〈3〉
「どうも初めまして、新しく転校してきた若宮翼です。よろしくお願いします」
教室で拍手が起こる。今何が起きているかと言うと、ただ単純に今日転校してきた俺が先生に言われ自己紹介、まあ名前を言っただけだが、しただけである。そう考えているといつの間にか質問タイムに突入していたらしく彼ら、主に大半が女子だが質問攻めにあった。
「ねぇ、前はどこに住んでたの?」
「誕生日いつ?」
「出身は?」
「何人家族なの?」
「彼女いる?」
おい、前4つはまだ分かるが最後の何だ。小5がする内容じゃないだろ。え?今時は小4でリア充の奴もいる?マジか……ジェネレーションギャップって奴だな……。
「前は母の研究の関係で関西に、誕生日は8月の15日、出身は和歌山県との事、父、母、妹の4人家族です。……最後の彼女はいるかですが、いません」
『キャーー』
「…………」
何?この黄色い歓声?
ジェネレーションギャップについていけない若宮だった。……まあ実のところ、若宮がここまで女子に
キーンコーンカーンコーン キーンコーンカーンコーン
「はいはい、終了〜。朝の会はこれで終わりだ、続きは休み時間にでもしろ。若宮君、君の席は悪いが……『あの子』の隣に座ってくれ」
先生が指を指したのは教室最後尾の左端、つまり窓際から2番目の席で確かに唯一席が空いている。最後尾は無理矢理継ぎ足したらしく若宮の分とさっきからずっと
「はい、分かりました」
鞄を片手に席に向かう。その途中、
『ひそひそ……転校生君も災難ね。隣の席があの『天災』なのよ?』
『ひそひそ…………そうね……、転校生君かわいそう』
『ひそひそ……おい見ろよ、あの転校生あの『天災』の隣の席らしいぜ』
『ひそひそ……マジかよ、御愁傷様だな』
ひそひそ陰口に成り切っていないひそひそ声が俺の耳に届く。その対象は俺だがその悪意や害意の矛先は俺ではなくて隣の席の『彼女』1人に向けられている。
…………胸くそが悪い
悪意も害意も前々世や前世で嫌という程触れてきた。だが、やはりいつまで経っても俺はそれに慣れる事はできなかった。そしてそんな『ドス黒い意思』を今僅か11の少女が一身に受けているのだ。そんな様子を見て気持ち良く感じられる者はそういないだろう。
「……初めまして、今日から隣になる若宮翼だ。君は?」
「………………」
彼女は面倒くさげにNPCから一瞬目を離し若宮を見るとすぐに目線を画面に戻す。……おそらく数式であろう数列を打ち込みながら彼女は呟くように名前を言った。
「…………
「よろしく、篠ノ之さん」
「…………」
これが『彼』と『天災』との邂逅、だが彼が彼女に本当に笑って欲しいと思ったのはこの時ではない。それはその日から数日後、1週間すら経っていない、その日の出来事である。