間違いながらそれでも俺は戦車に乗るのだろう。 作:@ぽちタマ@
『カモチーム撃破されました!アヒルさん、クマさん、健闘を祈ります!』
『『『はい!』』』
プラウダ高校との鬼ごっこも、ついに残すは俺のモーリスと磯辺たちの八九式だけとなってしまった。
西住たちが今、どんな状況になっているかはわからないが、あいつらを信じるしかないな。
風紀委員のカモチームがやられてから、次のIS-2の装填時間まではそう時間はない、覚悟を決めるか。
俺はふぅーっと、深呼吸をする。下手すると怪我じゃすまないかもしれないが、今はそんなことは言ってられない。ナカジマさんたちとの約束は破ってしまうことにはなるが。
『おい、磯辺!』
『どうした、比企谷?』
『まだ勝つ気はあるか?』
『もちろん! 私たちは最後まであきらめない!いくよ、バレー部!!』
『『『はい!!』』』
よし、その言葉が聞ければ大丈夫か。
『今から俺ができるだけ時間稼ぎをする。その間にお前らは距離をとれ、そうすればあとは相手のフラッグ車を西住たちがどうにかしてくれるはずだ』
『わかった任せて!根性でどうにかして逃げ切って見せる!』
『じゃあ頼むぞ』
『コーチも頑張ってください!』
『……おう』
さて、行きますか。これが俺の最後の悪あがきだ。八九式の後ろにモーリスをつけ、そして俺はあの市街地の時のようにレバーを引く準備をする。
これを引けば硝煙筒から煙が出るようになる仕組みになっているから、あとはタイミングだ。はやめに煙を出してもこちらの位置がむしろ煙でバレてしまうので意味がなくなってしまう。レバーを引くなら相手の砲撃をくらう直前がベストだ。
だから、さっきの装填時間を計算してそれと同時にレバーを引けば……。
――――よし、このタイミング!
俺がレバーを引いたのと、モーリスがIS-2の砲撃をくらったのはほぼ同時だったと思う。思う、というあいまいな表現をしたのは、そこから俺の記憶がないからだ。
そして次に俺の目に入ったのが、曇天の雪空と西住たちの顔だった。
どうやら俺は砲撃をくらって気絶をしていたらしい。なんとなくその時思ったのがそんな感想だった。
「よかった、八幡くん!」
目を覚ました俺に西住が安堵の顔をしている。
「……西住、なにがどうなったんだ?」
今の現状がどうなっているかまったくわからん。西住たちが戦車を降りてるってことはとっくに試合は終わってるんだろうが。というか体いてぇ……。
「えっと、八幡くんの戦車が――」
どうやら西住は俺のことを説明してくれと聞こえたらしい。
「いや、そっちじゃない、試合はどうなったんだ?」
俺のことは今はどうでもいい、それより大事なのは試合結果のほうだ。
「え?」
まるで俺にそんな質問をされるとは思っていなかったのか、西住はきょとんとしている。
「試合なら勝ちましたよ! 比企谷殿!」
そんな西住の代わりに、俺に嬉しそうにそう報告してくる秋山。
「そうか、よかった。なら問題ないな」
正直、不安がなかったかと言えば嘘になるが、それでも西住たちなら何とかしてくれると思っていたからな。これでダメだったら、俺が体を張った意味がなくなるところだった。
そして残るは、まほさん率いる黒森峰か。
「……なにもよくないよ」
「武部殿?」
どうしたんだ武部のやつは、なにもよくないって……、勝ったんだからなにも問題はないだろ。
「比企谷」
心なしか、俺に話しかけてきた武部は怒っているように見えた。
「……なんだ」
「試合のあと、比企谷に無線で連絡しても繋がらない、戦車は異常に大破してるって連絡があったんだよ?」
「……そうか、迷惑かけたな。でも、そんなことより今は―――」
今回はだいぶ無茶したからな。武部の言った通り、俺の戦車は大破してしまっている。今後どうするかを考えないといけない。まだ自分の戦車がどうなってるか見てないからわからんが、下手すると俺の戦車の大破次第では試合に出れないかもしれないし。
だから、今は俺なんかのことより先のことを考えないといけないはずだ。……はずだったのだ。この時までは。
「そんなことよりって……どういうこと?」
「は?」
初め、武部の言うことが俺にはわからなかった。
「そんなことよりって、どういうことって聞いてるの!」
次第に武部の口調が強くなっていく。
「お、おい、なにを怒って――」
「比企谷は自分がなにをしたかわかってるの!?」
「なにをしたって……八九式の盾になったことを怒ってるのか? それならほかのやつらもやってたことだし、そこまで怒らんでもいいだろ」
「……本気で言ってるの?」
武部はポツリとつぶやく。
「なにが?」
「さっきのこと、本気で言ってるの?」
どうしたんだ、武部のやつ。様子がおかしくないか?
「本気もなにも、ああしなかったら磯辺たちがやられてたんだから当然だろ」
俺は自分が思ったことをそのまま言う。そう、当然だ。だってやらなければ俺たちは負けていた。
「自分の戦車が普通の状態じゃないのに?」
そうか、バレたんだな。だがそれでも、俺の答えは変わらない。
「当たり前だ」
「……ねえ? 比企谷は何のためにそこまでするの?」
「何のためにって、それはもちろん……」
「この学校を廃校にさせないため? そんなことのためにあんな無茶をしたの?」
「おい、そんなことってなんだよ。それは――」
「誰も頼んでない! 私たちは比企谷に怪我をさせてまで勝ったってうれしくとも何ともないよ!」
「いや、俺は怪我はしてないだろ」
「そんなの結果論じゃん! あんな、戦車の装甲を薄くして……。大怪我じゃすまなかったもしれないんだよ?
もっと酷いことになってかもしれない……。比企谷が今、こうして無事にいることだってなかったもしれないのに……」
武部の言いたいこともわからんこともない。たしかに俺が無傷である保証なんてどこにもなかった。下手をすれば病院送りだったかもしれない。
だけど……。
「そうしなきゃ負けてた。武部、そんなことっていうがな、廃校になるんだぞ? 多少の無茶はやらんといかんだろうが」
「それで私たちが傷ついても?」
「なんでお前らが傷つくんだよ、俺が勝手にやってことなんだから気にする必要がどこに……」
その言葉はとどめだったのだろう。武部にとって。
「比企谷! 人の気持ちをもっと考えてよ! なんでいろんなことがわかるのにそれがわからないの!?」
そう言った武部の表情は、つらいや悲しいほかにもいろんな感情が混ざりあってるように見えた。
……なんでお前がそんな顔してるんだよ。
「比企谷さん」
不意に、五十鈴のやつにそう言われた。ただ、俺の呼び方は前の呼び方に変わっている。比企谷さん、と。なんというか、それだけ、たったそれだけのはずなのに、五十鈴のやつが俺を拒絶しているのがわかった。
「今度はお前か、五十鈴」
「はい。前から思っていましたけど、今回の件はさすがに度が過ぎています」
「お前も、俺がやったことは間違ってるといいたいんだな?」
「はい」
五十鈴のやつは迷いなく俺にそう返事をする。
「あの生徒会の時やわたくしの時でも同じようなことをしていましたよね? 何故ですか?」
「なんでって、それが一番効率が良かったからに決まってるだろ。西住やお前には戦車道をやってもらわないといけなかったからな」
「比企谷さん、あなたはわたくしのことを……いえ、わたくしたちのことを信じてはくれてないんですね」
「それは、どういう……」
「わからないんですか?」
なぜか質問をしているはずの五十鈴のほうがつらそうに見えたのは気のせいなのだろうか。
「比企谷さん、あなたはいつも一人で解決しようとします。なんで一言、わたくしたちには相談してくれないんですか? そんなにわたくしたちは頼りにならないのでしょうか? 比企谷さんにとってわたくしたちは……」
五十鈴は一瞬、躊躇ったがそのまま言葉を続ける。
「そんなにどうでもいい存在なんですか?」
五十鈴の表情も武部と同様に変わる。
「……っ!」
感情に流されるな、比企谷 八幡。これは俺に対しての罰だ。わかっていたはずだ、俺のやり方が間違っているのは。その結果がこれだ。俺の行動でこいつらを傷つけた。俺に罪悪感を感じる資格なんてない。
優しさは毒であると思う。じわじわと人の心を弱くしていく。俺はこいつらの優しさに甘え続けてきたのだろう。
戦車道という世界で男である俺を受け入れてくれたこいつらの優しさに。俺自身がどうしようもなく間違ってしまっていると気づいていても。
あの時、雪ノ下さんが言った言葉が繰り返し俺の頭に響いている。
『比企谷くん、君は異常だよ?』
今思えば、それは俺が戦車道をやっていることでなく、俺のその在り方にたいして言ったのだと思う。
雪ノ下さんの質問、二人のうちどちらかを助けるかと聞かれたとき、そのどちらでもなく俺は迷わず自身をベットした。
助けるものがどっちも大切で、その両方を守れる手段があったのだ。なら俺は自分を使う。その結果、誰かが傷つくとしても。
だから俺は間違えている。普通、人間はなにより自分が大切だ。だが、俺はそんな自分でさえも一つのコマとして扱う。自分というコマを使って解決できることなら、それで自分に益がなかろうと関係はない。
たしかに最初は戦車に乗るために頑張りだしはしたが、結局、それは小町という存在がいたおかげで今まで続けられてきたのだ。
それでも限界はあった。だから俺は中学生の時、安易な偽物に手を出した。その結果は散々たるものだった。
そしてその後にボコという存在に出会い、俺の今の考えが固まった。
負けると決められているボコ、それでもあきらめずに挑んでいく姿は本当に自分のことのように感じられた。でも、俺とボコは違う。だって俺は途中諦めてしまったのだ。
自分の幸せを願ってしまってこの結果になってしまうのだから、本物を手に入れるためには自分という存在を損得の感情に入れてはいけないのだと思った。
そうしてしまえばまた中学のように、いつか途中で足が止まってしまう。本物に辿り着けない。ボコのようになれない。
だから俺は異常なのだろう、間違っているのだろう。みんなという定義があったとして、俺自身がその中に入ってすらいない。自分が決めた目標なのに結果として俺が入っていない。
「比企谷さん、あなたのやり方は嫌いです」
「……そうか」
今の俺が言えることなんてない。
「八幡くん……」
そんな俺たちのやりとりを見ていた西住がつぶやいた。その顔は今にも泣きだしそうな顔をしていた。別にお前のせいじゃないんだから、そんな顔をする必要はないぞ、西住。
「西住、ボコはあきらめたらボコじゃないよな?」
「え? う、うん、そうだよ! だってボコは……」
あきらめたらボコじゃないなのだ。だから、俺はもうボコじゃない。
今までだったら、たぶん気にしてなかった。
「西住、俺、戦車道やめるから」
俺にとってこいつらは……
「……え?」
「会長にもそう言っといてくれ」
「は、八幡くん!?」
―――どうでもいい存在ではなくなっていた。
ーーー
ーー
ー
「……みたいな感じです」
「比企谷、君ってやつは……なんでやることがそんなに極端なんだ……」
平塚先生は額に手をあて、ため息をついている。
「いや、だって……」
そんなことを言われても俺は俺のやれることをやっただけである。
「まあ、いろいろと言いたいことがあるが、それは雪ノ下たちに任せよう。比企谷、君は異常なほどに人の思考や行動が読める一方、自分に対してへの感情が希薄すぎる。内にも外にたいしても、な」
「……はぁ」
「では聞くが。比企谷、君はなぜ戦車道をやめたんだ?」
「なぜって、それは……あれ以上あそこにいたらあいつらを……」
「傷つけると? それは彼女たちが君に言ったのかね?」
「言わなくてもわかりますよ」
あいつらにあんな顔をさせてしまったんだから。あれ以上、俺が戦車道にいても碌なことはない。
「じゃあ、その理由まで君はわかっていると?」
「それは……」
「わかってはいないだろ? 君は状況はわかっているが、感情が理解できていない」
「感情なんて確認しようがないと思うんですけど……」
「本当にそう思うか?」
平塚先生はまるで子供のように、俺にわかりやすく挑発してくる。
「これは私からの君への課題だ。なぜ自分がそこまで勝ちに拘ったかを自分なりの答えを出したまえ」
「なんでって……」
「廃校云々はなしだ、それは建前であって君の本音ではない。絶対にな」
「それでもわからなかったら?」
「その時はまた考え直すしかないだろう、何度も何度も、答えが出るまで」
俺が廃校以外の理由で勝ちに拘ったワケ。
「その答えが見つかったら、あらためて奉仕部に行くといい」
「それはなぜ?」
「奉仕部はなんのためにあるんだ、比企谷?」
「持つものが持たざるものに慈悲の心をもってこれを与える、人はそれをボランティアと呼ぶ、でしたっけ?」
たしか雪ノ下がそんなことを言ってた気がする。
「それは雪ノ下が言ったのか?」
「ええ」
俺がそう言うと、平塚先生はまたため息をついている。
「ため息ばかりついていると幸せが逃げていきますよ?」
ついでに婚期も逃げていきそうである。
「誰のせいだと思ってるんだ……」
平塚先生にギロッと睨まれた。まさか心を読んでませんよね? いや、バレていたら即座に鉄拳制裁だな。うん、すこし自重しよう。
この場合は俺と雪ノ下になるのか、平塚先生のため息の原因は。
「それで?」
とりあえず話を変えよう、このままだと俺の命が危ない。
「彼女たちに相談すればいい」
相談? あいつらに?
「いや、あいつらには関係ないでしょう」
「比企谷、今回私がなんで君の話を聞いたと思う?」
なんでって……。
「平塚先生が先生だからじゃ……」
「近からずも遠からずといったところだな。私はね、君から相談されるまで動く気はなかったよ」
どういうことだ? 今だって現に平塚先生は俺の相談に乗ってくれている。
「雪ノ下たちだよ」
なんか予想外なところから名前が飛んできた。雪ノ下?
「彼女たちが、君の様子がおかしいと心配して私に相談してきたからな、だから私は動いたんだよ」
「いやいやいや、雪ノ下が俺を心配? ありえないでしょ? 平塚先生も奉仕部での俺たちのやりとりは見ていたでしょ? 雪ノ下は俺のことを馬鹿にこそしますけど、心配なんてしてませんよ」
「あれはあれで雪ノ下なりに君を元気づけようとしていたと思うぞ?」
あくまで雪ノ下が俺を心配してるっていう前提で話を進めるんですね。
「あの罵倒の嵐がですか?」
それはそれでどうなんだよ。俺は別にそっちの趣味はないから罵られてもうれしくともなんともないんだが。
「あれが君と雪ノ下のいつも通りのやりとりなんだろ?」
そう言われればそうなんだが、雪ノ下が俺になにかを言って俺がそれを返す。たしか由比ヶ浜がそのことを内輪ノリとかなんとか言ってた気がするな。
「それとこれと何の関係が?」
「彼女は彼女なりに君を心配しての行動だったんだろう、やり方は間違っているが」
あ、そこは間違ってるって思ってたんですね。俺だけかと思ってたよ、そう思ってるの。
「雪ノ下は君と出会ってから随分と変わったよ」
え?
「いやいや、変わってないでしょ全然。むしろ毒舌がパワーアップしてる気がしますよ?」
もしかしてそっちの意味で変わったってことですか?
それなら納得いくんだが。
「いや変わったよ。以前の彼女なら私に相談などしなかっただろう」
「なら、由比ヶ浜のお陰でしょう、俺はなにもしてないですよ」
それに人はそう簡単には変われない。俺がいい例だな。
「私が雪ノ下が変わったと感じたのは、君が奉仕部に入ってからだよ。それにこれは雪ノ下の姉の陽乃からも聞いているから間違いはない」
「は? 雪ノ下さん?」
「なんだ、陽乃のことを知っているんだな」
「知っているというか、なんとういうか」
できればもう会いたくはないな。会って少し話しただけで俺のことを見破ってきたのだ。もう怖すぎるだろ、あの人。
どこぞ王子も言ってたしな、お前がナンバー1だ、と。雪ノ下さんは俺の中で近づいてはいけない人間リストナンバー1だ。
「とりあえずだ、比企谷。彼女たちも君を心配している、そのことだけは覚えておけ、いいな?」
「は、はぁ……」
なんか無理やりに納得させられたような、そうじゃないような。
「とりあえず俺は明日、雪ノ下たちに相談すればいいと……」
「ああ、私に話したことを彼女たちにも話してやれ、人の意見は多い方がいいだろ?」
「わかりました」
「うん、私は素直な子は好きだぞ」
そういって平塚先生は俺の頭をわしゃわしゃと、それはもうわしゃわしゃとしてくるのであった。
お陰で俺の髪型グチャグチャ、別にセットとかしている訳ではないが、それでもだろ。
その途中いきなり頭を抱きしめられた。いわゆるハグである。
「ど、どうしたんですか?」
軽くキョドってしまった。
「……比企谷、君は自分という存在を軽く見過ぎている。君は君の価値を認めることから始めたまえ」
とても、とても優しい声で平塚先生はそう言ってくる。
「……無理ですよ」
「すぐにとは言わないよ。今は周りが君を君のことを心配していることに気づいてやってやれ。彼女たちが不憫だ」
「それはさっき言ってた?」
「雪ノ下たちもそうだが、それ以外でもだよ。もちろん私もその中に入っているぞ」
俺を心配しているか……。
なんか気恥ずかしいのとこれ以上この体勢でいるのに我慢できなくなってきたな。
「……先生」
「なんだね?」
「胸が当たってます」
さっきからずっと当たってたんだよ。正味、わざとかと思ったんだが、どうやら違うらしく。
「な!? 比企谷! 人がまじめな話をしているときに茶化すんじゃない!」
顔を真っ赤にしてそんなことを言われてしまった。不覚にも可愛いとか思ってしまった自分を殴りたい。いや、俺は悪くない。悪いのはなんもかんも平塚先生である。
危ない危ない、不意にまた告白しそうになった。自分のちょろさが嫌になる。たぶん、俺があと10年早く生まれてこの人に出会っていれば心底惚れていたと思う。
「すいません」
とりあえず、謝っとこう。
「……まったく。頑張りたまえよ、比企谷」
「先生も早く相手を見つけてくださいね、見ているこっちが心配になるんで」
これはまじで心配だ。はやく誰かこの人をもらってやれよ。
「結婚なぁ、相手がいないんだよなぁ~、私ってそんなにダメなんだろうか?」
「まぁたしかに、タバコ吸ってたり、暴力的だったり、愛がいろいろ重かったりしますけど」
「ぐはぁっ!」
俺の言葉にダメージを受ける平塚先生。まぁ、それでも。
「それでも、結局は相手の見る目がないんですよ」
「え?」
平塚先生に相談して、俺がやるべきことはわかった。まずは自分の答えを見つけることからか、廃校云々を抜きにして俺がそれでも行動した理由。
だが、それがわかったところでどうなるんだろうか?覆水盆に返らず、一度やってしまったことは取り返しがつかない。俺はあいつらを傷つけ、戦車道をやめたのだ。
それでも答えを探す理由……今は平塚先生のためにということで動くとしよう。俺なんかの相談に乗ってくれたこの人のために。
やはり俺は間違っている。なにか理由がないと動き出せない、そんな今の自分がたまらなく……。自分が好きだと言っときながら、一番自分を信用していないのは結局のところ俺自身。
―――いつか、こんな間違いだらけの自分を認めることなんてできるのだろうか?
本物がないとわかっていながら、それでも求め続ける。男なのに戦車に憧れ、いつかみたボコのようになりたいと願った。そんな間違いだらけの自分。
『ボコはね! 絶対にあきらめないの!だって――』
ふと、そのことを思い出す。
「……だって、それがボコだから、か」
いつのまにか無意識に口に出していた。
「どうした、比企谷?」
「いえ、なんでもありあせん」
「そうか?」
プラウダ戦のあの時、俺はボコをやめた。あきらめたのだ。だけど、もし、立ち上がることができるのならその時は……。