう言えば束姉の他にも千冬姉のプレゼントもあったよ?」

「ん?本当か?」

「うん、ほら」

 

用意した覚えがない自分のプレゼントを一夏に渡される。よく分からないが私はプレゼントの小箱を開けてみた。

 

「えっ……⁉︎」

 

綺麗に梱包された小箱に入っていたのは銀鎖を通した銀色の指輪、指にはめる為の指輪でなくペンダントとして首に掛けておくアクセサリーである。

だが驚いたのはそこではない、驚いたのはソレを昨日見たからだ。昨日ショーウィンドウに飾られていた少し高めのアクセサリー、確かに欲しいとは思った。だがそれを知っているのは誰もいない筈……、

そこまで考えてただ1人だけ知っていた可能性がある人物の顔が浮かぶ、それは

 

「翼か……」

 

あの時隣で歩いていた翼しか居ない。

 

「……ばれていたか」

 

上手く誤魔化したつもりだった。それでもあのサンタクロース()にはお見通しだったらしい。

 

「あれ、千冬姉、顔赤いよ?風邪?」

「いや、……そうかな?そうかも知れないな」

「大丈夫なの?」

「大丈夫さ、さて朝ご飯に行こうか」

 

顔が赤くなっているのは風邪を引いたからだ、身体の芯からポカポカしているのも風邪の所為だ。なら私に風邪をひかせた奴には責任を取って貰わなければならない。

 

「つー兄‼︎朝ご飯は‼︎」

 

一夏達がリビングに入る、そしてそこに全ての元凶()が居た。

赤いコートに黒ベルト、赤い三角帽子の先にあるのは白い玉、大きな白い袋を持った子供達に夢と希望を与える幻想上(架空)子供に(私達)だけの正義の味方、それに扮した彼は笑って言う。

 

「メリー、失礼。呼びかけに応じ参上したサンタクロースのお兄さんだ。さあ、じゃあみんな一緒に」

 

 

メリークリスマス‼︎

 

 

 

 





メンバーの欲しい物一覧
翼『新しい文庫本』
千冬『銀の指輪のネックレス』
束『コスプレ服(アリス)
一夏『通販でやってた調理セット』
箒『新しい竹刀』
栞『大きなクマのぬいぐるみ』





クリスマス・イブの舞台裏

翼「さて、今から(千冬さんのプレゼント)買いに行くわけにいかないし作るか」

異空間(アイテムボックス)から引っ張り出した『魔銀』を魔法を使い形成、研磨、彼女が欲しそうにしていた指輪のネックレスを作る。

翼「ふんふんふーん、ふんふんふーん、ふふふっふーん♪」

クリスマスソングを鼻歌で歌いつつ贅沢に魔法を注ぎ込んで30分後、

翼「よし、完成‼︎」

こうして千冬のクリスマスプレゼントは完成した。



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