周りを見渡すと記憶の奥にあった見覚えのある景色が広がりはじめる。
真っ白な世界が少しずつ色づいてくる。五感がだんだんと戻りナルト達は何処かの室内にいた。
周りを見渡すと記憶の奥にあった見覚えのある景色が広がりはじめる。
「ここって子供の頃過ごした火影邸の離れだってばよ、なんか懐かしいってばよ」
昔を懐かしんで部屋を見ると昔落書きした手裏剣の絵が襖にでかでかと描かれていた。意外とアートである。
目前の丸いちゃぶ台を囲むように父であるミナトと母のクシナの姿も見て取れた。
「ん!ちゃんと体の感覚もあるしホントに転生したみたいだね正直驚いてるよ」
ミナトは手を握ってみたり自分の体を触ったりして触角を確かめる。
「うん、こうしてミナトにもナルトにも触れるし何よりお腹が空いてるのが生きてる証拠だってばね」
クシナはお腹を押さえてえへへと笑う。
『儂はナルトの中に居るみたいだな。昔のように檻じゃなく森林みたくなってるよだな』
ナルトは自分の深層意識に注意を向けると確かに森林浴をするのに丁度いい木漏れ日の中に真っ白な九喇嘛がいた。自分の深層世界のはずなのに木漏れ日が射すってどういう状況なんだってばよ?と思いつつも光を反射させて輝く真っ白な九尾の狐をみてつい見とれてしまう。
「ひ、ヒナタの姿が見えないけど何処に消えたんだってばよ?」
九喇嘛に見とれてしまったのをごまかすかのように意識を現実に戻すとわざとらしくきょろきょろあたりを見渡す。
『おそらくだが、この世界のヒナタがいた所だろう。同じ世界に同一人物が二人居るのはおかしいだろうからな』
「そっか、ヒナタは日向の家か。とりあえず納得したってばよ」
ごまかし切れていないがナルトはごまかせたと思っているのだろう、ウンウンと腕を組みながら納得していた。
ミナトやクシナも微笑みを浮かべてナルトをみる。二人も気づかないふりをしてくれているようだ。
「さて、僕たちは今まで死んでいた事になっていたわけだけど。どうにか辻褄を合わせないといけないねなにかいい案はないかい」
ミナトも助け船とパンと手を叩くと注意を自分のほうへ向ける。
「それなんだけど父ちゃん母ちゃん、少し無理やりだけど俺に考えがあるってばよ」
「あら、どんなのかしら」
「九喇嘛を俺に封印した時、父ちゃんも母ちゃんも一緒にチャクラを封印できたってばよ?実はそのとき肉体ごと封印してましたーって事にすればいいってばよ」
「九尾の封印が安定するのに三年位掛かったことにすれば良いわけか。なるほどね」
「波風とうずまきの合作忍術で偶然そうなったとか口裏合わせておけば問題なさそうだってばね。くふふ…、実は生きてましたービックリサプライズ作戦だってはね?流石の息子だってばね!」
グシグシとナルトの頭をなでながら既にクシナはどうやって友達をびっくりさせようかと思いをはせてはニヤニヤしている。ニシシとわらう姿が息子とそっくりであった。
『たしかにそうすれば仮に儂が表にでても大問題に成らなくてすみそうだな』
「俺も火影とかしていろいろ悪知恵はついたってばよ」
「そうだね、そう言うことにしておこうかシンプルな方が無理がなさそうだ。あとは切り出すタイミングとかだけど…その辺は流れに身を任すってのが一番いい気がするね。そういやナルトいま何月何日か判るかい?」
そういって周りのあてになりそうなものを探すと、壁にかかっていたカレンダーを見つけたナルトが答えた。
「んーっと、カレンダーのバツ印を見る限りでは一週間後にセレモニーって書いてあるってばよ」
「セレモニー?なにかおめでたいことでもあったのかい」
ナルトは昔の記憶をたどる。すると今の記憶に交じって昔の記憶が流れ混んできた。
「えーっと俺が三歳でセレモニーだから…たしか雲の国と停戦だかの条約を結んだ日だったはずだってばよ(他にもなんかまだ忘れてる気がするってばよ?なんか重要な事だった気がするってば…)」
「丁度いいんじゃないかしら?その日にサプライズするってばね」
「あははは、その辺はちゃんと計画とタイミングを見て…ね、クシナ」
「なははは、母ちゃん結構子供っぽいとこあるってばよ。俺のいたずら好きは間違いなく母ちゃん似だったってばよ」
そういってクシナとナルトはニシシと笑いあう。ミナトもそれをみてつられて笑顔になっているようだ。
「ともあれ、体の調子を整えないとかな?ちゃんと忍術が使えるのかとかも知りたいし。どうにも体幹的な違和感があるし」
「俺もなんか上手くチャクラが練れ込めないってばよ。コントロールは出来るけど体が追い付いてない。そんな感じだってばよ」
二人はチャクラを練ってみるが、転生したばかりで感覚が追いついていないため、うまくチャクラコントロールが出来ずにいた。クシナはあまり違和感はないように見える。穢土転生等を経験してない為、魂と体の違和感が少ないからだろうと九喇嘛は考えた。それを踏まえて憶測を建てて答える。
『まぁナルトの場合は言葉通り体が子供になっちまったわけだし。ミナトの方は記憶と今の体とでズレがあるんだろうな』
「やっぱそっかー、後なんかクラマのチャクラも優しく清らかな感じになっててこそばゆいってばよ。声も可愛いし…」
そういわれて初めて自分のチャクラをみて唖然とした。
『な、なんだと///!ってこの透明感のある新緑っぽいチャクラはなんだ、自分で使ってて気持ち悪い』
「もしかして今ナルトの周りに出てるのが九喇嘛のチャクラかい?」
「転生の影響でそんな風に変わっちゃのかしら?なんか禍々しいというよりは清々しい気持ちになるってばね」
「でもこれなら周りの説得にも一役買えそうだし。好都合だね」
『な、納得いかんぞ。儂は九尾の妖狐であってもとは厄災とか天災と呼ばれていたのだぞ。』
「でも前の時より遥かに力強い感じがするし・・・なんていうか縁側で日向ぼっこしてるみたいで気持ちいいってばよ」
『ことかいて、儂のチャクラの質が縁側の日向ぼっこチャクラだと・・・。まったく強そうに感じないな…泣きそうだ』
「まぁまぁその辺も含めて折り合いつけていこう。今はとりあえず腹ごしらえかな。みんなどうだい?」
「賛成だってばよ(ばね)」
そうして初めて親子揃って外食をする波風一家であった。一応変化の術で姿を隠してではあるが初めての一家団欒に楽しそうだった。
『(くっそどうしてこの親子はこうお気楽なんだ…てか儂も油揚げ食べたい)』
クラマ自身も転生した時点で若返っていることにまだ気がついていなかった。
~~~~
真っ白だった世界から抜け出し、徐々に色ずく世界。
ゆっくりと目を開けるとそこには懐かしい風景があった。
まだ自分には大きすぎる布団に真新しい枕。二歳の誕生日にもらった人形。
「(そういえばこの人形ハナビにあげちゃったんだっけ。なつかしいなこの部屋もこの机も)」
ふと、視界にはいった化粧箪笥の鏡を見ると幼き日の自分が写る。
「(ホントに転生したんだ私)」
ペタペタと自分の顔を触ってみる。自然と微笑んだ鏡の中の自分自身が可愛くて何故か可笑しかった。
「ヒナタご飯ができた、居間に来なさい」
ノックもせずに入ってきた父を見てビックリしたが、前世では死んでしまっていた父にまた会えたことを嬉しく感じる。
「ひ、ヒナタ何故泣いているんだ、私がなにかしたのか?」
フルフルと首をふって違うと表現したが
「あなた、ヒナタを泣かせて何してるんですか?」
「い、いや私はなにもしていないぞ。な、なぁヒナタそうだな?」
「ならなんでヒナタが泣いてるんですか、犯人は貴方しかいないでしょう」
「犯人…ま、まて話せば分かる。私はまだ何もしていない、ヒナタ私は無実だと証言してくれ」
「(あ、あれ?父と母ってこんなんだっけ?でもたしかにあの事件が起こる前はいつも笑ってたような気もする…)」
そこで慌ててヒナタは答えた。
「ち、違います母上。父上が笑顔で呼びに来てくれたから嬉しくて涙が出ちゃっただけ」
は、恥ずかしい。少なくとも私はこの時点の父達より遥かに長く生きていたのだ。孫たちさえいたのだから。
なのに、″涙が出ちゃった″とか。子供過ぎただろうかと思いつつ自分がいま何歳くらいなのかと鏡をもう一度見る。
ふと壁に余所行きの赤い着物が目に入った。たしか3歳の誕生日に母に着せていただいた記憶が蘇る。
「聞いたか私は喜ばれこそすれヒナタを泣かせてはいないのだぞ」
「はいはい、ヒナタは優しいねー」
「お、おい」
「(そっか、もうすぐ私の誕生日なんだ。こうも記憶が蘇ったりするのも転生の影響なのかな?でもいいよね今は子供なんだし少しくらい甘えても)父上母上…大好き」
「こんどこそ聞いたか、ヒナタが大輪のような笑顔で私に大好きといったことを」
「何を言っているんですか。私に言ったのです、ねーヒナタ。この笑顔は譲れませんよ」
「(ってあれ?やっぱりこんなに愉快な両親じゃなかった気がする…もっとこう威厳とか厳格がにじみ出てたような・・・)」
こうして日向家も昔とは少しずれた世界だという事をヒナタは少しずつ体験していたが、それでも過去に戻り再び両親に会えた喜びで自然と笑顔になるのだった。
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次の日、ナルトは自分がどのくらいチャクラをコントロールできるか試すために近くの演習場に足を延ばした。
ミナトやクシナは自分たちが生きているという事を効率よくかつサプライズするためにはどうするかという案件に真剣に案を練っていた。
「(まったく、いい大人がなにやってんだってばよ…)母ちゃんらしいけど…」
『あやつらにも考えあってのことだろ。仮にも四代目の火影だったんだろうミナトは。それにそれを言うならナルトお前はあの二人よりもっと長生きしたろうが』
「(今は子供だってばよ。だから俺は今をまた目いっぱい子供らしく生きるんだってばよ。)」
『ふふ、前向きなところはかわってないなナルトは』
演習場につくと軽く準備運動を行い次に足にチャクラを留める。そのまま壁際に設置されている丸太の柱に向かって木登りをする。何度も上り下りを繰り返して加減を見極める。
チャクラを練ってわかったことだが、昔なら自然とできたことが意識しないとできないことに気が付く。それでも訓練を続けていくうちにだんだんと感覚が追いついてくるようだった。
「んーコントロール自体は出来るけど。でも体が追いついてこないってばよ」
『どういうことだ』
「足がもつれて転ぶ状況に似てるってばよ。自分ではちゃんと歩いてたつもりだけど足が空回りしてるみたいな…そんな感じだってばよ。あとは仙術チャクラが上手く練れないってばよ。」
『その辺は急には無理だろうから少しずつ慣らしていくしかないな』
「へへっ。おう!」
『なんだ急に』
「なんか嬉しいんだってばよ。死んだと思ったらまた九喇嘛と一緒で、こうして話せて」
『儂はお前が死んでから暫く一人だったからな…その…(寂しかったなんて言えるかアホぅ)』
「意外と素直だな九喇嘛。ニシシまた相棒宜しくだってばよ。」
『う、うるさいな。ったく…よろしく頼む相棒』
「ってことで最後に九尾モードを試してみるってばよ」
『いいだろう、儂も自分のチャクラにものすごい違和感があってな試してみたかったのだ』
そういうと二人は心を合わせチャクラをすり合わせていく。今までのチャクラと違って全身から力が漲り全身が黄色く…
「ってなんで髪の毛が真っ白になるってばよ。昔の黄色っぽいチャクラじゃなくて透明感のある澄んだチャクラだしどういう事だってばよ」
『儂が知るか!ってかナルトお前見た目が女の子っぽくなってるのように感じるのだかが気のせいだよな?』
「は?ちょ、ちょっと待つってばよ」
ナルトは九尾モードのまま演習場にある池の傍に立つと水に映る自分の姿をみて慌てる。そこに映るのはピンと尖った耳の生えた白のロングストレートの髪。そして巫女姿の女の子だった…
「ま、真っ白な髪が長くなって肌もすこし白く見えるだけ…だってばよ?多分…」
『愚か者ちゃんと視ろ。それにナルト気が付いてるだろうけど…(声も少し高く女っぽいぞ)』
「い、いうな九喇嘛俺には見えない聞こえないってばよー」
『現実を見つめろナルト、さらになんでかしらんがモッフモフの真っ白な尻尾が九本。お前からはえてるぞ』
「あーー、あーーー聞こえない見えないってばよ。うわーーん」
その姿は九本のモフモフ尻尾が生えた三歳時程度にして美しいと愛くるしいを兼ね備えた姿であった。
『儂が雌になってしまった影響かこれは…屈辱だ…六道の爺め、 こんど会ったら有無を言わさず叩き潰してくれるぞ』
「うーん口寄せなりで九喇嘛を外に出れるよう考えないとなぁ。このままだと俺が狐に掘られることになるってばよ…」
『ば、バカかお前は///儂が、儂は…儂の…あー。あー、知らん…儂はもう知らん…ふん。寝る!』
「ごめんだってばよ九喇嘛この話はとりあえず置いておくから、仲直りするってばよーーーー」
そうこうぎゃーぎゃー言い合いながらも肉体的には早すぎる修行が始まる。
「せめてこの九喇嘛(女性化)モードだけでもなんとするってばよーー」
しかしそのあと何度九尾化を試そうとも昔のような尾獣化は出来ず、美獣化してしまうナルトたちであった。
おー続いた続いたー
流石にもうしばらくは無理かも