〈11〉
先日の魔法使用発覚事件から数日、翼に魔法について学びだした5人(千冬、束、栞、一夏、箒)は篠ノ之神社の一角に存在する束と箒達の家の一室に集まっていた。
「ここをあーして、こーして……えーと…」
「ねえねえ、つーくん今日は何を……っていうか何してるの?」
昨日寝る前に各家々にこっそりお邪魔して(親が知らないだけで子供は知ってる)魔術回路を開けて回り驚くことにスイッチの
「ん?ああ、ここ、篠ノ之神社の真下に結構大きな『龍脈』が通ってるみたいなんだ。これがあると色々と便利になるだろうから流れを少し
「『龍脈』?」
「龍脈っていうのはね、地球にある地中を流れる
「へえ~」
「だからあくまで少し
「「「「「えっ!?」」」」」
翼の説明にそれを直接聞いた束だけでなく他の4人もまた少しばかりぞわっとするがそれを見た翼はその反応が正しいよと5人に微笑み掛ける。
「大丈夫、使う加減さえ間違えなかったら龍脈だってただ便利なだけだから。それにもしも何年も使わなかったならいつの間にか本来の流れに戻ってるように調整してあるからこの龍脈については問題無いよ」
「もう、脅かさないでよ。つーくんのイジワル」
「そうだぞ翼、一夏達も怖がってるじゃないか」
「あははは、ごめんね。でもとても大切な事だったから敢えてこんな言い方にしたんだよ。龍脈や魔法はとても便利なものだけど使い方によってはとてつもなく危険な兵器にもなる、大きな力だからこそその使い方を誤ってはいけないという事を実感してもらいたくてね」
5人は先程の翼の例え話から脳裏に思い浮かんだ街が焦土と化してしまう光景を思い返す、あんな事が実際に起これば自分達だけでなく街の見知らずの人をも巻き込んだ大惨事となる事が予想できた。
そして翼がわざわざこんな話を5人の前でしたのかというと、それはこの5人に魔法などを含めてこれから先に力の使い方を間違って欲しくなかったからである。千冬も束も栞や一夏、箒もみんな将来きっと大成する事になる。それだけの能力や力、運もあるし、それにこれは前世、前々世を生きて色んな英雄や勇者といわれる人々を直接見てきた自分だからこそ導きだした予言である。ただだからこそ、その過程で大きな過ちを犯して欲しくなかったのだ。
「後悔しても良い、間違えても構わない。逃げても泣いても非難はしない。でもだからこそ他人でなく自分に誇れるように、そして今を大切にして欲しい。これが俺が君達に魔法を教える事の条件だよ」
途中から話が変わってしまったが、この際これでも構わないだろう。間違いなくこれが翼が彼女達に魔法について教える条件なのだから。
「……誓おう、私はこれから習う魔法だけでなくこれからも手に入れるであろう力を決して間違えて使わない。私は私に誇れるように生きてみせる………お前にだって誇れるように」
「私も誓うよ!私は私の『夢』を必ず叶えてみせる為だけにつかう!」
「ボクも!」
「私も!」
「うん、私も!」
千冬と束の掲げた誓いに一夏達も幼いながらにその意味を噛み締めそれに負けないくらいに思いを込めて誓った。
「ありがとう、なら俺はみんなに全力で魔法について教えるよ」
5人の決意を嬉しく思いつつ魔法を教える為に人払いの結界を張るがふと、翼は先程束が言った今まで聞いた事がなかった彼女の『夢』について尋ねた。
「ねえ、束さんの夢って?」
「私の夢はね!乗り物や宇宙服なんて使わないで人が自分自身だけであの高い空を、そしてその先にある宇宙を自由に飛び回る事だよ!」
彼女はいつもの大人びた雰囲気が嘘かのように年相応の輝きを見せて自らの夢を語る。彼女が語る夢とその笑顔はとても、綺麗だった。
「良い夢だね。遥か高き
「
ふと思った事を言ってみただけだったのだが思いの外束には気に入ったらしい、「インフィニットストラトス、インフィニットストラトス」と何度も呟きながら時たまふふふっと未だかつてないくらい嬉しそうに笑っている。それを見た千冬はなんだか自分が負けているような気がして自分もまた翼へと夢を打ち明けていた。
「私は世界最強でも目指してみようと思う。1度剣を握ったのだ、ならばその頂きを目指さぬのは私が振り続けた剣に対する冒涜なのではないか、そして一夏の姉として1人の女として1度は世界に名を馳せてみたいと思うのは当然じゃないか?……それにそれを目指す為のその第一歩であり私が超えるべき最大の
千冬は翼に目を合わせ試合の時と同じ位、いやそれ以上の
「私が私の中で1番超えたい相手はお前なんだ、翼。お前を超えて世界最強である事を勝ち負けなんかじゃなくお前にだけ証明してみせる事が私の夢なんだ!だからきっと私はお前を超えてみせる」
「俺を超えてみせる……か、参ったなぁ……俺からすれば千冬さんこそが俺の超えるべき人なんだけど……、それじゃあ俺は君に超えられるまで君が超えるべきだと思い続けられるよう頑張るよ」
「ああ!ありがとう翼」
翼の答えに千冬は僅かに頬を上気させながら微笑む。その姿もまた束に劣らぬ程綺麗でただ美しいものだった。
そしてそれに続き一夏や栞、箒が夢を話す中でただ1人、翼だけが夢を言っていない状況になる。
「そう言えば翼、お前の『夢』ってなんだ?私と束の他に一夏達のも聞いたんだ、そろそろ翼のも聞かせて欲しいのだが」
「俺の夢?」
当たり前のように聞いた千冬だが逆に
「そうだな……俺の『夢』か……」
翼は1度目を瞑り少し思案した後再び目を開く。その目は今を見ているようで、それでも何処か
「……そう、俺の『夢』は“もう後悔しない事”かな」
カチリ……
その時翼の側にいた千冬には欠けていたはずの何かがはまる、そんな音がしたように聞こえたのだった。
────────未だ欠けた時計の歯車は回り出す、その錆び付いた銀針が動き出すにはまだ少し
書いてて気付いたんだけどちっふースゲー
主人公がこれからの行動指針となる夢を獲得しました、がただ単に自覚してなかっただけで結構今までこの通りの行動をとってます。
なお次回の予告になりますが主人公が主人公母に御都合主義的な事を頼まれますのでご注意下さい。