〈27〉
4時限目の授業が始まる、参考書ではなく教本と出席簿を片手に教卓の前に立ったのは
「では4時限目の授業を始める。今日の授業内容はISの各種兵装の扱い等についての話の為私が担当する訳だが……その前に少し授業時間を貰い本日から2週間後に行われるクラス代表戦の為に、この1年1組のクラス代表を決める。クラス代表はクラス長、つまり学級委員として各行事や学年のクラス会議等にクラスの代表として出席して貰う事になる。あと1度決まれば余程でない限り変更はないので留意する様に。さて自薦他薦は問わんが、他薦する者はしっかり考えてから他薦する様にしろ」
そう言って千冬は教卓に教本と出席簿を置き腕を組む。完全に聞きの体制に入った様だ。
「先生、私は織斑君を推薦します」
「私も織斑君で」
「同じく織斑君を推薦するです」
そして一拍の間を空けて上がるわ上がるわ女子の手が、多分珍しいのとノリと勢いからか男子、特に
「えっ⁈俺⁉︎搭乗時間なんて試験中の数分しか無いんだぞっ⁉︎そんな無茶な⁈」
「残念だが織斑、名が挙がったからには棄権は駄目だからな」
「そんなぁ⁉︎」
不憫である、一夏が滅茶苦茶不憫である。だがこれも必要な犠牲、俺だってやりたくないから丁度良いスケープゴートになる。済まない一夏、きっとお前の事は忘れな……
「え〜、私はしぐしぐ……時雨君を推薦するよ〜」
「あ、それも良い。私も天羽君を推薦します」
「……はい?」
まさかの伏兵、女子ののほほんさんが推薦してくるとは時雨は予想だにしていなかった為ほんの一瞬だが心の声が素で漏れ出た。
「くそっ……これが一夏をスケープゴートにしようとした俺への罰だとでも言うのか……」
「うぉいっ⁉︎何しようとしてくれてたんだ時雨⁉︎」
「馬鹿、俺だってただでさえ
「それは俺の
「そこ2人、私語は慎め。まだ推薦受付中だ」
「「はい……」」
口論に発展しかけた時雨と一夏だったが千冬に注意され直ぐさまに鎮火する、人間の汚い部分が多いに溢れ出た瞬間である。因みに時雨に怒られたので千冬からの
そこで時雨には名簿で見、そしてさっき会ったこの事態の解決策と成り得る1つのピースを思い出す。それは、
居るじゃん、うちのクラスに専用機持ちの国家代表候補生……
「先生、俺は国家代表候補生であるセシri……「納得いきませんわ‼︎何故イギリス代表候補生である私が推薦されず、その様な何処ぞの馬の骨とも分からない猿が推薦されるのでしょう⁈推薦されるべきはこのセシリア・オルコットの他に有り得ないと思いませんの‼︎」……俺推薦しようとしたじゃん……」
時雨がさっき出会った英国の国家代表候補生、セシリア・オルコットを推薦しようとした瞬間その張本人はその推薦に被せるように机にその両手を叩きつけ立ち上がりつつそう叫んだ。
「クラス代表は実力トップがなるべき、そしてそれは私ですわ!大体珍しいとかノリとか勢いとかでIS搭乗時間が数時間しかない男子が推薦される方がおかしいですわ!」
「……まあ、な」
「そりゃそうだよ、まともにISを動かせるかも分からない相手をクラス代表にするのはちょっとどころじゃなく綱渡りすぎる。……でもなんかさっき結構失礼な事言ってなかった?」
オルコットの正論に一夏と時雨は同意する……がしかし言い方が悪い、しかも結構失礼な事をがっつり口走っている。多分このまま行けば決定的に不味い事を言いそうだが……大丈夫だろうか?
「大体この様な文化的に後進的な国で生活するだけで苦痛を感じていますのに、これ以上の苦痛は幾ら私が寛大とはいえ許容できませんわ!」
「それならイギリスだって大してお国自慢はないだろ?強いて言うなら世界一料理が不味い国何連覇中だよ。
「な、な、な、なんですってぇ⁉︎」
「そこまでだお前達」
全然大丈夫じゃなかったオルコットの問題発言にキレた一夏が更に問題発言をするが直ぐさまそこに千冬の
「オルコット、貴様は何者だ」
「私はイギリスの……っ」
「そうだ、オルコット。お前は英国の国家代表候補生、つまりこの学園、このクラスにおいで貴様は英国の顔であり代弁者となる。即ち貴様の発言はそのまま国の発言とも取る事ができる、子供だからと無かった事にはできないものだ」
「それ、は……」
「織斑、お前もだ。そう簡単に感情を露わにすれば状況を悪化させるだけだ、冷静になれ。国際問題を起こすつもりか」
「うっ……済みません」
既に事態は結構不味い所まできているがこれ以上深刻化しないよう千冬が介入した事でオルコットと一夏は冷水を頭からぶち撒けられたかのように興奮状態から沈静化する。
「この際決着はオルコット、織斑、天羽の3名の決めたそれぞれの種目における勝敗にて決定とする。個人で得意なものを種目としても構わないが勝負になるものを種目とするように」
「俺も参加するんですか?」
「ああ、一応お前も推薦されているからな。言って悪いがついでに近い、済まないな」
「良いですよ」
変にごねると既に面倒臭くなっている現状が確実に抉れて面倒くさくなりそうなので時雨は素直に頷いた。そして一夏やオルコットもまた千冬の案に同意する。
「分かりましたわ、ですが言っておきますけど、わざと負けたりしたらわたくしの小間使い……いえ、奴隷にしますわよ」
「四の五の言ってるより分かりやすくて良いが侮るなよ。真剣勝負で手を抜くほど腐っちゃいない」
「でも質問だけどもし俺や一夏が勝ったらオルコット嬢は奴隷になるの?」
「えっ……」
「え?そういう事なんじゃないの?ノーリスクハイリターンな賭け事なんてないしましてや君は多いに人権を無視した提案をこちらにしてきている。奴隷なんて人類が3000年と少し掛けてようやく理解した無駄な行為をかの大英帝国の御令嬢が推進するなんてとんでもない皮肉だよね?」
「天羽、そこまでにしてくれ。流石に正論とはいえそれ以上はどうしようもないオルコットの失態になる。入学早々自主退学者は教師としては出したくない」
いつも以上に、いや未だかつてない千冬ですら見た事がないレベルで冴え渡る時雨の毒舌に千冬はストップを掛ける。このまま行けば確実に大失言を行う事が火を見るよりも明らかなオルコットを守る為彼女は無理矢理にだが話を進めていく。
「取り敢えず要望は聞いておこう、何だ?」
「あ、ISですわ」オルコット
「料理だ」一夏
「バルキリーの操縦技術で」時雨
『「「「えっ?」」」』千冬&オルコット&一夏&クラス一同
「?、本物じゃなくてシミュレーターでだよ?」
「ああ、……まあ、そうだろうとは思ったが……」
「いや……うん、流石にそれは想定外だった」
「な、なんでIS学園に来てバルキリーなんですの?と言いますか貴方バルキリーを操縦できますの?」
「できるよ?実物にも乗った事あるし」
「マジで⁉︎」「なんでですの⁉︎」『バルキリー乗りキター‼︎』
「しぐしぐ、もしかしてバルキリー学園の生徒だったの?」
「バルキリー学園?いや、違うけど?」
「え、じゃなんで乗った事あるの〜?美星学園か宝城学園じゃないと学生じゃバルキリーに乗れる機会なんて全くないと思うんだけど……」
「コホン……済まないが天羽、確実にそれを実行するとなると2週間以内では準備が整わないと思うのだが変えてくれないか?」
下手に答えて時雨の正体に繋がる情報を漏らしても困るので千冬は時雨と本音の会話に割って入る。それに実際バルキリー訓練用のシミュレーターを使うにはそれを保有する美星学園や宝城学園に手を回して許可をもらいに行ったり裏技なら琴乃の研究所に行けば教習用よりもっと凄い奴もあるのだが確実に2週間以内には準備できないので実行は不可能である。
「冗談です。剣の果たし合いにでもしましょう、もしくはアーチェリーでも弓道でも構いませんよ?」
「剣の方にしておく、格技場を借りれないか申請しておけば良さそうだからな」
時雨が何故かハッチャケてる所為で若干胃が痛くなってきたのか千冬は腹部を押さえる。しかし世界は残酷である、ハッチャケてる時雨が多いに突っ込める話題を女子生徒達が話し始めたのだ。
「でも大丈夫なの?オルコットさん国家代表候補生なんだよ」
「そうそう、それに男が女より強かったのって大昔の事だよ」
「確か男と女が分かれて戦争したら男は3日として保たないらしいからね」
「それはない。そもそも想定から間違っているがそれでも無理矢理想定した場合
実際に『IS神話』なんて馬鹿馬鹿しい与太話を流している
「……さて、話は纏まったな?それではすぐにでも準備は整えられるオルコット提案のISでの勝負は1週間後の月曜日、その日の放課後の第三アリーナで行う。織斑、オルコット、天羽はそれぞれ作戦等の準備をしておくように。また織斑と天羽に関してはスケジュールが合い次第連絡する。それでは授業を始める」
時雨の毒舌カミングアウトに教室の空気が完璧に凍りついたが千冬の言葉によりそれは一応元通りに戻る。しかし女尊男卑の見えない闇が露呈しそれが時雨の正論に論破され続けた事により、この授業を境に彼女達は思想に対し思考するようになりこのクラスにおける女尊男卑の思想はゆっくりとだが徐々になくなっていったのだった。
因みに後日わかった事だが、この件の後山田先生は職員室で1人どこか疲れた雰囲気を漂わせながら胃薬を飲む千冬を見かけ今度飲みに行く約束をしたらしい。ただ自分のクラスの女尊男卑の傾向が収まった事にはとても喜んでいたとコメントしている。
主人公の前世の周りの女性は男に負けず物理的にも精神的にも強い人ばかりだった為この世界でも主人公は女性は弱くなく対等であると認識しており女尊男卑の考えはかなり嫌ってます。あと実際はこんな簡単に思想を考える事にならないと思うし主人公が嫌われると思うのですが自分的に1年1組の女子生徒は良い子が多いと思うのでこの際に女尊男卑についてしっかり考えてなくなっていってもらいたいところです。
あと主人公がハッチャケてちっふーがちょっと不憫な回でした。