サードライフ=インフィニット・ストラトス   作:神倉棐

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ふう……浮気してて済みませんでした!でも後悔してません!あと治る気もしません!ですが反省はしてます、済みませんでした!


第2章 クラス対抗戦編
1年1組クラス代表決定、あと序でに中国娘来日


〈34〉

 

 

模擬戦翌日の朝のSHR(ショートホームルーム)にて、

 

「では、1年1組の代表は織斑 一夏君に決定です。あ、『1』繋がりで良い感じですね!」

 

教卓に立った山田先生の発表にクラスの女子一同は拍手喝采万歳三唱を挙げるが、その対となるように当の一夏は「……why?(なんでさ?)」と口には出していないがその顔そのものでそう言い表している。因みに時雨とオルコットはと言うとその2通りには当てはまらずに……、

 

「まあ、そうなるよね」

「ですわね」

 

と納得顔をしている、だが理解出来ず納得も出来ていない一夏は挙手し山田先生へとその理由を質問した。

 

「山田先生、質問です。如何してISでの模擬戦は兎も角他の試合では俺に勝ってる時雨とオルコットは如何なってるんですか?あと何でいつの間にか俺がクラス代表になってるんでしょうか……?」

「あ、それはですね」

 

そう言うと山田先生はチラッと時雨とオルコットの方を見る、それに気付いたのか2人はその話の後を継いで口を開いた。

 

「それは私が辞退し一夏さんを推薦した事と」

「俺が諸事情によりクラス委員にはなれなくなったからだな」

「えっ、辞退?」

「ええ、仮にでも国家の代表の候補生であり専用機を貸し与えられた身でありながら練習機の、それもIS搭乗時間の短い男性搭乗者に負けたとあればそれは明らかに私が如何に訓練不足かつ機体を完全に乗りこなせていなかったであるかが一目瞭然です。そんな私がクラスの顔であるクラス委員になる訳にはいけませんしそれに初日に私は皆さんに大変失礼な事を言ってしまいました。この場を借りて皆さんに先日のご無礼を謝罪します、申し訳ありませんでした」

 

そう言ってオルコットはぺこりと腰を綺麗に90度まで曲げ心からの謝罪を伝える。この時彼女から漂っていたのは今までのような『高貴な気品(笑)』ではなく正真正銘元々の彼女が持っていたであろう『高貴な気品』のそのものであり、それ故にそこに込められた彼女の誠意を感じ取る事の出来たクラスの生徒達は初日の彼女の事について水に流す事に決めた。

 

「悪いな一夏、模擬戦の後所属元から連絡が来たんだ。それに俺の所属は秘匿されてるけどやらないといけない事は地味に山積みでクラス委員としての仕事をやれる気がしなかったんだ。ごめんね」

「それなら……仕方ないか、時雨が悪い訳じゃないし……」

 

そして時雨の辞退した理由もまたどうのしようもない事だった為に一夏は怒るにも怒れない。それ故に、

 

「……分かりました。謹んでクラス代表、委員の仕事を受けさせて貰う。その代わり時雨や皆んなも色んなところで至らない所があると思うから手を貸してくれないか」

「勿論だよ」

「ええ、喜んでお手をお貸ししますわ」

 

一夏はクラス委員としてクラスの代表になる事を承諾し、時雨達にその補助補佐を頼んだ事でクラスの喧騒は最高潮となり再び拍手喝采万歳三唱が巻き起こる。

 

「時雨君とセシリアは分かってるね!」

「まあ正直一夏君でも時雨君でもどっちでも美味しかったんだけどね!」

「でもそうだよねー、せっかく男子が一緒のクラスなんだから全力で持ち上げないと損だよねー」

「私達は男子と一緒に訓練できるって言う貴重な経験を積める。なんか滅茶苦茶凄かった時雨君に手取り足取り教えて貰えかもしれない。他のクラスの子に同じクラスだからこそ知れるあんな事やこんな事とかの情報が売れてガッポガッポ儲かれる。一石二鳥どころか一石三鳥だネ!是非もないよネ!」

 

「え〜、私はしぐしぐが良かったなぁ〜」

「ちょっと、残念かな?でも一夏も頑張ってね」

「ふむ、一夏頑張れよ。私も剣道や剣術についてなら全力で手伝うぞ」

「頑張って一夏!応援してるよ!」

 

とことん不純な理由が漏れ出す女性陣(一部ではない)と純粋に残念がったり応援したりしてくれている女性陣(ほんの一握りしかいない……)に涙しそうになった(色んな意味で)2人は多分悪くない。

と言うか仲間(クラスメイトの情報)を売るなよ……それにその売られた情報って何に使われんだよ……

ふと、そう思った時雨と一夏だったが敢えて口に出して彼女達に問い詰める事は出来なかった……世の中には知らない方が良い事や幸せな事も沢山あるのだ。多分これもそのひとつである。

 

「そうでしたわ、確か時雨さんと一夏さんは放課後にISの訓練を行っていると聞きましたわ。良ければ私もご一緒させて頂きたいのです。時雨さんに負けましたが腐っても代表候補生ですし専用機も持っていますから訓練では良い刺激にもなると思いますし、私も初心に帰って一から本当に得たかった強さを求めて取り組めクラス代表戦に向けて良い補佐にもなると思うのですが……」

 

そこでポンっと思い出したかのようにセシリアは手鎚を打つと先程要請されたばかりの補佐について自分に出来る事があると2人に申し出る。その申し出を受けた時雨と一夏は最初から訓練を手伝って貰っている栞と箒に向け意見を求める視線を送った。それに彼女達は、

 

「ありがたい申し出だから受けた方が良いと思うよ?私達はオルコットさんと違って専用機は持ってないしISランクも【A】だから実際に動かす訓練になったら私よりオルコットさんとした方がよっぽど為になるだろうし」

「うむ……、余り認めたくはない事実ではあるが栞の言うその通りであるし私も栞もISランクは【B】……、実力も上とあれば普通ならば頼み込んででも教えを請うべきな所を相手が教えてくれると言うならばその好意には甘えるべきだろう……特に一夏はな」

 

と2人共受けるべきだと返してきたので時雨達は彼女の申し出を受ける事にした。

なお先程の会話にあった『ISランク』という物だが、これはランクが高いと言っても別にこれは実戦における戦闘力を示すものではない。ごく平均的なISコアとの普遍的な搭乗者と同調(シンクロ)率を示したものであり、これの意味するところは搭乗者がISコアとどの程度深く接続できその機体をどの程度思考した思いの儘に動かせるかどうかをランク化した物。もっと分かりやすく言えば相性を階級で大雑把に表したものであり、実際は搭載されたコアの個々によりそのランクは変動し極端な例ではものによってはある機体ではランクが【C】なのにそれとは別のとある1機の機体では【A】ランクを叩き出した子も居たらしい。束の資料にも実例としてそう書いてあったし、その逆もまた然りとも書かれていた。……そして幾つか興味深い、搭乗者(・・・)()コア(・・)()相互認識(・・・・)による(・・・)ランク変動(・・・・・)についてにも追記されていた。

 

「そう言えば時雨のISランクって幾らだった?俺【B】なんだけど」

「………【B】だよ」

 

しかしふとISランクの話を聞き、同じ世界でも数少ない男性搭乗者である時雨のランクが気になったのか一夏は尋ねる。とはいえ時雨はまさか馬鹿正直に本当の事(【EX-S】)を言う訳にはいかないので取り敢えずで一夏達と同じだと答える。

時雨達がそんな話をしていた傍らに、既に大きかった女子達の喧騒はその話を聞いた事のより更に大きくなっていくが、そこに1時限目の授業担当の千冬が教科書と出席簿片手に教室に入って来、何やら廊下にまで響いていた騒がしい自分のクラスの様子に若干お冠なのか少々大き目な声で一喝、注意した。

 

「騒々しいぞお前達。もう始業間近だ、さっさと準備して席に着かんか!……では1時限目の授業を始める」

 

なお、その一喝の後僅か5秒で全員が着席して見せるという驚異の動きをしてみせた1年1組の生徒達であった。

 

 

 

 

 

「…………ところで山田先生、どうして貴女まで着席を?」

「えっ、その………反射で………」

「……………」

 

 

◆◇◆

 

 

千葉県成田市 成田国際空港国際線 到着口

 

「日本よ!アタシは帰って来たわ!」

 

キャリーバック片手に中国直通の国際線から降り立った1人の少女が国賓級VIP専用の空港ラウンジにて仁王立ちしつつ叫んでいた。なおこれはVIP専用であり他の一般人が居ないからこそ出来る事であり、誰ひとり(・・・・)居ない(・・・)からこそ思いっきり彼女がそんな事を叫べている理由である。

 

「って誰も居ないんだけど⁉」

 

そう、誰ひとり居ない。すなわち迎えの大使館員(担当官)どころか人っ子ひとり居ないのだ。肩出しの白い改造型IS学園の制服に身を包んだ彼女、中国国家代表候補生でありしかも専用機まで持っている正真正銘のVIP(要人)でありこのラウンジを使えるレベルの超VIP(IS専用機持ち)である筈なのだが何故かそんな彼女の迎えが1人も居なかったのだ。

 

「ん?携帯に連絡?しかも本国上層部から?」

 

と驚いているといつの間にか国から支給され所持していた方の携帯端末(プライベート用とは別の無骨な奴)に1通の通信が届いている事に気付いた。

 

「え~と、何々…………ふんふん……………ほうほう……………えっと、これ態々めんどくさくてしかも長ったらしく書いてあるけど簡潔に要約したら『担当官の手違いで出迎えやIS学園への手配が行き届いてないから自力で向かえ。あと移動費は自分持ちな(意訳)』って事よね⁉ HU☆ZA☆KE☆N☆NA(ふざけんな)‼ここからIS学園まで何kmあると思ってんのよあの上官(薄ら禿)め‼」

 

そしてそれを読んでみるとまさかの手配ミスで色々できてないけど一応もと地元だろ?頑張れ、責任取らないけどなと書いてあり思わず彼女は何言ってんだこのクソ野郎、ゴミ屑、ハゲ、馬鹿、デブと日頃の鬱憤も込めて盛大に罵る。中華4000年の歴史(笑)を誇る国なのに役人がコレだよこれぞ中国クオリティ(笑)ってアタシは誰に何言ってるのかしら……?

 

「ああ、もうっ!所持金も足りるか分からないのに如何すればいいのよ‼」

「あら?貴女もしかして(リン)ちゃん?」

「えっ?どうしてアタシの名前を?」

 

現在財布の中身の残高は両替したばかりで2万円程度、IS学園までのタクシー代やリニアレール代を考えれば絶対に足りないが日頃そんなに現金を持ち歩かず必要になったら引き落とすタイプだった為に銀行での手続きを済ませていない(担当官が事前にやっとくべき仕事だが多分あの通信からしてまだっぽい)今は引き落とせずどうしようもない。

来日そうそうの八方塞がりにどうしようと頭を抱えていると背後から名前を呼ばれた。振り返るとそこには少し前に何処かで会った事が有る様な気がするサングラスを掛け、護衛と思われる黒スーツを着た女性を連れた青色のスーツの女性が立っていた。

 

「あ、やっぱり鈴ちゃんね。久しぶり鈴ちゃん、大体1年ぶりね」

「え、えっと……貴女は……」

「あ〜、分からないか。ウチに遊びに来ても私はあんまり家に居なかったし居ても鈴ちゃんのお目当ては一夏君だったからね、私の事は憶えてないか」

「えっ、一夏の事知ってるの⁈と言うかアタシも会った事ある⁉︎でも一夏の家族でこんな場所で会うような人なんて千冬さんくらいしか……い……な……い……え゛っまさか……」

 

サングラスを掛けた女性の話に最初は付いて行けていなかった彼女だが漸くその女性の正体に辿り着き目を見開く。確か昔一夏と栞の家に遊びに行った時や授業参観の時に何度が見た事がある、そして軍に所属しISやVFを扱う者ならば必ずや1度は目にする資料に写真で載る人物の1人である。

 

「私よ、私。サングラスを取れば分かるかしら?」

 

サングラスが外されその下から出てきた素顔を見て彼女は1発で彼女が何者なのかを把握し、そして唖然とする。彼女は……

 

「こ、琴乃博士(さん)?」

「そうよ鈴ちゃん、元気にしてた?」

 

世紀の大発明と言われる『インフィニット・ストラトス(宇宙空間用マルチフォーム・スーツ)』とその対となる翼、『バルキリー・ファイター(可変戦闘機)』を開発した2人の20世紀最高と謳われる発明者であるISの生みの親 篠ノ之 束とその双璧を成すVFの生みの親 若宮 琴乃。そんな女性しかも彼女が態々国家代表候補生になって日本に帰って来た理由である一夏の保護者である若宮 琴乃が目の前にいたのだから。

 

「困ってるなら相談してね?一夏君と栞の友達なんだから出来る限り手を貸すわよ?」

 

ドイツ帰りの若宮琴乃はそう言って彼女に微笑んだのだった。

 

 




独自設定っぽいですがISランクの上下に関して搭乗者とISコア同士の相互認識の相違の差で決まる要素を追加しました。なので原作よりもIS(姉)に対し確執の小さい今作の箒のランクは【C】から【B】になりました。
セカンド幼馴染はドイツ帰りの琴乃に拉致られました。(この後事情を説明、相談してちゃんとIS学園まで送って貰った模様)しかしまだ琴乃は時雨(翼)の復活をまだ知らないのでこれから千冬と束が報告に向かいます。(次の日の昼頃に久しぶりの我が家でゴロゴロしている真っ只中に)

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