サードライフ=インフィニット・ストラトス   作:神倉棐

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皆様 Happy Merry Xmas です。今年は所によってはホワイトでしたが私の住む地域では見事グリーンクリスマスでした。あとサンタも来ませんでした、当たり前ですね。あと更新が遅れて申し訳ありません、漸く進路が確定したのでこれからはぼちぼち早めに更新していきたいと思います。

では、どうぞ。


中華娘、襲来

〈36〉

 

 

例のパーティー翌日、時雨達のインタビューの載った『女共よ、刮目せよ!これが世界で僅か2人しかいない男性搭乗者だ‼︎』の大見出しで大量発行された学校新聞が掲示板だけでなく学校中にバラ撒かれいつになくざわついている中に、その話題の張本人の1人である時雨は特に気にする事もなく(気付いてないだけ)1年1組の教室へと登校して来ていた。

 

「あ、おはよ〜しぐしぐ〜」

「お、お、お、おはよう……時雨」

「おはよう時雨君」

「おはようのほほんさん、箒さん、栞さん」

 

扉を開けると本音、箒、栞の3人に挨拶されたので時雨はいつも通り挨拶を返す。

 

「うおおぉっ!危ねぇえっ!遅刻するとこだったぜ!」

「おおっ、なんだ一夏か。寝坊したのか?」

「はあ、はあ……ふう。いや、栞が起こしてくれたからしてないが朝練してたら時間を忘れててな。お陰で朝飯は買い溜めてたカロリーメイト1箱だけだぜ」

「それで足りるの?午前中」

「………無理です」

「だよねぇ」

 

とそこにもう1人の男子、一夏が教室に駆け込んで来た。朝のSHR(ショートホームルーム)まで残り5分程度だった為に時雨が寝坊か?と聞くが一夏曰く朝練に学園の敷地を走っていたら時間を忘れていて急いでシャワーを浴びて登校して来たらしい。遅刻はしなかったがその代償に犠牲になったまともな朝食に一夏はマジで涙目である。健康志向の健康男児からすれば朝食抜きとはお昼ご飯に綾波定食(ご飯にサラダと味噌汁のみ)にも勝るとも劣らない拷問の如き事なのだ。

 

「ま〜ま〜、そんな事もあるって〜。ほら、そんなイッチーにはこの飴玉を進呈してぞんじよ〜。この間懸賞で1年分の飴玉が当たったんだ〜」

 

そんな一夏に同情してか本音が一夏の肩をポンと叩きその手の上に余った袖の中からポトリと1つの飴を落とす。

……と言うかのほほんさんそんな所に飴を入れてるの?あとその改造制服の袖の中身ってどんな構造になってるの?

 

「おお、ありがとうのほほんさ……って粘土味ってなんだよ?」

「「「……粘土味?」」」

 

ふとそんな事を一瞬考えてしまっていた時雨だったがそれにぱぁっと顔を輝かせ喜んだ一夏はその手に落とされた飴を見て疑問符を浮かべる。粘土味なんて聞いた事も無いどマイナーどころか実在するのかも怪しい味なんですが。

 

「ん〜?あ〜、イッチー運が悪いね〜。いやぁ懸賞に当たったのは当たったんだけど『変わり種』の詰め合わせだったらしくてねぇ〜、食べても味が問題無さそうなのは殆ど全部私と最初にお裾分けした友達が取っちゃったから残ってるのの9割9分9厘は『チョット』ヤバそうな変わり種だからゴメンね〜」

「それ絶対当たり外れなら外れる事前提だったよな⁉︎貰っといてなんだけどそれ絶対わざと外れを引かせる気だったよな⁈」

「エー、ソンナ事ナイヨー、ホントダヨー(棒)」

「「「棒読みだじゃねぇか⁉︎(ね……)(よ!)(ないか⁉︎)」」」

 

思いっきり目線が泳ぎ返事が棒読みになった本音に4人の4人4色のツッコミが突き刺さる。が当の本人の方は「えへへへ〜」といつも通り……いや若干ぎこちない笑いを零すばかりである。

 

「ねえねえ、そこの5人組。転校生の噂聞いた?」

「いや……聞いてないよ」

「俺も知らないな」

 

そんな中、5人の後ろからいつもは本音の背後の席に座っているクラスメイトの鏡ナギが話し掛けて来た。先に教室に来ていた女子3人はともかく少し前に来たばかりの時雨と遅刻しかけた一夏が知らないと答えると彼女はその噂の内容を2人に話す。

 

「今日隣の2組に転校生が来るらしいんだ。それに今朝偶然職員室前を通った子が言うにはその噂の転校生、中国の国家代表候補生らしいんだ」

「「へー」」

「で、取り敢えず我がクラスの誇る国家代表候補生セシリアさんにその子の特徴を伝えて何か情報を知らないかって聞いてみたんだけどそれがセシリアさんでも知らない子らしいの。だからここ最近、1年以内に代表候補生まで上り詰めた子なんじゃないかって言ってたよ」

「「ほー」」

 

鏡が説明してくれた情報に時雨と一夏は興味深気に相槌を打つ。初耳な上に近くクラス対抗戦もあるので有益に成りそうな情報は有難く、それに僅か朝からの数十分程でそこまで情報を集めて整理したクラスの女子諸君の能力に驚くがちょっと気になった事が1つ。敢えて言わなかったが1つ聞きたいのはそのセシリアでも知らなかったその転校生が中国の国家代表候補生だと見抜いたその人に聞けば1発だったのではないかと思った2人だった。

 

「ふむ、だがその代表候補生が専用機を持っているかで今後のトレーニングの難易度を変えねばならなくなるな」

「だね、幾ら一夏が単一仕様(零落白夜)を発現させたからって現段階で各クラス代表で専用機を持ってる人は私達が知ってるだけだったら4組の更識さんだけだからね……」

 

そしてそれとは別に箒と栞の方はクラス対抗戦に向けての予定変更を考え始めていた。流石に専用機持ちが増えればその分専用機持ちと当たる確率も高くなりここ1年で代表候補生入りを果たした傑物相手と一夏は戦う確率も高くなるので今のままのトレーニングでは確実に良い勝負どころか開幕同時に叩き落とされかねない。

 

「───その情報、古いよ」

 

その時何処からか栞の呟いた言葉を否定する言葉が響き同時に教室の前の方の扉がガラリと勢い良く開く、そこには今まで時雨が見てきた中で1番改造の施され露出面積の広い改造制服を着たツインテールの女子生徒が不敵な笑みを浮かべ両腕を組んで何処ぞのAUO(英雄王)の様に傲岸不遜(ごうがんふそん)……と言うよりも無理に背伸びしてカッコつけてる様な子が立っていた。

 

「2組も専用機持ちが代表になったの。そう簡単には優勝できないから」

 

そんな彼女はビシッと人差し指を一夏達に向けるそう言い切る。それを見て聞いた一夏達はと言うと、

 

「鈴……?お前、鈴か?」

「む、変わらないな鈴」

「あ、久しぶり鈴。1年振りくらいだね」

 

一夏は少し驚いた様に、箒は懐かしむかの様に、栞は嬉しそうな反応を返していた。

 

「久しぶりね一夏、箒、栞。中国国家代表候補生凰 鈴音(ファン・リンイン)、今日は貴方達1組に宣戦布告に来たってワケ」

 

そんな反応に満足したのか彼女、凰 鈴音は自己紹介序でに時雨達1組に対して高らかに宣戦を布告する。

しかし……

 

「成る程……ってかなに格好付けてるんだ?あんまりお前にはソレ似合わないぞ?」

「んなっ……⁈なんてこというのよ、アンタは‼︎空気くらい読みなさいよ!」

 

しかし一夏の空気の読めない発言により場の雰囲気が一気にぐだくだになってしまった。これには一夏との付き合いの長い栞と箒も、

 

「「……ハァ、一夏」」

 

頭が痛そうに額に手を当ててため息を吐く程だった。

 

「ありゃりゃ……」

「イッチー……そりゃないよ」

「うん、今のは思ってもスルーすべきだと思うな。うん」

 

そして身近な人ですらそうなのだからクラスメイトであるナギ、本音、時雨もまたそりゃないよと思わず呟いてしまっていた。

 

「時雨さん方、もう間もなくSHRも始まりますしそろそろ席に着いた方が宜しいのでは?あら?貴女は……成る程貴女が中国国家代表候補生の……」

 

そんなぐだくだした雰囲気の漂う7人の場所でもう間もなく先生がやって来る為にそろそろクラスの全員が自分の席に着き始めた中で、未だ立ったままの7人に注意に来たセシリアが朝から噂になっていた中国国家代表候補生()の姿を見付ける。セシリアは少し考えた後、新たに現れた彼女に向け一礼した。

 

「お初にお目にかかりますわ、私英国国家代表候補生で専用機『ブルー・ティアーズ』を操縦しておりますセシリア・オルコットですわ。隣のクラスの方とはいえ同じく国家代表候補生の好として互いに切磋琢磨し合い高め合う事が出来る事を願います」

「アタシは中国国家代表候補生、専用機『甲龍(シェンロン)』操縦者の凰 鈴音。代表候補生入りしたのは最近だから候補生としてのマナーとかその辺りはアナタを先輩として学ばせて貰うわね」

「よろしくお願い致しますわ」

「こちらこそ」

 

セシリアの国家代表候補生としての挨拶に凰もまた国家代表候補生としての挨拶を返し互いに手を握る。とても平穏かつ友好的な第一次接触に終える事が出来た2人だったが、初めてセシリアが代表候補生らしい事をしているのを見て内心少し驚いてしまった時雨達は多分悪くない。

 

「ところで凰さん」

「鈴で良いわ。その代わりアタシも貴女の事をセシリアって呼ばせて貰うわ、堅苦しいのは余り得意じゃないし好きでもないから」

「ええ、構いませんよ。ですがまずもうすぐSHR開始時刻なのと候補生の先輩として1つ最重要事項を伝えておきます。ここのクラスの担任は織斑先生です」

「…………ゑ、それマジで」

「はい……マジです」

 

そこでふと思い出したかの様にセシリアは先程鈴から頼まれた通り早速先輩としてのアドバイス(忠告)、1組の担任が誰であるかを伝える。そしてそれを聞いた瞬間鈴の顔が大いに引き攣った。

 

「えっ、あ、えっと……」

 

ちらりと壁に掛けられた時計を見ると既に秒針は半分を過ぎ残り20秒も無い、周りを見渡してみれば先程まですぐそこに居た時雨や一夏達はいつの間にか自分の席に着いておりつい先程まで目の前に居た筈のセシリアに至っては既に回れ右して自分の席に優雅に滑り込んでいる。(滑り込んでいながら優雅さを失わないってどう言うことなのか分からないが)

それを確認した鈴は高速で残像を残すかの如く勢いで180度回転、流れる様な動きで扉を開けると1組の教室を飛び出していった。なお「次の10分休憩の時にまた来るから!」と言い残しておくのも忘れない。ただ不運な事に、

 

「む?お前は……凰!転校初日に遅刻とは大層な重役出勤だな。あと廊下は走るな!」

「ひぇええぇぇーーー申し訳ありませぇぇーーんっ‼︎」

 

飛び出てすぐに千冬と御対面してしまったのか廊下から教室にまで届く大きさで彼女の悲鳴にも似た絶叫が響いた。

 

「全く……、いつになってもあの子は変わらんな……。まあそれが羨ましくもある訳だが……コホン。では朝のSHRを始める」

 

そして直後再び教室の扉が開き今度は千冬と山田先生が時間通りにやって来た。そして2人はいつもの所定地、担任たる千冬は教卓に、副担任の山田先生は教壇の窓側の端の方に立ってそれからいつも通りに1度教室を見渡し欠席者が居ない事を確認してから口を開いた。

 

「ふむ、欠席及び遅刻無しだな。結構だ、ではまず本日の連絡事項だが特に無い。強いて言うなら私はこの後本土に出る予定があるので今日の授業は山田先生を中心に行って貰う。よって時間割に変更は無いのでその点は気にしなくても良い。そして本日の日直当番はセシリア・オルコットだな、日誌は教卓に置いておく。あと……」

 

手元の出席簿にいくつかチェックを入れ、昨日回収した日誌を巡って今日の日直を確認すると千冬はそれを言った通り教卓の台の上に置く。そこまでした所で彼女は何か付け足すかのように言葉を零すとその視線は一夏の隣に座っていた時雨へと合わされていた。

 

「天羽、今朝お前に専用機が届いた。朝のSHRが終わり次第私と共に受け取りに第1格納庫まで来て貰う」

「?、届くのは明日の予定では?」

「予定ではな……、だが奴……もとい企業側が張り切ったらしく予定よりも早く完成したらしい。で、一時も早く納品したかったのか朝一で来訪の連絡が入ったんだ……(くそあの兎め……)(私の仕事をこれ以上増やさないでくれ)

 

千冬の説明にあの彼女ならやりかねないと納得した時雨はあっさりと「分かりました」と答えるがその後に続けられていた彼女の切なる願いの方は時雨の専用機が届いたと言う事に湧いた女子達による教室内の喧騒に紛れて人知れずに消えてしまった。

唯一その苦労と言うか苦悩と言うかを知っているのは朝その連絡を職員室で副担任として真横で聞かされていた山田先生ただ1人である。彼女は絶対に今度の休みに尊敬する先輩を飲みに連れて行こうと人知れず心で誓った。

 

「静かに、ではこれで朝のSHRは終わりとする。以上だ」

「起立、気を付け、礼」

 

そして今日もまたクラス委員である一夏の号令により朝のSHRは終わりを迎えたのだった。

 




補足メモ
▪︎綾波(アヤナミ)定食
ご飯に味噌汁それとサラダ山盛りドレッシング無しという何処ぞのダイエットメニューですか?と言いたくなる文字通り草食系定食。元ネタは新世紀エヴァンゲリオンの漫画・アンソロジーあとゲームで名前の由来はネルフの職員食堂で肉が嫌いなエヴァのヒロイン 綾波レイだけが頼むからだとか。(他にはにんにくラーメンチャーシュー抜きとかも出てくる)
あ、因みに漬物に関してはオプション(別料金)らしいです、ハイ。


▪︎セシリアと鈴の会話について
セシリアと鈴が互いに専用機の名前を出し合っていたのは相手に対する牽制です。IS自体が貴重ですしその中でも専用機、特に最新鋭機ともなればその存在そのものが抑止力と成ると同時にそれを操ると言う事から自らの操縦センスの高さを主張するなど専用機には色んな影響力がありある意味万国共通のライセンスともなります。つまり自分はこんな機体のパイロットであるから自分はその機体を任せた国からどれ位の信頼と権限、義務が与えられていますよと言う感じに言葉に明示せずとも相手に伝える事が出来るという訳です(独自設定です)

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