サードライフ=インフィニット・ストラトス   作:神倉棐

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食堂での作戦会議

〈28〉

 

 

波乱の4時限目終了のチャイムが鳴り響き、少し胃が痛そうにした千冬が教室を後にして行く。時雨が教材を片付け5時限目の準備をしていると隣の席の一夏が一緒に食堂に行かないかと誘いをかけてきていた。

 

「時雨、一緒に食堂に昼飯を食べに行かないか?ついでに作戦会議でもしようぜ」

「あ、丁度良かった。私達も混ぜてよ一夏、結局天羽君には私達自己紹介できてないし」

「そういやそうだったな。時雨は構わないか?2人共少なくとも俺達よりISについて詳しいし頼りになると思うんだが」

「勿論大丈夫だよ」

 

とそこに一夏と昼食に行こうと思っていたのであろう栞と箒がやって来た為合流、4人で食堂に行く事になった。

 

「………凄い混雑のしようだな」

「……まあ、な。生徒の大半がここに来るからな、だが回転は速い。料理人の腕が良いんだろう、すぐ回ってくる」

「あ、一夏と天羽君はどうする?私と箒は日替わり定食にしたけど」

「俺は……鯖の味噌煮込定食で」

「俺は野菜炒め定食ご飯大盛りにしとく、あと食券の交換は俺と一夏がやっておくから2人は席を取りに行ってくれないか?ここから見たか限り全く座れる席がないように見えるのは多分気のせいじゃないから」

 

それぞれ食券を買った4人だったが、例え食券を交換しても4人のいる場所(券売機)から見て4人で座れそうな場所が無い。

 

「あー……うん。じゃお願いするよ」

「分かった、食券は渡しておく」

 

ぎっちり人が詰まった食堂を見渡し栞は確かにと頷く。時雨が栞と箒の食券を受け取り一夏と時雨がそのまま交換場所への列に並び、栞と箒が4人で座れるテーブルを探しに人混みの中に消えて行った。少しして漸く時雨達に受け取りの順番が回ってくる。

 

「おばさん、お願いします」

「はいよ!日替わり2、鯖味噌1、野菜炒めご飯大盛り1だね。ちょっと待ってな」

 

食券を受け取った人の良さそうなおばちゃんが1度調理場に引っ込むと次の瞬間には既に日替わり定食2人前が完成しておりその十数秒後には鯖味噌と野菜炒めご飯大盛りまでもが完成して2人の前に出てきていた。

 

「速い……これがプロのなせる技か……っ!為になるな」

「一夏君、君は一体何処に行こうとしてるんだい?ボクには分からないよ……ってご飯大盛りどころじゃなくてご飯特盛りになってる気がするんですがおばさん……」

「サービスだよ!しっかり食いな!」

「ありがとうございます!」

 

一体何処を目指しているのか謎な発言をしている一夏は置いといて、気前の良い食堂のおばちゃんがご飯を大盛りにするどころか特盛りにしてくれた事にお礼を言いつつ定食を受け取った時雨達は先に席を取りに出た栞達を探す。

 

「おーい、2人共ー!」

「お、あっちか……結構遠いな」

「案外簡単に見つかったね。それを言っちゃおしまいだと思うけど?」

 

ちょっち失礼な事を口走った一夏に時雨は内心少しだけ同意しつつ混雑した食堂の中を人を掻き分けながら進む。席に辿り着くまでに更に5分は掛かった。

 

「思ったより早かったな」

「うん、あんなに混んでたのにね。どれだけ食堂のおばちゃんの回転率って良いの?凄いよね……」

「凄いぞ、日替わり定食なんて食券を渡して数秒で出てきたからな。しかも出来たてホヤホヤなのがだぞ?予知能力者でもいるのかあの中……ヤバ過ぎんぞ」

 

IS学園はIS専修の学校であると同時に世界中から様々な国家からの生徒や人員が集まってくる為に国際学科としての側面も持っている。故に学園内部にあるこの学食ではそのそれぞれの国家の生徒達の風習や文化に合わせた食事を用意する為にメニューにはざっと572ものレパートリーが存在し、更には食堂のおばちゃん監修の日替わり定食として和洋中イスラムヒンドゥーが日ごとに違った献立で出てくるのだからここに勤めているおばちゃん達の凄さはお分かりできるだろう。

因みにとてもどうでも良い事であるがある時とある兎がもしIS学園の食堂が1日でも稼働しなかったらどうなるかの計算を行ったところ99.9999%(シックスナイン)の確率で暴動が起こると予想された程であるらしい。つまりIS学園において防衛上何よりも重要なのはIS……なのではなく学食のおばちゃん達であると言う事であり、もし学園を落とそうとするならば真っ先に学食を占拠すればあっさりと学園は陥落する可能性があったりする。

 

閑話休題(それはさておき)

 

「さて、ご飯も揃った事だしもう1回自己紹介しようか。私は若宮 栞(わかみや しおり)、趣味は読書とお菓子作りだよ。よろしくね」

「私は篠ノ之 箒(しののの ほうき)だ。部活には剣道部に入ろうかと思っている、あと弓道にも興味があるし和菓子なら作るのは得意だ。よろしく頼む」

「2回目だか俺は織斑 一夏、得意な事は家事全般と運動。特に料理は趣味でもやってるからそこそこの腕だと自負してるぜ」

「よろしく、俺は天羽 時雨。教室でも言ったけど趣味は読書と体を動かす事、得意な事は料理や剣術、銃器一式の取り扱いかな?時雨って呼んでくれたら良いよ」

「分かった。よろしくね時雨君」

「了解した時雨」

 

全員の自己紹介が済んだところで4人は揃って昼食を取り始める。うん、めっちゃ美味しい。このもやしのシャキシャキ感とニラのシャキシャキ感とクタッとした丁度境目の絶妙な硬さ、豚肉の旨さを引き出すシンプルな塩胡椒の味付けはまさに天下一品!ご飯が進む!ヤバい、おばちゃんが特盛りにしてくれなかったら絶対ご飯の量足りなかったわ。

 

「お、おお……凄い食べっぷり……山ほどあったご飯がもう半分に……」

「う、うむ……ここまでがっつり食べる人間など久しく見ていないな……」

「ま、当たり前だな。だってここの定食滅茶苦茶美味いもんな……あ、ご飯が足りねぇ」

 

もしゃもしゃ美味しそうに食べるその姿に対面に座っていた栞と箒は何処か翼兄(つーにい)の姿を薄っすらと幻視してしまうが直ぐさま頭を振ってその考えを否定する。

 

「ところで相談なんだが時雨……」

「なんだ?ご飯は分けてやらないぞ?これは俺の物だからな」

「ちげえぇよ!対オルコットの話だよ!」

「あ、ソッチ?御免、ご飯が欲しいのかと……」

「それくらい自分でお代わりしに行くわこのヤロー!なんで飯の話になるとそんなに話のレベルが下がるんだよ⁉︎」

 

が、目の前で繰り広げられるコントに「それはないか……」と直ぐに打ち消した2人の目は若干死んでいたらしい。まあ、ご本人な上に彼女達が思い出効果で美化しまくってるからでもあるのだが。

 

「コホン……、取り敢えず真面目に対オルコットさんの作戦会議を始めようか。箒参謀、何か案は有る?」

「そうだな……取り敢えず元となる身体を鍛えて、近い内に何が何でもISに1度は乗らなければ始まらない気がするな」

「ほうほう、確かにそうだね。私からすれば訓練用のISが借りられないか山田先生に確認を取って借りれたらとにかく今は搭乗時間を稼いで慣らすしかないんじゃないかと思うよ?あとオルコットさんの情報を集めるとか」

 

栞の司会により作戦会議が始まり箒と栞の案が提示される。それに補足する形で時雨は自分が保有する情報を開示した。

 

専用機(IS)についてなら名簿に載ってたから分かってるよ。英国が開発した試作BT兵装搭載型第3世代IS【ブルー・ティアーズ】、和訳すれば【蒼き涙】か【蒼き雫】で機体のカラーリングと形状も名前の通りブルーで涙線形を描いているらしい」

「『BT兵装』?」

「BT兵装って言うのはレーザービット及びミサイルビットを用いた『遠距離遠隔攻撃システム』の事で『BT』はその英語の頭文字をとった物……らしいんだけど直訳したら『Long distance remote attack system』になるからどう考えても『BT』にはならないんだよねぇ……もしかしてbeam(ビーム)から始まってる?いやでもlaser(レーザー)だし」

 

このBT兵装やブルー・ティアーズの情報もまた束の持ってきた紙束の中にあった英国軍事機密書類の一部から抜粋した情報である為信頼性は高い。ただ流石にパイロットの個人情報や基本戦闘動作や基本戦術までは明記されていない上そもそも時雨が覚え切れているはずもないのでその辺りは自力で情報収集をせねばならない。

 

「時雨君のお陰で一気に情報は集まったしこれで調べるべきものの方向性は絞れた。取り敢えず私がオルコットさんの基本的な戦闘動作や戦術について分かるものがないかネットとかを使って調べるから箒は直接2人を鍛える方向で行こう」

「了解した、だが先に山田先生に練習機である【打鉄】とアリーナを借りれないか聞くところからだな。よし放課後からでも聞きに行くぞ」

「分かった」

「おう!」

 

だいたい基本的方針は決まったのであとは細かい所を栞と時雨が詰めて食事が終わった者から解散していく。そんなこんなで彼らの昼休み時間は忙しくも充実して終了したのだった。

 




済みませんが先輩方の練習のお誘いはカットです。
また栞は母親の遺伝かもしくは影響か電子系は超得意です。特に彼女のオペレーティング能力は高くとあるFPSのオンラインゲームである時最強チームと彼女がオペレートについたそこそこ強いチームが戦ってまさかのボロ勝ちした実績が幾つもあり、彼女がオペレーションしたチームに負けはないという都市伝説まで完成しています。因みにそのそこそこ強いチームのプレイヤーのハングルネームは『ダンダン』と『カズカズ』なんだとか。

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